アットウィキロゴ
零崎人識は殺人鬼だ。
人を殺す鬼と書いて殺人鬼。
忌み嫌われる殺人鬼の集団、零崎一賊の鬼子、純潔にして生粋の殺人鬼。
息をするように人を殺し、息をする為に人を殺す殺人鬼。

彼に何故、人を殺すのかと聞けば「殺人鬼が人を殺さないのはおかしいだろう」と答えるだろう。あるいは、理由など存在しないと囁くかもしれない。
では、どうして殺人鬼をやっているのかと疑問を投げかければ「じゃあ、お前はどうしてこんな質問をするんだ」と答えるだろう。あるいは、人を殺すからだと笑いながら言うかもしれない。
殺人とは何かと問われれば、事も無げに彼は「なんでもない」と口にするだろう。あるいは、あるのかもしれないと呟くかもしれない。

一般的な基準による善悪について彼はよく理解している。現代社会において殺人は悪とされることも知っている。その結果、世間からどんな目で見られることも知っている。
殺人を犯す行うことは多大な不利益であること、無意味で無価値なことも知っている。
彼は人が悲しむということを、喜ぶということを、怒るということ、苦しむということ、怖れるということを知っている。
でも、彼は殺人を止めない。

零崎人識は何の動機もなく容赦もなく打算もなく価値もなく脈絡もなく目的もなく遠慮もなく利益もなく理由もなく、人を殺す。


▽△


【一日目】


「ーー俺たちには理由が与えられてないわけか。戦争に参加する理由、命を懸けてでも戦わなければならない理由が。そりゃ、人間だし願い事の一つや二つあるだろうが、生命活動っていう高すぎるリスク背負ってまで叶えたい願いなんてそうそうない。数億円程度の宝くじの一等当選とか、老いてくる体が嫌で永遠の若さとか、子供の頃に戻って人生をやり直したいとか、どれも所詮はあり得るわけないと夢見てるだけの妄想の類だ。その妄想を現実にするのがこの戦争なわけだがーーサーヴァントであるアンタに理由がないのは可笑しな話だよな」
「その回答はこっちが聞きたいくらいだ」
「例えば、空を飛びたいとか、意中の相手に振り向いてもらいたいとか。大なり小なり無意識に心の中で思ってることでも、それが願いとされているのかも知れねーな。其れとも基準は何だっていいのかーーま、知ったところで優位に立てるわけでも勝てるというわけでもないしどうでもいいことか」
「オレよりオマエのほうがよっぽどだろう」
「余程、理由がないってか。確かに、俺は人生を後悔をしたことは一度もない。俺の過去を本に出すとしたら4冊以上は確実でそれはそれは内容が濃く汗と青春と血みどろに溢れているが、ああしとけばこうはならなかったこうしとけばああはならなかったーーそんな後悔はしたことはない。後ろを振り返らずに前だけを向けと言うが、俺は後ろを向いてるのか前を向いてるのかさえあやふやだ。あやふやで、救いようがなく、どうしようもない」
「救いようがない、ね。こうして顔を合わすのも話すのも初めてだけどーーオマエがどうしようもなく終わっていることだけは分かる」

そう言って、対面に座る人識を残して両儀式は立ち上がり部屋を後にした。
建物から一歩外に出ると少し肌寒い外気が体を突き抜けていき、吐く息は白い。
面倒だと放っておいたせいか肩口にまで伸びてきた髪と、浅黄色の着物、その上に羽織った赤い革製のジャンパーが風に揺れた。
奈落に堕ちてしまいそうなほど深い夜の街は、怪物の口に踏み入るような不気味さがある。
石畳を歩いているとすれ違う誰かに視線を交わすことなく、コンビニの前たむろしている誰かは騒がしい声を撒き散らし、ライトも付けず車を飛ばしている誰かは事故に遭うこともなく、隠すこともない足音で後ろについて来る誰かと会話に華を咲かすこともない。
ーー平常、不変、日常。
街灯の下、光を求めて何匹もの蛾が集まっている。精一杯、小さな羽根を羽ばたかせて自分では真っ直ぐ進んでいるつもりだろうが、くるくると下手なダンスを踊っているように光の中を泳ぎ続けている。
頭上を見れば満点の星、そして月。一見、綻びなど見えない丸い月は少しだけ欠けていた。
視界を埋め尽くす星々に、特別なにか感慨を抱くことはない。
思うことはこんな異界に嵌めた奴を殺すことだけ。

「こんな夜遅く、女一人外に飛び出すなんてちょっと危機感足りてないんじゃねーか。近頃は物騒だっていうのに、殺人鬼にでも出会ったらどうするつもりなんだよ」
「そういうことは鏡を見てから言え」

気だるそうに式は立ち止まり振り返ると、夜の闇の中から現れた人識が退屈そうに両手を頭の後ろに置いて呆れたように此方を見ていた。
線は折れそうなほど細い。顔立ちは可愛らしいといえる容姿だがその他の要素が最悪のーー攻撃的で壊滅的なファッションをしている女のような男。
上半身は黒いタクティカルベスト、両手にハーフィンガーグローブ。タイガーパンツのストライプに、足には物騒な安全靴。右耳に三連ピアス、左耳には携帯電話のストラップが二つ、止めに顔半分が刺青で、少し羽目を外した若者どころではない。
霊だなんだと地に足が付かない連中より、地に足が根付いた目の前の顔面刺青の方がよっぽど不気味で怖いと言える。
尤も、生の実感がない式に、そんな在り来たりな感情は非常に希薄であるのだが。

「どうしてこうなった」

心の底から面倒だと吐き捨てるように式は言った。

「それ、まるで私は被害者で巻き込まれたかのような言葉だな」
「言葉通りだよ『殺人鬼』オレは被害者ではあるが、オマエも被害者かは自分の胸にでも聞け」
「被害者も加害者もそれなりの規模で成って来ているつもりだが、目が覚めたら其処は東京で、放浪者をしていましたってのは初めての経験だ。最悪と言っちゃ最悪の気分だな」
「ああ、全く同意する。ほんとうに最悪だ、気分が悪い」

こういう事態こそトウコの出番だろうに、と式は姿形もない魔術師の名前を口にする。
聖杯、戦争、マスター、サーヴァント、そして願い。夢ならさっさと覚めて欲しいものだと外に出てみたが、変化は訪れず状況は変わらず自分がサーヴァントなどという胡散臭い存在に成り下がっている現実。
だいたい、願いもなく聖杯に縋る戦争に参加するなど滑稽が過ぎるというものだろう。
此処にいることも、この街も、灰色の空も、聖杯戦争とやらも、それを企てた奴も、記憶の混入も、身体の変化も、人識の存在も、何もかもが不快で仕方がない。
此方を覗き込むような、観察するような視線ーー黒色の、底なしに黒い瞳の色。
それが両儀式の衝動を強烈に刺激する。

赤から青に変わった信号機の明かりが、酷く目に痛む。

不満だらけーーというか不満しかないが、動くにせよ動かないにせよ、選択肢は大分限られているようで。
そもそもとして自分に出来ることと言えば殺人だけである。
切って、殺すだけ。
殺人鬼に出来るのはそれ以外にはない。
ーーだから、式がこんなことを聞いたのは興味本位なんてものではなく、殺人という単語と自分を組み合わせて頭に浮かんできた、次の瞬間には消えて忘れてしまう気泡のような言葉の羅列。

「なぁ、人を殺すってどんな気分だ」
「ーーあ?」

と、人識は言って。

「かはは」

と笑った。

「どんな気分か、だと。あー、あーあーあーあーそう、そんなことを聞いてくるのか、ふーんなるほど、なるほどね。人を殺す。一人殺せば殺人で十人殺してもそれは殺人だ。俺は誰に言われても語られても恥ずかしくない生粋で純粋な殺人鬼だが、人を殺してるつもりはない。人を殺してると思っていないのに殺人鬼とは笑っちまうが、実際そうなんだから仕方がない。殺人という行為は一般論で語るととても罪深いとされる。と、 俺はそれを分かってる。身にしみて理解している。しみすぎて刑事から瞬時に逃げ出すほどに理解している。牢屋にぶち込まれるどころか、死罪にもなる重い罪だと理解している。理解はしたが納得は出来ないという言葉があるだろう。俺の場合、理解も納得もしたが、それだけだ。其処から先はなにもないーーだって俺は殺人をしている自覚がないんだから。首元にナイフをブッ刺して肉を突き破る感触を聴きたいわけでも、横に引いて頸動脈を裂きたい感触を味わいたいわけでも、シャワーみたく溢れ出る血をあびたいわけでも唖然とするまでも、死んでいく人間の顔が見たいわけでも、二重人格者でも快楽殺人者でも人の性に絶望したわけでもない。愛してるから殺す。憎悪しているから殺す。涙が出るほど辛いから殺す。あるいは愛してないから殺す。あるいは憎悪していないから殺す。あるいは涙が出るほど辛くないから殺す。だから人殺しはどんな気分かと聞かれたら、快楽でも憤怒でも嫉妬でも悲泣でもない、何でもなく、何でもなく、何でもないことと俺は答えるしかない」

「ーーーーーーーー」

人識のその言葉に。
両儀式は全てを理解した。
零崎人識にとって殺人とは零(ゼロ)なのだと納得がいった。
渦巻いていたモノが氷解していくのを感じた。
あれが好きだこれは嫌いだあいつは嫌な奴だこいつはいい奴だそれはどうでもいい。
善とか悪とか喜びとか悲しみとか辛いとか苦しいとか愛しいとか憧憬とか絶望とか勇気とか後悔とか軽蔑とか快楽とか恨みとか不満とか嫉妬とか絶望とか責任とか空虚とか。
意味がない、意味を持たない。理由がない、理由を持てない、虚しさがない、虚しさも湧かない、殺すは普通、殺さないは異常、お前が異常で、俺は平常。
黒桐幹也でも黒桐鮮花でも蒼崎橙子でも臙条巴でも硯木秋隆でも巫条霧絵でも浅上藤乃でも荒耶宗蓮でも玄霧皐月でも祖父でも両儀要でも両義識でも、今まで出会ってきた者とはタイプが違う、器が違う、中身が違う、人間ではない鬼ーー人間失格。

「……物騒な話」

誰にも聞こえないような声で、式はぼやく。
誰にも聞こえないような声で、式はぼやく。
なるほど、これは予想以上だ。予想外だと思っていたが予想以上に予想以上だ。
こんな頭逝かれてる顔面入れ墨が野放しとはいつ何処で殺人が起こってもおかしくはない。いや、殺人鬼だからもう手遅れなのだが。

「で、一体アンタはなんだ。その眼はなんだ。見られてるだけでなんつーかよこう腹ん中のもん全部晒してる気分が味わえちゃうんだわ。それはまるで死を視られているようなーーっつー素敵な詩を言っちゃうほどでさ。こんな不安定にビリビリときている人識くんは滅多にお眼にかかれないレア物だぜ」
「最初に言っただろ。サーヴァント、アサシン、だそうだ」
「アサシン……暗殺者ってくノ一ぐらいしか思いつかねぇんだけどよ、メラとかファイヤとか撃てんのか」
「知らない。だいたいオレの過去に暗殺者って言葉すら出てこなかったぞ」
「暗殺者でもないのにアサシンねぇ。それじゃ、弓を使わないアーチャーもいるかもしれないのか」
「いたとしたら、そんな異物を呼んだガラクタは鎔鉱炉行きだな」
「欠陥製品」
「うん?」
「wikipediaでよ、欠陥製品ってのは不備のある品、不良品と書かれてるんだけどさ、それを人に当てた場合、欠落している人、欠点のある人と言われるらしいんだが……じゃあガラクタとの違いは何か。使い道のない個として完全に終わったものーー欠落しかないものをガラクタ、欠点のあるものが欠陥製品なんだ。両者の違いは似ているようで根本から異なる。多少壊れていようが確かに其処に有るものと無いものを比べられない、同じ立ち位置にいないーーつまり聖杯ってやつはガラクタではなくて欠陥製品と言ったほうが正しい。もちろん、その機能が正しくあればの話だが」
「どうでもいいよそんなことは。願いの真偽なんてどうでもいい。オレは殺せればいい」
「姿どころか存在も確認出来ない相手をか? まぁ、あんたならーーその眼ならやれそうだとは思うが、真実殺す対象が物理的に離れていちゃどうしようもなく手詰まりだな」
「…………」
「そんな威嚇する猫みたいな顔をするなよ。幸いというべきか不幸というべきか、今は戦中で存在が確認出来る『敵』がいる。ルール通り、其奴らを倒していけば最後に出会えるかもしれねーぜ、ラスボスは最後の最後に現れるって言うだろ。俺はとある最強との約束があって人間は殺せないがーー禁止されたのは『殺人』であって人間じゃないなら殺せる。でも、俺じゃあんたらは殺せない。サーヴァントは奇跡のような存在なんだろう。幽霊みたいなものだ、であるならそれは人間ではなく殺しても『殺人』にはならないーーかはは。さて、あんたはどうする」
「決まっている」

ーー例え、境界の外に有ろうとも逃しはしない。引き摺り下ろして殺すだけだ。

話は終わりだと、式は止めていた足を前に進めた。
後ろに続くのは、殺人鬼が一人。

「それじゃあ、いっちょう気合を入れて、殺して解して並べて揃えて晒しに行くか」





【クラス】アサシン
【真名】両儀式
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:A 魔力:E 幸運:A 宝具:EX

【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
ランクが低いのは、本来彼女にアサシンの適正はないためである。
そもそもアサシンの適正にこのスキルが必要であるのだが……。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】
直死の魔眼:A
魔眼と呼称される異能の中でも最上級のもの。
異能の中の異能、希少品の中の希少品。
無機・有機問わず、"活きている"ものの死の要因を読み取り、干渉可能な現象として視認する。

直死の魔眼から視た世界は"死の線"で満ちた終末の風景であり、まっとうな精神構造ではこれと向き合っての日常生活は難しい。
式は普段、焦点をズラして物事を俯瞰する事でこの異様な視界と折り合いをつけている。

自己暗示:B
日本刀で戦う場合、通常の肉体を文字通り「造り変えて」、限定的ながらも未来予知などの潜在能力が扱えるようになるため、平常時とは段違いの戦闘力を発揮する。

心眼 (偽):A
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

【宝具】
唯識・直死の魔眼(ゆいしきちょくしのまがん)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1
直死の魔眼を最大限に見開き、対象の"死の線"を切断する攻撃。
何億という寿命、停止状態から蘇生する回復力、何百という命のストックを持っていようが、"その個体における死の概念"を露わにする為、それらの不死身性を無視して致命傷を与える。

死に難い命はあれ、死から逃れられる命はなく。
ーーー終わりは、万物に共通する。

基本的に直死の魔眼と能力は同一で、対象の死の線を切断するだけである。
故に、消費する魔力は存在しない。
以上のことから、ランクはEX (規格外)となっている。

【人物背景】
二年間の昏睡から目覚めた少女。直死の魔眼という力を持つ。
多重人格者で、女性人格の「式」と男性人格の「識」が存在していたが、事故により「識」の人格は消えた。
極度の人間嫌い。対人感情は動物的で、好き嫌いに関係なく、まず一緒にいていい人間と一緒にいたくない人間とに分ける。
そして、一緒にいていい人間なら嫌いだろうと付き合っていくらしい。

空の境界・五章。忘却録音終了後より参戦。

【方針】
主催者がいるなら殺す。
敵が襲って来るなら応戦する。


【マスター】
零崎人識@戯言シリーズ

【マスターとしての願い】
特にはない。

【人物背景】
殺し名序列第三位の殺人鬼集団・零崎一賊の一人。
放浪癖のある殺人鬼。哀川潤との約束で人は殺さない。
『東京都』で与えられた役割は、14~15歳から家を出たっきり当てもなく各地を旅している放浪者 (ニート)。
住居は親切な人に止めてもらい、お金は親切な人に譲ってもらったとか何とか。

クビシメロマンチスト終了後より参戦。

【weapon】
ナイフ。

【方針】
特にはない



候補作投下順



最終更新:2016年03月12日 21:58