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◆ ◆ ◆ ◆


魔法少女。
少女はアニメや漫画で登場する、そういう存在だった。
ずっとずっと憧れていた。
魔法少女育成計画と言うアプリに手を出して、なってからは、生きがいと言ってもよかった。


でも、それは今の少女にとって絶望と諦観の象徴だった。
唐突に始まってしまった殺し合い。
出口の見えないデスゲーム。
殺し合い、着実に数を減らしていく仲間たち。

ラ・ピュセル。
ウィンタープリズン。
シスターナナ。
そして、ハードゴア・アリス。


逃げ場など、どこにも無かった。
助けてくれる者など、誰も居なかった。
少女は、ひとりぼっちだった。

そうしている内に絶望も、諦観も通り過ぎて、


訪れたのは、虚無。


情けなくて。
惨めで。
怖くて。
震えて。

でも、もう何もしたくなくて。
そんな自分が嫌だった。



――――だからこそ、彼女は呼ばれてしまったのかもしれない。


◆ ◆ ◆ ◆

N市ではない、東京新宿においても少女――スノーホワイトは魔法少女だった。
それが、スノーホワイト/姫河小雪に与えられたロール。

バカみたいに幸せだった。
何もかも忘れて、人助けをして感謝される日々。
それは、小雪にとって失ってしまったものであり、麻薬の様に甘美な日々だったのである。

けれど、麻薬が与えられる幸福感は期間限定だ。
醒める時は直ぐにやってくる。

最初は自分は一人で魔法少女をやっていたのだろうか?と言う疑問だった。
考えても、答えなど出るはずがない。
しかし、疑問は日に日に増えていく。

考えれば考えるほどこの東京にいる事の整合性が取れなかった。

そうして、降り立った路地裏で思い出す。
マジカルキャンディー争奪戦の事を。殺し合いに参加させられていた事を。
周りの建物が途端におぞましく感じた。
急に人々が、そっくり用意された肉人形に変わってしまったかのように見えた。

気付いてしまえば、もう止められない。
右手の甲に、熱い火傷の様な痛みが走り怒涛の様に、喪っていた記憶の奔流に苛まれる。

走った痛みは、強烈だった。
死んでしまいそうだった。怖くてたまらなかった。
でも、この痛みが自分を殺してくれるならそれもいいと思えた。


恥ずかしかった。許せなかった。
あれだけの事があったのに呑天気に魔法少女をやっていた自分が。
だから、終わらせよう―――

痛みに躯を任せ、そのまま鼠の餌にでもなろうと、薄汚い路地裏に五体を投げ出して。

「うぉっととと…でぇじょうぶか、ますたあ?」


誰かに、受け止められていた。
ぼんやりと、少し煩わしげに瞼を開ける。

自分を受け止めていたのは、自分より頭ひとつ分小さな少年だった。
ボサボサの頭に、天真爛漫と言う言葉を体現した貌。山吹色の胴着に入った亀のマークにお尻から生えた尻尾。

少年は自分をしっかりと支える。
チラリと視界の端に自分の右手と、奇妙な星の紋様が三つ映った。
痛みは、いつのまにか引いていた。


「君は……」
「ん?オラか?オラ悟空だ!」


眩しい程の明るさを湛えた笑みで、少年はそう言った。


◆ ◆ ◆ ◆


「っちゅう訳なんだ」

聖杯戦争の基本的な知識を伝え、そう少年は締めくくった。
ファヴとは違ってお世辞にも分り易いとは言いがたい、拙い説明だったが何とか理解できた。

曰く、聖杯戦争はサーヴァントと言う魔法少女の使い魔みたいな存在を使った殺し合いであると。
曰く、悟空という少年は七騎あるクラスランサーというクラスで来たのだと。

ここまで話を聞いて、小雪の顔は暗かった。
何のことは無い、殺し合いが終わったと思ったら、また新たな殺し合いに放り込まれただけではないかと思ったからである。
しかし、ある事を聞いた瞬間、顔色を変えた。

―――勝ち抜けば、何でも願いが叶う。


もし、それが本当であるのならば。
あの殺し合いを無かった事にできるのではないか?
また、あの楽しかった魔法少女としての生活が取り戻せるのではないか?

けれど……

「ねぇ、ランサー。ランサーは何のためにここに来たの?」
「ん?オラか?オラは…そうだな、強ぇ奴がここには居るんじゃねぇかって…まぁそんな感じだ」
「何それ」

でへへ、と笑い答える悟空に小雪は弱弱しく苦笑した。

「ランサー……願いのために他の人を犠牲にするのは、間違ってるかな?」


少し前までの小雪なら、間違っていると即答できた問いだ。
しかし、本当に願いを叶えられるなら、死んでしまった魔法少女たちが還ってくるのならば。
誰かを傷つけるのはたまらなく嫌だった。
しかしそれはあまりにも…あまりにも甘美な誘惑だった。

問われた少年は、少し困った顔をして、それでも答える。


「……どうだろうなぁ、オラ達も皆のためにあった願いを叶える物を大分独り占めにしちまったし…」

あまり悩んだ事が無いのか、要領の得ない答えだった。
けれど、小雪はその答えに少しの失望と安堵を覚えた。
はっきりとした否定や肯定より小雪に考える猶予をくれる答えだったのだから。

「けど、ますたあ。おめえが聖杯を悪ぃ事に使おうってんなら話は別だぞ?」


悟空の言葉に、小雪はふるふると首を振る。
あの悲惨な殺し合いを無かった事にしたいと言う願いそのものは悪い事では無いはずだ…悪い事ではないとは信じたい。

「すぐに決める事はねぇさ、時間は無いわけじゃねぇしな。ますたあが考えてる間、襲ってくる奴はオラがやっつけてやる」

そういってぽんぽんと小雪の肩を叩きながら告げる少年はひどく大人びて見える。
小雪よりも多くの世界や謎に通じているのではないか、そんな印象を持った。


「よし!それじゃ帰ぇるか!いつまでもこんなとこ居るわけにはいかねぇしな」


小雪が応える前にととと、と悟空は少し路地の奥へと進むと、彼女を送るために自らの宝具の名を呼ぶ。


「筋斗雲ーー!!」


呼ばれるや否や、夜空の虚空から、黄色い雲が現れたではないか。
トップスピードの魔法の箒のようだと小雪は思った。
彼女も、もういない。

小雪を尻目に、悟空は雲に飛び乗った。
そして、小雪に手を差し伸べる。
おずおすとその手を取り…小雪は初めて雲の上に乗った。

「わ、すごい」


柔らかくて、奇妙だが座り心地は悪くない。
そのまま彼女は墜ちない様にランサーの肩をしっかり掴もうとして―――傍らに何かが零れ落ちた事に気づいた。

「あ…」

それは、白くふわふわした兎のしっぽだった。
ハードゴア・アリスが自分に遺した忘れ形見。
何故今まで忘れていたのだろうか。


”―――あなたが居てくれれば…”

”―――私を助けてくれたあなたがいてくれれば…”

”―――この町から魔法少女は居なくならない…”


少女の最期の心の声も同時に思い出した。
大事に兎のしっぽをポッケに仕舞いながら、小雪は少年に囁く。


「ランサー、私、まだどうすればいいのか分からないけど…最後まで魔法少女でいたい。それだけは、決まったよ」


雲を操作しながらそうか、と呟くと、悟空は小雪に振り返ると出会ったときと同じ笑顔を見せた。


「オラもますたあが悪ぃ奴じゃねぇって分かって良かったぞ」
「え?」
「この筋斗雲はな、心が綺麗な奴しか乗れねぇんだ。クリリンでも乗れなかったんだぞ!」

それだけ言うとまた雲の操縦のために少年は向き直った。
もう、小雪を見る気はないらしい。
本当に、このサーヴァントは外見どおり無邪気で、それでいて時折ひどく大人びている。


「ランサー…有難う」

嬉しかった。
自分はそんなことを言われていい人間じゃないけれど。
選べなくて、後悔し続けてきた情けない人間だけど。
それでも、嬉しかった。

―――その後、少女がしゃくりあげて漏らした嗚咽も何もかも、夜空の虚空に吸い込まれ行った。


◆ ◆ ◆ ◆


これでスノーホワイト/姫河小雪が”選ばなかった”事が赦された事にはならない。

ましてや何かを得たわけではない。

彼女は今も虚無(カラッポ)だ。

けれど何も問題は無い。だって―――、


虚無(カラッポ)の方が夢詰め込めるのだから。





【クラス】
ランサー

【真名】
孫悟空@ドラゴンボール

【性別】
男性

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷A 魔力E 幸運A 宝具EX

【属性】
中立・中庸


【クラススキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】

戦闘民族:A
宇宙の中でも優秀な戦闘民族。生ある限り戦いを求め続ける。
Aランク相当の勇猛とBランク相当の直感と同じ効果を得る。
ただし、このスキルが発動すると何よりも戦闘を優先してしまう事がある。
また、消滅ギリギリの窮地から復活すると筋力敏捷耐久のステータスがワンランクアップする。
絶対にお勧めはしないが、魔力供給だけではなく、食事でも魔力を回復できる。

亀仙流:A
天下一の武闘家・無天老師の流派を習得した事示すスキル。
Bランク相当の無窮の武練と同じ効果を得られる。

獣化:A
戦闘民族から派生したスキル。
発動すればA相当の狂化のスキルを得、体が大猿に変化するが、今回はランサーとしての召喚に重きが置かれているため、発動できない。

【宝具】
『筋斗雲』
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:2人
上に乗って自由に空を飛べる雲。持ち主が呼べばどこからともなく飛んで来る。
飛行速度はマッハ1.5。ただし、心の清いものにしか乗ることはできない。
たとえ属性が善のサーヴァントでも乗れるとは限らない。

『如意棒(ニョイボウ)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:380000 最大捕捉:100人
とても頑丈でどこまでも伸びる棒。
街一つ消し飛ばしたピッコロ大魔王の爆力魔破に巻き込まれても皹一つ入らなかった。
月まで延びる。

『かめはめ波』
ランク:B 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
体内の潜在エネルギーを凝縮させて一気に放出させる技。
基本的に合わせた掌から放出されるが、その気になれば足から撃ったり曲げたりすることもできる。

『彼の者の名は伝説の(スーパーサイヤ人)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
神霊にも匹敵する孫悟空の成長した姿、スーパーサイヤ人へと進化させる宝具。
この宝具が発動すれば、筋力敏捷耐久のパラメーターがEXとなり、気による気配察知や瞬間移動が可能となる。
今回はセイヴァーとしての召喚ではないため発動できない。

【weapon】
宝具以外の物はなし。

【人物背景】
ドジで明るくて優しい銀河最強の男。
……なのだが、あまり地球の人々にその存在は知られていない。
それ故に、彼の住む地球で彼(謎の少年)が世界を救ったと言う逸話が最も色濃く残るピッコロ大魔王撃破時を再現されての召喚である。
一応知識としてその後の記憶もちゃんとあるが、認識としては希薄である。

【サーヴァントとしての願い】
強ぇ相手と戦う。
ますたあの願いにもできる限り付き合ってやる。



【マスター】
姫河小雪@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
殺し合いを無かった事にする…?

【weapon】
『兎のしっぽ』
大ピンチになったらラッキーな事が起こるアイテム。
ただし、それでピンチから逃れられるとは限らない。

【能力・技能】
『困っている人の心の声が聞こえるよ』
困っている人間の考えていることが聞こえる。
本人の意識していない反射や深層心理の声も聞こえる。それによって行動の先読みや隠し事の傍受も可能。

【人物背景】
ソーシャルゲーム「魔法少女育成計画」によって魔法少女になった少女。
幼少の頃から魔法少女に憧れており、なってからは毎日人助けに勤しんでいた。
しかし魔法少女を減らすと言う名目で始まったデスゲームにより仲間を次々と失ってしまう。
そのゲームの終了後、スイムスイム討伐直前より聖杯に拉致される。

【方針】
魔法少女で在り続ける。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 12:54