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オンラインコミックス - (2007/01/12 (金) 00:35:50) の1つ前との変更点
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*無限のカンバス
&html(<a href="http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/01/web_1.html">竹熊さんのところの一連のエントリ</a>)とかこないだの「アジアinコミック」とか最近なんとなくオンラインコミックスのことを考える機会がちょこちょことあった。
で、思ったのが「意外とスコット・マクラウドの話が出てこない」ということだったのだが、よく考えるとこれはオレの頭がおかしいだけで意外でもなんでもなく、スコット・マクラウドが『マンガ学』(美術出版刊)以降、デジタルに傾倒して、ほとんどオンラインコミックスの伝道師のような立場になっていること自体が日本ではほとんど紹介されていないだけだった。
これまで何度か書いているが、私個人はオンラインコミックスにはあまり魅力を感じておらず(「FlashかGIFアニメにしたほうがいいじゃん」というのが個人的な見解)必然的に興味も薄めなのだが、最近マクラウドが『マンガ学』の続編『ReInventing Comics』(DC Comics刊)で提起した「infinite Canvas」という概念がちょっとおもしろい方向で実を結びつつあるのを知って少し感心している。
「無限のカンバス(Infinite Canvas)」とはマクラウドがオンラインコミックスの特性として挙げている「紙」という物理的な制約が存在しないことによる表現上の自由度のことである。つまり、スクロールや分岐などの処理によって紙のマンガとは異なる視線誘導、リズムを持ったマンガを作り出すことがデジタル環境では可能になる、というのがマクラウドの主張で、この新しい表現環境を彼は「無限のカンバス」と呼ぶ。
彼のこうした考え方は2000年に発表した『ReInventing Comics』の後半でかなり体系化されたかたちで述べられているが(前半はアメリカのコミックス産業の構造と歴史の分析)、その後彼はそこでの理論を実践してみせるべく「無限のカンバス」理論を応用したスクロールで読むコミックス&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/comics/icst/index.html">「I Can't Stop Thinking!」</a>)を発表、以後も自分のサイト(&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/">scottmccloud.com</a>))や他のコミックス系のウェブマガジンなどでさまざまなスタイル、ソフトウェア的な処理をおこなった実験的なコミックス作品を多数発表している。
そのイノベイター的な性格から彼は自作の発表だけでなくウェブでコミックス制作、発表をおこなおうとするクリエイターたちを積極的に紹介、育成しようと動いてもいて、ここ半年ほど更新がないのでちょっと「今現在の」ものとしては駄目だが、一時期の彼の公式サイトのリンクページはアメリカにおけるオンラインコミックスに関する最大のハブだった。
もともと『ReInventing Comics』という作品自体『マンガ学』と違いアメリカでは賛否両論を巻き起こした作品で、コミックスファンや批評家からはけっこう批判が多かった反面で、コンピュータ技術者やデジタル系のクリエイターからは絶賛されるというなかなか象徴的な著作だったのだが、マクラウドの考える「表現としての自由度」や「デジタルコミックスの可能性」は、たとえば&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/comics/mi/mi-archive.html">ここ</a>)にあるものを見るだけでもなんとなく(納得できるかどうかはべつにして)理解はできる。
ちょっとおもしろいと思うのは「アジアinコミック2005」で見た中国の作品の既存の紙のマンガのレイアウトを残しつつデコラティブにアニメや音声による演出を加えていく手法や日本の&html(<a href="http://books.bitway.ne.jp/kodansha/e-manga/ocn/index.html">「e-manga」</a>)のように既存のマンガにアニメ的な演出を加えて映画的に再構築していくという発想とはマクラウドの主張するオンラインマンガの発想は根本的に異なるように思える点で(韓国の縦スクロールで読ませるウェブオリジナルの作品が発想的には一番近い)、この辺既存のコミックスタイトルのデジタル化は圧倒的にPDFかコミックストリップが多いアメリカの事情も関係あるのかもしれないが、よくはわからない。
マクラウドの場合発想としては「いかにこれまでとは違ったコミックス表現を実現するか?」という部分にあきらかに力点が置かれており、ある意味でその発想がいきつくところまでいったのがその名も&html(<a href="http://www.infinitecanvas.com/static.php?page=static041105-162223">「Infinite Canvas」</a>)というオンラインコミックス作成支援ツールの開発である。
>「Infinite Canvas」とはなにか?
> 「Infinite Canvas」はシーケンシャルアート(コミックス)をデジタル環境の中で表示し、ナビゲートするメソッドである。「Infinite Canvas」というコンセプトに関する詳しい説明はともにスコット・マクラウドによるこの概念が始めて紹介された&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/store/books/rc.html">『Reinventing Comics』</a>)もしくは&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/comics/icst/index.html">「I Can't Stop Thinking!」</a>)を見てもらいたい。
>
>Infinite Canvas、オンラインコミックスの試み
> 「Infinite Canvas」はアップルの「iApps」(iTunes、iPhoto…)の考え方に基づいてつくられている。私たちは使いやすく、「Infinite Canvas」の概念とデザインが直感的に理解できるアプリケーションをつくろうとした。このアプリケーションは二つのコンポーネントからなっている。ひとつはObjective-C Cocoa(アップルのフレームワークのひとつ)を実装したエディター、もうひとつはJavaで書かれたオンラインビュワーだ。Javaのプログラミング言語的な特性としてJava Applet同様のビュワーをウェブサイトに実装できる。
>
>歴史
> 「Infinite Canvas」はコンピュータサイエンス専攻の学生マーカス・ミュラー(Markus Mu"ller)によってウィーン科学技術大学( University of Technology Vienna(Institute for Design and Assessment of Technology))での実践研究と卒業論文のためのプロジェクトとして制作された。このプロジェクトにはインターフェイスデザイナーのピーター・パーガソファー(Peter Purgathofer)が参加しており、彼はオリジナルアイディアの提供とプロジェクトの進行管理をおこなった。
> 開発は2003年2月にはじまり、最初の公式バージョンのリリースはそれから1と4分の1年後の2004年6月。現在はバージョン1.1がリリースされており、完全にコードを一新したバージョン2.0の制作を計画中である。
>(「About」、『Infinite Canvas - an online comics experiment』、http://www.infinitecanvas.com/static.php?page=static041105-162223)
これはマクラウドが主導したわけではなく、『ReInventing Comics』に刺激を受けたヨーロッパのエンジニアが自作したフリーウェアなのだが、アメリカのオンラインコミックスにはこのツールで作成された興味深い作品が徐々に増え始めている。
以下にこのツールを使って作成された作品をいくつかリンクしておくが、実際に見にいってもらえば(おもしろいかどうかは別にして)おそらく通常のオンラインコミックスやマンガの概念がちょっと揺さぶられることになるだろうと思う。
&html(<a href="http://www.yellowlight.scratchspace.net/comics/elcw/chrisware.html">Everybody Loves Chris Ware</a>) By Timothy Godek
『Acme Novelty Libraly』(Drawn & Quarterly刊)などでラジカルにデザインとコミックスを融合し続けるクリス・ウェアの作品をその特徴を活かしつつオンライン・コミックスに仕立てた作品。正直、ウェア本人の作品より読みやすくてグットだと思ったりする(w。
&html(<a href="http://www.ryanestrada.com/Z/">Z</a>) By Ryan Estranda
コミックスにおける視線誘導をソフトウェアに代替させることで成立しているような作品。ある意味でマクラウドの「無限のカンバス」理論をもっともわかりやすいかたちで反映しているのがこれかもしれない。
&html(<a href="http://www.yellowlight.scratchspace.net/comics/infinitegag/infinitegag.html">The Infinite Gag Strip</a>) By Timothy Godek
4コママンガの各コマをクリックするとランダムにコマの内容が入れ替わり、無限に新しい4コママンガを作り出していくという作品。
&html(<a href="http://www.eviltree.de/zoomquilt/zoom.htm">THE ZOOMQUILT | a collaborative art project</a>) By razghul and co
でもって、一番すごいなと思った作品がこれ。最初はなんだかわからないと思うが、ロードが終わったら画面のどこかでマウスをクリックし、そのままドラッグさせてみるとなにかが起こる。騙し絵のような独特の酩酊感のある作品で、もはやコミックスとはまったくいえないが、忘れがたい余韻が残る。
*同人誌の代替物としてのオンラインコミックス
> 『WIREPOP』はインターネットと出版物を通じてプロフェッショナルに、ハイクォリティーな、クリエイターが権利を持つコミックスを配信していこうと試みている「次世代」のコミックブックパブリッシャーである。
> WirePop.comははじめてのマンガとマンガスタイルの英語のウェブコミックスを扱うオンラインパブリッシャーである。このサイトの有料メンバーは毎週新しいウェブコミックを閲覧することができ、このサービスは通常のコミックスにかかるコストのほんの数分の1で済み、インターネットに接続すれば自動的に受けられる。最終的にはWIREPOPはその範囲を印刷媒体にまで広げ、熱心な読者の手にウェブコミックスを届けていく予定である。WIREPOPはその作品のつくりてたち、アーティストたち、ライターたちとともにコミックス制作の新しい方法を切り拓いていこうと考えている。
>(「About」、『WIREPOP』、http://www.wirepop.com/about.php)
前述したように現在アメリカにはいくつか「マンガの描き方」を教えるサイトが存在していて(紹介したものの他にもなんだかよくわからないが&html(<a href="http://anime.darkpact.com/main.html">いっぱいある</a>))、これにはボランティアベースのもの(といってもアフィリエイトや&html(<a href="https://www.paypal.com/us/cgi-bin/webscr?cmd=_home">PayPal</a>)のシステムを使った寄付などは導入されている)もあれば、企業ベースのものもある。
こうして「マンガ絵」や「マンガ」を描くようになったひとびとが次に欲するのは当然発表の場な訳だが、現在そのための絶好の場を提供しているのが上で紹介している『WIREPOP』のようなウェブ上のサービスである。
『WIREPOP』はサイト上にクリエイターから寄せられたウェブコミックスを掲載する代わりに読者から閲覧料を徴収し、それをクリエイターに還元するサービスだが、作品はそれぞれ1話程度がサンプルとして読めるようになっており、クリエイターの持つウェブサイトへのリンクも張られているため、作品の販売自体よりクリエイターのプロモーションという意味合いが大きい気がする。「マンガ」を対象としている訳ではないが、総合アートディストリビューションサービス&html(<a href="http://www.deviantart.com/">『deviantART』</a>)なんかも見ているとどうもそういう使い方をしているクリエイターがけっこう多そうだ。
自ら「マンガ」を標榜しているだけあって『WIREPOP』に集まっている作家の作品はどれもよく日本マンガを研究したものでコマ割りなんかも完全に日本のスタイルを踏襲している。性別的には女性が多く、絵柄的には日本の少女マンガの影響が圧倒的だ。例を挙げると&html(<a href="http://www.wirepop.com/comic_episode.php?id=32&select=current&display_page=1">これ</a>)とか&html(<a href="http://www.wirepop.com/comic_episode.php?id=31&select=current&display_page=1">これ</a>)とか、ま、半分以上そうだといってもいい。
ウェブコミックスとはいっても『WIREPOP』に寄せられている作品はプログラムと連動してインタラクティブな動きをするようなものではなく、ごく普通のマンガをページスクロールで読めるようにしたものに過ぎない。ただ、こうした「場」があることで結果的にクリエイターが作品やプロジェクトを読者や出版社にアピールする場になっているようだ。
アメリカの場合日本ともっとも違うのはその地理的な馬鹿デカさで、出版社が地理的に集中しているニューヨークやロサンジェルス辺りの出版社に対して、他の州に住むクリエイターがアプローチするのはそれだけで一苦労である。インターネット上の個人サイトや『WIREPOP』のようなサービスはその部分のコストを軽減するだけでもじゅうぶんな意味がある。同人誌だって、つくっても近所のコミックショップに置いてもらうか、手近かなコンベンションで手売りするくらいしか流通のさせようがない訳だから、より広範囲の読者に読んでもらうためにはじつはオンラインコミックスというのはもっとも簡単でリーズナブルな手段なのである。
*無限のカンバス
&html(<a href="http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/01/web_1.html">竹熊さんのところの一連のエントリ</a>)とかこないだの「アジアinコミック」とか最近なんとなくオンラインコミックスのことを考える機会がちょこちょことあった。
で、思ったのが「意外とスコット・マクラウドの話が出てこない」ということだったのだが、よく考えるとこれはオレの頭がおかしいだけで意外でもなんでもなく、スコット・マクラウドが『マンガ学』(美術出版刊)以降、デジタルに傾倒して、ほとんどオンラインコミックスの伝道師のような立場になっていること自体が日本ではほとんど紹介されていないだけだった。
これまで何度か書いているが、私個人はオンラインコミックスにはあまり魅力を感じておらず(「FlashかGIFアニメにしたほうがいいじゃん」というのが個人的な見解)必然的に興味も薄めなのだが、最近マクラウドが『マンガ学』の続編『ReInventing Comics』(DC Comics刊)で提起した「infinite Canvas」という概念がちょっとおもしろい方向で実を結びつつあるのを知って少し感心している。
「無限のカンバス(Infinite Canvas)」とはマクラウドがオンラインコミックスの特性として挙げている「紙」という物理的な制約が存在しないことによる表現上の自由度のことである。つまり、スクロールや分岐などの処理によって紙のマンガとは異なる視線誘導、リズムを持ったマンガを作り出すことがデジタル環境では可能になる、というのがマクラウドの主張で、この新しい表現環境を彼は「無限のカンバス」と呼ぶ。
彼のこうした考え方は2000年に発表した『ReInventing Comics』の後半でかなり体系化されたかたちで述べられているが(前半はアメリカのコミックス産業の構造と歴史の分析)、その後彼はそこでの理論を実践してみせるべく「無限のカンバス」理論を応用したスクロールで読むコミックス&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/comics/icst/index.html">「I Can't Stop Thinking!」</a>)を発表、以後も自分のサイト(&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/">scottmccloud.com</a>))や他のコミックス系のウェブマガジンなどでさまざまなスタイル、ソフトウェア的な処理をおこなった実験的なコミックス作品を多数発表している。
そのイノベイター的な性格から彼は自作の発表だけでなくウェブでコミックス制作、発表をおこなおうとするクリエイターたちを積極的に紹介、育成しようと動いてもいて、ここ半年ほど更新がないのでちょっと「今現在の」ものとしては駄目だが、一時期の彼の公式サイトのリンクページはアメリカにおけるオンラインコミックスに関する最大のハブだった。
もともと『ReInventing Comics』という作品自体『マンガ学』と違いアメリカでは賛否両論を巻き起こした作品で、コミックスファンや批評家からはけっこう批判が多かった反面で、コンピュータ技術者やデジタル系のクリエイターからは絶賛されるというなかなか象徴的な著作だったのだが、マクラウドの考える「表現としての自由度」や「デジタルコミックスの可能性」は、たとえば&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/comics/mi/mi-archive.html">ここ</a>)にあるものを見るだけでもなんとなく(納得できるかどうかはべつにして)理解はできる。
ちょっとおもしろいと思うのは「アジアinコミック2005」で見た中国の作品の既存の紙のマンガのレイアウトを残しつつデコラティブにアニメや音声による演出を加えていく手法や日本の&html(<a href="http://books.bitway.ne.jp/kodansha/e-manga/ocn/index.html">「e-manga」</a>)のように既存のマンガにアニメ的な演出を加えて映画的に再構築していくという発想とはマクラウドの主張するオンラインマンガの発想は根本的に異なるように思える点で(韓国の縦スクロールで読ませるウェブオリジナルの作品が発想的には一番近い)、この辺既存のコミックスタイトルのデジタル化は圧倒的にPDFかコミックストリップが多いアメリカの事情も関係あるのかもしれないが、よくはわからない。
マクラウドの場合発想としては「いかにこれまでとは違ったコミックス表現を実現するか?」という部分にあきらかに力点が置かれており、ある意味でその発想がいきつくところまでいったのがその名も&html(<a href="http://www.infinitecanvas.com/static.php?page=static041105-162223">「Infinite Canvas」</a>)というオンラインコミックス作成支援ツールの開発である。
>「Infinite Canvas」とはなにか?
> 「Infinite Canvas」はシーケンシャルアート(コミックス)をデジタル環境の中で表示し、ナビゲートするメソッドである。「Infinite Canvas」というコンセプトに関する詳しい説明はともにスコット・マクラウドによるこの概念が始めて紹介された&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/store/books/rc.html">『Reinventing Comics』</a>)もしくは&html(<a href="http://www.scottmccloud.com/comics/icst/index.html">「I Can't Stop Thinking!」</a>)を見てもらいたい。
>
>Infinite Canvas、オンラインコミックスの試み
> 「Infinite Canvas」はアップルの「iApps」(iTunes、iPhoto…)の考え方に基づいてつくられている。私たちは使いやすく、「Infinite Canvas」の概念とデザインが直感的に理解できるアプリケーションをつくろうとした。このアプリケーションは二つのコンポーネントからなっている。ひとつはObjective-C Cocoa(アップルのフレームワークのひとつ)を実装したエディター、もうひとつはJavaで書かれたオンラインビュワーだ。Javaのプログラミング言語的な特性としてJava Applet同様のビュワーをウェブサイトに実装できる。
>
>歴史
> 「Infinite Canvas」はコンピュータサイエンス専攻の学生マーカス・ミュラー(Markus Mu"ller)によってウィーン科学技術大学( University of Technology Vienna(Institute for Design and Assessment of Technology))での実践研究と卒業論文のためのプロジェクトとして制作された。このプロジェクトにはインターフェイスデザイナーのピーター・パーガソファー(Peter Purgathofer)が参加しており、彼はオリジナルアイディアの提供とプロジェクトの進行管理をおこなった。
> 開発は2003年2月にはじまり、最初の公式バージョンのリリースはそれから1と4分の1年後の2004年6月。現在はバージョン1.1がリリースされており、完全にコードを一新したバージョン2.0の制作を計画中である。
>(「About」、『Infinite Canvas - an online comics experiment』、http://www.infinitecanvas.com/static.php?page=static041105-162223)
これはマクラウドが主導したわけではなく、『ReInventing Comics』に刺激を受けたヨーロッパのエンジニアが自作したフリーウェアなのだが、アメリカのオンラインコミックスにはこのツールで作成された興味深い作品が徐々に増え始めている。
以下にこのツールを使って作成された作品をいくつかリンクしておくが、実際に見にいってもらえば(おもしろいかどうかは別にして)おそらく通常のオンラインコミックスやマンガの概念がちょっと揺さぶられることになるだろうと思う。
&html(<a href="http://www.yellowlight.scratchspace.net/comics/elcw/chrisware.html">Everybody Loves Chris Ware</a>) By Timothy Godek
『Acme Novelty Libraly』(Drawn & Quarterly刊)などでラジカルにデザインとコミックスを融合し続けるクリス・ウェアの作品をその特徴を活かしつつオンライン・コミックスに仕立てた作品。正直、ウェア本人の作品より読みやすくてグットだと思ったりする(w。
&html(<a href="http://www.ryanestrada.com/Z/">Z</a>) By Ryan Estranda
コミックスにおける視線誘導をソフトウェアに代替させることで成立しているような作品。ある意味でマクラウドの「無限のカンバス」理論をもっともわかりやすいかたちで反映しているのがこれかもしれない。
&html(<a href="http://www.yellowlight.scratchspace.net/comics/infinitegag/infinitegag.html">The Infinite Gag Strip</a>) By Timothy Godek
4コママンガの各コマをクリックするとランダムにコマの内容が入れ替わり、無限に新しい4コママンガを作り出していくという作品。
&html(<a href="http://www.eviltree.de/zoomquilt/zoom.htm">THE ZOOMQUILT | a collaborative art project</a>) By razghul and co
でもって、一番すごいなと思った作品がこれ。最初はなんだかわからないと思うが、ロードが終わったら画面のどこかでマウスをクリックし、そのままドラッグさせてみるとなにかが起こる。騙し絵のような独特の酩酊感のある作品で、もはやコミックスとはまったくいえないが、忘れがたい余韻が残る。
*同人誌の代替物としてのオンラインコミックス
> 『WIREPOP』はインターネットと出版物を通じてプロフェッショナルに、ハイクォリティーな、クリエイターが権利を持つコミックスを配信していこうと試みている「次世代」のコミックブックパブリッシャーである。
> WirePop.comははじめてのマンガとマンガスタイルの英語のウェブコミックスを扱うオンラインパブリッシャーである。このサイトの有料メンバーは毎週新しいウェブコミックを閲覧することができ、このサービスは通常のコミックスにかかるコストのほんの数分の1で済み、インターネットに接続すれば自動的に受けられる。最終的にはWIREPOPはその範囲を印刷媒体にまで広げ、熱心な読者の手にウェブコミックスを届けていく予定である。WIREPOPはその作品のつくりてたち、アーティストたち、ライターたちとともにコミックス制作の新しい方法を切り拓いていこうと考えている。
>(「About」、『WIREPOP』、http://www.wirepop.com/about.php)
前述したように現在アメリカにはいくつか「マンガの描き方」を教えるサイトが存在していて(紹介したものの他にもなんだかよくわからないが&html(<a href="http://anime.darkpact.com/main.html">いっぱいある</a>))、これにはボランティアベースのもの(といってもアフィリエイトや&html(<a href="https://www.paypal.com/us/cgi-bin/webscr?cmd=_home">PayPal</a>)のシステムを使った寄付などは導入されている)もあれば、企業ベースのものもある。
こうして「マンガ絵」や「マンガ」を描くようになったひとびとが次に欲するのは当然発表の場な訳だが、現在そのための絶好の場を提供しているのが上で紹介している『WIREPOP』のようなウェブ上のサービスである。
『WIREPOP』はサイト上にクリエイターから寄せられたウェブコミックスを掲載する代わりに読者から閲覧料を徴収し、それをクリエイターに還元するサービスだが、作品はそれぞれ1話程度がサンプルとして読めるようになっており、クリエイターの持つウェブサイトへのリンクも張られているため、作品の販売自体よりクリエイターのプロモーションという意味合いが大きい気がする。「マンガ」を対象としている訳ではないが、総合アートディストリビューションサービス&html(<a href="http://www.deviantart.com/">『deviantART』</a>)なんかも見ているとどうもそういう使い方をしているクリエイターがけっこう多そうだ。
自ら「マンガ」を標榜しているだけあって『WIREPOP』に集まっている作家の作品はどれもよく日本マンガを研究したものでコマ割りなんかも完全に日本のスタイルを踏襲している。性別的には女性が多く、絵柄的には日本の少女マンガの影響が圧倒的だ。例を挙げると&html(<a href="http://www.wirepop.com/comic_episode.php?id=32&select=current&display_page=1">これ</a>)とか&html(<a href="http://www.wirepop.com/comic_episode.php?id=31&select=current&display_page=1">これ</a>)とか、ま、半分以上そうだといってもいい。
ウェブコミックスとはいっても『WIREPOP』に寄せられている作品はプログラムと連動してインタラクティブな動きをするようなものではなく、ごく普通のマンガをページスクロールで読めるようにしたものに過ぎない。ただ、こうした「場」があることで結果的にクリエイターが作品やプロジェクトを読者や出版社にアピールする場になっているようだ。
アメリカの場合日本ともっとも違うのはその地理的な馬鹿デカさで、出版社が地理的に集中しているニューヨークやロサンジェルス辺りの出版社に対して、他の州に住むクリエイターがアプローチするのはそれだけで一苦労である。インターネット上の個人サイトや『WIREPOP』のようなサービスはその部分のコストを軽減するだけでもじゅうぶんな意味がある。同人誌だって、つくっても近所のコミックショップに置いてもらうか、手近かなコンベンションで手売りするくらいしか流通のさせようがない訳だから、より広範囲の読者に読んでもらうためにはじつはオンラインコミックスというのはもっとも簡単でリーズナブルな手段なのである。
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