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これは食べ物の味なのだろうか。
どうして俺は何度作ってもこんな味しか出せないんだろう…
シーダ様につきっきりで指導してもらってるというのに…


「個性的な味…ね…」

「…すいません…なんか…」


原因がわからないことには改善のしようもなく、見かけはそれなりなのだが。

「それにしても、今日は一段と気合が入ってたわね。どうして?」

「ある人が、いつも俺以上の無茶な訓練をしてるだろうからたまには甘いものでも作ってあげようかと思ったんです。シーダ様みたいに。」

「それって…カインのこと?」

「何故それを!?」

別に誰、とは言ってないのに…

「ゼルっていつもカインを見てるもの。多分気付いてないのは本人くらいだと思うわ。」

「…そ、そうですか…?」

ということはマルス様達も当然知っているのだろうか。
俺が沈んでいると、シーダ様が励ますように声をかけてくれた。

「…私はね、恋愛に性別なんか関係ないと思うわ。だって性別が前提でそれからその人を好きになる、なんて変だもの。何もないところから、好きになっていったり…恋愛ってそんなものじゃないの?」

俺の場合は一目惚れでしたけどね…
シーダ様になら、俺のいい相談相手になってくれるかもしれない。
そう思った俺は今までのことを相談した。




「本当にカインが好きなのね。カインは真面目すぎるから色恋沙汰には縁がなさそうだったけど…そんなに好かれてるならカインも幸せだと思うわ。」

「…でも俺、不器用ですから……こんな形でしかカイン殿にしてあげられないんです。ただ傍にいられればそれでいいんですよ。」

「本当にそれでいいと思ってる?」

…俺には、できないんです。
戦場に出る勇気はあっても、告白なんてできない…男の癖に女々しいなぁ俺…

「今は…関係が崩れるのが怖いんです…」

「そう…それじゃあ、もう一度だけ作ってみましょう。料理は真心っていうもの。きっと美味しくなるわ。」

「シーダ様…俺のためにありがとうございます…」

今度こそ、成功してみせる!





「…ちょ、ちょっと焼きすぎだったみたいね…」

いくら火力が弱いからって、ファイアーなんて使うんじゃなかった…
一口食べてみるが、だいぶ焦げていてとても美味しいといえるものではない。

「…なんだか俺が料理をするのが申し訳ない気がしてきました…」

「…ん?何やら香ばしい匂いがするな…ん?ゼル…それにシーダ様?」

ちょうどそこに訓練を終えた様子のカイン殿が戻ってきた。
水でも飲もうとここまでやってきたようだ。

「「カイン(殿)!」」

「ちょうどよかった、少し糖分が欲しかったんだが…この焼き菓子を頂くぞ。」

「あ、それは俺が…!」

失敗した奴で…

「…ゼル…これはお前が作ったのか…?」

カイン殿がいつになく真面目な口調で質問をする。
…ああ、やはりこんなこと…

「こんな美味いもの今まで食べたことがないぞ!」

…やっぱりまず…ええ!?

「え…ええ!?」

「残りの焼き菓子も食べていいか?」

「は…はい、どうぞ…」

カイン殿はぱくぱくと失敗作の焼き菓子を食べていく。
焼き菓子を載せた皿はものの数分もしないうちに空になってしまった。

「む…全部食べてしまったな…すまん、お前の分もあっただろう。」

「い…いえ…いいんです。よかったらまた今度作りますよ。」

「本当か!なかなか癖になる味だったぞ。ゼルは料理もできるんだな、感心したぞ。」

そういってカイン殿が俺の頭を撫でる。
そんなことをされると俺は、わかりやすいくらいの反応が出てしまうのに。
顔が、熱い。髪の色と同じように、真っ赤になってると思う。

「…ゼル、大丈夫か?熱でも…」

「だ…大丈夫です…」

この場にいることはこれ以上は無理だ。
そう判断した俺は適当な理由を言ってここから逃げだした。






「ゼル…何かあったんでしょうか…」

「…鈍いのって苦労するわね…」

「…?」

ゼルってカインのこととなるとわかり易いくらい顔に出るのに、当の本人には伝わらないのね…
でもまぁ…幸せそうだったし…今はいいのかしら…





心臓が、煩い。
―明日はきっと、カイン殿の顔を見ることができない-
最終更新:2011年06月17日 00:29