10年前、行き着くところまでいった敦子と恵美の幼い背徳の淫情は、肌と肌が触れあい、心と心が絡みつくだけでは収まりがつかなくなっていた。どんなに触れあっても、形になるものが残らない。そういう思いがどんどん強くなっていくのを、二人は堪えきれなくなりつつあった。
『わたしたちってさ、これから……どうなるの、かな?』
きっかけになったのは、あるとき不意に漏らした敦子の言葉だったのだ、と今では分かる。
深い考えがあったわけではない。ふとしたときにこぼれた感情のほころびが、ふたりの心に染みついて離れなくなったのだった。
”今は、こうしていられる。しかし、いつまでこうしていられるのだろうか”
先の見えぬ思春期の不安定な空気に漂い、酔っていられる間はよかった。だが、高校進学という形で現実的な将来、というものが形になって見え始めたとき、漠然とした不安感が二人を包み込んだ。
気付いたときすぐ傍にいた”将来”というリアルな現実を感じた怯えは想像になって恐怖となった。
”いつかふたりは別々になる。そして、お互いのことは過去のものになる”
今は背徳の空気を共有していても、いずれそれは消え失せて無くなってしまうのではないのだろうか。
成人した今だからこそ分かる、相哀れむものの傷の舐め合いから始まった心の繋がりであったことが、そのことに拍車をかけた形になった。
そして、その答えを見つけたのは恵美だった。
いつものように、恵美の部屋での睦み合いが始まろうかというとき、緊張しきった表情の恵美が取り出したもの。
隆起した男性器を模した、シリコンゴムとプラスチックの集合体。2本のそれが、Vの字状に二股になって繋がっている。グロテスクかつ毒々しい鈍い光を放つおぞましさに溢れた物体に、敦子のみならず取り出した恵美でさえも、しばし絶句して顔を見合わせ合ってしまう。
『ど、どうする……の? これで……』
おずおずと、震えてしまう声で、そう聞いた敦子に、恵美は、泣き笑いにも似た表情で、その目的を告げた。
互いの処女を捧げ合う。
痛みを伴う儀式こそが、永遠に刻み込まれる形となる。とそこまで考えたわけではなかったが、幼さゆえの激しい感情の揺らぎは、ふたりにそれを必然のものだと思いこませた。
ふたりの処女にとって、おぞましく禍々しいきらめきに溢れたそれを使ってでも。
『今は、こうしてるけど、そのうちに、ふたりとも男の人と付き合うようになって、そして……』
今となっては漠然としたものでしかない危機感は、その時の二人には間近に迫る影となってしまっていたのだ。
そして、それはすぐに実行された。
激しく、重く鼓動する心臓の音に支配された世界の中で、恵美は、先に自分からそれを入れることを決めた。
『舐めあいっこ、しよ……』
つたなく偏った知識ではあるが、どうすればいいのか、程度の理解があった二人は、お互いの亀裂をその舌先でほぐし、潤ませあった。
互い違いになって、俗に言うシックスナインの体勢を取った二人は、怯えにまみれた心を、快楽で中和させるかのように、舌先で亀裂をえぐりなぞり合う。
『んんっぅ、ああっ、んんぅぅっ』
『ンくぅ……、ふぅぅんっ』
ぶつけ合うような愛撫に、こもったうめきを漏らしながら、やがて二人は同時に達していた。
充分に濡れそぼりほぐれたであろう頃、改めて二人は向かい合ってお互いを見つめ合った。
『入れる……よ、恵美……』
『来て……』
紅潮した頬、潤んだ視線が絡み合う。
無言で、コクンと頷いて、恵美は瞳を閉じた。
溢れるぬめり気を、絡みつけ、そして、敦子は恵美の亀裂に握りしめた”それ”をあてがった。
きつく、ふさがっているようにも思えるそこへ、ゆっくりと、押し込んでいく。
『痛……いっ! あつこ、んんぅっ』
苦しげなうめきを漏らす恵美に、思わず敦子の手が止まる。
『ダメ、続けて、敦子。……止めないで……っ』
痛みに自然と逃れようとする身体を、自ら押さえ、シーツにしがみついて苦悶の涙を流す恵美の姿に、敦子もいつしか目を潤ませていた。
『でも……、でも……っ、恵美、恵美ぃ……』
潤んだ視界の中で、恵美は戸惑う敦子に檄を飛ばした。
『続けて。そうしなきゃ、私たち……』
涙に声を詰まらせた恵美に、敦子は固く目を閉じた。震える手に力を込め、一気に押し込む。
『くぅぅっ、あぁぁっ! あつ……こっ』
悲鳴にも似たうめきが漏れ、そして微かな、糸が切れるような音とともに、敦子の手の中のものが、恵美の中にぬるり、と押し込まれた。
『恵美……? 恵美っ、大丈夫、大丈夫っ……?!』
それだけを口にして、敦子も声が出なくなった。両手で口を押さえて絶句する。
まるで突然恵美のそこに男性器が発生でもしたかのように、Vの字の片割れが隆起してそびえ立っている。そして、その根本には、にじみ出て絡みつく処女の証が、赤い筋が走ったかのように幾筋も流れていた。おぞましくも淫らな光景に、敦子の頭が真っ白になる。
苦痛を堪えて、短く荒い呼吸のまま、恵美が涙にまみれた瞳を開けた。
『敦子……いい?』
起きあがって、よろよろとベッドに座り込む恵美に、敦子は絶句したままコクンと頷いた。
重苦しく轟く胸の鼓動に、軽い吐き気を覚えなから、敦子は自分の身体を横たえた。
『来て……。恵美、来て……』
うわごとのようにささやくと敦子も目を閉じ、その瞬間を待った。
『入れる、ね……』
恵美の震える声のあと、痛みを伴った圧迫感が股間に走る。敦子も、シーツを握りしめて逃れようとする身体を押さえ込んだ。引き裂くようなそれでいて鈍い痛みが、そこを中心に湧き起こった瞬間、あの糸が切れたような音が聞こえた。
『つぁ……あっ、あぁぁっ』
覆い被さる恵美の身体に、手を回ししがみつく。体重をかけて押し込まれた異物を、身体が受け入れた瞬間、熱く鈍い痛みが、新たに敦子の身体を蹂躙した。
『くぅぅっ、ああああっ』
『んんぁ、ああっ』
体重がかかって、圧迫感とともに訪れた熱く鈍い痛みにふたりの苦痛のうめきがこぼれる。
敦子も、恵美も、互いに泣き笑いのような表情になって、しばらくそのまま見つめ合った。
お互いの身体に根本まで埋め込まれたそれを介して、ふたりのからだが繋がっている。今までとは違う密着の感覚に、訳の分からない感動が、ふたりの胸を締め付けて揺さぶった。
じんじんとした鈍い痛みが、そこを中心に湧き起こる感覚と、内臓をえぐり込まれるような、圧迫感と異物感。それらが混じり合い、ふたりの身体を痺れさせる。
『ねぇ、敦子……。私、たち、一つに、なったんだよ、ね?』
荒い息のままささやく恵美の表情はとても美しかった。その美貌に胸を打たれ、敦子の瞳からもさらに涙が溢れかえる。
『そぉ、だよ……。恵美……。わたし、たち、ひとつに、なってるん……だよっ』
息も絶え絶えの口調で言いながら、二人はそのまま、唇を重ね合った。溢れる涙と涙が絡み合い、一つになってふたりの頬を流れていく。
この瞬間、ふたりの秘め事は、永遠のものとして刻み込まれた。敦子と恵美、二人の少女の間で。少なくとも、敦子はそう思っていた。
それから数日後、恵美は自ら命を絶った。
ネットで手に入れたらしい睡眠薬を大量に飲み、締め切って目張りをし密閉した自室で、練炭に火をつけて、永遠の眠りについた。
なぜ、恵美が死を選んだのかは、誰にも分からなかった。遺書などは、一切残されていなかったからだ。
その時の敦子にとっても、恵美が自殺したことは想像を絶する出来事だった。
担任教師の口から、そのことを聞かされ、自殺の原因に心当たりはないかと問われても、茫然自失となった敦子には答えようがなかった。
”なぜ?”
敦子こそが、そのわけを知りたかった。あの数日前のふたりの睦み合いはいったい何だったのか。
恵美の死に顔は、まるで眠っているかのようだった。もともと白い肌が透き通るほどの白さをみせ、人形のように棺に納められた恵美を見れば見るほど、敦子にとって少しも現実の光景とは思えなかった。
表面上、クラスでは単に親友だと思われていた敦子は、クラスメイトたちが同情し、慰めでかけてくれる言葉を聞いても、涙すら出なかった。
『アンタ……。恵美と仲良かったんだって? よくうちに来てたようだけど……まさか、付き合ってたとかってんじゃ、ないでしょうね?』
葬儀のあと、偶然二人きりになった席で、恵美の母親は、あざけりを表に出した口調で敦子にそう言った。
『だったら、どう、なんですか?』
微かに沸いた怒りが、敦子に反論させた。いかに忌避していたとはいえ、我が子が死んだ母親が取るべき態度ではない。
敦子の言葉に、恵美の母親はうつろな視線とあざけるような笑い声で答えた。
『正気じゃないね、恵美も、アンタも。正気じゃないよ。よくそんなこと、堂々と言えたものね。私からすれば冗談じゃないんだ、あの子のおかげで、私はどこまでも恥をかかされて……』
いつしか激昂した恵美の母親に、敦子は制服の胸ぐらを掴まれていた。首を絞めかねない恵美の母親の行動は、葬儀社の社員に止められ、敦子は葬儀の場をあとにした。
その後、敦子は恵美の母と会うことはなかった。いつの間にかマンションを引き払い、転居していた恵美の母の行方に、敦子は何の興味もなかった。
その後、担任から恵美が街の外れにある墓地に納められた、と聞いても敦子はそこに行かなかった。
恵美の死を受け入れられぬまま、敦子は中学を卒業し、志望していた高校に進学した。
時が経ち、恵美と過ごした日々が過去のものになっていっても、悲しみ、という感情は自分でも不思議なくらい感じることができなかった。ただ、心のどこかにぽかんと穴が空いたような喪失感だけが、敦子の心を支配していた。
恵美の死後、敦子がそのあとを追うようなことにならなかったのは、両親にも見捨てられた恵美と違って、敦子には家族という支えがあったからだ。もし敦子がまったく恵美と同じ境遇の少女ならば、とっくの昔に恵美と同じ道を選んでいたに違いなかった。
しかし、家族の存在があっても、敦子の中に存在する喪失感までは、埋めてくれるものではなかった。
進学した高校が女子校だった敦子は、心の飢えを埋めてくれる存在を探し続けた。
まるでかつての恵美そのままに、恵美と似た少女たちと知り合いになっては、飢えた心と身体を癒すために誘惑と籠絡を繰り返した。そんなことができたのは、女子校という閉鎖的な空間だからこそあり得る少女たちの擬似的な恋愛への憧れと、敦子の中に存在するある種の”歪み”が魅力となって同種の飢えにとらわれた少女たちを引きつけたからだろう。
だが、いくらそんなことを繰り返しても、敦子にとって恵美に変わる存在は出現しなかった。
身体が、肌が感じる飢えを一時的に埋めることはできても、敦子にとっては、恵美は唯一の存在だったのだ、という自覚と後悔に苛まれるだけだった。
そうして、心が求めるものを埋めることができないまま、5年が過ぎていた。
大学生になっていた敦子は、自分の心の隙間を埋めるために、ありとあらゆる手を尽くしていた。
陳腐な発想だったが、身体を動かすことで何かが解消できるのでは、という思いから剣道部に入部したり、ふと興味を持ったバイクの免許を取得した。あるいは、異性と交際することで自分の中の歪みを矯正できるのではないか、そう思いゼミの友人から男性を紹介してもらうなどしていた。
”いつまでも、こんなことをしていては、いけないんだ”
そういう思いは、しかし結果的には成果を上げることはなかった。
剣道部やバイクは、没頭している間はいいものの、それだけを常時続けるわけにはいかないし、”まっとうな男女の付き合い”は敦子の心に深く刻み込まれた澱を取り除くことには、繋がらなかった。かえって敦子の心に負担をかけることになった。
心が病む寸前にまで追い込まれて、敦子は思い知らされた。自分が、無駄なあがきをしていたことに。
”……やはり、わたしには恵美を忘れることは、できないんだ”
そういう思いが全身を包み込み、心と身体の渇きを感じるたびに、敦子は高校の時以上に背徳の恋に溺れることになった。ネットで知り合って出会ったり、高校の時同様、自然とにじみ出る敦子の背徳の歪みの魅力に引かれた女たちと、肌を合わせ身体を交わして、一時的な飢えをしのぐことに没頭した。
あきらめと退廃に支配されきった敦子の心は、いつまでもさまよい続け、迷い続けていた。
そんなとき、敦子は一人の少女と出会った。
2年の時から続けていた家庭教師のアルバイトで、3人目に受け持った少女と初めて対面した時、敦子の身体に電撃にも似た何かが走るのが分かった。
『はじめまして……。阿佐谷めぐみ、です。よろしくお願いします』
小柄で、可憐な全体の印象。つややかな長い黒髪は毛先できっちりと揃えられ、ノーブルで上品な少女の雰囲気に一役買っている。そして、透けるような白い肌をほんの少し紅潮させ、くるりとした瞳を彩る長いまつげ、緩やかで美しい曲線で描かれた鼻のラインと、淡い鴇色の小振りな唇が、あでやかにきらめいている。
名前もそうだが、何より敦子を驚かせたのはめぐみがかつての恵美とうり二つだったからだ。勝ち気だが寂しがりやの性格、そしてふとしたときに見せる小首をかしげる癖と、可憐で美しい笑顔。かつての恵美そのままの少女が、時と場所を越えて敦子の眼前にその姿を現した刹那、心と身体が熱くなり、自然と溢れそうになる涙を堪えるのに、必死になった。
それからめぐみの家に行くたびに、心が揺すぶられ胸をかきむしるような慕情と、身体が覚えている暖かな肌の感触に淫情が走る。
敦子は自分の中に湧き起こる感情の澱みを懸命に押さえ込んだ。いかに恵美とうり二つといっても、アルバイト先で問題を起こすような真似はできない。懊悩を胸にしまい込み、敦子は5才年下の少女に勉強を教えることに専心した。
そして、めぐみに教えるのもあと1週間を残すのみ、となった日のことだった。
その日は、連休を挟んだ週末で、アルバイトは休みだった。特にすることもなく自分のワンルームでぼんやりと過ごしていた敦子の部屋のインタフォンが、唐突に訪問者の訪れを告げた。
『誰……?』
つぶやいて敦子は時計を見た。夜遅くにいきなり押しかけてくるのは大抵酔っぱらった剣道部の後輩たち、と相場が決まっている。だが、時計の針はまだ午後10時を少し回ったくらいだった。後輩たちにしては少し早い。
『はーい、誰ー?!』
玄関口の灯りを点けて、敦子は大声で呼びかけた。
『こんばんは……。あの、私、です』
『へ?』
か細く、寂しげな声に敦子は意表をつかれた。チェーンロックをそのままに鍵を開けてドアを少し開ける。
『……! めぐみ、ちゃん?』
少し開いたドアの隙間から覗く不安げな少女の顔に、敦子は一瞬絶句した。慌ててチェーンロックを外し、ドアを完全に開く。
『どうしたの……? こんな、時間に』
『ごめんなさい、先生……』
玄関口の灯りではっきりと照らされためぐみは、泣き腫らした目をしていた。その表情を見るだけで、胸がときめく。
『とにかく、ここじゃなんだから、入って』
敦子に促され、めぐみは小さく詫びを言って室内に入った。ベージュのショートコートに白のハイネックセーター、小豆色のフレアスカートに黒のタイツといったいでたちのめぐみは、長い黒髪をポニーテールにしている。
『くるって分かってたら、もうちょっと片づけたんだけど……。散らかっててごめんね』
めぐみの表情から何かあったと感づいた敦子は努めて明るい口調でめぐみに応じた。
『ごめんなさい、私こそ、突然来ちゃって……』
『いいよいいよ、いつでも遊びに来ていいよっていったのわたしだもんね、気にしないで』
ばたばたと部屋を片づけ、めぐみを座らせると敦子はキッチンに立った。
『紅茶でいいよね? インスタントだけど』
『あ、はい、あの、ごめんなさい、先生……』
てきぱきと紅茶を入れる。突然の来訪に驚いたものの、めぐみが自室にいるという事実が敦子の胸の片隅にうきうきとした気持ちを沸き立てていることに気付いて、敦子は小さく深呼吸した。
自制の念を心中で繰り返しささやき、浮き立つ心を落ち着かせる。
『……それで、いったいどうしたの? 何か、あったの?』
部屋の中央に置かれた座卓を挟んで、めぐみの反対側に座った敦子は”理性的な家庭教師”の役を演じることに専念した。
『……お母さんと、喧嘩、しちゃって……』
俯いたままつぶやくめぐみは、敦子の反応を確かめるように上目遣いで敦子を見た。
『喧嘩……?』
原因は、進路に関することだった。進学校に進ませたいめぐみの両親の意志に反して、美術系の学校に進みたいと思っていためぐみは、そのことで母親と言い争いになり、決裂した交渉はめぐみを深夜の街へ飛び出させることになったのだった。
『……お母さんは、めぐみちゃんのためを思って、言ってくれてるんだから……喧嘩しちゃだめだよ……』
ありきたりなことしか言えない自分にやや閉口しながらも、敦子は恵美をやんわりと諭した。
『……私も、それは分かってるんです。だから先生にもお願いしたんだろうし……。でも、私の話を全然聞いてくれなくて、それで……』
スカートの裾をいじりながら、めぐみは俯いていた顔を上げた。
『先生、お願いがあるんですけど……』
『なあに?』
紅茶をすすりながら、敦子は真剣な目をしためぐみをじっと見た。次の一言を待つ。
『……今日、一晩だけ、先生の家に泊めてもらって良いですか?』
飲み込んだ紅茶を吹き出しそうになりながら、敦子は目を丸くした。
『えっ、それは、その』
『私……今日はもう、家に帰りたくないんです、お母さんと顔合わせると、また喧嘩しちゃいそうで……。だから、今日泊めてもらって明日になったらちょっとは気持ちが落ち着くかなって』
めぐみ少女の言葉に慌てた敦子は一瞬口ごもった。
『……でも、そんな、だめだよ……ご両親が心配されてるだろうし。それに……』
もそもそと言いながら、敦子は必死に揺れる自分の心を抑えにかかった。
『お願いします……! 私には、先生だけが頼りなんです』
理性を揺さぶるめぐみの言葉に敦子は激しく動揺した。本音を言えば、泊めたいに決まっている。だが、その本音を実行するわけにはいかなかった。
『ダメ、だよ、そんなの……。お家に帰りなさい、先生が、送っていくから……』
感情を抑えようとして、声が震える。涙ぐみそうなめぐみの表情に胸を打たれて、敦子は視線を逸らした。
めぐみと二人きりで夜を過ごす。そんな状況に置かれて、抑えている淫情のときめきを我慢できるはずもない。敦子は、自分の中に潜む背徳の業を呪いたい気持ちになった。
沈黙が二人の間を支配する。時計の針の微かな音だけが、漂っていた。
『……わかり、ました。もぉ、いいです』
ややあって口を開いためぐみの、怒りに満ちた言葉に、敦子は視線をあげた。
『……そう、ですよね。先生は、アルバイトで、家庭教師、してるだけですもんね、そこまで……する必要なんか、ないですよね……』
諦めまじりの軽蔑に似た視線をめぐみから向けられて、敦子は心が凍えるのが分かった。
『待って。それは、先生だって、泊めてあげたいけど……。でも、ダメなの、お願い、分かって』
立ち上がり部屋を出ようとするめぐみに敦子は必死になった。前に立ちふさがろうとする敦子に、めぐみはきっとした視線をあげた。
『先生も、お母さんと同じだよ、私のことを、分かってくれないんだ』
かたくなな少女の言葉に、敦子は自制を失ってしまっていた。
『分かってるよ! もっと分かりたいって思ってるくらい。でも、あなたを泊めちゃったら、わたしが、わたしが自分の気持ちに抑えが効かなくなっちゃう……。わたしは、めぐみちゃんのことを……』
苛立ちが敦子に言葉にしてはならないことを口走らせてしまっていた。慌てて、口を押さえる。
『えっ……』
目を見開いて自分を見るめぐみに敦子は視線をそらした。これで、終わりだという諦観が敦子の頭を支配する。
『……どういう、ことですか?』
めぐみの言葉に促されるように、敦子は視線をめぐみに向けた。押さえ込んでいたものが解放されて、敦子の膝が笑う。全てを知れば、めぐみは自分の元から離れてしまうだろう。だが、これが運命だったのだ。
痺れたようになってしまった頭の奥で、そんな考えがよぎり、敦子は自然と口を開いていた。
『これを言うことは、わたしにとって、あなたとお別れになることだから、言うつもりはなかった。けど、もう今そんなこと言っても、どうしようもないから言うね』
敦子は目を閉じて息を吐いた。一瞬沈黙したあと、目を開けてめぐみに視線を注ぐ。
『初めて、会ったときから、あなたのことが気になって仕方なかった。わたしが、昔付き合っていた女の子にとてもよく似ているから。あなたはあなたで、わたしが好きだったあの子じゃない。分かっているんだけど、でも、あなたに教えに行くたびに、わたしの中で気持ちが、好きだって言う気持ちが抑えきれないくらい、高まっていくんだ』
一言も言葉を発さず、目を見開いて自分を見つめるめぐみに敦子は照れ隠しのような微笑みを浮かべた。
『ごめんね。あなたには、よく分かんないよね、こんな気持ち。普通じゃないもの、女なのに、女が好きだなんて。でもね、でも……』
言いながら、視界が涙でぼやけ、声が詰まってしまう。それ以上、喋れなくなり、敦子は溢れる涙を指先で拭った。
『ごめん。明日、本部に電話して、あなたの担当を外してもらうね。あなたに、めぐみちゃんにとてもひどいことをしてしまった。本当にごめんなさ……』
『やめて、先生。やめて……』
涙声のめぐみの声が、敦子の言葉を遮った。
『そんなこと、言わないで。私は、先生に……代わって欲しく、ないよ……』
めぐみの言葉に、さらに溢れそうになる涙を、敦子は懸命に堪えた。
『……ありがと。そう言ってくれて、すごくうれしい。でもね、わたしはもうあなたの家庭教師をすることはできないよ。分かるでしょ』
敦子の言葉に、めぐみは無言で首を振った。
『いやだ。私は先生に代わって欲しくない。だって……だって』
めぐみも、涙で言葉を詰まらせた。溢れた涙が、長いまつげを彩り、少し紅潮した頬を伝って流れる白い輝きとなった。
『めぐみ、ちゃん……?』
敦子はめぐみの言葉を訝しんだ。めぐみは、何を言おうとしているのか。
『だって……私も、先生のことが、すごく好きなのに』
『えっ……』
あり得ないはずのめぐみの言葉に、敦子は自分の耳を疑った。
めぐみは今、なんと言ったのか。
『ウソ……。うそ、よね?』
敦子が口をぱくぱくとさせながらそう言うと、めぐみは首を振った。
『嘘じゃないです。今の、私の、本気の気持ちです』
涙ぐんだまま、しかし毅然とした表情で、めぐみはきっぱりとそう言った。
『先生と、初めて会ったとき……身体に、電気みたいなのが走ったの。なんでなのか、その時はよく分からなかった。でも、それから先生がうちに来るたびに、心が苦しくなって、胸が熱く、重くなって』
めぐみにとってそれは初めての経験だった。時間が来て、敦子が帰るたびにこみ上げる寂しさとつらさ。
『私、分かったんです。私は、先生のことが、普通じゃないくらい好きなんだって』
そこまで言って、再びめぐみの瞳からはらはらと涙が溢れるのが分かった。
『……だから、今、先生が、私のことが、好きだって言ってくれて、すごく……嬉しかった。私と、同じ気持ちだったんだって。だから、やめるなんて、言わないで……』
心が震え、感情が爆発してめぐみは泣きじゃくった。
『めぐみ、ちゃん……。ごめん、ごめんね、ごめんなさい……』
敦子は、泣きじゃくるめぐみを抱きしめた。胸に押しつけて、背中を優しく撫でていく。
『めぐみちゃんが、泊めて欲しいって言ったとき、ほんとは泊めたかった……。あなたと、二人きり、誰にも邪魔されずに一緒にいられる。でも、でもね、もしそうしてしまったら、わたしはめぐみちゃんにとても……ひどいことを、してしまうかも知れない。だから、だからわたしは……』
胸の中のめぐみが、涙に濡れた顔を上げた。
『先生。先生になら、私何されてもかまわない。だってそれくらい、それくらい好きなんだもの……』
一途な少女の心の叫びを聞いて、敦子の中にあった自制という名のくさびがもろくも崩れ落ちた。
『めぐみ……ちゃん。恵美……』
この数年間、ずっと求めていたものが、今ここにある。そんな実感が敦子の心と身体を震わせた。
吸い寄せられるように、敦子はめぐみの唇に自分の唇を重ねていた。
めぐみの自宅に連絡を入れ、事情を説明した敦子は恐縮するめぐみの母親に微かな罪悪感を感じながらも、めぐみを泊める旨を告げて、電話を切った。
『さて……』
ため息をついてから、急にこみ上げてきた訳の分からない緊張感にどぎまぎしながらも、敦子はめぐみに向き直った。
『えへへ……』
それはめぐみも同様らしく、無意味な照れ笑いとともに一瞬沈黙する。
『……お風呂、入ろっか?』
『は、はい……』
恥ずかしさからだろうか、目を伏せて軽く赤面しながらぽつりというめぐみを敦子は可愛いと思った。
お風呂といっても、敦子のワンルームにあるのはシャワールームに毛が生えたようなごく小さなユニットバスで、二人で入るにはいささか手狭ではあった。だが、狭さゆえに必然的に密着せねばならない状況が、ややめぐみの心を軽くしたらしかった。
『ふふっ、狭くってごめんね』
先に全裸になって、めぐみを招き入れた敦子は笑いながらそう弁解した。
敦子同様、全裸になっているものの、羞恥からか両の腕で覆い隠すようにしながら、めぐみがおずおずと入ってくる。
『女の人とお風呂にはいるだけなのに、なんだか緊張しますね……』
『好きな人と入るから、緊張、するんだよ』
敦子が笑顔でそう言うと、めぐみは少し笑った。
『先生も……緊張してますか?』
シャワーの湯を調整し終わって、フックにかけると、シャワーの水音ともうもうたる湯気が漂う中、両手を拡げてめぐみを自分の胸に招いた。
『……おいで、めぐみ』
緊張感からくるよそよそしさを取り払うため、あえて呼び捨てにする。頬を紅潮させ、少しとろんとした表情のめぐみは、その敦子の呼びかけに導かれるように、敦子の胸に顔を埋めた。
『ほら……心臓の音、すごくなってる、でしょ?』
ゆっくりと、包み込むように抱きしめて、敦子はめぐみの頭を自分の胸に押しつけた。
密着し、柔らかな肌と肌が触れあう感触に震えが走る。恵美がいなくなってから、誰と肌を重ね、抱きしめあっても得られなかったものが、間違いなくここにある、その感動に敦子の目頭が熱くなる。
『……本当、だ。すごく……ドキドキ、してる……。なんだか、すごく……うれしい』
身体を伝わってくるめぐみの声に、弾んだものを感じて敦子は少しだけ抱く力を強めた。
『先生……』
胸の中で、見上げるめぐみが目を閉じていく。キスをせがむときの恵美は、いつもこうだったな、と思い出しながら、溢れる涙を堪えようともせず、敦子はめぐみのそれに唇を重ね、吸った。
『んんぅ……』
舌先でめぐみの唇をなぞって、撫で回す。圧力に負けて開いていく唇に、ゆっくりと舌先をねじ込んだ。
『んっ……ン』
初めての体験に、めぐみの身体が震え、力が抜ける。支えながら、敦子は手慣れたテクニックでめぐみの唇を蹂躙していった。抑えていたものが解放されて、歯止めが利かなくなっていた。
同時に、身を固くしているめぐみの肩や背中を優しく撫でていく。くすぐるのにも似た丁寧な指使いで、まだ未成熟な性感しか持たない少女をじっくりととろけさせていく。
『ん……、んっ、はっぁ……』
苦しい呼吸が自然とめぐみの瞳に涙をにじませていた。真っ赤に染まった頬と首筋、そして隠しきれない荒い息づかいに敦子の官能が刺激される。
『可愛いッ……めぐみ……』
ささやいて敦子はめぐみの首筋に唇を這わせた。唇で微かに触れながら、じわじわとなぞり、そしてちろりと舌先を出してはそれをくねくねと這わせてめぐみの反応を見る。
『あっ……んんっ、ひゃぅんっ』
ポニーテールの髪を揺らしながら、切なげに目を閉じ、眉根にしわを寄せてめぐみが顔をのけぞらせた。まだくすぐったさの方が勝るはずだが、それでもじわじわと官能に変化していく感覚に戸惑いとときめきを感じているのが初々しい。
『こんなこと、されたの、初めて?』
『えっ……、あんっ、は、はひ……っ』
ささやきながら敦子が耳に攻撃を移すと、めぐみの身体が鋭く震えて、小さな叫びがこぼれてしまう。耳孔に軽く息を吹きかけ、舌先でなぞってつつく。それに合わせ、ビクビク、と身体を震わせためぐみは力なく敦子の身体にもたれかかるようになった。
くたっとしためぐみを背後から支えるように抱きながら、敦子の両手の平は脇の下から潜り込んで、かつての恵美以上にふくよかに感じられる両の膨らみを包み込んだ。敦子とて、少女時代よりは肉付きのある、女性らしい身体になったが、かつての恵美には結局届きもしなかった。
恵美がいなくなってから身体を合わせた相手からは、これくらいのほうが将来垂れなくて良い、などと慰めをもらったこともあったが、敦子としては自身の体型には不満が残る。
そんな軽いコンプレックスが転換された嗜虐心を敦子はめぐみに対しても隠すことができなかった。
『いいなぁ……めぐみは、こんなに、おっぱいおっきいんだね……うらやましいよ』
耳元でささやきながら両の手のひらをうごめかし揉み上げる。
『えっ……でも、んっ、そんな、こと……んーっ』
恥じらいの羞恥と実際の体感にビクン、と身体をのけぞらせて、めぐみは首をくねらせた。敦子の手のひらと指先が、やわやわと揉みし抱き、刺激に反応しだした先端を転がしつまみ上げる。
『こんな風に、されたら、どう?』
『ぁっ、どぉって……ああんっ』
熟練のテクニックが未成熟なめぐみの官能をどんどん引き出していく。こぼれた嬌声がそのことを如実に表していた。震える脚をすりあわせ、腰をくねらせてしまうめぐみの反応に敦子は満足げに笑みを浮かべた。
右の手のひらを、膨らみからゆっくりと下半身に滑らせていく。胸の中央から、おへそ、そして軽く脇をくすぐってから腰骨のラインをなぞって、くねるめぐみの隙に乗じるように恥骨からアンダーヘアに手のひらを滑り込ませた。やはり、黒々として茂るヘアの感触にときめきを感じて、敦子はしばらくそれを弄んだ。
『ふぁっ……んっ、ぁんっ、あ、あ、んんっ』
敦子の手のひらが移動するたびに、くすぐったそうに身をよじり、めぐみは何度も小さくうめいた。
滑り込んだ手のひらは、めぐみの亀裂に届いていた。指先を駆使して亀裂をかき分ける。すでにめぐみの亀裂は充分すぎるほどに潤っていて、ぬめり気が敦子の指に絡みつく。それをかき混ぜるように指先を亀裂に沿ってなぞりかき混ぜる。ピチャピチャ、と水音がし、その微妙な振動に腰をくねらせためぐみは短く吐息を漏らしてうめきをあげた。立っていられなくなり、壁に手を付きようやく身体を支えることができる。
敦子はシャワーを止めると、壁に手を付いて息も絶え絶えになっているめぐみの背中にキスの雨を降らせた。音を立てて何度も吸い、そして背骨のラインに沿って唇と舌先を滑らせる。
『ひんっ……、ん』
甘い吐息を漏らすめぐみに、敦子は言葉で追い打ちをかけた。
『可愛いね、めぐみの、エッチな声。ずっと……それが聞きたかった』
『やっ……ン』
素の少女の部分がもたらす羞恥の感覚に苛まれ、敦子のささやきにそれを刺激されてうめくことしかできないめぐみは、目を閉じて身体を震わせた。
めぐみと、自分の身体を洗い終わってバスルームを出る。洗いざらしの柔らかなバスタオルを、どこか夢心地なめぐみに渡す。
『そうだ、これ、めぐみに合うといいんだけど』
敦子は用意していた下着の替えを手渡した。それは、かつて恵美に借りたブラとショーツだった。何度か返そうとしたが、何となく都合が合わなかったりなどして、結局返すことができなかった。
『ずっと前に友達にもらったものだから、ちょっとデザイン古いけど……』
『でも、可愛いですよ。私は好きです、このデザイン』
表情から、本気でそう言っているらしいめぐみに敦子は微笑んだ。
部屋の電気を消し、ベッドの傍にあるスタンドの明かりだけにして、敦子はめぐみとベッドに潜り込んだ。
風呂上がりで上気した二人の体温で、すぐにベッドが暖められる。シングルベッドの狭さもそれに拍車をかけていた。
『……。先生の匂いがしますね』
『そお?』
薄明かりの中で瞳をキラキラさせながらそう言うめぐみの表情に、なぜか切なさを感じながら、敦子はめぐみの身体を抱き寄せ、もっと密着させる。
『寒くない?』
『はい。あったかい、です……。でも……』
下着だけのめぐみにあわせたわけではないが、敦子も下着だけでベッドに潜り込んでいた。
『でも?』
敦子がおうむ返しにそう言うと、めぐみは軽く赤面してから、敦子の胸に顔を埋めるようにした。
『もっと……暖めて、ほしい、です……』
めぐみのささやきに敦子の身体が熱くなる。押し寄せる衝動に任せて、敦子はめぐみを抱く腕に力を込めた。
『いいよ……。いっぱい、暖めて、あげるね』
ついばむようなキスのあと、敦子はめぐみの唇をこれでもかという勢いで吸い尽くした。息苦しさに頭の奥が痺れそうな感覚がたまらない。
『んんっ……』
苦しげにうめくめぐみの首筋に顔を埋め、唇と舌先でゆったりと愛撫する。同時に手も駆使して、もう片方の首筋から、耳、そして長い髪を撫でつけくすぐる。くすぐったさに反射して払いのけようとするめぐみの手首を、もう一方の手で優しく押さえつける。
『ぁあ、ぅ、んぅぅーっ、ああっ』
官能の苦悶に漏れるめぐみの声と息づかいに、敦子自身の官能も刺激された。下腹部の奥底を襲う圧迫感にも似た収縮の体感に血がたぎる。
『んぁ……っ、ん……』
続けながら、敦子はめぐみの背に手を滑り込ませるとブラのホックを外した。鼻先で、ゆるんだブラ越しにふくよかなめぐみの膨らみをくすぐりながら、唇でブラをくわえ込んでめくりあげた。
はじけるような勢いでむき出しになっためぐみの膨らみは、すでに先端が固く尖っていた。つんとした若さに溢れたそれを、舌先でちろちろとなぞってから、かき混ぜるような動きで包み込み、舐める。
『ふぁ、んっ、ァ、ァ、あぁんっ……』
淡い鴇色の先端に、濃い鴇色の敦子の舌先が絡みついて、うごめく。艶めかしすぎる情景に羞恥が走ったのか、あるいは快感に耐えれなくなったのか、めぐみは視線を外して顔をのけぞらせた。
『んんっ、んぁっ、くぅううっ』
くぐもったうめきを漏らすめぐみの仕草に、かつての恵美を重ね合わせて、敦子の心が痺れていく。 舌先の愛撫に重ねて、指先でもふくらみと先端を揉み、転がして弾く。
『んーっ、あっ、あぁぁっ』
ビクン、と身体を震わせ、そしてびんと背筋を伸ばしためぐみの表情に切ないものが走る。眉根にしわを寄せ、半開きにした唇から微かに漏れる吐息。全てが恵美そのままのめぐみの姿に、敦子は我を忘れそうになった。
もはや、止まらない。
掛け布団がめくれるのにもかまわず、敦子は唇を徐々に下半身に移動させていった。胸の中央から、脇、そしておなか、へそ。強めのキスの嵐を降らせながら、舌先で舐め尽くす。
全身を舐める勢いの敦子の愛撫に、翻弄されてめぐみはもはや嬌声を抑えようとはしなかった。
『はんっ、あっ、ああっ、せんせ……あ、あ、あああっ』
膝頭を幾度もこすり合わせ、無意識にうごめく脚の動きが中学生とも思えぬほど艶めかしく、美しい。
『んふ、気持ち、いい、でしょ……? もっと、気持ち良く、してあげるね』
低めの声でささやいて、敦子はめぐみのショーツをはぎ取った。はぎ取るときに持ち上げた脚をそのまま折り曲げて開脚させる。薄明かりの中に、めぐみのアンダーヘアと亀裂がむき出しにされた。
『……せ、せんせ、い……っ』
自分が今どういう姿勢を取らされているのか自覚してめぐみは一段と頬を紅潮させた。羞恥に絶句して、顔を手のひらで覆いながらも、視線を敦子から外せずにいた。
『ぐちょぐちょに、なってるよ……めぐみ』
ささやいて敦子はめぐみの亀裂に顔を寄せた。黒々と茂るアンダーヘア、そしてそこから続いて走る亀裂はやや開いてその鴇色の肉襞が顔を覗かせている。淫らなぬめり気にまみれ、鈍く光りながら。
『せんせ……いっ、そんなに、そばで、見ないで……』
絞り出すようなつぶやきに敦子の嗜虐心がそそられる。
『どうして……? もっとよく見せて。めぐみの全部を見たいんだもの』
淫蕩な微笑みを浮かべながら、敦子はわざとらしく亀裂のそばで鼻を鳴らした。かすかに香るむんとしたメスの匂い。
『いやらしい……匂いがしてる、めぐみのここ。どうしてかなぁ……』
歌うように言ってめぐみの反応を探る。中学生の少女には刺激的で衝撃的な羞恥の電撃に襲われて、めぐみは視線を敦子から逸らした。目を閉じ、いやいやをするように首を振って身をよじり、脚を閉じようとする。
『ダメ、動かないで……』
めぐみの両膝をがっちりと押さえ込みながら、敦子は冷酷な言葉をめぐみに浴びせかけた。
『お願い、やだ……。恥ずかしい、恥ずかしいよぉ……』
弱々しい口調でそう言いながらも、羞恥の感覚に少女は官能を覚え始めていた。ビクン、と身体を震わせ、揺れてしまう腰に合わせて亀裂がひくつきを見せる。そして、じわり、と滲む淫らなぬめり気が見る間に増えて、溢れんばかりにきらめいた。
『ほーら……もっと、濡れて来ちゃった、いやらしい子ね、恥ずかしいって言いながら、こんなにぐちょぐちょにしちゃって』
熱を帯びた口調でささやいて、敦子はめぐみの淫裂と化した亀裂に指を這わせた。突き立てるようにした指先で、かき混ぜてわざと音を立てる。
『やぁ……、や、ああっ……』
ピチャピチャ……、と湧き起こる水音にめぐみは羞恥に震え、諦めたようなうめきを漏らした。
『めぐみ……』
めぐみの見せる痴態に敦子が我慢できなくなった。むしゃぶりつくように唇をあてがい、淫裂に舌先をねじ込んで、ぬめり気を絡めて、吸う。
『……んっ、ぁ、ああっ、あっ、あーっ! あ、んぁ、ああんっ!』
湧き起こった激しい快感に、びんと背筋を伸ばし、身体を数回震わせて、めぐみは顔をのけぞらせた。オクターブの上がった嬌声が、叫びとなってその可憐な唇からこぼれ落ちる。
熱いぬめり気と敦子の唾液が混じり合い、大量のそれをかき混ぜる舌先の動きに合わせて、激しい水音が二人の耳を打った。舌先でめぐみの肉襞をえぐってはしゃぶり、どんどんと溢れてくる熱いぬめり気の喉に絡みつく酸味をすする。
『はんんっ、せん、せ……、んぁ、ああっ、あ、あ、やだ、ああ、あぁんーっ』
敦子の舌先は、固く尖り膨れあがっためぐみの秘心を捕らえていた。固くしこったそれを優しく、前歯で甘噛みしてから、癒すように舌で転がし、ねぶる。
『あ! あ! ああっ! やんっ、だめ、だめぇ、頭が、へんに、へんに……なるうっ!』
これまで体験したことなどないであろう快感と快楽の暴虐に晒されて、めぐみは悲鳴にも似た叫びを漏らしていた。
『はぁぅぅんっ、んぁあああっ』
秘心を舌の表面で叩くように包み込んで、幾度も繰り返す敦子の責めに、めぐみはおそらく、初めて官能の頂点に達していた。
『ンーッ、ふぅぅんっ』
声にならぬ絶頂のため息を漏らして、めぐみは身体をびぃん、と伸ばすとぐったりとなった。
脱力して重みを増した両脚をそのままに、一旦唇を離して息をついた敦子は、ぐったりと横たわるめぐみの姿にほくそ笑んだ。
”まだ、終わりじゃないよ……めぐみ”
濡れそぼっためぐみの淫裂に、再び口づけると敦子は溢れた淫液をすすり上げた。きつくなった酸味が、引っかかるような喉越しを強めていた。わざとらしく音を立て、その微かな振動が与える刺激が半気絶状態のめぐみを緩やかに覚醒させる。
『……んぅっ……』
一度達して熱く腫れ上がった秘心を、そのまま舌先でつつき、なぞる。再開した快楽の責め苦にぐったりとしていためぐみの身体が生気を取り戻したように跳ねて、震える。
『んぁぁ……っ、もう、ダメ、先生、おねが……いっ、いやぁぁッ』
そんなめぐみの懇願を聞き流して、敦子の舌はおぞましいまでの勢いでめぐみの淫裂を責め続けた。秘心や肉襞は言うに及ばず、未だ何者も受け入れたことのないであろう処女の証が鎮座するあたりをも、その舌先でえぐるようにつつき、舐め回す。
『ンあっ、つぅっ、あっ、んんーっ』
内臓をえぐられるような不快感と鈍い痛みが、訳の分からぬ快感となってめぐみの身体を翻弄した。
敦子は、淫裂の責め手を指先にゆだねると、唇をわずかに下方へ移動させた。ぬめり気を絡めた指先で、さっき以上に熱を帯び固くしこった秘心を転がしてはつまみ、弾いては転がす。
そして、かつて恵美にそうしたように、敦子の唇は淡いチョコレート色の窄まりをなぞっていた。
『くぅぅんっ、いやぁッ、そこは、あああーっ!』
走る悲鳴はかえって敦子を煽り立てた。充分に唾液を絡めた舌先で、ひくひくとうごめく窄まりをえぐり込み、舐めしゃぶる。もちろん、淫裂を責める手は休めるはずもない。
『ひぃんっ、あっっ、んぅくっ……っ、んああっ』
可憐なめぐみ少女からはけして想像もつかない獣のような絶叫が、その唇からこぼれたと同時に快楽の絶頂がめぐみの身体を貫いていた。
今度こそめぐみは完全に気を失って、その可憐な肢体をベッドに投げ出していた。
『恵美……。愛してる、めぐみ……』
敦子は、めぐみの身体を抱きしめると、その柔らかな頬にそっとキスした。
汚れた亀裂をティッシュで拭ってやり、掛け布団をかけ直してから、敦子はぐったりとしためぐみの乱れた髪を撫でながら、優しく包み込むように抱きしめていた。
どれくらい、そうしていただろうか。ややあって、微かにうめいためぐみは敦子の胸の中で意識を取り戻した。
『せんせ……い?』
朦朧としていた視線が、はっきりしたものになったとき、めぐみは赤面して敦子の胸に顔を埋めるようにした。その吐息のくすぐったさに軽く身をよじりながら、敦子はめぐみの額にキスをした。
『ごめんなさい……。先生』
『どうして……謝るの?』
その問いにしばらく答えはなかった。しばらくして、視線をあげためぐみはつぶやくように言った。
『なんか……なんだかすごく恥ずかしくって……。あんなに……エッチな声、いっぱい出しちゃって……』
戸惑いと羞恥に苛まれて、めぐみは何を言っていいのか分からない様子だった。
『いいよ、そんなこと、気にしなくても……。わたしこそ、ごめんね。怖かったんじゃ、ない?』
敦子のささやきに、めぐみはほっとしたような表情で少し涙ぐんだ。
『少しだけ、そう……思いました。訳が分からなくなって……でも……』
『でも?』
めぐみの涙を指先で拭いながら、敦子はめぐみを抱く力を強めた。
”少し、やりすぎたかも知れない……”
軽い後悔に襲われかけたとき、涙をにじませつつ、めぐみが微笑みを浮かべた。
『でも……。すごく……気持ち良かった、です……。先生に、愛されてるって、感じがすごくします』
けなげさに溢れためぐみの言葉に、敦子は胸がじんとするのが分かった。
『……ありがと。ありがとう……』
微かに震える声でそう言って、敦子はめぐみの頭を優しく撫でた。
『だから……。これからも、いっぱい可愛がって、ください、ね』
ささやくめぐみに敦子はキスの雨を降らせた。
『んんっ』
くすぐったげにうめくめぐみを敦子はとても愛おしく、そして可愛く思った。
その後、家庭教師が終わってからも、二人はたびたび逢瀬を重ねた。周りからは、仲の良い元家庭教師とその教え子として。
そしてそれぞれの進路に進んでからも、その関係はひっそりと続けられた。何者も、二人を引き裂くものなど、存在しないかのように。
こうして、失われたものを取り戻した敦子の心の彷徨は、ようやく終わりを告げたかに思えた。
だが、めぐみと交わし始めた愛が、敦子がこれまでよりどころにしていたものの真実を告げることになるとは、この時の敦子には知るよしもなかった。
(プラネタリウム 第3話 終)