それは些細なことだった。
というか些細すぎてなんでそれがケンカに発展したのかわからなかった。
だけど、あの時はついカッとなってしまって…
豪炎寺に、謝りたかった。
…だけど
あたりまえのように
豪炎寺を見るのが辛い…喋りたい。あの時のこと、謝りたい。
だけど怖くてそれができなかった。
同じクラス、隣の席、そして同じ部活…親友で、恋人でもあるのに。
そんな自分の半身のような存在の豪炎寺と、もう3日も喋っていない。
「ごうえんじ…」
寂しくてどうしようもなくなって、ポツリとあいつの名を呼んでしまった。
慌てて口を塞いだ俺は、チラリと横にいる豪炎寺を見る。
…よかった、気付いてないみたいだ。
…でもそれが辛い気もした。
まるで俺ばかりが辛いみたいで、豪炎寺だけ平気みたいだったから…
部活の時間になる。
気乗りがしないとはいえ、俺はキャプテンだ。
こういう時はプライベートのことなんて気にしちゃいけないよな…
…って思ったのに、やはりプレイに影響が出てしまったみたいだ。
鬼道に呼ばれて、俺は部室に連れて行かれる。
「…豪炎寺とケンカしただろう。」
「…え…な、なんでわかるんだ!?」
「見ればわかる。」
日頃どれだけ豪炎寺と仲良くしてたんだろう。
今になって改めて痛感する。
「お前は顔に出るしな…辛いならさっさと仲直りしろ。」
「で…でも…豪炎寺はもう…俺のこと…どうでもいいんだよ…」
悲観的なことを考えたらますます悲しくなって。
気がつけば涙がボロボロ出てきた。
「…どうでもいいなら…」
鬼道が部室の扉の前に立つ。
そして勢いよく扉を開けた。
…そこには、心配そうな表情の豪炎寺が立っていた。
「こんなところで聞き耳立ててるわけないだろう…2人は少し休んでろ。」
そういうと鬼道は部室を去っていった。
豪炎寺が代わりに入ってきて扉を閉める。
部室には、2人きり。
気まずい空気が流れる。俺は居た堪れなくなってその場から逃げだすように駆けだそうとする。
だけど、それは叶わなかった。
「…行くな、円堂。」
豪炎寺が、俺のことを背後から抱くように抑えていたからだ。
3日ぶりに、豪炎寺が俺の名前を呼んでくれた。
それが嬉しくて、涙があふれるように出てきた。
「…ごうえんじ…」
「すまない…俺のせいで泣かせてしまったな…」
豪炎寺が俺を振り向かせて、もう一度抱き締めなおした。
3日ぶりの抱擁が、まるで付き合い始めた頃のようにドキドキする。
「豪炎寺…ごうえんじぃ…!」
俺はみっともなく豪炎寺にすがるように泣いた。
豪炎寺は俺の頭を優しく撫でてくれる。
その手がひどく優しくて、それがまた涙腺を刺激する。
「円堂…教室で俺の名前呼んでただろ。あれ…嬉しかった。」
…聞こえていたんだ。
やっぱり…俺のこと気にかけてくれてた。
「だけどお前の方見れなくて…悪かった。」
「いい…気付いてたんならいいから。」
急に豪炎寺がキスをしてきた。口以外にもいろんな場所に。
「…んっ…」
首の、ギリギリの場所に痕をつけられた。
思わず変な声が出てしまう。それが豪炎寺を刺激してしまったらしかった。
「…円堂…悪い…お前が欲しくなった…」
「…ご…ごう…えんじ…」
「…頼む。」
豪炎寺はこういう時、見たこともないくらい真剣な表情をする。
俺はそれにすごく弱くて…拒めないんだ(卑怯だ…!)
「…そんな顔されたら断れないだろ…!」
「円堂…!」
豪炎寺が、俺の上に覆いかぶさる。
…こんな場所なのに…俺も豪炎寺も、余裕がなかったんだ。
最終更新:2009年11月05日 15:18