「おー。『野比家』、こっち」
ふわふわピンクの少女がスマホを見ながら指差し。
右肩にふわふわ浮かんでいるウサギのぬいぐるみがこくこく頷き、
抱えたランタンで夜道を照らす。
慧心学園を出た袴田ひなたと二匹のぬいぐるみの一行は、
野比家を目指して、てくてくと歩いている。
「フー子、このあたりみおぼえある?」
「フーン……?」
大きなリボンをつけた恐竜のぬいぐるみが、
きょろきょろと辺りを見回し、首を振る。
「そのたてものだけが同じなのかなー?」
思えば慧心学園も、周りの建物は普段通学した時に見えるものとは違っていた。
「ここはー……違う。
ぶー。この辺りのはずなんだけど」
地図が示す付近の家を、ひなた達は一軒一軒表札見て確認していく。
―――黎明から早朝になろうかという頃。
「フーン!フーン!!」
フー子がある家を丸い手で指し示す。
「おー。あそこが野比家?」
「フーン!」
「おー。行ってみよー。
行くよ、フー子、クリス」
意気揚々と、赤い屋根の木造住宅へと向かう。
■■■
野比家の二階、子供部屋で書面に見入る二人の少年。
(そもそも何故、ガッシュがここに居たことに気がついたのか……)
眼鏡の少年は、金髪の少年を見、続けて廊下の壁の焦げた跡を見つめる。
(あれ、か……)
―――もしあの跡を見て、ガッシュの技だと気がついたのだとしたら。
ガッシュと世界を同じにする者がこの紙に書いたのだろう。
ガッシュ自身には彼の友人―清麿と言うらしい―らと会う前の、魔界での記憶がなく、
当然ガッシュやその友人達も『兄』の存在を知るはずはない。
仮に敵対する相手がガッシュを引っ掛けるために行うのだとしたら、
『兄』の存在すら認識していなかったガッシュに対し、わざわざ『兄』などと偽らなくても、
もっと他に信じやすい嘘を付いた方が成功率は高くなるだろう。
ならば―――
「そうだな……本物の可能性は、高いかもしれない」
「おお!本当かコナン!!」
身を乗り出すガッシュを抑えつつ。
「それに12時という時刻。このB-6『グランバニア城』という場所。
仮に罠を仕掛けていたとしても、この『野比家』から近く、十分に調べられちまう時間だ。
場所も北東の奥地。元々その城を知ってる奴以外、わざわざ向かう場所じゃない。
仮にこのゼオンって奴が実際に先に見て、危険な施設ではないと判断したのなら、
待ち合わせをするにはなかなか優れた立地だ。
―――まあ最も。
その『兄』とやらがガッシュの『味方』なら、って話だがな」
「ウ、ウヌ……?」
コナンの眼鏡が光り、たじろぐガッシュ。
「恐らくこれを書いたのはゼオン・ベル―――ガッシュの兄貴で間違いないんだろう。
だが兄との関係性の記憶がない以上、敵としてガッシュを呼び出している可能性もある、ってことさ。
お前の話だと、王になれるのは一人なんだろう?
ライバルの可能性だってあるし、逆に後押ししてくれる存在の可能性だってある。
誰にも邪魔されたくない、お前と一対一で直接勝ちたい、とかな。
味方にしろ敵にしろ、兄と会うかどうかは。
―――ガッシュ、お前が決めることだよ」
兄弟で殺し合うケースなど、いくらでも見てきた。
財産だったり、恋愛だったり。勿論誤解による殺人もある。理由も様々だった。
それでも、肉親であるのなら。選択権はガッシュに委ねるべきだ。
「ウヌ……。私は……」
―――ピンポーン。
ガッシュが答えを口に出そうとしたところで、
野比家のインターホンが鳴る。
二人は思わず顔を見合わせる。
ガッシュに待てというジェスチャーを行い、即座に思考を走らせる。
――まずこの野比家の人間であれば、チャイムなど鳴らさず、そのまま入ってくるはずだ。
相手に危害を加えようと狙っている相手ならば、
ご丁寧に存在を知らせることなどせず、音を立てずに忍び込んでくるだろう。
では仲間を集めようという人間ならばどうか。
この家にいる人間が殺人鬼である可能性を考えれば、やはりインターホンなどは鳴らさず、
家の様子を窺うなどするのではないか。
―――ピンポーン。
もう一度インターホンが鳴る。
コナンは慎重に窓から外を覗く。
玄関自体は屋根で死角になっていて直接は見えないが、
見える範囲での人影はない。少なくとも大人数ではないのだろう。
何が出てきても対処できる自信のある人間か。
あるいは、全く何も考えていない子供か。
どちらにせよ、奇襲のセンは薄い。
「……ガッシュ、警戒しながら出てくれ。
俺は隠れて、すぐに術を唱えられるようにしておく」
「ウヌ!任せるがよい!」
二人は一階へと用心しながら降りる。
コナンは玄関から向かって左の壁の陰に隠れ、魔本を開く。
ガッシュはコナンに頷くと、用心しながら玄関のドアを開ける。
すると―――
「おー。ドアひらいた」
可愛らしい少女が、そこに立っていた。
■■■
玄関から出てきたのは、金髪でマントを羽織った小さな少年。
こちらを丸い目で見つめている。
残念ながら、眼鏡はかけていない。
「おー。開けてくれてありがとう。ひな、袴田ひなた」
ぺこりとお辞儀する。
ガッシュもぺこりとお辞儀する。
「おー。おうさま。すごい!」
「フフフ、そうであろう」
「ひなもおうさま、なれますか?」
「む……優しい王様になるのはなかなか大変なのだ」
「おー」
ほんわかとした空気が玄関を包む。
「待て待て待て待て」
やや脱力した風の少年が玄関脇から姿を見せる。
そして彼は、眼鏡をかけていた。
「おーめがね!?フー子、あの人のびた!?」
「ふーんふーん……」
ひなたの左肩に乗ったフー子がふるふると首を振る。
「ぶー。ざんねん」
ひなたの後方に浮かんでいたクリスが、よしよしとフー子を撫でる。
「ハハハ……。喋るぬいぐるみに、飛ぶぬいぐるみね。
今度はファンシーなファンタジーだな……」
眼鏡の少年が目を座らせながら、ひなたとぬいぐるみ達を眺めている。
■■■
ひなた達を居間に通し、改めて自己紹介をする。
「俺は
江戸川コナン。探偵だ」
「さっきも言ったが、ガッシュだ。ガッシュ・ベル」
コナンはひなたを改めて見る。
ふわふわとした人形のような愛らしい少女だ。
身長は歩美より少し大きいくらい。
この子もガッシュのように、特殊能力はあるのだろうか。
「おー。ひな、袴田ひなたです。小学6年生。
バスケでスモールフォワードをやってます。
こっちはフー子で、こっちがクリス」
ひなたは恐竜とうさぎのぬいぐるみをそれぞれ紹介する。
―――ひなたは学校の友人である『湊智花』『香椎愛莉』『三沢真帆』を探していること。
フー子は『
野比のび太』とその友達の『
剛田武』『骨川スネ夫』、
クリスは『高町ヴィヴィオ』とその友達の『アインハルト・ストラトス』を、
それぞれ探しているとのことだった。
地図上で『野比家』を発見し、『野比のび太』の手掛かりがないかを探しに来たのだと言う。
「始まってからほとんど俺達はこの野比家に留まっているが、
のび太って奴は多分来てないと思う」
「ウヌ。私もこの家の道具を借りているから、のび太とやらには挨拶したいのだが」
もし仮にゼオン・ベルの同行者として来ていたとしても、
この家の住人だとしたら、もう少し長い時間留まっていたのではないだろうか。
「ぶー。残念……」
「だが、ここがのび太って奴の自宅なら、ここを目指して来る可能性は高いだろう。
ここで待っていれば会えるかもしれないな」
「おー!」
コナンはスマホで地図を開き、テーブルの上に置いてみんなで地図を覗きこむ。
「ひなたは月峰神社から来たんだったな」
月峰神社から慧心学園、そして野比家まで、
この無防備とも言える少女が無事に移動できたと言う。
もし殺しを行う人間がこの少女を見つけたとしたら狙わないはずがないし、
もし善良な人間が見つけたとしたら、保護欲を誘うであろうひなたを一人で行かせるとは思えない。
「ひなた、道中、灯りは付けてきたのか?」
「おー。クリスが照らしてくれた」
「ウヌ、この夜の町を進んできたのか。ひなた達は勇気があるのだな」
ひなたに呼ばれたうさぎのぬいぐるみが、ランタンを机の上に置く。
――であれば、尚のこと目立つはずである。
地図を念入りに見直す。
「北部の荒野なり、南部の森なり、島の端に配置された場合。
やはり、まずは中央の都市部に向かう確率が高い。
ひなたが全く人に出会わなかったことから、
この島の東部の配置は、かなり少なかったということになるな。
今、野比家から見て西の中央エリアに、参加者がかなり集まっていると考えられる。
都市部に目立つランドマークが他にある以上、
殺しを目的にする奴も、人と合流を目指す奴も、
この時点でわざわざ東北のはずれにある『野比家』に来る人間はほぼいないだろう。
目指して来るとしたら、ゼオンのようにここより東にいた者か、あるいはこの家に関連がある者だけだ。
つまり。
のび太に会いたいのなら、なんの情報もなく探しまわるより、
ここで待っている方が危険も少なく、会える可能性も高い手ってわけだな」
きらきらした目で、2人と2匹がコナンを見ている。
「おー。こなん、かしこい」
「凄いぞコナン!まるで清麿のようだ!」
「フーンフーン!」
「……!」
くるくるとコナンのまわりをぬいぐるみ達が空中を回る。
「ハハ…さいですか……」
もはやファンタジーの一部となりつつある自分に諦め。
「……それに、放送を待ちたい。
どれだけの馬鹿が、参加しているかも分かる」
「ばか?」
「ああ―――殺人なんてのを行う、馬鹿どもがな」
辺りの空気が引き締まる。
ポーキーによって殺された少年達を、ひなたもガッシュも思い出す。
「ウヌ……」
「……ともか、まほ、あいり」
フー子とクリスをぎゅっと抱きしめるひなた。
「っと、暗くなっちまったな。
……あ、そうだ。
ひなた、バスケをやってるって言ったよな」
「おー?」
ランドセルに手を伸ばし――どうやって取り出すんだよと逡巡した後――
思い描いた物を取り出し、ひなたに渡す。
「おー!バスケットボール!」
「ああ。キック力増強シューズも無い以上、持っていてもあまり活用できない。
ひなたにやるよ」
パァァァとひなたに笑顔が戻る。
「おー。こなん、ありがとう!」
バスケットボールを抱え、無垢なる笑顔でお礼を伝える。
―――その笑顔を見て、引き込まれそうになっていた自分に気が付く。
『あら。身体に合わせて、ついに対象年齢も下がったのかしら、工藤君?』
なんて、ニヤリと笑う奴の幻聴が聞こえる。
「ハハハ……これがひなたの特殊能力ってやつかな」
【C-5/野比家/一日目 早朝】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:赤い魔本@金色のガッシュ!
[道具]:基本支給品、サバイバルナイフ@現実、アクション仮面のフィギュア@クレヨンしんちゃん
えんぴつ、ノート、ビニール紐、セロハンテープ、ガムテープ、タオル、ティッシュ、お裁縫セット(糸、針、ハサミ)
+―ドライバー、トンカチ、包丁、その他の調理器具や工具
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いを潰し、この島から皆で生きて帰る
1:ガッシュを相棒とし、元の世界に帰してやる。
2:野比家で放送を待つ。
3:近くに安全な拠点を作る。現地調達できるものがあれば借りる。
4:情報を集める。
5:ゼオンの待ち合せ場所に行くかはガッシュの判断に委ねる
6:光彦を探してやる。
7:ひなたとぬいぐるみ達の探し人を見つけてやる。
8:鍵を見つけて天空への塔の扉を開く。
9:他の施設にもワープする泉(旅の扉)があるかもしれない。
※ガッシュから魔物の王を決める戦いについて聞きました。
※魔本に表示されている呪文は第七の術〝ザグルゼム〟までです。七つの術の効果について理解しました。
※ガッシュとは別の世界から来ており、他の参加者も別の世界から呼ばれていると考えています。
※C-5『野比家』とE-7『天空への塔』が旅の扉で繋がっていることを知りました。天空への塔の先に行くには鍵が必要だと認識しました。
※他の施設にも旅の扉があるのではないかと推測しています。
※ランドセルが質量を無視して入れることができると把握しました。
※ランドセルに詰めるだけ物を詰め込みました。
※ゼオンの書き置きを読みました。12時にB-6『グランバニア城』での待ち合せすることが書かれています。
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]:健康、清麿と再会するための熱意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール(中身不明)@ポケットモンスター、力の種@LSロワ2014オリジナル
[思考・行動]
基本方針: あの者(ポーキー)を倒し、殺した皆に謝らせる。清麿の元へ帰る。
1:コナンをパートナーとし、元の世界へ帰る。
2:ひなた達を守ってやる。
3:兄(ゼオン)とは――
4:鍵を見つけて天空への塔の扉を開く。
5:のび太に会ったら、勝手に物を借りたことを謝ろう。
※千年前の魔物編終了後からの参加です。
※コナンから魔本が使える仮説を聞きました。
※コナンから別の世界についての仮説を聞きました。
※コナンから施設間の旅の扉の仮説を聞きました。
※C-5『野比家』とE-7『天空への塔』が旅の扉で繋がっていることを知りました。天空への塔の先に行くには鍵が必要だと認識しました。
※ゼオンの書き置きを読みました。12時にB-6『グランバニア城』での待ち合せすることが書かれています。
【袴田ひなた@ロウきゅーぶ!】
[状態]:健康
[装備]:台風のフー子@ドラえもん、セイクリッド・ハート(クリス)@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、バスケットボール@ロウきゅーぶ!
[思考・行動]
基本方針:みんなで帰る。悪いことはしない。
1:ともかたちと、フー子の友達(のび太たち)、クリスの友達(ヴィヴィオ達)を探す。
2:野比家でのび太を待つ。
3:こなん、いい人。頭いい。
4:がっしゅ、おうさま。
最終更新:2014年05月19日 20:59