男は、満身創痍だった。
全身にはスリケンが刺さり、身体の至る所から血を流していた。
周囲を素早く駆け回る『二頭のドラゴン』―――二人のニンジャは、男を確実に追い詰めていた。
男は状況を打開すべく、冷静沈着に頭を回転させる。
しかし、答えは見出せない。
勝機を掴む為の行動が、解らない。
「■■■■!起きてくれ!俺に支援を!」
無様な叫び声が、虚しく木霊する。
男は『相棒』に助けを求めたのだ。
しかし、その相棒が彼の言葉に応えることは無い。
男は任務遂行の為に自ら相棒を切り捨てたのだから。
「■■■■ィィィィィッ!!!」
―――――そう、因果応報/インガオホーだ。
絶望と焦燥の入り混じった絶叫が轟いた。
最早、これまでなのか。
あの御方に使える精鋭である俺が、此処で終わるのか。
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
瞬間。
二頭のドラゴンが、跳躍する。
男の左右から同時に跳び蹴りを繰り出したのだ。
蹴りが向かう先は――――男の首だ。
死のビジョンが、目の前より迫り来る。
終幕が、命を刈り取りにやってくる。
そして。
二つの蹴りが、男の首に突き刺さった。
◆◆◆◆
あの橋の下には巨人が住んでいる。
そんな噂を流されたこともあったか。
都内某市、日没直後の河原にて。
国道を結ぶ大きな橋の下に、「みすぼらしい敷地」が存在していた。
その住居はブルーシートと段ボールによって即席で作られたものだ。
家と呼ぶには余りにも頼りなく、人を守る砦としては余りにも弱々しい。
貧弱な藁の家のような住居は、人が住む場所としては呆れる程にちっぽけだった。
しかし、『男』にとって此処だけが唯一帰ることの出来る場所だった。
彼は真っ当な住居を持たぬホームレスなのだから。
ザッ、ザッと河原の雑草を踏み頻る音が響く。
2m50cmはあろうかという巨体を揺らしながら、男は橋の下の住居へと帰還する。
その手に握られているのは、袋詰めにされ捨てられた生活用品や食料などだ。
日課であるゴミ漁りを終え、彼は住居へと戻ってきたのだ。
ビニールシートの上へゆっくりと腰掛け、胡座を掻きながら腐りかけの食料を口に運ぶ。
率直に言って、美味いとは言い難い。
生ゴミとして捨てられていた物なのだから当然だろう。
それでも彼にとって、この食料は己の腹を満たす為の貴重な物資だった。
多少腐っている程度では最早身じろぎすらしない。
このような食事も長らく経験したことで既に『慣れてしまった』のだから。
食事をしながら、彼は段ボールの壁に穴を開けて作った小さな『窓』から外の様子を見渡す。
住居の周囲に人の姿は見受けられない。
近頃はホームレス同士の縄張り争いや不良少年によるホームレス狩りが少なからず発生しているらしい。
故に彼もこうして一応の警戒を行っている。
とはいえ彼はこれまで他のホームレスと揉めたことは無いし、不良に襲われたことも全くと言っていい程無い。
恐らくその異常な巨躯に恐れを抱き、本能的に敵対を避けているのだろう。
何はともあれ、面倒事を避けられるのは有り難いことだ。
―――――何故、自分はこれほどまでの巨躯を持つのだろうか。
ずきり、と脳髄に奇妙な痺れを感じる。
何てことの無い、ふと思った疑問に過ぎなかった。
だというのに、それを考えた瞬間奇妙な感覚に襲われたのだ。
まるで何か忘れた物事を思い出せずに居る様な。
重要な事実を忘却したまま、安穏としている様な。
そんな焦燥にも似た不安が胸の内に込み上げてきた。
(何を考えているのだ、俺は)
男は思考を断ち切り、食事に集中することにする。
自分の体格の大きさなど、どうでもいい。
自身の生来の成長が異常なだけだろう。
何らかの異常な症状なのかもしれないが、自分の身体に不調は感じられない。
兎に角、何だっていい。自分が巨躯だから、何だと言うのだ。
気が付いた時には、この体格だった。
――――――いつから俺はこんなことをしている。
再び、奇妙な感覚。
脳の回路が火花を上げている様な、異様な電流。
彼はホームレスだ。
この河原で長らく生活を送っている。
道端で回収した段ボールとブルーシートで橋の下に住居を作り、定住している。
一切の収入は無く、ゴミ漁りで日々の命を繋いでいる。
――――――何故俺は、ゴミのような生活を送っている?
思えば、自分は何も知らない。
何故このような底辺の生活を送っているのか、『思い出せない』。
自分がどのような家に生まれ、育ったのか。
自分が何故ここまで堕ちたのか。
自分が何故ここに辿り着いたのか。
何から何まで、思い出すことが出来ない。
記憶を漁ろうとしても、霧が掛かったかの様に何も見ることが出来ない。
過去を持たず、こうしてゴミを漁るだけの生活を送る浮浪者。
まるで、『ホームレス』という役割をこなす為の人形だ。
言うなれば、ただの歩く死人の様なもの。
―――――死人。
―――――そうだ。
―――――俺は。
「……!」
何だ、今の感覚は。
ぞくりと身の毛がよだつ様な悪寒が、全身を駆け巡ったのだ。
死人と言う言葉に、異様な感情を抱いたのだ。
まるで自分が、本当に死人であることを自覚しているかのような感覚。
比喩ではなく、文字通り。
自分は、『死んでいるはず』ではないのか。
そんな思いが男の脳内を駆け巡っていた。
理由の解らない感覚に苛まれていた中。
男は唐突に、足音を耳にする。
河原の雑草を踏み頻る音が聞こえてきたのだ。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッと、音は次第にこちらへと近付いてきている。
まさか、この住居へと向かってきているのか。
窓から外を覗いて見ると、奇妙な青年が河原を歩いていた。
この住居を目指し、進んでいた。
ゆっくりと、少しずつ、青年は住居へと歩み寄っている。
同じホームレスにしては身なりが小綺麗すぎる。
不良の雰囲気ともまた違う。
一体何者なのか、何の用なのか。
食事を終えた男は警戒心で身を固めつつ、住居の外へと出る。
「…おいおい、大したデカブツだな」
住居から出た大男を見て、青年は呆れた様に呟く。
その装いは、奇妙なものだった。
まるで西洋の戦士か何かの様な時代錯誤な服装を身に纏っていたのだ。
そんな青年の姿に、男はますます警戒心を強める。
「何の用だ。言っておくが、乞食なら渡すものは―――――――」
そう言いかけた瞬間。
青年の姿が瞬時に消え。
そして、男の身体が吹き飛んだ。
男は河原を転がり、ごふっと血を吐き出す。
男は混乱をしながら、何とか冷静に思考を纏めようとする。
一体何が起こったのだ。
何故俺は吹き飛んでいる。
何が、どうなっている。
「悪ィな、デカブツ。俺さ、ちっとばかし『魔力』が足りねえんだ」
吹き飛んだ理由が青年の蹴りによるものだと気付いたのは、十数秒後のことだった。
青年は消えたのではない。
余りにも素早い動きで攻撃を仕掛けてきたのだ。
男は地に踞り、血を吐きながら何とか青年を見上げる。
青年はその右手に『剣』を顕現させ、ゆっくりと男に近付いていく。
「お前らみたいなホームレスなら餌として丁度いいんだよ。
いなくなった所で誰も気にしないからな。
ま、そういう訳なんで――――――大人しく魂喰いされろよ」
そう言って、青年剣士は嗜虐的な笑みを浮かべ。
そして、勢いよく剣を振り下ろした。
何の躊躇も無く命を刈り取る、無慈悲な死神の鎌が迫る。
―――――魔力?魂喰い?
―――――こいつは何を言っている。
―――――俺は此処で殺されるのか?
―――――嫌だ。俺はまだ。
―――――死ねないのだ。
直後、男は目を見開いた。
迫り来る刃の動きを、彼は『捉えていた』。
先程蹴りを叩き込まれた時とは違う。
百戦錬磨の戦士の如く、敵の動きを見切っていた。
男は瞬時に地面を転がり、振り下ろされた剣を回避する。
躱した後に即座に立ち上がり、体勢を整えて青年剣士を見据えた。
「…何?」
剣士は眉を顰め、男を見る。
こいつ――――人間の癖に『躱した』のか?
心中で僅かに驚愕しつつも、剣士は苛立った様に舌打ちをする。
―――――俺が、躱した?
―――――あの剣を?
男もまた、自らの行動に驚愕していた。
あのような反射神経を自分は備えていたのか。
否、まるで『訓練や実戦で培った』かのような動きを自分はしていた。
何故だ。自分は何故あんな動きを―――――
「チッ、ちょこまかと逃げてんじゃねえよッ!!!」
直後に声を荒らげながら、剣士が勢いよく地を蹴る。
瞬間――――電光石火の速度で、剣士は男へと接近。
一瞬で距離を詰めてきた剣士に男は対処出来ず。
「グ、ワ……ッ!!?」
鮮血が、吹き出る。
剣士が斜め上に切り上げ、男の胴体前面に鋭い裂傷を負わせたのだ。
男は堪らず仰向けに転倒し、のたうち回る。
「調子に乗るんじゃねえよ、デカブツ」
悶え苦しむ男の頭を、剣士の足が踏みつけた。
その表情に浮かぶのは憤り。
ただの常人に僅かでも手子摺らされたという屈辱。
足の力を強め、剣士は男を何度も踏み躙る。
「NPCは大人しく『サーヴァント』の餌になってればいいんだよ」
そう言って剣士は踏み躙る男を見下ろす。
男は抵抗を試みるも、剣士の外見以上の力によって一切抵抗することが出来ない。
――――何故だ。
――――何故、こんなことになった。
男はギリリと歯軋りをし、剣士を見上げた。
余りにも理不尽な暴力の前に、自分は蹂躙されている。
この剣士は、強すぎる。
紛れもない強者だ。
男はそう直感する。
決して逆らえぬ相手なのだと、魂が理解する。
今の自分は、間違い無く弱者だった。
強者には弱者を踏み躙る権利がある。
弱者は強者によって何もかも奪われる。
この世を支配するのは強者であり、弱い者は何もなし得ることは出来ないのだから。
それが社会の摂理なのだ。
『ムッハハハハハ!ムハハハハハハ!』
――――何だ?
――――何か、懐かしい感覚がする。
『強者』と『弱者』。
それについて思考をした直後、男の脳裏に奇妙な笑い声が轟いた。
余りにも豪快で、そして力強い。
酷く懐かしい様にさえ思えるそんな哄笑が、突然脳内で響いたのだ。
「さっさと、死ね―――――」
男の思考など知らず、剣士は己の剣を再び構えた。
男の首を跳ね飛ばすべく、剣を振り下ろさんとしたのだ。
この一撃で、自分は死ぬのだろう。
首を跳ねられ、一瞬で命を散らすことになるだろう。
首を跳ねられ。
首を―――――――。
『イヤーッ!』
『イヤーッ!』
脳裏に過る、二頭のドラゴン。
否――――二人のニンジャ。
自身の首を跳ね飛ばすべく迫る、敵達だ。
ハッとしたように男は目を見開く。
何かを思い出したかの様に、彼は愕然とする。
―――――俺は、何をしているのだ。
―――――今まで一体、どれだけ時間を無駄にしてきたのだ。
―――――『シックスゲイツ』である俺が、こんなブザマな時を過ごしてきたのか!
―――――情けない。みっともない。何と惨めな姿だ。
男は恥じた。
己の無知を。己の無様な姿を。己の愚鈍さを!
何故今まで、思い出すことが出来なかったのか。
死の間際になって己が何者なのかをようやく思い出してしまった。
自分はどうしてこんな姿になっている。
何故のうのうとゴミのような生活を送っている。
これではまるで弱者―――ブザマなモータルではないか。
意識が現実へと戻る。
振り下ろされた剣の刃が、スローモーションに見える。
敵は己を殺すべく、剣を振り下ろしている。
この様な場所で、死ぬのか。
そんなこと、認めるものか。
俺はまだ死ねない。
ラオモト=サンに尽くせぬまま死ぬことなど、あってはならない。
そうだ。こんな所では、死ねない。
―――――此処で惨たらしく、死んでたまるものか!
「ウオオオオオーッ!!!」
男の――――ニンジャの咆哮が轟く。
その時だった。
何処からともなく、幾つもの矢が飛来したのだ。
矢はニンジャを殺さんとする剣士へと突き刺さり、彼を怯ませた。
「ぐあ………ッ!!?」
腕や足に矢が突き刺さり、剣士は剣を落として体勢を崩す。
その隙を、ニンジャは決して見逃さない。
「イヤーッ!」
仰向けに倒れるニンジャの放った蹴りが剣士を吹き飛ばした。
怯んだことで隙を晒していた剣士に躱すことは適わず。
そのまま剣士は吹き飛び、橋の柱へと衝突した。
「敵はセイバーのサーヴァント…といった所かしら。
どうやら間に合った様ね、『マスター』」
ニンジャは声が聞こえた土手の方へと視線を向ける。
そこにいたのは、小柄な体格の女だった。
否、小柄などというレベルではない。
ニンジャの巨躯とは対照的に、小人とさえ称せる程に小さな体格だったのだ。
しかしその両手には二丁のクロスボウが握られている。
その瞳には確かな戦意が宿っている。
ニンジャはその時直感した。この女はただの幼子ではない。
あの剣士目掛けて矢を放った、確かな『戦士』なのだと。
「くそッ、お前、マスターだったのかよ…折角魔力の足しに――――――」
傷を抑えながら、セイバーはよろよろと立ち上がろうとする。
直後、間髪入れず彼の両足を矢が再び貫いた。
絶叫を上げるセイバー。
更なる追撃の矢が、腕を、胴体を射抜いていく。
最早蜂の巣とも言える状態になり、セイバーは悶え苦しむ。
「無駄口を叩く暇があったら、攻撃への対処を考えておくことね」
女弓兵は冷徹に言い放ち、二丁のクロスボウを構えた。
矢による正確な射撃によってセイバーの動きを封じているのだ。
ニンジャは驚嘆した。
不意を突かれたとは言え、あの常人離れした剣士が圧倒されているのだから。
決して剣が届く範囲には近付かず、不意打ちを起点とする遠距離からの攻撃――――。
女が相応に実戦慣れしていることは見て取れた。
「この、クソ、がああああああああああアーーーーーーーーッ!!!!!!」
身体中を矢で射抜かれたセイバーが、吼える。
怒りに悶え狂い、剣を拾い、苦痛を抑えながら獣の如く駆け出した。
目指すは―――――巨躯のニンジャ。
セイバーはマスターを狙いに行ったのだ!
女弓兵はすぐに駆けるセイバーへと照準を定めた。
その時、彼女は気付く。
セイバーが迫り来る中で、マスターはただその場で立ち尽くしていることに。
マスターが拳を構え、セイバーを真っ直ぐに見据えていることに。
マスター――――ニンジャの男は、セイバーを待ち受けていた。
既に彼は己の力の引き出し方を理解していた。
己は、ニンジャなのだ。
矮小なるモータルとは一線を画す、超人なのだ。
ならば何をするべきなのか。
答えは、一つだ。
―――――カラテだ!
―――――カラテあるみのだ!
「イイイイヤアアアアアーーーーーッ!!!!!」
ビッグニンジャ・クランの怪力を活かした拳の一撃!
ビッグ・カラテが、迫り来るセイバー目掛けて放たれたのだ!
驚愕の表情を浮かべながらも、セイバーは剣を振り下ろす。
だが、その動きが一瞬だけ止まった。
女弓兵が援護射撃として放った矢がセイバーの足を再び射抜いたのだ。
そして―――――目の前のニンジャの気迫に、怯んでしまった。
直後、セイバーの頭部にビッグ・カラテが叩き込まれた。
ニンジャとは人類を陰から支配する半神的存在。
そのソウルが憑依した者の拳に、神秘が宿らぬ筈が無い。
故に――――――セイバーの身体は、凄まじい勢いで吹き飛ぶ。
異常な怪力によって頭部を破壊されたセイバーは、そのまま肉体が粒子と化して霧散したのだ。
◇
「理解して貰えたかしら、マスター」
ニンジャ――――『アースクエイク』は、橋の下に座っていた。
傍に立つのは先程アースクエイクを援護した小人の女弓兵。
彼女はアースクエイクに対しアーチャーと名乗った。
アースクエイクはアーチャーから全ての事情を聞いた。
この世界は『聖杯戦争』の会場であるということを。
聖杯戦争がたった一つの奇跡の願望器を巡って争う戦いであるということを。
アースクエイクはその参加者であるマスターとして選ばれたことを。
マスターは先程のセイバーのような『サーヴァント』と呼ばれる使い魔を使役しているということを。
「フン、まるで御伽話だな」
「そう思うでしょうね。でも、奇跡の願望器は実在する」
アースクエイクの言葉に対し、アーチャーはそう断言した。
「それを得られるのは、この戦いに勝ち残った勝者のみ。
どんな望みでも、その杯があれば叶うでしょうね」
続けてそう告げたアーチャーの言葉を耳にし、アースクエイクは思考する。
自分は――――死んだ筈の存在だ。
何故こうして生きているのかは解らない。
だが、確かなことは一つ。
あの時自分はドラゴン・ドージョーのニンジャに負けたということだ。
目的の為に『相棒』のヒュージシュリケンを見捨て、そのことが仇となった。
結局のところ、自分が判断を見誤ったことで負けたのだ。
精鋭の名が聞いて呆れると心中で自嘲する。
アノヨで相棒に恨まれていたとしても、仕方が無いことだろう。
自分はヒュージを裏切り、その上で失敗したのだから。
(俺は死人だ。聖杯に求める願いなど、ありはしない)
アースクエイクは死人だ。
ドラゴン・ドージョーで死んだ負け犬だ。
今更奇跡の願望器など突き出された所で、何を願うと言うのか。
恐らくラオモト=サンは失敗者である俺を赦さないだろう。
むざむざ蘇った所で、シックスゲイツの座から落とされるのは確実だ。
ならばこの命を捨てるのか。
聖杯戦争を諦め、ゆるりと死を受け入れるのか。
(…否、俺は止まるつもりはない)
そう、自分はこうして生きている。
その命を無意味に捨てる程、自分は愚かではない。
死んだ筈の命を手にし、己は何をする。
答えは明白だ。
「俺は、主君に…ラオモト=サンに聖杯を献上する。
奇跡の願望器はあの御方にこそ相応しいモノだ。
その為に俺はイクサをする。
ソウカイ・シックスゲイツのアースクエイクとして、俺は戦う」
アースクエイクはそう宣言した。
彼は主の為に聖杯を手にすることを決意したのだ。
任務失敗の汚名を注ぐ為か。
―――――否。
実績を上げることで主君に気に入られる為か。
―――――否。
そんな俗な理由ではない。
彼が主君の為に聖杯を求める理由は簡単だ。
ラオモト・カンこそが聖杯を手にするに相応しい男だから。
ただそれだけの理由であり、それこそが真理なのだ。
シックスゲイツの一角たる男は、主君への忠義を貫くのだ。
「その為に力を貸せ、アーチャー」
故にアースクエイクは、己の従者にそう言う。
共に目的を達成する為の『相棒』として向き合う。
任務に失敗したことで満たせなかった忠義を、今度こそ貫き通す為に。
◇
彼女が召還に応じたのは、単なる気まぐれの様なものだった。
傭兵としての血が無意識の内に再び騒いだのかもしれない。
気が付けば彼女は導かれる様に、この大男のサーヴァントとして召還されたのだ。
男は主君であるラオモト・カンという人物の為に聖杯を手にすると言った。
自らの欲望よりも忠義を優先したのだ。
(私が、こんな男に召還されるとはね)
自分とは違ったタイプの人間だ、とアーチャーは思う。
彼女は報酬によって動く傭兵に過ぎない。
他者への忠義と言うものは無いし、あくまで金銭によって従うのみ。
所謂ビジネスライクで動く存在なのだ。
心酔、忠誠心と言ったものとは程遠い人種だ。
―――――ミラさん、ありがとうございます!
ふと脳裏を過ったのは、空の様な髪色をした少女。
かつての旅を共にしてきた取引相手の一人。
そして、傭兵らしからぬ奇妙なお節介を焼いてしまった数少ない相手だった。
(他者への情感、か…)
彼女にとって『忠誠』というものは、縁の薄い感情だった。
祖国で軍に所属していた時期はあったものの、生涯の大半は傭兵としての生活だった。
軍で親しい間柄と呼べた存在も、唯一の『相棒』と言える古馴染みのみだ。
絆や結束と言うものに馴染めず、彼女は軍を退役した。
損得勘定やビジネスライクで動く傭兵としてのスタイルこそが、己らしい生き方だと思っていた。
だが、思えばあの少女――――ルリアに抱いていた想いは、ある種の情だったのではないか。
屈託のない天真爛漫な笑顔を見せる少女に対する、情感だったのではないか。
忠誠心というものを彼女は実感できない。
しかし、他者への想いというものは解らなくもなかった。
自分がルリアに情を感じていた様に、この男もラオモト・カンという男にある種の情を抱いている。
利害関係という壁を乗り越えた、特別な感情というべきものだ。
アーチャーはアースクエイクに微かな興味を抱いていた。
この無骨な男が一種の情を抱く姿が、自分と重なったのかもしれない。
それ故に彼女は、男の問いかけに真っ直ぐに答える。
「…ああ。この傭兵が、力を貸そう」
アーチャーのサーヴァント―――ミラオルは、静かにそう答えた。
彼女は傭兵として、一人の『相棒』として、アースクエイクに力を貸すことを約束した。
【クラス】
アーチャー
【真名】
ミラオル@グランブルーファンタジー
【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷B 魔力D 幸運B 宝具D
【属性】
中立・善
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
単独行動:A
マスター不在・魔力供給無しでも長時間自立できる能力。
Aランクの場合マスター無しでも一週間の現界が可能。
【保有スキル】
遊撃兵:B
本隊から離れて行動し、奇襲やサポートに徹して戦う遊撃兵としての能力。
単独行動スキル発揮中、飛び道具の命中率に有利な補正が掛かる他、Cランク相当の気配遮断スキルを獲得する。
なお攻撃時にも気配遮断のランクはそれほど低下しない。
千里眼:C
視力の良さ。
遠方の標的の捕捉、動体視力の向上によって射撃・偵察に有利な補正が掛かる。
破壊工作:B+
相手の戦力を削ぎ落とす才能。
遊撃を駆使することで進軍前の敵軍に大きな損害を与えることが可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど英雄としての霊格が低下する。
戦闘阻害:B
特殊な矢を命中させることで一定時間相手の筋力値・耐久値を1ランクダウンさせる。
効果時間はスキルのランクによる。このスキルによるデバフは状態異常として扱われる。
追撃:B
追い詰めた敵を確実に仕留める技能。
負傷者、または状態異常に陥った者に与えるダメージ量が増加する。
【宝具】
「双璧の穹撃(デュオ・アロウ)」
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:2
両手にそれぞれ携えられた一対のクロスボウ。
ミラオルの手で改造が施されており、片手での速射が可能な仕様になっている。
射撃や装填が非常に素早く、特に多勢に対する遊撃において強さを発揮する。
【Weapon】
宝具「双璧の穹撃」
【人物背景】
小人のような体格を持つハーヴィン族の女傭兵。
その体格と機動力を活かした遊撃を得意とする。
冷静沈着で馴れ合いを好まず、合理的な思考で動く。
しかし不器用ながら仲間に対する思いやりを持ち、素直になれない一面も併せ持つ。
祖国の軍に所属していた経験があり、同じ部隊のザーリリャオーとは相棒とも言える関係だった。
【サーヴァントとしての願い】
傭兵としてマスターの依頼を遂行する。
【方針】
偵察による情報収集と敵の捜索。
戦闘時は中遠距離での射撃戦、あるいはマスターの援護に徹する。
【マスター】
アースクエイク@ニンジャスレイヤー
【マスターとしての願い】
ラオモト・カンに聖杯を捧げる。
【weapon】
己のカラテ
【能力・技能】
「ニンジャ」
平安時代をカラテで支配した半神的存在・ニンジャの力を得た者。
ニンジャとなったものは超人的な身体能力と生命力を獲得する。
アースクエイクはビッグニンジャ・クランのニンジャソウル憑依者である。
ソウルの影響で2m50cmもの異常巨体と化しており、パワーとタフネスを活かした体術を得意とする。
またニンジャソウル自体が神秘を帯びている為、アースクエイクの体術はサーヴァントを傷付けることが可能。
【人物背景】
ネオサイタマの邪悪ニンジャ組織「ソウカイヤ」に所属するニンジャ。
その中でも実動部隊である「シックスゲイツ」の上位に存在する六人の精鋭の一人。
2m50cmの巨体を持つ筋骨隆々の大男であり、その巨体から繰り出される怪力を武器とする。
外見とは裏腹に冷静沈着かつ知能派であり、司令塔としても非凡な能力を備えている。
同じくシックスゲイツの精鋭であるヒュージシュリケンとは相棒関係にある。
【方針】
シックスゲイツの名にかけて、あらゆる手段を使ってでも勝つ。
会場内でのロールはホームレス。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 12:38