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 意外にも笑顔で、恵美は敦子を出迎えてくれた。可愛らしい柄のパジャマ姿で、パステルオレンジのカーディガンを羽織っている。
「ごめんね、ありがとう。ちょっと風邪引いちゃって……。日曜で治るかなって思ったんだけど、朝まで熱が下がらなくて。でも、お昼くらいから体調良くなったみたい。明日からは、学校行けるよ」
 そう話しかける恵美の声に、敦子はどうしようもないほど安堵感を覚えた。
「そっか……。よかった。これ、先生から預かってきたの」
 プリントを差し出して、敦子は真顔になった。すぐに言葉が紡ぎ出せず、一瞬口ごもる。
「あのね、めぐちゃん……。こないだは、ごめんね。ほんとに、ごめんなさい」
 一気に言って、敦子は恵美を見つめた。
「どうして、謝るの? 悪いのは、私だよ……」
 緩やかな笑顔でそういう恵美の語尾にかぶせるように、敦子は謝り続けた。
「ううん、でも、わたしきっとめぐちゃんのこと、傷つけた。だから、すごく後悔してるの……」
 うまく言えず、ぽつぽつと敦子は言った。
「そんな……。私こそ、あっちゃんにひどいこと、した。あっちゃんのこととか何も考えないで。だから、謝らないで、あっちゃん……。謝るのは、私の方だよ」
 弛緩した、泣き笑いのような表情でそういう恵美に、敦子は胸がじんとするのが分かった。心が震え、声が出ない。
「……ありがとう」
 絞るようにそう言うと、恵美は無言でうなづいた。
「……寒いね、今日。ね、お茶入れるから、ちょっとだけ上がって」
「そんな、いいよ。風邪ぶり返すよ……」
 遠慮する敦子に恵美はあの笑顔で笑いかけた。
「大丈夫だよ、もう治ったもん」

 誘惑に負けて、敦子は再び恵美の部屋に入ることになった。病人のベッドを占領するわけにもいかず、今度は恵美の机に座る。
 すぐに、先日同様ティーカップ2つをお盆に載せた恵美がパジャマ姿のまま部屋に戻ってきた。
「ごめんね……。風邪引いてるのに」
「もぉ治ってるってば」
 明るくそう言う恵美に、敦子はほっと息を漏らした。
「ふふ……」
 先日とは逆に、ベッドに腰掛けながら恵美が敦子を見て笑った。
 温かい紅茶をすする。少し冷えた身体に浸透する感覚が、敦子の身体も心も弛緩させる気がした。
「本当に、もう大丈夫なの?」
 言いながら、敦子はベッドの恵美の隣に腰掛けた。先日の制服の時とは違って、パジャマ姿だと身体のラインがはっきりとして見える。夢で見た恵美の裸身を思い出して、敦子は軽く赤面した。
 何度も同じことを聞く照れ隠しに、敦子は無意味と知りながら恵美の額に手のひらを当てた。少ししっとりとした恵美の肌の感触が心地よい。
「うん……。大丈夫みたいだね」
 そんな敦子に恵美はくすりと笑った。
「だから、大丈夫だって」
 明るい口調でそう言ってから、恵美は不意に俯いて視線を逸らした。
「……ありがとう。私、あっちゃんに、嫌われたって、もう友達と思ってもらえないって、そう……思ってた」
 俯いたまま、ぽつぽつと語り出す恵美の言葉を、敦子は無言で聞いた。長い黒髪が顔にかかって、恵美の表情をうかがい知ることはできない。
「もう、大体想像できてると思う、けど。私、私ね、男の子に興味持てないんだ。いつからなのか、よく分からないけど、ずっと、女の子のことが、気になって……好きに、なるの」
 もしかすると自分はおかしいのか、恵美はそう思い、図書館などで様々な本や、ティーン向けの雑誌の相談コーナーなどで、自分と似たような経験を持つ者の話を読んだりもした。
 思春期にはありがちなことだとする識者の意見や、同性が好きならそれはそれで良いのではないか、そんな意見を読んでも、恵美の悩みを解決することは、できなかった。
「……でも、どうしようもなくて。もしかしたら、そのうち、大きくなったら、普通に男の子に興味持てるようになるのかも知れないって、そう思ってた」
 寂しげな声でそう漏らす恵美に、敦子は自然と手のひらを恵美のそれに重ねて、包み込んでいた。
「でも、女の子のことが気になるのを、我慢すること、できなかった。前の学校の時、同じクラスで、とても仲良しだった子がいたの。すらっとして、背が私より高くて。そう、あっちゃんに感じが似てた」
「その子のこと、好きだったの?」
 敦子が聞くと、恵美はこくりと頷いた。
「好きで好きでたまらなかった。その子のこと、考えるだけで、胸がいっぱいになって、苦しくなる」
 それだけを言って、恵美は声を詰まらせた。
「……私ね、ちょっとませてる方だと思う。小学校の低学年くらいの頃から、良いなって思う子のこと考えるのに、すごくエッチなことまで、想像して……考えちゃうんだ」
 しばらく黙っていた恵美はそう言うと顔を上げて、潤んだ瞳で敦子の方を見た。
「その子のことも、好きで、それでエッチなことするのいつも一人で想像してた。ネットとかで、エッチなサイトとか見に行って、参考にして」
 敦子が本棚から見つけた写真集も、海外の通販サイトで手に入れた物だった。嘘をついて、父親のカード番号で支払いをしてもらった。
「写真集っていうのは、分かってたけど、思ってた以上に、エッチな本だったから、余計に影響されちゃったのかも。それで、その子がうちに泊まりに来たときに、一緒のベッドで寝ることになって」
 最初は、冗談交じりに告白をした恵美だったが、恋愛感情を持つ対象が同じベッドの中にいるという状況に、恵美の中の何かが、後に引けなくなってしまった。敦子にしたのと同じように、唇を奪ったまではよかったが、敦子と違って、その少女は徹底的に恵美を拒絶したのだった。

「何回も、キモいって言われた。変態だって。二度と話しかけないでって。次の日から、学校でもクラスの女の子全員から無視されて、ハブられたの」
 後悔と、自責の念にかられた恵美だったが、事態はさらに悪化した。担任教師が、事情をよく知らないままに、孤立した恵美をなんとかしようと動いたことで、恵美のしたことが学校中に知れ渡るほどに明るみに出てしまったのだった。
 これがきっかけとなって、以前より不仲だった両親は恵美の行動の責任をなすり合い、罵りあいながら離婚することになった。
「……パパと離婚する前から、そうだったけど、ママは余計に仕事に熱中するようになったわ。夜遅くに帰ってきても、私のことなんか、気にもしなくなった。私なんか、いてもいなくてもどうでもいい、そんな感じで視線を合わせようともしないもの……」
 離婚したことで、両親はそれまで住んでいた戸建てを売り払い、それぞれに新しい生活を始めることになった。そして、恵美は敦子のいる街にやってきたのだった。

「初めて、あっちゃんを見たとき、好きだった子に似てるなって思ったけど、それ以上に、すごくきれいだって思った。それに、クラスのみんなからハブられてる、って聞いて、私と同じ悩みを持ってる存在なんだって分かって。絶対、友達になりたいって、そう思った」
 当初は、以前と同じ失敗を繰り返すまいと、純粋に友達として付き合うつもりの恵美だった。しかし、その存在を失念していた写真集を見つけたらしい敦子の態度と、直後自分に見とれる表情に、忘れようとしていた自分の中の疼きを、堪えることができなくなっていた。
「あっちゃんに、可愛いって言われたとき、すごく、嬉しかった。もしかしたら、あっちゃんも私と同じ仲間なのかも知れないって……」
 誤解は衝動へ変化し、そして、行動となった。かつて自分が引き起こした悪夢を振り払うほどに。
「だから、あのとき、あっちゃんが帰ったあと、私はおかしくなりそうだった。また同じことをしちゃったって。死にたいくらいの気持ちになったけど、どうしていいかわからなかった」
 いつの間にか、恵美はその瞳から大粒の涙を流していた。涙に濡れるその長いまつげを、敦子は心底美しいと思った。

「だから、本当に謝らなきゃいけないのは、私なの。あっちゃんはきっと、私にとって大切な星のような存在なのに、私はそれをあせって手に入れようとして、そしてまた無くしてしまう所だった」
 泣きながら、絞り出すように言う恵美の言葉を聞いたとき、敦子の中で何かがすっと開けていく、そんな感覚が湧き起こるのが分かった。
「無くなったり、しないよ」
「えっ?」
 目を丸くして自分を見る恵美に敦子は穏やかに笑った。
「わたしにも、めぐちゃんは大切な星なような気がする。本当は、出会うことのなかった星同士が、偶然だろうけど、出会うことができたんだって。何でか分からないけど、今、めぐちゃんが言ったことを聞いて、そういう風に思えたんだ」
 やや赤面しながら、一気にそういうと、敦子は自分から恵美の唇に自分のそれを重ねていた。
 なぜそんなことをしたのかは敦子にも分からない。衝動が、敦子を突き動かしていた。
「んん……」
 夢で見たように、くぐもったうめき声を恵美が上げるのが聞こえた。
 唇と唇をただ重ねるだけのつたないキス。だが、それだけで、身体が熱く、胸が締め付けられるような感覚が敦子の身体を駆け抜けた。
 それ以上どうして良いか分からず、敦子はすぐに唇を離した。気恥ずかしさと照れくささで笑みがこぼれる。
「……それに、もしかしたら、本当にわたしたち、同じ存在なのかも知れないよ……」
 敦子は、自分でも驚くほど低い声でそう言うと、あの日見た夢の話をした。
「そうなんだ……」
「最初に、めぐちゃんに、キスされたときもね、わけわかんなくて、怖くなったけど、でも……」
 言葉を切った敦子に恵美は怯えたように顎を引いた。
「でも……?」
 そんな不安げな恵美の表情に敦子はくすりと笑った。
「嫌だとは、思わなかったよ……。どうしてだろうね……」
 敦子がそういうと、恵美はかすかに頬を紅潮させた。
「ね、あっちゃん……。私のこと、好き?」
 しばらくもじもじとしたあと、恐る恐る、ささやくように恵美が言った。
「……うん。大好き、だよ……」
 顔が熱くなり、脚が震えるのが分かった。そして、敦子はそっと目を閉じて、恵美の答えを待った。
「ありがとう……。私も、あっちゃんのことが、大好き……」
 恵美のかすかな吐息が、近づいてくるのが分かった。かすかに湿り気を帯びた柔らかなものが、唇に触れる。
「んぅ……」
 ついばむような接触のあと、ぽってりとした圧力が唇を覆い尽くすように思えた。唇と唇が重なり合い、吸い合う。
 ふたりの吐息と吐息が絡み合い、息が止まる。
「ぅ……ん」
 おずおずと動く恵美の舌先が、唇をゆっくりとかき分け、差し込まれる違和感に敦子は耐えた。ぬめりとした固まりが口の中をうごめき、撫で回す。
 くすぐったいような、そんな快感を初めて感じて、敦子の全身から力が抜けた。
「ふぅ……んっ」
 うごめく恵美の舌先に、敦子も負けじとばかりに舌先を絡めていく。甘く感じられる唾液を交換しあうと、恵美が敦子の舌先を強く吸い込んだ。
 意識が遠のきそうになり、そして、敦子の下腹部の奥底がきゅっと収縮したような気がした。
「ふはぁ……」
 唇が離れて、大きく息をついた。ぐったりとしたまま、敦子は閉じていた目を開けた。
 頬を紅潮させた恵美の顔が、目の前にあった。恵美の長い黒髪が垂れ下がり、二人を包み込む幕のように感じられた。いつの間にか、敦子は恵美のベッドに押し倒されていた。
「……」
 急に気恥ずかしさがこみ上げ、敦子は無言で恵美から視線を外した。
「……どうして、私を見てくれないの?」
「だって……。恥ずかしいもん」
 ため息混じりに言う敦子の首筋に、恵美が唇を這わせるのが分かった。
「ひゃん……やっ、ダメ、今日体育で汗かいてる、汚い……よ」
 恵美の無言の攻撃を、まだ完全に官能に変えきれぬ敦子は身もだえしてくすぐったさに耐えた。
 チロチロと首筋を這う恵美の舌先の感触に、自然と声が漏れ、脚が震える。
「汚くなんか、ないよ……。あっちゃんなら。それに、私だって……今日はまだ身体拭いてないもの」
 ささやきながら、恵美は攻撃ポイントを首筋から耳たぶに切り替えた。同時に、指先がなめらかに動いて敦子のブレザーの前ボタンが外されていく。
「くぅん……っ、やっ、めぐちゃ……やぁ」
 一瞬のくすぐったさのあと、それが全く別の感覚に変わっていくおぞましさと、未知の感覚が芽生えていく瞬間のときめきのようなものが、ない交ぜになって敦子を翻弄する。
 数日前には怯えしか生まなかった、リアルな性の匂い。同性の、同級生によってそれが生み出されているという背徳の感動が、敦子の体と心を虜にしつつあった。
「耳が、弱いんだね、あっちゃん……」
 吐息にも似た恵美のささやきが、ぞわっとした快感となって敦子の未成熟な官能を煽り立てる。
「んっ、わ、かんないっ……んぅ」
 耳たぶやその周囲を這い回る恵美の舌先の細やかな動きと、自然とかかる恵美の吐息がもたらす快楽に、敦子は完全に陥落してしまっていた。
 いつしかほどかれたリボンタイが、するりとベッドから床に滑り落ち、あっという間にブラウスのボタンが外され、はだけられた隙間から敦子の飾り気のかけらもないシンプルな白のブラがむき出しにされた。
 同年代の少女と比べても、ふくらみと言うには可憐すぎる印象の敦子の胸を、ブラごと恵美の手のひらが包み込むように撫で回す。
「やん……んんっ」
 なめらかで繊細な愛撫のときめきが敦子の身体の奥底を熱くさせた。下腹部を中心に、収縮感とそして何か熱いものが集まっていく、そんな感覚を実感して、敦子は身体をくねらせた。
 そんな敦子の反応を楽しむように、恵美は小さく笑うと、軽く汗ばんだ敦子の前髪を撫でつけながら、再び敦子の唇に自らのそれを重ねてきた。
 同時に、恵美の指先が滑り込むように敦子のスカートの中に侵入してくる。膝頭をくすぐるようにしてから、軽く掻くような恵美の指先が、徐々に内股からさらにその奥へと忍び寄る。
「くん……」
 反射的に閉じかけた敦子の両脚を、恵美の指先は無慈悲にこじ開け、責め立てた。
「んんぁ、めぐちゃ……ダメ、そこは、ほんとに、汚いっ……」
 さすがに我に返った敦子の懇願に、恵美はその可憐な顔立ちからは想像もつかないクールな表情と口調で応じた。
「あっちゃんなら、汚くなんか、ないってば……」
 冷酷な宣告はすぐに指先の動きとなって敦子に襲いかかった。物心付いてから誰にも触れさせたことのないその場所に、今まで感じたことのない快感が湧き起こる。
「やっ、あっ……んんっ」
 ビクン、と身体をのけぞらせて、敦子は快楽のうめきを漏らしていた。ショーツ越しに、的確に一番感じるポイントを探り当て、自らを責める恵美の指先の動きがもたらす快感に意識が朦朧とする。
「すごいね……すごく濡れてる。ぐしょぐしょ……だよ、ここ。感じてくれて、うれしい」
 少女らしい無邪気な恵美の感嘆の声と、見合わない言葉の中身が、敦子の羞恥を煽り、高ぶらせる。顔から火が出そうなほど赤面して、体温が上昇するのが分かった。
「やだぁ……そんなこと、言わない……でっ」
「でも、気持ちいいんでしょ?」
 言いながら自分を責め続ける恵美の言葉と、的確な指先の責めに、敦子は一瞬絶句して、そして次々と湧き起こる快感に言葉にならない声を上げるしかなかった。
「ふぁうぅんっ、やぁ……」
 下腹部を襲う快感と、熱くたぎる何かが滲み溢れるような感覚。自らの湿り気がショーツを張り付かせるうえに、恵美がなぞる指先の圧迫が、ますます敦子のそこを締め付けていく。
「あっ、んんぅ……」
 それは、唐突に敦子にやってきた。すっ、と重力が無くなるような感覚に身体が包み込まれ、朦朧としていた視界が、完全に真っ白な光に包まれる。
「はっ……んくぅ」
 荒い呼吸に混じって、声にならない声が漏れる。びくびく、と数回身体が震えたのを自覚したところで、敦子の記憶は途切れていた。
 気が付いたとき、身体中が、痺れてしまったような脱力感にとらわれて、敦子はぐったりとベッドに横たわることしかできずにいた。
「あっちゃん……。イッちゃったの?」
 どこか不安げな恵美の言葉を聞くまで、何が自分の身に起きたのか敦子は理解することができなかった。ぼんやりとして、思考能力の失われてしまった頭の片隅で、自分が官能の頂点に達してしまったらしい、と理解しても、それを実感するには敦子は未経験すぎたのだ。
「ん……。わかんない……」
 おぼろげな視界の中に、少し心配そうな恵美の顔があった。弛緩しきった身体は指先一本動かすことができなかった。
「ふふ……」
 咽喉の奥で笑った恵美が優しく敦子の額から、頬、そして唇にキスする。かすかなくすぐったさとともに、身体を支配していた脱力感が抜けていき、そして平静を取り戻したとき、敦子は赤面した。
「やだぁ……もぉ……」
 つぶやくようにそう言って敦子は視線を恵美から逸らした。冷静さを取り戻すと同時に激しい羞恥の感情が自分を揺さぶるのに耐えられなかったのだ。
「嫌だった……? あっちゃん」
 敦子の言葉に誤解した恵美が動揺したのが分かった。
「んー、違うよ……。すごく……恥ずかしくって」
 恵美が誤解したのが分かって、敦子は羞恥を堪えて恵美に視線を戻した。不安に揺れていた恵美の瞳が安堵の輝きを取り戻していく。
「……よかった」
 ため息混じりにそう言って、恵美は覆い被さるようにしていた身体を、敦子に預けるようにした。首筋に顔を埋める恵美の吐息のくすぐったさに、少しだけ敦子は身をよじった。
 自然と二人は互いの身体を抱きしめていた。身体の重みと、暖かさが感じさせるお互いの存在感が心地よく、そして今までに感じたことのない安堵感を与えてくれるのが分かった。

 どれくらいそうしていたのか正確な時間は分からない。金色に輝いていた落陽の光が、赤く染まりそして淡い紫に変化しだした頃、二人はのろのろとベッドの上で起きあがって、そして二人顔を見合わせて照れくさげに笑みをかわした。
 敦子は乱れた自分の服装に気付いて、身支度を始めた。
「ふふ……。すごい格好してる、わたし」
「汗かいちゃったね……。ね、お風呂入らない?」
 自らの官能のしるしで汚したショーツの湿り気の冷えた感触に、内心不快感を感じていた敦子は、恵美の提案に飛びつきそうになった。しかし、ある問題に思い当たって眉をしかめる。
「入りたいけど……。でも、着替え持ってないよ……」
 困惑しながらそう言う敦子を、恵美は快活に笑い飛ばした。
「私のを貸してあげるよ、大丈夫」
 ショーツはともかく、ブラは胸が余りそうだなと改めて恵美の胸元を見て敦子は思ったが、汗で湿ったままの身体を放置して帰宅すれば、今度は自分が風邪を引きかねない。
「じゃあ、入る。ありがと」

 風呂が沸いたことを知らせる電子音が鳴り響いた。
「沸いたみたいね。あっちゃん、入ってきなよ」
 引き続き恵美の部屋のベッドの上で、二人じゃれ合うようにしていた恵美は、敦子にそう促した。
「ごめんね。じゃあ……」
 恵美にそう告げて、敦子は浴室に向かった。洗面所で制服を脱いでいると、恵美が顔を覗かせた。
「あっちゃん、これ、替えの下着と、バスタオル。まだおろしてないやつだから、新品だよ」
 白い柔らかそうなバスタオルの上に重ねられている下着を見て敦子は目をしばたかせた。淡いピンク色で、白のレースが随所にあしらわれている。恵美や敦子の年からすると、やや大人っぽい雰囲気で安っぽさを感じない。
「新品? いいの?」
「いいよ。使って。通販でセットで買わないといけなくて、ついでに買ったやつだから」
「そうなんだ。ごめんね、ありがと」
 恵美が差し出した下着を受け取って、敦子は足下に置いた。
「……なあに?」
 洗面所にとどまって、物言いたげな恵美の顔を見て、敦子はくすりと笑った。
「……私も、入ろっかな。着替えとってくる。先、入ってて」
「……うん」
 予想通りの恵美の言葉に敦子は笑顔で恵美を見送った。
 浴室の扉を開けながら、先日の夢のことを思い出して敦子は、ぼんやりとした期待感が胸にこみ上げてくるのを実感した。
”なんか……超能力でもあるのかな、わたし”
 そんなばかげたことを考えながら、浴室暖房が効いて暖かくされた浴室の広さに目を丸くする。
「いいなぁ」
 今の時期寒々として、しかも狭苦しい我が家の浴室を思い浮かべながら、敦子は一人ごちた。
 恵美のマンションの造りなら、これくらいの浴室なのが当然なのだが、実際に入るとなおさら実感する。物珍しげに、しばらくあちこちを観察していると、扉を開ける音がした。
「お待たせ……。あれ? どうかした?」
 ぼんやりと佇む敦子に恵美はきょとんとしてそう言った。
「ううん、どうもしないよ。立派なお風呂だなぁって思って」
 照れくささに笑ってそう言うと、恵美はさらにきょとんとした。
「そう、かな? そんなことないよ、あっちゃんオーバーだよ」
 嫌味のない口調でそう言う恵美に敦子はおかしそうに笑った。
「そりゃめぐちゃんからしたらそうだろうけど。わたしにしてみればもうびっくりだよ」
 そう言ってから、ふたりで笑い合う。
 全裸になった恵美は、夢で見た以上に美しく、白い肌をしていた。小柄な体格の割にボリュームのある胸、そして少女らしい柔らかさとふくよかさが、未成熟な中にも年相応の魅力を醸し出している。
 自然と、目を奪われる敦子に、恵美は恥ずかしそうに赤面して、身体を両の手で隠そうとした。
「あっちゃんみたいに、すらっとしてないから……」
「なんで? わたしが夢で見ためぐちゃんよか、ずっときれいだよ……」
 ベッドの上では少ししかない体格の差が、並んで立つと際だち、頭一つ大柄な敦子は、自然と恵美を抱きしめるように腕で包み込んだ。
 身体にまとうものが何もない状態で、二人向かい合って肌が密着する瞬間、お互いの肌の暖かさをダイレクトに感じて二人は同時にため息を漏らした。胸の高鳴りが最高潮に達して、重苦しさすら感じながら、二人は赤面しながらお互いを見つめ合った。
「……夢みたい、でも、夢じゃないんだよね……」
「わたしだって信じられない。でも、現実なんだよ……」
 肌を通して伝わるお互いの声が、余計に高ぶりを煽るのが分かった。初めて体験する、なめらかで暖かな肌と肌のふれあいの心地よさに、二人はしばし酔いしれた。
「あっちゃん……」
 恵美が顎を持ち上げるようにして目を閉じる。キスをせがんでいるのが分かった敦子は、優しく微笑んでそれに応える。
 唇に唇を軽く触れさせてから、もう一度、今度は深くじっくりと唇を重ねていく。恵美が自分にしたように、唇を舌先でくすぐるようにこじ開けて、敦子は舌先を恵美の唇に滑り込ませた。
「んっ……」
 小さくうめいて、なぜか恵美は身体をぴくんと震わせた。同時に、敦子を抱きしめる力が強くなる。
 滑り込ませた舌先で、恵美の舌先を軽くつついてから、上あごの裏や前歯の表裏などをふわふわとなぞっていく。恵美が自分にしたとおりに、それをトレースしているだけだったが、そんなつたない敦子のキスに恵美は時折小さくうめいては身体を震わせる。
「んぅ……」
 自分のキスで恵美が感じているらしい、そのことがとても嬉しく、そして敦子自身の官能も高ぶらせていく。
「んぁ……、はぁ……」
 息苦しさが、互いの唇よりも新鮮な空気を要求した。二人揃って大きく息をつくと、照れくささが見つめ合う瞳を笑いが彩った。
「……あっちゃん、キスが上手だね……」
 自分の胸の中で、見上げるようにそう言う恵美に、敦子は苦笑いした、
「そんなこと、ないよ……。めぐちゃんのキスを真似しただけだよ」
 謙遜のつもりなどなく、事実を言った敦子だったが、恵美はやんわりと感心したようにささやいた。
「私よか、上手だと思うな……。あっちゃん、才能ある」
 妙なことを言う恵美に、そういうのを才能って言っていいのかな、と敦子は頭の隅でぼんやりと考えた。
「そぉかな……」
「そうだよ……。だって、すごく……」
「すごく? ……やっ、ちょっ……」
 不意に恵美の反撃が始まった。敦子の胸に顔を埋めるようにした恵美の唇が、敦子のささやかな膨らみの先端に吸い付いた。
 淡い鴇色の唇が、同じような色の敦子の膨らみの先端を挟み込み、含んで吸い込む。
「くぅ……んっ」
 不意打ちを食らって、敦子は脱力しかけた身体を恵美に懸命にしがみつかせた。胸の先端から湧き起こる、未成熟さゆえの官能の鈍い痛みが、徐々に快感となって敦子の身体を踊らせる。
「めぐちゃ……んっ、ずる……いっ」
 そんな敦子の抗議は、恵美の攻撃の前には無意味でしかなかった。
 大柄な敦子を支えきれるわけもなく、二人はへなへなと浴室の床に崩れ落ちた。へたり込んだ敦子の身体を、押し倒すようにした恵美の身体が、敦子に覆い被さる。
「ずるくなんか、ないよ……」
 見上げた敦子の視界に飛び込んできたのは、背徳の情熱に支配された恵美の熱く、キラキラと輝く視線だった。ストレートな少女の情熱と欲情をもろに受け止めて、敦子はただ絶句するしかなかった。
 そんな敦子の唇を、今度は恵美が情熱的に奪う番だった。激しく、情熱的ではあるが乱暴ではない恵美の舌先が、敦子の唇と舌先を蹂躙していく。
「めぐちゃ……んぁぁっ」
 キスの後、再開された恵美の攻撃が、敦子をのけぞらせ、そして官能を示すうめきをこぼれさせる。
 恵美の唇が、的確に敦子の弱点を責めていく。耳、そして首筋から、鎖骨のくぼみ。同性の同年代の少女にもたらされる背徳の官能が、未成熟な敦子の官能を刺激して、極めて短時間で開発しつつあった。
 流れるように胸を責める恵美の唇とは別に、白く細い指先が敦子の脇腹から、腰骨、そして太ももの外と内を緩やかになぞっていく。
「くぅんっ、やっ、だ、あぁんっ」
 くすぐったさに内包された快楽の実感に、何が自分の身体に起きているのかすら分からぬまま、敦子はその身体を幾度も震わせながら、こぼれる自分のうわごとめいた嬌声が浴室に反響するのを聞くことしかできなかった。
「感じやすいんだね、あっちゃん……。すごく、可愛いっ」
 熱のこもった口調でそう評価する恵美の言葉に、敦子の身体を訳の分からない高ぶりが支配していく。背徳と、リアルな性に蹂躙されていく実感が自分を高ぶらせていることを、この時の敦子は知るよしもなかった。
「やだ、そんなこと、ない……」
 朦朧とする意識の中で、それだけを漏らすのが精一杯だった。
「そぉ? じゃあ、なんでこんなに濡れてるの?」
 例によって無邪気な恵美の言葉に、敦子は快楽の蹂躙にいつしかだらしなく開いていた脚を慌てて閉じようとした。
「閉じちゃ……だめ」
 口調こそ柔らかだが、明確な意志のこもった恵美の声に押されて、敦子は閉じかけた脚を止めた。
「……ん」
 高鳴りというレベルを超えて、激しく鼓動する心臓の音が身体を支配する中、口ごもる敦子に恵美はさらに追い打ちをかけた。
「もっと……開いて。私によく見せて、あっちゃん……」
 恵美のかすれた声。のろのろと、敦子は脚を開いていく。
 生まれてこの方、親以外の誰にも見せたことのないその場所を、同性の同級生の少女に晒して、見せつけるようにしているという実感は、敦子の官能を大いに揺さぶった。
 今までになく強く湧き起こる羞恥の感覚。下半身の奥が、幾度となく収縮を繰り返す。同時に、股間の中央に熱いものが満たされ、溢れそうになる感覚を覚えて敦子は恵美から顔をそむけた。
「恥ずかしいの?」
「恥ずかしい……よ」
 敦子の声もかすれたようになった。いつしかからからに乾いていた喉を潤そうと喉が鳴る。
「ふふ……あっちゃんって、あんまし毛深くないんだね、いいなァ」
 恵美の指先が、敦子のアンダーヘアのあたりをくすぐるようになぞった。微妙なタッチのくすぐったさに負けて、声が漏れ、腰がうごめく。
「ふぁぅんっ……、くすぐった……いよ、あんっ」
 滑るように動く恵美の指先が、敦子の股間を捕らえ、そしてそのまま肉の亀裂を拡げていく。
「ほらぁ……ぬるぬるで、いっぱい、だよ……」
 いたずらっぽく輝く恵美の視線から敦子は目を逸らすことができなかった。拡げられ、むき出しになった敦子の亀裂に、恵美の指先がなぞるように押し当てられる。
「んんっ……」
 かすかな水音が、恵美が指先を動かすたびに敦子の耳朶を打つ。その事実が、淫らな衝撃となって敦子の心を揺さぶるのが分かった。
「敦子のここ、すごくきれいな色だよ。見てみる? エッチなぬるぬるがいっぱい出てて、キラキラしてる」
「……んぅ、あ、あぁんっ!」
 的確に羞恥を揺さぶり煽る言葉に重ねて、恵美の指先は、敦子の一番敏感な場所を責め始めていた。
 人差し指と、中指の間で挟んで、軽く力を込めた後、かき混ぜるような動きで、そこを震わせる。
「やっ……やぁッ、あ、あ……ぁんっ」
 ぬめり気のあるものをかき混ぜるような、淫らな水音が起きるたび、敦子の身体がビクビクと震える。
 先刻のベッドの上での、ショーツ越しの刺激とはまるで桁が違う官能の刺激に晒されて、敦子は今までで一番激しく声を上げることになった。自然と漏れる自分の声に気付いても、止めることができない。
「すごく腫れて、固くなってる、敦子のクリ。ほら、こんなに」
 淫らな空気に酔いしれた恵美の声と、弾くような動きに変わった指先の動きに、敦子の官能のテンションと、そして漏れる嬌声のオクターブが上がる。
「やんっ、やだっ、ダメ、あ、あ、ああんっ!」
 うわごとのような自分の声が、遠くなったり、近くなったりする中、発生した官能の波動が全身を覆い尽くす感覚に包み込まれた。
 びんと背筋が伸び、震える手足に自然と力が込められる。
「恵美、やだ、たすけて、あああん!!」
 朦朧としていた視界が再び真っ白になった。熱い何かが、身体中から吹き出す感覚の後、敦子は無音の世界に包まれた。

「はぁ……」
 自分自身の荒い呼吸音が耳を支配する中、敦子はそっと目を開けた。ぐったりと投げ出された自分の手足と、そして白い肌を淡いピンクに染めた恵美の謎めいた微笑みがそこにあった。
「ずるい……よ」
 息も絶え絶えでそう言う敦子に恵美は満足げな笑みで応えた。
「なんで? いいじゃない、イク時の敦子の声、すごく可愛いもん……。もっと、聞かせて」
 無邪気さと冷酷さが入り交じった、淫らな宣告。人形のような外見の少女の言葉は、すぐさま行動に移された。
「ちょ……っ、恵美……ひゃんっ」
 力の入らぬ敦子の両膝を、恵美はこじ開けるように抱え込んだ。
「敦子……。大好きだよ」
 おごそかな口調でそう言って、恵美はそのまま、開脚された敦子の濡れそぼった中心に顔を寄せた。
「やぁん、お願い、だめだよ……汚い、ダメ、やだ……」
「何回も、言ってるでしょ……汚くなんか、ないってば」
 敦子の拒否の言葉をはねつけて、恵美はそこに口づけた。
「めぐ……くぁんっ……!」
 ビクビクンッ、と敦子の身体が震え、背筋がびんと伸びる。断続的に、小さく吸い上げる恵美の唇の感触と音がして、そして、暖かくなめらかさを伴った何か、が敦子の亀裂に侵入するのが分かった。
 ピチャピチャ、と細かくそして激しい水音が、耳だけではなく、体内を伝わって敦子に届く。
「あっあっ、いやっ、やだっ……あは、あぁ、ああ、ああぁんっ!」
 骨の髄まで伝わるような快楽の痺れが、音と伴って敦子の身体を支配しようとしていた。まるで別の生き物のようにうごめく恵美の舌は、くるくるとかき混ぜるような動きをしたかと思うと、圧迫するように敦子のクリトリスを弾き、そして舌全体で包み込んで、吸い上げる。リズミカルに繰り返される、恵美の舌技に敦子は何度も顔をのけぞらせ、身をよじって官能の悲鳴を漏らし続けた。
「くぁんっ、あっ、あっ、やだ、おかしくなるよぉ……恵美、お願い、ああ、あああっ」
 脚を閉じようとしても、がっちりと恵美に抱え込まれた脚はびくともしなかった。うわごとのように漏れる自身の淫声が、またしても遠ざかっていき、そして視界がぼやけだす。
「はぁぁ、あ、あ、んぁ、ダメっ」
 言葉にならない言葉が漏れ、そしてがくがくと震える身体。快楽の波に呑まれ、溺れた敦子はいつしか目の端に涙を溢れさせていた。
「敦子……イキそう、なの? 敦子……」
 遠くの方から、かすかに聞こえる恵美の声。そして、小さな官能の頂点が数回、身体の震えを伴って敦子の身体を蹂躙していく。
「あっ、あっ、ああああ……っ」
 絞り出された悲鳴の後、ひときわ大きな官能の波が、敦子の全身を飲み込んだ。ビクッ、ビクビクと激しく敦子の身体が痙攣する。
「はぅ……んっ」
 絞り出された小さな悲鳴の後、敦子の世界は再び無音に支配された。

 しんとしていた世界に音が戻る。すぅっと身体が冷えていく錯覚の後、もやがかかっていた視界が徐々にクリアになっていく。
 思い出したように、ビクン、と身体が震える。敦子はゆっくりと息を吐き出した。
「ん……」
 のろのろと上半身を起こし、浴室の床にべたんと座り込んだ形になった敦子は、向かい合って同じようにしている恵美に一度視線を向けて、そして赤面して俯いた。
 恵美によって二度ならず三度も官能の頂点に導かれてしまった、という事実がとてつもなく恥ずかしく、そして、訳の分からぬ敗北感を覚えて、敦子はやや恨めしげに恵美に視線を向ける。
「なあに?」
 無邪気な笑顔でそう言う恵美は、敦子に顔を寄せると、当然のように唇を重ねてきた。触れるだけの、軽いキス。
「ん……、ひどい」
「え?」
 敦子の言葉に恵美は怪訝そうな顔になった。
「わたしだけ、何回もエッチにさせられてる。ずるい」
 我ながら子供じみた言い方だな、そう思いながらも、敦子は感情の発露を止められずにいた。
「ごめん、でも、敦子の感じてる声とか、顔とかすごく可愛いもん。1回見ちゃうと、何回でも見たくな……っん」
 へらへらと無邪気に言う恵美の唇を、敦子は行動で沈黙させた。やや荒っぽく、そして強く吸うように恵美の唇を奪う。
「んんぅ……」
 恵美のかすかなうめきが耳にはいるが、かまわない。背中に手を回し、体格差を生かしてがっちりと押さえ込んでから、舌先を恵美の唇に押し込んだ。そのまま、恵美の舌に絡めて、さらに強く吸い上げる。
「……」
 弱々しく逆らうような恵美の動きが、ぴたりと止んだ。むしろ、積極的に敦子の身体にしがみつくようにする。
「んんっ……はぁっ……」
 唇を離した瞬間、恵美が漏らしたため息が、敦子の反撃開始の狼煙となった。
 もう一度、軽く唇に触れるようなキスの後、敦子は恵美の耳に唇を寄せた。自分が恵美にそうされたように、耳元に息をゆっくりと吹き込み、反応を探る。
「ふぁぅ……んっ」
 くすぐったそうに身をよじり、眉にしわを寄せて脱力する恵美に、敦子はさらに追い打ちをかけた。舌先で、耳全体をなぞっていく。時折、唇で耳たぶを挟み込んで、舌先でチロチロとくすぐる。
「ぁんっ」
 声を出すまい、と身構えていた恵美が、小さく漏らした声を敦子は聞き逃さなかった。
「恵美も、耳が感じるの?」
 わざとらしい口調で耳元でささやく。くねくねと動く恵美の反応に、敦子の中の何かが首をもたげるのが分かった。そのまま、滑るように唇を首筋に這わせて、舌先でくねくねとなぞるようにした。
「そんなの、わかんない……んやぁ……っ、ふぁぅぅぅんっ」
 子犬が鳴くような悲鳴を上げて、恵美は身体をよじり、震わせた。いやいやをするようにも見える無意味な動きをした手足が、くたっとなって放り出される。
「ここも、感じるみたいだね。恵美だって、すごくエッチじゃない」
 冷たくそう言って、敦子はそのまま、首筋と耳を行きつ戻りつして責め立てた。同時に、恵美の官能のうごめきに合わせて揺れる胸の膨らみに手を伸ばす。
「恵美はいいよね、可愛いだけじゃなくて、おっぱいだって、こんなにおっきいし……」
 手のひら全体で、しなやかに弾き、揺さぶる。やわやわと包み込んで、優しく揉むようにした。
「んんぅーっ」
 ひときわ大きく、恵美のからだがびくんと震えた。切なそうに、眉根にしわを寄せ、半開きになった鴇色の唇からは、荒い息づかいに混じって、声にならぬ官能の鳴き声が漏れてしまう。
「ずるいよ、恵美……。どうして、我慢するの? わたしにだけ、あんないやらしい声、出させて」
 敦子の指先が、恵美の膨らみの先端をそっとつまみ上げた。そのまま、こねるように動く。
「んあっ、ちがっ……ふぅぅんっ」
 一瞬伸び上がるような身体のうごめきの後、恵美は下唇を噛んで顔をのけぞらせた。
「わたしにも、恵美のエッチな声、聞かせてよ。わたしも、恵美がいっぱい感じてる声、聞きたい」
 ささやきながら、敦子はぐったりとした恵美の身体を支えるように背後に回り込んで、両の手で恵美の膨らみを包み込んだ。やわやわと揉み上げるようにしながら、時折膨らみの先端を指先で刺激する。むろん、そうしながらも首筋や耳を責めることも忘れない。
 計算ずくではもちろんない。敦子の中の何かが求めるまま、無我夢中で敦子は恵美を責め立てているのだ。
「んあっ、あっ、やんっ……。あぁぁんっ」
 堪えきれず、身体が伝えるままにその鴇色の唇から漏れる恵美の嬌声を聞いた瞬間、敦子の身体を訳の分からない感動が駆け抜けた。ビクン、とする恵美の官能のうごめきを身体中で受け止める感覚に、脳の奥が痺れたような気がした。
 責めながら、見え隠れする恵美の表情を見る。人形のような可憐な少女が、その白い肌を紅潮させ、荒い息づかいで長い黒髪を振り乱し、官能に溺れていく姿のなまめかしさ。
 切ない表情で目を伏せると、余計に目立つ長いまつげの美しさに、敦子は魅入られていた。同時に、敦子は自分が背徳の官能の虜となったことに例えようのない喜びを感じていた。
「すごく、可愛い、恵美……可愛いッ」
 うわごとのようにささやいて、敦子は強引に恵美の唇に唇を重ねた。よだれが垂れ、頬などにこびりつくのもどうでもよかった。
「んんぅ」
 恵美の苦しげな、かすかなうめきすら愛おしい。そのまま体勢を入れ替え、恵美の身体をゆっくりと押し倒す。一度息継ぎをしてから、再び唇を重ね、吸い尽くす。
「んぁ、はぁっ……」
 ぐったりと横たわる恵美の乱れた黒髪が、床に広がって紅潮した白い肌の美しさを際だたせている。
 耳から、首筋、そして鎖骨から、胸の中央。敦子は容赦なく、恵美を責め続けた。小さく身を震わせ、官能の赴くままに漏れる恵美の声。
「くぁぅっ、あ、あんっ、敦子、敦子ぉ……」
 朦朧とした恵美の小さな叫びが浴室にこだまするのを聞きながら、敦子は恵美の右の膨らみの先端にキスした。そして、唇で挟み込んでやや強めに吸い、そして舌先ですでに固く尖りつつあった先端を転がし、弾く。
「やんっ、あっあっああっ」
 恵美の腕が胸を責める敦子の首に巻き付けられた。高まった密着度に、肌と肌がからみつき融け合うような錯覚を覚えて、敦子の身体の奥底がたぎるような気がした。
 右の次は左、その次は右、と代わりばんこに責め立ててから、不意に敦子は動きを止めた。
「んんっ……。はぁッ、なに……? 敦子……」
 朦朧としたまま、恵美が敦子の方を見る。官能の波に溺れ、とろけきった表情の恵美に敦子はくすりと笑いかけた。
「ふふ、気持ちいいんだ? 恵美……」
 一瞬平静を取り戻し、紅潮した頬をさらに赤面させた恵美は、無言でコクンと頷いた。
「じゃあ、もっと、気持ち良くしてあげる……」
 自分でも信じられないほど、なまめかしさに溢れた声で、敦子は恵美にそう告げた。
 三度も官能の頂点に導かれ、そしてそれが同性の少女によってなされたものであるという背徳の衝撃が、敦子の中に眠っていた官能の素養を引き出し、そしてそれは急速に覚醒しつつあった。
 回数を重ねるごとに上達していく敦子のキスに、恵美は驚嘆しそして、甘い官能の波にただ翻弄されるだけになっていた。
「ん……んんっ」
 官能のただなかにいることを示すうめき声と、時折ビクン、と震える恵美の身体が、それを如実に表していた。
 再び、恵美の膨らみを唇で責めながら、敦子は指先を脇腹からゆっくりと滑らせていく。先ほど自らに浴びせられた愛撫のトレースではあったが、すぐさまそれを再現しなおかつ的確に快楽を与えるあたりは尋常のセンスではない。
「ひゃぅっ……んっ、あっあっあっ」
 くすぐったさ以上に自らを苛む快楽に、恵美は激しく身をよじり、顔をのけぞらせた。がくがくと震える脚が、意志とは関係なく動いてくねる。
 いつしか膝頭に到達していた指先が、なめらかで美麗なラインを描く恵美の太ももを逆に戻っていく。少しづつ、指先でその美しさを愛でるかのように。
「っく、ぁんっ!」
 ひときわ強く恵美の身体が跳ね震える。敦子の熱を帯びた指先が、両太ももの付け根まで達したのだった。
「閉じちゃ、ダメ。なんでしょ?」
 身体の反射がきつく閉じようとした恵美の動きを、敦子の言葉と、力が込められた手のひらが制した。
「……っく」
 羞恥の表情で、身を固くした恵美など、意に介さない様子で、敦子はその体格差を生かして、今度は恵美の脚を開脚させていった。恵美のその部分全体を包み込むようにした手のひらを、じわじわと拡げていき、空いた片手で膝頭を割っていく。
 そうしてかすかに広がった隙間に、敦子はさらに深く手のひらを滑り込ませた。熱く熱を帯びたその部分の感触が、やや湿り気を帯びたものに変わる。
「恵美も、いっぱい濡れてるよ……。わたしが、いやらしい声、あげるの聞いて、興奮しちゃったんだ?」
 恵美の羞恥を煽る言葉を、自然と敦子は口にしていた。
「……」
 無言で視線を逸らす恵美に、敦子は恵美のそこを押さえつける手のひらを、くねらせるようにしてぐりぐりと押しつけた。
「んぁぅ……っ、ぁ、ぁ、んっ」
 軽く滲んでいたぬめり気が、押しつけられた圧力で溢れ、敦子の手に絡みつく。粘りけの音が、かすかに漏れてふたりの耳を刺激する。
「ほら……これ、何かなァ……」
 押さえ込んでいた手のひらを引きはがし、敦子は恵美の眼前に突きつけた。かすかにこびりついたぬめり気が、敦子の手のひらを汚し、きらめかせていた。
「んぁ……、いじわる、しないで……」
 荒い息づかいに混じって、つぶやくように言う恵美に、敦子は胸を締め付けられ、揺すぶられる感動の衝撃を感じていた。
「ふふっ……。やだ。もっと、いじめちゃう……」
 震える声でそう言って、敦子は体勢をずらした。うち捨てられた人形のようになった恵美の脚を、両膝を立てるように開かせる。
「やっ、やぁ、やだ、あつこ、恥ずかしいよぉ……」
 弱々しく抵抗の言葉を口にする恵美に、敦子は冷たく笑いかけた。
「わたしも、ずっとそう言ったよ……。でも、恵美は聞いてくれなかったじゃない」
 敦子の言葉に、恵美は沈黙し、かすかな抵抗は動きを止めた。
「……」
 口をつぐみ、視線を逸らして羞恥に耐える恵美の表情の美しさがたまらない。敦子は、より顔を近づけて、恵美の膝と膝の間に視線を寄せた。
 小柄な体格と、まだ幼さを充分に漂わせている顔立ちとは裏腹に、恵美のアンダーヘアは黒々として、真っ白な肌に鮮やかに刻み込まれているように見えた。そのアンダーヘアの中心部から少し下がったあたりに走る亀裂の周囲が、湿り気を帯びて艶めいている。
 初めて見る他人の秘裂の、グロテスクな艶めかしさに、敦子はかすかに息を呑んだ。
 自然と手が伸びて、そっと亀裂をかき分ける。こみ上げるような淫らな感情と、純粋な好奇心からくるものが、混じり合って敦子を突き動かしていた。
「んっ」
 敦子の指が恵美の亀裂を割り拡げた刹那、恵美の身体がビクッ、と震えて淫らなぬめり気のにじみが一段と激しくなった。溢れんばかりにきらめき、あらわになった淡いピンク色の肉襞をきらめきで彩る。
 自他にかかわらず、女性器そのものを間近で観察したのは初めてだった。アンダーヘアの黒々した輝きと鮮烈なピンク色の輝きが絡み合って、淫らに敦子の視界に飛び込んでくる。
「恵美のここだって、すごくきれいだよ。それに、すごく……エッチな感じする、いやらしくて、大人っぽくて」
 ささやきながら、敦子は指先をぬめり気に溢れる亀裂に滑り込ませた。亀裂の上部に、ぽつりと白く光る真珠のような突起を見つけて、敦子はぬめり気を掬うように指を滑らせた。
「や、んっ……」
 敦子の指の動きに合わせるように、もぞもぞと恵美の腰が揺れる。
「これが……恵美の、クリかなぁ?」
 白々しい口調で言って、敦子はぬめり気を絡みつけた指先でそっとその可憐な突起を撫で回した。
「ひんっ……、やぁッ、あっあっあっ!」
 今まで以上に、激しく、大きく腰を揺らして、びんと背筋が伸び上がった恵美が悲鳴めいた叫びをその愛らしく可愛らしい唇から漏らした。再び、意志を失った脚ががくがくと震え、暴れて揺れる。
 恵美の反応に気をよくした敦子は、指先の動きを撫でるのではなく、弾くように変えた。触れるうちに、固くしこりだした恵美のクリトリスが、一回り大きくなったように感じられる。
「あっ、あっ、あっ、やだ、やめて、あつこぉ、やんっ、おしっこ、漏れちゃ……うっ!」
 うわごとのようにこぼれる、恵美の羞恥を投げ捨てたような悲鳴に、敦子自身の官能も揺さぶられる。
「漏らしても、いいよ……恵美」
 さらに冷たく応じて敦子は、一回りどころか倍くらいに膨れあがったのではないかと錯覚するほどに固く腫れ上がった恵美のクリを、人差し指と親指で挟んでつまんだ。少し力を込め、つまんだままぐりぐりとねじるようにする。
「あぁんっ、やっ、あ、あ、あああっ!」
 敦子の指の中でこねくり回される恵美のクリが、さらに熱を帯びていく。絡みつくぬめり気が、動きに合わせて淫らな水音を立てる。
「はぁんっ、あっあっ、だめぇっ、イッちゃう、あ、あ、やだぁ……っ」
 ビクビクンッ、と恵美の身体が痙攣し、震えるつま先がピンと伸びる。
 そして、糸が切れた人形のように、ぴたりと恵美の動きが止まった。切なさを堪えていた表情が、一瞬で弛緩して、かすかなうめきとともにゆるんだ唇が半開きになった。
 荒く、断続的な短い呼吸に、時折思い出したようにピクン、と震える身体のうごめき。閉じたままの恵美の瞳の端に、かすかに涙がにじんでいるのを見つけて、敦子は唇を寄せるとそれを吸った。
 そのまま、まぶたから、鼻筋、そして頬に優しくキスの嵐を浴びせる。汗ばみ湿り気を帯びた恵美の上気した肌の感触が心地よかった。
「イッちゃったの……? 恵美」
 優しくそう問いかける敦子の表情からは、未だ淫らな欲望のきらめきが消えてはいない。
 息も絶え絶えの状態で、眼前に横たわる美少女の姿に、敦子の中に芽生えた欲望と、性的な好奇心、探求心にも似た何かが、さらに火をつけられ燃えさかっていく衝動となった。
 世界で一番、愛おしく感じている少女を、もっと淫らに、感じさせてみたい。
 衝動のままに、敦子はぐったりと、だらしなく投げ出されている恵美の両膝を抱えて、持ち上げた。
「ん……」
 意識があるのかないのか分からぬ恵美の唇から、かすかにうめきが漏れる。
 おしめを替えられる赤子のように開脚され、むき出しにされた恵美の亀裂は、淫裂へと変貌していた。淫らなぬめり気が、花が開くように割れて開いたピンク色の肉襞から、こぼれんばかりに溢れかえり、その周囲を鈍く輝かせ光る。
 そして、かすかに漂う、むっとするような香りが敦子の鼻をついた。その瞬間、更なる高ぶりを感じて、敦子はそっと息をついた。
「もっと……もっといっぱい、イかせてあげるね、恵美。愛してる……」
 ささやいて、敦子は恵美の淫裂にゆっくりと口づけた。世界で一番、尊いものに捧げるかのように。
 少女らしからぬ、黒々としたアンダーヘアに触れる。意外にも柔らかな感触をしばらく堪能してから、敦子は恵美の淫裂に口づけて、そしてついばむように数回、キスする。
「んぅっ……」
 恵美がかすかにうめきを漏らした。だが、かまわずに敦子は唇を密着させる。にじみ溢れた恵美の淫らなぬめり気を、すすって吸い込んだ。
 かすかな酸味と塩気、そして、喉に絡みつくような感触が口中に広がる。
 舌先を伸ばして、淫裂に差し込んだ。そして、あの写真集のように、恵美が自分にそうしたように、すすりながら、舌先を細かく動かしてねぶりあげる。
「……んぅっ、ぁ、あんっ! ぁ、ぁ、あっ!」
 急速に湧き起こった快感に半気絶状態だった恵美の意識が覚醒し、そしてまた快楽の陥穽に堕ちていくのが分かった。
 舌先で、淫らなぬめり気を絡み取る。そして淫裂の肉襞をねぶり回し、かき混ぜる。ピチャ、ピチャ……と音を立てながら、敦子は無我夢中で恵美の淫裂に愛を注いだ。
「やっ、ダメ、あああっ……、あつ……こっ、やんっ」
 太ももを閉じようとしても、がっちりと押さえ込まれ、間に挟まっているようにみえる敦子の顔に邪魔されてしまう。
 かき混ぜ、つつき回す舌先のうごめきに、恵美の腰が激しく揺れて、身体全体が震える。
「あぁ……んっ、いやっ、あっ、あっ、だめぇ……!!」
 無意味な叫びをあげて、恵美が何度も顔をのけぞらせる。
 敦子は、唇全体で包み込むようにしてから、もう一度恵美の淫列をすすり上げた。同時に、差し込んだ舌先をリズミカルに、かき混ぜるように上下に動かすことも忘れない。
 固く尖った恵美のクリトリスが、舌の上で跳ね、転がる感触と、自分の唾液と混じり合い増量された淫らなぬめり気の酸味が心地よい。舌先を動かすたびに、かき混ぜる水音が激しいものになって浴室に響き渡っていく。
「あっ、あっ、やぁッ、ダメ、だめぇっ……」
 太ももを閉じようとする力がぐっと強くなって、恵美の身体が伸び上がる。それを押さえ込んで、敦子は恵美の淫裂をすすり続けた。
「はあぅ、んんーっ」
 語尾が消え入るようになった恵美の声が浴室に轟き渡る。暖かな何かが噴き出るような感覚の後、ぬめり気に混じる酸味が強くなっていく。
 背筋をびんと張った恵美の身体が数回、強く痙攣した。
「っあぁ……」
 つぶやくような、ため息混じりの声が漏れ、そして、恵美の身体から力が失われた。
 身体を支配する緩やかな虚脱感に、二人の少女はしばし口を利くことができなかった。
 少し冷えた身体を、暖かな浴槽に二人つかって暖める。溢れる湯と、ふたりの身体で浴槽がいっぱいになった。
 向かい合って座りあった敦子の脚の間に収まるようにしゃがんだ恵美の周りの湯が、不意に揺れた。
 敦子にもたれかかり、自然と抱き合う形になった少女たちは、そうすることが当然のように、お互いの唇を重ね、ついばみあった。
「ふふ……っ」
 息をついた敦子の口から、自然と笑みが漏れる。
「なあに?」
 恵美が、敦子の笑みに小首をかしげながら、上目遣いで見つめる。
「ううん。違うの。すごく……嬉しくて」
 言いながら、恵美の身体を引き寄せ、密着させる。応えるように、恵美は敦子の首筋に顔を埋めた。
「うん。私も、うれしい……」
 頬擦りするような、恵美の肌の感触の心地よさに身をよじりながら、敦子は恵美の長い黒髪を撫でつけた。
「大好き、だよ。敦子……」
「わたしも、恵美が、大好き……」
 言葉を重ね合ってから、少女たちは再び唇を重ね合った。

(プラネタリウム 第1話 終)

最終更新:2006年09月08日 15:11