採光性を考慮して大きくデザインされたベランダの窓から入る朝の曙光は、実に暖かな物であった。
カーテンを全開にしていればリビング中に光が入るように計算されており、彼女の住むマンション同階の住民は、洗濯物も干しやすい、気分も良くなる、
向かいに日照を遮る建物もないから実に清々しいと、概ね高評価をこのマンションに下している。
立川市のとあるデザイナーズマンションは、特別区ではないと言う事を除けば、駅にも買い物に向かう為のスーパーも近いと、実に良質な物件であった。
無論室内も言うに及ばず。不景気が叫ばれて等しい今の日本であるが、このご時世に地道に買い手が増えて行っていると言う珍しいマンションだ。
朝の透明な光に照らされる立川市の風景を、ベランダから見下ろす少女がいた。
何処ぞの学校の指定制服に身を包み、如何にも沈鬱そうな光をその緑瞳に宿した、黒みがかったグリーンのロングヘアをした背の小さい女の子だ。
前日酒缶や酒瓶を開けすぎて二日酔いになった者か、一時間しか寝れてない者以外は、足取りも軽くなろうと言う程の、綺麗な朝の光を受けても。
この少女は、前日に家族の誰かを交通事故で失ったかのようなローテンションさを、発揮していた。朝が弱いと言う訳でもなく、況してや、
前日の睡眠が足りなかったと言う訳でもない。彼女は普通に、適正な時間を睡眠に当てられた。
――それなのに、彼女が……『宮うつつ』が、いつも以上に鬱々としていた訳は。
「ヨオヨオヨオヨオヨオヨオヨオオオオオオォォォォォッ、う~つつちゃんYOOOOOOOO」
そう言って、ベランダの手すりの上に、小柄なうつつよりも更に小さい、彼女背丈の半分しかないであろう奇妙な人形状の何かが座り込んだ。
例え人形にしてもそれは不細工だった。カーキ色のバケツをさかさまに被り、それに口と空洞状の瞳を取り付けたような頭。
そして頭の大きさに見合わぬ細い手足と胴体を持った、小学生だってまだ家庭科の時間でマシなモノを作れるだろうと思える程に、奇妙かつ、気味の悪い何かだった。
唐突にそんな物が現れたものだから、うつつは思わず「ひぅっ」と声を上げて、後ずさってしまった。
「いつまでウジウジ悩んでるんだぁ? もう腹を決めるんだよハラをよぉ~~~~?」
この二日間、この人形にも似た何かは、この何かの主と一緒に、ずっとうつつに絡んでいる。
と言うのもその訳は簡単で、その二人は現在、宮うつつと言う存在から供給される魔力によってのみこの世界に形を留める事が出来る、見様によっては儚い存在だからだ。
うつつに完璧に依拠していると言う性質上、必然的に彼女に絡む事が多くなる。なるが、それが今の彼女には鬱陶しくてしょうがない。
特にこの人形状のお化けは、しつこい程に絡んでくるのだ。
「出たくないです」
うつつはそう言って目の前の存在からなるべく目線を外しながら、簡潔にそう言った。
「聖杯戦争なんて、やりたくないです」
聖杯戦争。その話は、この人形と、その主から聞かされた。
聖杯と言う神秘のアイテムを求めて、不特定多数の聖杯戦争参加者と殺し合いを行うイベント。
勝者には、どんな願いをも叶えてくれるその聖杯自身が約束されている……と言う。
それを嘘だとホラだと、うつつは頭から否定しなかった。自身が、高次元の存在であるJ・J・ロビンソンからガッチャマンと言う力を与えられた女である。
と言う経緯があるからと言うのもあるが、それ以上に、此処が本当に自分達の居た世界とは違う所だと本格的に知ってしまったからである。
自分が今住んでいる立川市の何処にも、あのガッチャマンの秘密基地が存在しないのである。この時点で彼女は、悟ってしまったのだ。
このイカれた人形の話す聖杯戦争、人を殺さねば何も解決しないと言うこの悪夢が、晴れないと言う事に。
「うつつ!! 甘いこと言っテンじゃねェゼ。解ってるだろ、お前が何かシナキャぁ問題は解決しないんだぜェ~~~?」
「人、殺したくないです」
それはそうである。ガッチャマンに対する思い入れはそれ程強いとは言えないうつつであるが、それでも、最低限の人倫は弁えている。人を殺す等、この少女には出来る筈がない。
「解ってるぜぇマスター。解る解る。オレだって、レースにゃ勝ちたいが人は自発的に殺したくねぇもんなぁ」
そう言って、今までうつつの部屋のソファに座って、ミルクを飲み、食パンを乱暴に千切って食べていた男が、ベランダの方に近付いて来るなりこう言って来た。
日本よりは、ニューヨークのスラムを拠点にでもしてそうな大柄で長身の黒人男性だった。ラジカセを肩に背負っていれば、実にサマになっていただろう。
袖の破れた上着と独特のヘルメットが如何にも示威的だが、口から紡がれる声は、人生の今まで悩みらしい悩みにぶつかった事が全くないのだろうな、と言う事が聞いただけで解る程の、底抜けに明るい陽気な声であった。
「『ポコロコ』オオォォォォォ~~~!! 今は俺がうつつを元気づけてルンだからお前は引っ込んでな!!」
「お前の応援はぜんっぜん駄目だぜ『ヘイ・ヤー』ちゃんよぉ、それじゃあ白人の地主が奴隷いじめてる時のような口ぶりとなんもかわんねぇ、オレに任せてすっこんでな」
チッ、と舌打ちをして、ポコロコと呼ばれた黒人男性からヘイ・ヤーと呼ばれたそれが、ふて腐れたような態度で、手すりを椅子代わりにして足を組んで座りはじめた。
「うつつよぉ、何もオレ達は殺し合いに行こうぜ、って言う訳じゃないんだぜ? 大切なのは一番になる事だろ?」
「でも一番になるには、戦わなくちゃいけません」
「だけど、『二番までは戦わなくてもなれる』って事だろ?」
ポコロコの、思わぬ言葉にうつつはキョトンとした態度で、彼の自信満面な笑みと態度を見上げてしまった。
「えっと、どう言う意味ですか?」
「オレ達は自慢じゃないが弱い!! そこのヘイ・ヤーもハッキリ言ってSBR優勝以降はケツ拭く紙より役に立った記憶はねーし、オレだってそんな喧嘩は得意じゃねーんだ。戦うのは御免だな」
トイレのちり紙以下と言われたヘイ・ヤーは唾を飛ばして、「☆□△○ΩΣ!!」と言葉になってない文句で猛抗議していたが、ポコロコはどうどうとヘイ・ヤーを制止させ、言葉を続ける。
「お前の言う通り、うつつ。一番は戦わなくちゃ勝ち取れないが、二番までは適当に逃げ回っても、他の誰かが潰してくれるかも知れないんだから、俺達でもなれる可能性がある。違うか?」
「でも、私が元の世界に戻るには、一番にならなきゃ――」
「其処だ」
ビッ、とうつつの眉間に指を指しながら、ポコロコは更に続けた。
「YO、うつつよ。聖杯戦争って言うのは言い換えればすげー長くて疲れるレースだ。どんなレースだってよ、ゴール目前になれば、走る奴なんてみんなヘロヘロだ」
其処で、ポコロコは、ぶつぶつとふて腐れているヘイ・ヤーに目配せをする。
「そう言う事か」と言うような笑みを浮かべて、ヘイ・ヤーは、うつつの背中におぶさる様な形になり囁いた。空気の様に、この人形は軽かった。
「う~つつ~~~~。全員が限界でゴールに向かう時、走ってる奴らに最終的に残るのは、どんな差だと思うよ」
「……」
沈黙は、解らないと言う事の意思表示であった。
「『幸運』なんだぜぇ? そしてお前のサーヴァントは、この聖杯戦争に参加した奴らの中じゃ一番ラッキーだ!! 天中殺の大反対、五十、いや、今の人口は確かそれ以上だったっけ!? 兎に角、すっげぇラッキーボーイだ!!」
「そうだ、お前は俺の一番ラッキーな時期を召喚した!! 普通の俺じゃ、どんなサーヴァントにも勝てないだろうが、ゴール目前になってヘバってるサーヴァントなら、俺にだってチャンスがある!!」
「逃げて逃げて逃げまくればイイッ!! 誰もが疲れて荒い息しか吐けなくなった所で、俺達が出向けばいいじゃねェか!! Yeah!!」
「Yeah!! 今の俺はラッキーな時期なんだ、一緒に受肉してもっかい人生楽しもうぜヘイ・ヤー!! 別荘は北欧にするぜ!!」
ガハハハハと笑いながら、互いの肩と頭をバンバン叩きあう、ポコロコとヘイ・ヤー。
実際問題、うつつの瞳に映るポコロコのステータスは貧弱その物で、到底聖杯戦争を勝ち抜くには不足にも程があるサーヴァントだった。
それ故に、彼らの提示した、兎に角逃げて逃げて逃げまくる、と言う方針は、足りてなさそうなお頭で考えた割には理に叶っているし、
何よりもうつつの戦いたくないと言う要求を満たせている。満たせているが……。
「……うつうつします」
ポコロコとヘイ・ヤーの馬鹿騒ぎに掻き消される程の小さな声で、うつつは静かにそう呟いた。
そう簡単に行けば、苦労なんてする筈がない。宮うつつの心境は、鉛色の曇天よりも、ずっとずっと、優れない様子なのであった。
【クラス】
ライダー
【真名】
ポコロコ@ジョジョの奇妙な冒険PART7 スティール・ボール・ラン
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運A+++++ 宝具E+
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:E+
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。但し、馬だけは話は別で、高い乗馬技術を持つ。
【保有スキル】
黒き彗星:A
まだまだ黒人差別が冷めやらなかった時代に、その立ち位置と社会的地位の上昇に貢献したであろうライダーの業績。
彼は生前、参加者三千人超、死者多数、総走破距離6000㎞と言う嘗てない程の超長距離を乗馬で移動するレース、スティール・ボール・ランの優勝者。
白人系のサーヴァントと交戦を行う場合、幸運以外のステータスがワンランクアップする。
【宝具】
『がんばれがんばれ(ヘイ・ヤー)』
ランク:E+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
ライダーが生前発現した、精神エネルギーの具現。人型のビジョンを持った形ある超能力、スタンドが宝具となったもの。
スタンドの中では珍しい、自我を保有したスタンドであり、かつ言葉も喋れて、ライダーとのコミュニケーションを取る事も可能。
本体であるライダーと、そのマスターに助言を与え、勇気を奮い立たせる『だけ』のスタンドである。
しかもこの助言には確証もなければ根拠もなく、この宝具自身が思い付きだけで喋っているだけであり、そもそも助言ですらない。
本当に、相手をその気にさせるしか使い道がない宝具。本来ならばスタンドはスタンド使いにしか見えないと言うメリットがあるが、
聖杯戦争に際して、魔力を有した存在或いは聖杯戦争参加者であれば視認が可能となっている。また、この宝具が消滅した瞬間、ライダーも消滅する。
『幸運』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:自身 最大補足:自身
――それは、一説によると五十億人に一人の超幸運。それは、どんなことをやっても上手く行くと言う神や因果を超えた何かのお墨付き。
ライダーの規格外の幸運ステータスの正体である常時発動型の宝具であり、名前すら付けられない、形を持たぬ規格外の宝具。
ライダーの行う行動一つ一つには、幸運ステータスの高さ分の成功率が上乗せされ、状況や地の利が有利であるのならば、更にその成功可能性も成功率に上乗せされる。
またこの宝具がある限り、ライダーの幸福は如何なる存在が如何なる行為を働こうとも、彼の幸運だけは絶対に低下がさせられない。
行動の一つ一つに有利な補正が付き、相手からの攻撃でさえも超高確率で防ぐ事が可能となる宝具だが、この宝具の恩寵に与る事が出来るのはライダー自身のみであり、
そのマスターは対象外。またこの宝具の効果が『働かない』状況と言うものも存在し、ライダーが『自身の幸福に疑いを持ち、行動に移さなかった』時のみに限り、
一時的にこの宝具の幸運は働かなくなる。これを防ぐ為に、スタンド、ヘイ・ヤーは無根拠の助言を与えまくるのである。
【weapon】
ヘイ! ヤア!:
スタンド名と紛らわしいが、これは馬の名前。4歳のクオーター・ホース。取り立てた特徴のない馬であるが、ライダーの条件を満たす騎乗馬。
【人物背景】
ジョージア州に住んでいた黒人農奴を両親に持つ男。両親は齷齪働いた為に奴隷の身分から解放された程の働き者だったが、その子供の彼は兎に角サボり好きで、
だらしのない青年だった。偶然ニュースペーパーで見たSBRのレース開催予定の記事を見、賞金に目が眩んだのと、ジプシーの占い師にかつてない程の幸運の持ち主、
と言われた事で出場を決意。その後、通常のジョッキーの枠に囚われない自由な走りを(本編外で)見せつけ、何時しか黒い彗星とまで言われるようになった男。
本来の優勝者はディエゴであったのだが、何故かレースを彼が棄権していた為、繰り上げ当選でポコロコが1位になると言う逆転勝利を飾った。
【サーヴァントとしての願い】
もっかい受肉して人生をエンジョイ。
【基本戦術、方針、運用法】
ビックリする位弱いし多分うつつが戦った方が遥かに強い。
但し本人の言う通り幸運による押し付け性能だけは凄い。が、そのラッキーが働くのは自分だけなので、やっぱり使えない事には変わりない。
その凄まじいまでのラッキーで場を掻き乱す事が、重要になるだろう。
【マスター】
宮うつつ@ガッチャマンクラウズ
【マスターとしての願い】
元の世界に変える。
【weapon】
【能力・技能】
G-99:
うつつが変身出来るガッチャマン。誕生と死のNOTEと言う黄色いNOTEで変身可能。
アムネジアエフェクトの展開による、一般NPCには姿の視認が出来なくなると言うガッチャマン共通の特性の他に、
右手触れた者の生命力を奪い、左手で生命力を分け与える能力を持つ。但し右手で生命力を吸収、そのストックがない場合、自身の生命力を相手に分け与える形になる為、
ストックなしでの使用は危険。また生命エネルギーを、自身の分身の作成にも転用可能と、応用範囲も以外に広い。
【人物背景】
私立立川鳳雛学園に通う女の子。高校1年生。過去に何かがあったのか、心を閉ざしている状態。
一ノ瀬はじめ加入前の状態から参戦
【方針】
取り敢えず逃げ続ける。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 23:47