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Ver3.3 |
全長 |
8.8[meter] |
いつからそうであったのか。犬は狂おしい程にあの方を欲し、あの方を手に入れるために――首を刈った。 敵の首をとればあの方をくれる、そう犬の主人が約束したからだ。そうしてあの方と夫婦となった犬は、いたく満足であったが、なぜ一介の畜生である自分にそれほどまでの想いが宿り、そのようなことがなし得たのか不可思議ではあった。 その想いは、呪い――悲しい目であの方は言った。そうか、そうかもしれぬなぁ――だがそれよりも、犬には、ただその目が許せず あの方が心から自分のものにならぬのが赦せず、 情動に駆られ――首を刈った。 あの方は、その度に悲しい笑顔をうかべ、最後は犬を呪いから救うため――自らの腹を裂いた。 果たして、犬にかけられた呪いは解け、黒い情動も消えたが 死したあの方への想いだけは、既に犬の血肉と化しており一向に消えなかった。結局、だから犬は――首を刈った。 首を刈れば、またあの方に逢える――いや、それこそがあの方との絆を繋いだ所業――いや、消せぬ想いを晴らすため――いや…これもまた、あの方の優しさがもたらした、呪い、なのか…。そこまで考え、犬はやはり、その見慣れぬ赤い隻眼に、いつものように告げることにした。 「やい 儂の女房を探す手伝いをしろ そのかわり誰かの首を望むなら この刃と牙で刈り取ってやる」 ――紅焔八犬伝 壱 |
重量 |
1.2[t] |
かつての主家 |
里見家 |
育ての母 |
狸 |
妻 |
伏姫 |
恋敵 |
丶大法師 |
イラストレーター |
もりお |
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