私の妹は漢字は読めないがひらがなは読める ◆qB2O9LoFeA



「うわぁ‥‥!」
「おォ!おっきぃ!」
クロエと別れた三人が慧心学園に辿り着いたのは放送の少し前だった。
校門をくぐり、差し込み始めた朝日に照らされた噴水や庭園にしんのすけとゆまは思わず感嘆する。
「本当に学校があるなんて‥‥」
しかし一番驚いていたのはそこに通っている智花だった。自分の学校そっくりの建物がそこにあることに困惑するしかない。だが思い直すと既に思い思いに庭園を見て回っている二人に声をかける。
「えっと‥‥しんのすけ君!?と、ゆまちゃん!」
そういえばまだ二人から名前を聞いていないな、と思いながらもうろ覚えていた名前で呼びもどすと、智花は二人を連れて体育館へ向かう。もしかしたら誰かいるかも、とか、伝言の一つもあるかもしれない、などと思いながら自転車を押して歩くスピードは急ぎ足になり。
当たり前のようにあった体育館に今度はあまり驚きもせず入ってなにか手がかりはないかと探し始めようとしたときに、放送は始まった。


――三沢真帆。

「え、うん、ふぇぇ?」

告げられた死者の名に智花は困惑する。
三沢真帆。
確かにそう親友の名が呼ばれ、そのことを信じることができない。

ぐらり、と体が揺れて、膝から崩れ落ちそうになり。

――風間トオル。
「そんなの信じないゾッ!」
間髪入れずに発せられたしんのすけの声で踏みとどまった。

「あのおじいさん嘘ついてるゾ!風間くんが死んだりするわけない!」
そういがぐり頭の少年は、声に怒気を込めて叫ぶ。

――香椎愛梨。

踏み止まった足から力が抜けて、今度こそ体育館の床に倒れこむ。

――キョーコ。

「大丈夫トモ――え?」
とっさに駆け寄ったゆまも足を止めて放送に注意を向け直す。

放送はその後名簿にない参加者や禁止エリア、優勝条件を告げていった。その間誰もしゃべらず、智花は床を、しんのすけは声が降ってくる天井を、ゆまはスマホを凝視する。
やがて耳障りなぜいめい音が終わり、放送が終わったことを確認して。
「あのおじいさん嘘つきだゾ。」
しんのすけははっきりと言った。




「まったくモぉ~、風間くんはそんなに簡単に死んだりしたりしないゾぉ~。」
「‥‥そうだよ、キョーコはもっとしぶといもん。」
しんのすけの言葉にゆまが答える。
「それに、なんか名前間違えてた気がするし。だからアレだよ!きっと名簿が間違えたりしてるんだよ!」
「そうだ!セリム君の名前も言わなかったしあのおじいさん間違えてるんだゾ!」
しんのすけとゆまはヒートアップしていく。そもそも二人にとってあの放送を、ポーキーを信じる根拠は全くない。むしろ不信感が強まり放送の内容を疑う。
「殺しあえって言ったり手をつなげって言ったり、よくわかんないし。」
「うんうん、ウソつきはドロボーのはじまりだって母ちゃんも言ってた。」
「そういえばゆまのソウルジェム、ランドセルから出てきた‥‥ポーキーはドロボーだったんだ!」
「やっぱりウソつきだからドロボーだゾ。」
(ウソつき、なのかな?)
そんな二人を見て、智花は更に混乱する。突然親友の死を伝えられて、でもそれとそれを言った人どっちも信じられなくて。
(どうしたら‥‥なにが本当なんだろう‥‥)
思い返せば、気がついたら目の前で人が死んで。空を飛んだり魔法を使ったりするのを見て。なぜか紗季だけ巻き込まれてなくてあるはずのない慧心学園があって。
「‥‥そうだ‥‥!」
ハッ、と何かに気づいた智花。

「そういえばあの自転車だれの?」
「落ちてた。たぶんポーキーが盗んできたんじゃないかな。」
「モぉ~、どんたけ盗めば気がすむんだゾ。東京タワーとかどうやって盗んだの?」
「たぶん魔法で持ってきたんだと思う。なんでも入れる魔法とかもあるみたいだから。東京か~、どんなところなんだろ。」
「あのっ!二人とも!」
「お?」
「?なに?」
ヒートアップしすぎて脱線しはじめた二人に声をかけるも、智花は口はそれ以上言葉が続かない。
智花は迷っていた。自分が思いついた可能性、そのことを口にすることに。
(たぶん、たぶんそんなことない‥‥でももしかしたら‥‥)
何かを耐えるように口を震わせる智花にしんのすけとゆまは困る。が、年の割に空気を読める二人はすぐに智花がなにを言おうとしたのか察した。
「あ!ジコショーカイがまだだった!わたしゆま!」
「オラは野原しんのすけ五才春日部在住~。」
「カスカベってどこ?」
「んっとねー、埼玉県。」
「さいたまかー。ゆまは風見野。群馬県だよ。」
「おぉ、草津温泉があるところですな。智花お姉さんは?」
「――え、あの、千葉県ま――じゃなくてそのっ!」

「み、みんなで学校を調べようって思って‥‥役に立つものとかあるかもしれないし私の学校だし案内もできるから‥‥」
(ダメだ‥‥やっぱり言えない‥‥)
口からデマカセを言いながら内心でこれでいいのだと智花は自分に言い聞かせる。言ったところで信じてもらえるわけはないし、なにより自分自身こんな思いつきはありえないと思っているのだ。そんなことを言って二人を混乱させたくなかった。


(『ここ』がパソコンの中だなんて、あるわけないよ‥‥)

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自分達はなぜか知らないうちにゲームの世界にいる。こんなこと誰が信じるというのだろう。げんにそれを思いついた智花自身信じることはできていない。だが、もしここがゲームの中なら全て説明がつくのだ。
超能力のような力も、ゲームに出てくるモンスターのようなプックルも、本物そっくりな慧心学園も。
それにあれだけ爆発や轟音が起きているのに警察どころか人一人現れないことにも納得がいく。
まるで本物のようなゲームがあるなら実は今いるここもゲームの中でそういったものは全部作り物である。そう言われてもそれを否定することは智花にはできなかった。

(そんなことあるわけないのに‥‥たぶん疲れてるんだ‥‥)
「トモカー、はやくー!しんのすけ待ってー!」
ふと見ればゆまは体育館の出口にいた。既に出ていっていたらしいしんのすけも戻ってくる。
「ごめんすぐ行くっ。」
「智花お姉さんおそ~い。うわぁ、凄い汗。」
「え、ほんとだ‥‥」
二人に追いついた智花は額に手を伸ばす。ひんやりとした汗の感触が手に感じられた。
(‥‥もっと落ち着かなきゃ。)
自分が思っているより思い詰めていたことを智花は自覚する。自分一人で思い悩んでもどうしようもないことはわかっていたのに、気負いすぎていたことを反省する。
(‥‥うん、やっぱり言ってみよう。一人で考えててもしょうがないよね。)
「あのね、二人に言いたいことが――」
「こういうときは水分補給水分補給。あれ、水どこだっけ?」

ドサドサドサドサ。

「え。」
智花の目の前に突如小山ができた。
様々なお菓子や食べ物、そして液体が入ったビン。
どう控え目に見ても5kgは下らない、というかビンだけでそのぐらいはありそうな飲食物の山が出来上がっていた。

(やっぱりここはパソコンの中なんだ!)

今智花は静かに確信した。ここはゲームの世界だ。物が無限に入るカバン、あまりゲームをしたことのない智花でも流石にこれは見たことがある。よくアニメとかに出てくるなんでも入るカバンだ。
(だったら、言えない。)
そしてそのことに気がついたために、二人にゲームであると伝えることを止めた。
もしここがゲームの中なら、当然ポーキーは自分達のことを見ているだろう。うかつなことを言えばボタン一つで殺されてしまうかもしれない。首輪のヒヤリとした温度がそれを頭に刻ませる。

(どうやって伝えればいいんだろう‥‥ううん、悩んでてもダメ。今はできることからしよう。)
頭を切り替える。今自分がすべきことは、二人と学校を調べることだ。デマカセで口にしたことだがクロエを待つ間にすることとしては意味があるはずだ。

「お、コーラがあったゾ。はい、智花お姉さん。」
「ありがとう。」
まずは小さなことから始めよう。そうすれば、こんなとこらから逃げるための手がかりだって見つか――



「ぶはァッ!!?」



突然口から黒い液体を吐き出し首からぶっ倒れる智花。
打ち所が悪かったのか、それとも積み重なった疲労のせいか、はたまた口の中を蹂躙する刺激のせいか。
「智花お姉さん!?」
「しんのすけこれしょうゆだよ!」
「おぉ!?間違えた!」
「しょうゆはヤバイってキョーコ言ってた!早く吐き出させないと――」
二人の会話を聞きながら、智花の意識は闇に沈んでいった。



【湊智花@ロウきゅーぶ!】死亡確認




四、五分後、そこには息を吹き替えした智花の姿が!!



【D-5 慧心学園体育館/一日目 朝】

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康。
[装備]:少年探偵団バッジ@名探偵コナン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2、 ローラースルーGOGO@ちびまる子ちゃん、お菓子(たくさん)、飲料水(たくさん)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:智花お姉さん大丈夫?
2:ポーキーも放送も信じない。
3:風間くんとマサオくんを探す。
4:学校を探検する。
5:クロちゃんを学校で待つゾ。6:ゆまちゃん、もえPみたいでかっこいいゾ。
7:セリムくん‥‥!
※セリム(プライド)をアメリカ大統領の息子だと思っています。
※放送を信じていませんが内容は聞きました。

【千歳ゆま@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]:健康、魔力消費(無視できるレベル)
[装備]:少年探偵団バッジ@名探偵コナン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2 お菓子(たくさん)、飲料水(たくさん)
[思考・行動]
基本方針:キョーコのところに帰る。
1:クロが戻るまでしんのすけと智花を守る。絶対守る。
2:キョーコが褒められて嬉しい。クロがちらちら見てたけどなんだろう?
※本編2巻終了後からの参戦です
※放送を信じていませんが内容は聞きました。キョーコとかいう放送があった気もしますがポーキーの間違いだと思っています。

【湊智花@ロウきゅーぶ!】
[状態]:疲労(大)、首に痛み、しょうゆ中毒(微) 、ぐったり。
[装備]:慧心学園の女子制服(しょうゆまみれ)、自転車(ママチャリ)@現実
[道具]:基本支給品一式、プックル@DQV、ラン ダム支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いから脱出する。
1:まだ気持ち悪い‥‥
2:学校を調べる‥‥前に着替えたい。
3:ポーキーにわからないように二人にこの世界がパソコンの中だと伝えたい。
4:あの放送は、ウソ、だよね‥‥?
※放送については半信半疑です。いちおう内容は聞きました。
※このロワのことをパソコンの中に入って行われているゲームのようなものだと考えています。
※首から倒れて軽く死にかけました。なんともないかもしれませんが実は危険な状態かもしれませんので後遺症については後の書き手にお任せします。

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最終更新:2014年07月01日 21:35