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―初めてまともに話した時は、クールな奴なんだなって思った。
表情もあんま変わらないし、話しかけてもそっけないし。
でも、一緒にサッカーをしてるうちにそれは違うんだなって思った。
本当のあいつは、ちょっと不器用だけど、優しくていい奴なんだって。



やさしい笑顔



「豪炎寺!飯一緒に食おうぜ!」



俺は今日も豪炎寺を昼食に誘うと、豪炎寺は俺の方を向いて、無言で頷いた。
必要以上に口を開かない豪炎寺だけど、態度をみれば何を考えているかくらいはわかる。
豪炎寺がサッカー部に入ってからもう1カ月になって、なんとなくこんな反応にも慣れてきたと思う。


俺たちが教室を出て屋上に行くのはいつものことで、屋上はわりと人が少ないからなんとなくそこに食べに行く。
サッカー部の皆と食べるのもいいんだけど、豪炎寺はそういう場にはあんまりいたくないらしい。
だけど昼休みの間豪炎寺を1人にするのもなんだかほっとけなくて、こうして2人でここまで食べるのが習慣になっていた。

「ほら、豪炎寺」

俺は弁当を開けて、豪炎寺にどれでも好きなものを食べろと弁当を向ける。

「……いいのか?」

豪炎寺は(いつもだけど)こうやって聞いてくる。
遠慮なんていらねーのにな。

「いいんだよ、俺が好きでやってんだし。母ちゃんも毎朝たくさん作って詰めてくれるんだけど、1人で食べるにはちょっと多いしさ。」

そう言ってニカって笑うと、豪炎寺は箸を伸ばしてから揚げを1個取る。
もっと取ってもいいのに、なんつーか謙虚(って言うんだっけ?)なやつだよな。
…まぁ1人でも本当は食べ切れるんだけど、両親が忙しくて家事も(多分今見える豪炎寺の弁当も)自分でやっているような豪炎寺に、何かしてあげたいのが本音だった。
俺と同じ14歳なのに、どうして環境も性格もここまで違うんだろう…
なんでもできてすごい、と思うけど…親とほとんどすごさないなんて俺には想像もできなかった。

「円堂は…」

「ん?何?」

豪炎寺は何か言いたそうにして口を開けたけど、またすぐに黙ってしまった。
どうしたんだって聞いても、なんでもないって言うし。
何か言いたいなら話してくれた方がいいんだけどな…


しばらくして昼食を食べ終わると、2人でごろっと横になる。
こうやってなんとなくのんびり昼休みを過ごすようになったのは豪炎寺と知りあってからで、こういう時間も悪くないなって思う。
なんとなく気になって豪炎寺の方を向くと、ばっちり視線が合ってしまった。
なんか…気まずい…そう思ってると豪炎寺がちょっと笑って――


「…ありがとな、円堂」


――なんだか、その優しい笑顔にカッコイイ、なんて思っちゃったりして。
…って何考えてるんだ俺…俺は男で豪炎寺も男なのに…ってなんで俺こんなに顔が熱いんだ!?


「べ、べ、別に俺が好きでやってることだからっ!!」


そう言って俺はその場から逃げるように屋上から出ていく。
―なんだ、このきもち
―なんで、こんなに胸がドキドキするんだ…?
あいつ…あんな顔して…ずるい…


5時間目の授業のベルが鳴るちょっと前に半田に見つかるまで、俺は屋上の近くで顔を隠すようにして座り込んでいた。




「何だアイツ…赤くなって…可愛いやつだな…」

くるくる表情が変わったり、突拍子もない行動をしたり。
俺にサッカーを思い出させてくれた円堂…
こうやって昼休みを一緒に過ごせるだけでも、いい。今は、な。


―間違いなくアイツは恋愛には疎そうだけど…期待してもいいだろ?
最終更新:2009年10月18日 23:27