その夜、ロナルドは近所のコンビニで買ってきた夜食をほおばりながらパソコンに向かっていた。
彼の職業は小説家だ。吸血鬼を題材にした小説で、かなりのヒットを飛ばしている。
現在、彼は新作の執筆に取りかかっていた。だが、その進行具合は思わしくない。
締め切りに間に合わなければ、担当編集のフクマさんに何をされるかわからないにもかかわらず、だ。
ここのところ、ロナルドは妙な違和感にさいなまれていた。それが集中力をそぎ、原稿の進行を妨げているのだ。
まず、自分の家はこんなにも静かだったか?
小説家の家が静かなのは、理にかなっている。
だが、今まではこうではなかった気がするのだ。
誰かやかましくてうっとうしい、同居人がいたような……。
気になることはまだある。
部屋の片隅に資料として置かれているモデルガン、あれは本当に自分が買ったのか?
自分の書いている小説の主人公は、銃を使う。たしかに、資料があるに越したことはないだろう。
だが別に、自分の小説はミリタリー小説ではない。銃はあくまで、小道具の一つに過ぎないのだ。
資料として買うなら、もっと優先すべきものがあるのではないだろうか。
それにあのモデルガンは、持ってみるとけっこうな重量があった。
あれは、本物ではないのか?
そもそも、なんで自分は東京に住んでるんだ?
「そうだよ! 俺の住所って新横浜じゃねえか!」
それが、ロナルドが記憶を取り戻した瞬間であった。
◇ ◇ ◇
「……というわけだ」
「なるほどな……」
一時間後。ロナルドは自宅に召喚されたサーヴァントから、聖杯戦争に関する知識をあらかた教えられていた。
やけに時間がかかったのは、突如現れたサーヴァントをロナルドが不審者扱いし、なかなか話を聞かなかったからである。
彼のもとに召喚されたサーヴァントのクラスは、キャスターであった。
とはいっても、タンクトップに普通のズボンという彼の出で立ちは魔術師のイメージとはほど遠いものであった。
顔立ちは端正だが、それを踏まえてもそこら辺の雑踏に混じっていてまったく違和感がないような風貌だ。
しかし、吸血鬼ハンターであるロナルドは肌で感じていた。
目の前の男は、化け物であると。
「さて、知識を取得してもらったところで聞こう。我がマスター、ロナルドよ。
聖杯に託す望みはあるか?」
「まあ俺もごく普通の人間だから、叶えたい願いくらいはあるさ。だが……」
キャスターからの問いかけに対し、ロナルドは一度言葉を切る。
そして大きく息を吸い、感情を込めてその続きを口にした。
「頼んでもいないのに、世界の壁越えてまで拉致してくるその根性が気に入らんわ!
この聖杯戦争とかいうのを始めたやつは、絶対ぶん殴る! 願い叶えるとか二の次だ、この野郎!」
叫びながら、ロナルドはデスクに拳を振り下ろす。元来激情家である彼は、理不尽に巻き込まれた状況に怒りを抑えられなかったのだ。
「というか、なんで異世界にきてまでフクマさんに怯えなきゃならんのだ!」
「ああ、そっちがメインか」
こぼれ出た本音に、キャスターの表情がたまらず崩れる。
「まあ戦う理由がなんであれ、マスターに従うのがサーヴァントとしての本分だ。
このキャスター、お前のために全力で戦うことを誓おう」
「ああ、頼むぜ!」
キャスターの口が紡ぐ忠誠の言葉に、ロナルドは親指を立てて応えた。
「ところでお前、キャスターってクラスの名前だよな? 本名はなんていうんだ?」
「ふむ、名前か。私は時期によっていろんな名前を使っていたのだが……。
座に登録された名前は、鈴木だ」
「え……?」
「いや、鈴木」
「お前、ふざけんなよ! 英霊なんてたいそうな肩書き持つやつの名前が鈴木って!
普通すぎるだろうが!」
「いいではないか、鈴木! 獅子河原とか熊ヶ崎とかいかにも強そうな名前より、平凡な名前の方がむしろインパクトあるだろ!」
「俺には共感できんわ!」
二人のしょうもない言い争いは、30分後にフクマさんから進歩確認の電話がかかってくるまで続いたのであった。
【クラス】キャスター
【真名】鈴木
【出典】幽遊白書
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】筋力:C 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
陣地作成:E
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
キャスターは生前そういった逸話を持たないため、せいぜい部屋を自分好みに改造できる程度。
道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成可能。
「アイテム作りに関しては天才的」と称されたキャスターは、かなり強力な武具を作ることができる。
【保有スキル】
妖怪:B
魔界より来訪した、人ならざる生物。
個体によって様々な固有能力を持つ。
キャスターは無数の能力を習得したと豪語しているが、広く浅くであるため実戦レベルで使えるものはわずかしかない。
変化:E
文字通り「変身」する。
キャスターの場合は「怨爺」と呼称される老人の姿にのみ変身可能。
変身中は若干ステータスが低下する代わりに、低ランクの正体隠蔽能力を得る。
自己暗示:E
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
キャスターの場合は「非常に自分の世界に入りやすい」という程度であり、効果はさほど高くない。
【宝具】
『裏御伽チーム』
ランク:C(B) 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
生前のキャスターが率いていたチームのメンバーを、使い魔として召喚する宝具。
一度倒されたメンバーは、聖杯戦争が終わるまで再召喚は不可能。
また闇アイテムを装備していない状態で召喚されるため、その力を活かすには道具作成スキルでそれぞれのアイテムを作り直さなければならない。
なお死々若丸だけはその能力の高さからBランク宝具扱いであり、召喚による魔力の消費も他のメンバーより大きい。
筋力:C 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:E
筋力:D 耐久:C 敏捷:E 魔力:D 幸運:E
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:D 幸運:E
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:C 幸運:C
【weapon】
基本的には素手で戦う。
【人物背景】
暗黒武術会に出場した「裏御伽チーム」の大将。
かつて戸愚呂弟と戦ったが手も足も出ず、あまりの無様さに見逃されるという屈辱的な敗北を喫している。
そのリベンジのため、チームメイトを集め大会に出場した。
仲間の長所を活かす「闇アイテム」を作り出す武具職人としての腕は一流だったが、
戦闘力は井の中の蛙であり幻海に体術だけで一方的に叩きのめされ敗退する。
後に修行を積んで神に近い存在とされるS級妖怪にまで成長するが、
その時期の逸話がほとんどないためサーヴァントとしての能力にはあまり反映されていない。
幻海との対戦時は凶悪な言動もあったが、単に調子に乗っていただけであり根っこの性格は実直な好青年である。
【サーヴァントとしての願い】
華麗な戦いでマスターを助ける。
【基本戦術、方針、運用法】
ステータス的にはあまりパッとしないため、道具作成スキルと宝具の使い方が鍵となる。
闇アイテムで強化したチームメイトを戦わせ、自分はサポートに回るのが堅実な策であろう。
特に切り札である死々若丸の使い方は、重要になってくる。
【マスター】ロナルド
【出典】吸血鬼すぐ死ぬ
【マスターとしての願い】
自分をこんな理不尽なイベントに巻き込んだやつをぶん殴る。
聖杯はもらえるようならもらう。
【weapon】
拳銃と対吸血鬼弾。
ただしこの世界では不法所持なので、警察に見つかると捕まる。
【能力・技能】
対吸血鬼用の戦闘術。
また自伝小説をヒットさせているので、かなりの文才があると思われる。
【人物背景】
新横浜に拠点を置く、吸血鬼ハンター。(彼の世界では吸血鬼の存在は常識であり、吸血鬼ハンターも特殊ではあるが世間に認知された職業である)
自伝小説「ロナルド戦記」がベストセラーとなっており、世間の知名度は高い。
感情的でカッとなりやすいが、評判が落ちるのを恐れて感情を抑え込む世間慣れした面もある。
またもともとサービス精神旺盛である上、普段褒められ慣れていないのでおだてに弱い。
好きなものは巨乳。嫌いなものはセロリ。
【方針】
情報収集を優先し、戦闘はなるべく避ける。
あと、NPCでもフクマさんは怖いので小説も書く。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 12:45