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『死人のおとない』

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lupinduke

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『死人のおとない』
The Nights of the Dead
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マージ・ダルのコレクションでもらえます。
ハロウィンを迎えるにあたってチェックしておきたい一冊です。

 マージ・ダルの子供たちに向けて書かれた物語。作者不明。

その昔、Roに住む人々の家を夜な夜な死びとたちが訪ねてくるという事件がありました。なんでも、生きているあいだに見つけられなかったものを探すためだとか。そのときの名残が、じつは今も伝えられているのです。 

「Barakったら、急いでよ。もうすぐ来ちゃう!」
Anisaは高く飛び上がりました。ジャンプした拍子に、籠のザクロが危うく飛び出しそうになりました。
「今日こそ私がいちばんに見るの!だから急ごう!」

マージ・ダルの店という店は閉じています。路地という路地はどこも空っぽです。まるで人気というものがありません。それというのも、じきに太陽が沈むからです。そう、死人たちが現れる時間です。
Barakは最後のつぼをテントの支柱にくくりつけ、妹に向かってうなずきました。
「これでよし……と。帰ろう、Anisa。終わったよ。でもそのザクロはなくすなよ。じゃないと死人に捧げるものがなくなっちゃうからな」

「あたしならいつでも気をつけてるもん」
人のことを小馬鹿にしてくる兄を、反対に見下してやるように、Anisaはつんと頭を後ろにそらせました。とはいえ念のため、ザクロの数をさっと数えてみます。……ザクロはぜんぶありました。お母さんのぶん、お父さんのぶん。Barakのぶんに、Anisaのぶん。合わせて4つ。うん、だいじょうぶ。お供えものはバッチリです。
 「ねえ、近道しよう!」
Anisaはそう言いました。小石の敷き詰められた小道を、家に向かって駆けているところでした。手に下げていた籠の取っ手を、持ち上げられるだけ高く持ち上げ、屋根の上へと続くはしごを上り出しました。

お兄さんのBarakはAnisaの腰をむんずとつかんで止めました。やんちゃな妹をずりずりと引きずり下ろします。
「ばか、やめろって。今夜はちゃんと玄関から家に入らなきゃ。それくらいおまえでもわかるだろ?」
死人たちは毎晩おなじ時刻に現れます。そんな状況が何日も何日も続きました。

これにおびえた大人たちはバリケードを築きました。ありったけのものをかき集め、扉の前に積み上げて、ひたすら家に閉じこもりました。でもそれも最初のうちだけです。なぜかというと、死者たちがあまりに強く、あまりに激しく、そして執拗に玄関の扉を叩くので、しまいにはバリケードごと扉が壊れてしまったからです。

2晩が過ぎ、3日目の夜が訪れたころには、どこの家も玄関を開けっぱなしにしておくようになりました。入りたいなら、どうずお好きに。みんなそう考えたのでしょうか。当然のように、死者たちは堂々と家々に入ってくるようになりました。
 死者たちはなぜ現れるのか。そして、いったいいつになったら消えるのか。それは誰にもわかりませんでした。いずれにしても、7日目の夜のことです。街のいちばん高いところの子供たちが、大きな歓声をあげました。そう、今夜も死者が現れたのです。

近隣の家族らは、一生懸命話し合いました。何かを差し出せば、大人しく帰ってくれるのだろうか? でも差し出すと言っても、いったい死人は何を欲しがるというのだろう? みんなで知恵を出し合ったあげく、とりあえずキャンディやフルーツを用意することになりました。

BarakはAnisaの手を取り、家に入りました。死人たちに供え物を渡すため、家にいなければならなかったのです。
 「何をしてるんだ。早く入りなさい」
2人の姿を目にしたお父さんが言いました。Anisaたちは狭い路地を走り抜け、慌てて家に入りました。

毎度のことですが、大人たちは死人のおとないにパニックを起こし、戦々恐々と震え上がっていました。街角には何人ものガードが立ち、街の警備に当たりました。また、住人の中でも勇敢な者は、みずから立ち上がり、ガードとともに守りにつきました。しかし、死人たちはそんなことなどおかまいなしです。大人たちの必死の防衛線を、あっさり突破してしまいました。

大人たちの様子とは裏腹に、死人の訪れは、子供たちには特別なイベントでした(もちろん、怖がる子もいましたが)。子供たちの間では、まるでお祭りのときのような盛り上がりがみられました。
 「買ってきたよ、ザクロ。最後の4個だったよ!」
Anisaは大声でそう言いました。テーブル(見事な彫刻がうかがえます)にかごを置くと、両手を広げてお父さんの腰に抱きつきました。
「ねえ、パパ。あの人たちもこれなら気に入るよ。だって血みたいに赤いもの!」

「Anisa……なんてことを言うんだ」
お父さんは慌ててそう言いました。そして娘を、外よりも暗い家の奥へと押しやりながら後の言葉を続けました。
「そんなことは口にするものじゃない。やつらが勢いづいてしまうかもしれないじゃないか。そうなってしまったら困るだろう?」
「ねえ、パパ。あたしが死んだら、もう会いたいと思ってくれないの?」
少女は悲しげな声で尋ねました。でも次の瞬間、最初の死人が玄関に姿を現したので、Anisaはそれを見て歓声をあげました。

Barakはお母さんと床に座っています。
そのお母さんはヘッドスカーフに顔を埋めています。前に後ろに揺れ動きながら、「死者たちが家族に危害を加えませんように」と祈っていたのです。

「Anisa、大人しく座ってなさい」とお父さんが言いました。
「ママやパパを困らせるようなことを言ってはいけないよ」
 Anisaは腰を下ろしました。だけど大人しくなんてしていられません。もぞもぞと落ち着かないそぶりで体を動かし、死人たちが向かう先を見ようとしました。

死人たちはテーブルに乗ったバスケットなんかには目もくれません。次々に寝室へ入っていきました。

それを見たAnisaはツンと唇をとがらせました。あーあ、ナイフがあればいいのに。そうしたらザクロを割って、あの人たちに見せたげるのに。真っ赤に熟れているところを見れば、死人の人たちもザクロのおいしさを思い出すんじゃないのかな? Anisaはそう思ったのでした。
お父さんはAnisaの腕をしっかりつかんで離しませんでした。お母さんほど怯えてはいなかったのですが、それでもお父さんは娘から目を離さないようにしていたのです。

死人たちは家の中をのろのろと歩き回ります。そしていかにも面倒くさそうに、引き出しを開けたり壷の中身を確かめたりしていました。

しまいには小麦粉の入ったたるをひっくり返してしまいました。何が面白いのでしょうか、床にぶちまけたその小麦粉を覗き込んだりしています。そういえば、死人たちが通ったところには、彼らの足跡が残っていました。それがまた、小麦粉のように真っ白なのです。なんだかおかしくて、Anisaは思わずクスクスと忍び笑いをもらしました。
 やがて死人たちは去っていきました。探しものは見つからなかったようです。
最後の1体が出て行きました。部屋の空気は腐ったように淀んでいます。大人2名はいまだに固まったままでした。

Anisaはお父さんの手を振りほどき、ドアに駆けよりました。死人たちがどこに向かって去っていったのか、それを確かめたかったのです。

耳を澄ませば、街の人々がめそめそとむせび泣く声が聞こえます。Anisaはしかめ面をしました。死人たちは誰にも危害を加えなかった。なのにどうして……どうしてみんなはあそこまで怖がるんだろう? 少女には納得がいきませんでした。
「でも、そっか……あの人たちって、ザクロは好きじゃなかったのかも」
Anisaはぼんやりと思いました。死人って、まるで大人の人たちみたい。つまり、ちっとも喜ばないということです。
Anisaの中ではそういう図式ができあがってしまいました。

Anisaは死人の行進を眺めていました。そして最後の1人の背中を見送ると、ドアをパタンと閉じました。Anisaは考えました。……そうだわ。あの人たちは、たぶん明日も来るはずよ。だったら明日の晩までに、あの人たちが好きそうなものを考えとこう。
 しかし次の晩、死者たちは戻ってきませんでした。BarakとAnisaは、陽が沈むころ2人で家の屋根にのぼりました。高いところから死者たちを見てみようと思ったのです。ところがです。待てど暮らせど、死者たちは姿を見せませんでした。

明くる日 2人は友だちみんなに会いました。いろんな話を総合すると、結局ゆうべは死者たちは現れなかったようでした。2人が見ていた街中だけではありません。門から街の外に出たところにも、やっぱりいなかったというのです。

ひょっとして、死者たちは今まで探し物でもしていたのでしょうか? でもそれがとうとう見つかって、なのでもう来なくなったのでしょうか?
「新しい遊び、思いついたよ」
Anisaは近所の子供に言いました。
「死人さんみたいな格好して、みんなの家をのぞきにいくの。ねえねえ、今夜やってみようよ! 変装すれば私たちだってわからないよ。すんなり中に入れてくれるんじゃないのかな。ピスタチオとか、ナツメヤシとか、キャンディとか……そういうの、もらい放題じゃない?」

いつだか小麦粉が死人の足跡のように見えたことがあります。Anisaの頭にはそのことが浮かんでいました。
「そうだ、小麦粉を使おう。小麦粉を、手とか顔とかに塗っちゃうの。そうやってまっ白になれば、あの人たちみたいに見えるわよ!」
 小麦粉でまっ白になった妹を見て、Barakは思わず吹き出しました。妹はさらに、炭を使って目の下にくまを描こうとしていたので、兄のBarakはちょっと手伝ってあげました。

「次は僕の番だ!」
Anisaは真剣な面持ちで、Barakの顔に小麦粉を塗りたくり、目の下にもくまを描いてあげました。

日没直前には、冒険大好きな子供たちがたくさん集まりました。そして一斉にAnisaの考えた新しい遊びをスタートさせたのです。子供たちは家々を訪ね、かわりばんこに戸を叩き、入れてくれという意思表示をしました。
子供たちの新しい遊びは気味が悪い。
大人たちの中には、そのように考える向きもありました。その夜ドアを叩いていたのは、お菓子を求めてわめきたてる子供たちの集団でした。それがわかったとき、大人たちの多くはほっと胸をなで下ろしたのでした。

「子供たちに限っては、死人は怖くなかったようだ」
子を持つ親たちは、そんな感想を交わしました。

やがてこの儀式はこの地域から街全体に広まって行きました。こうして「死人のおとない」のお祭りは毎年恒例のお祭りとして広く定着していったのです。


 本来、ハロウィーンは紀元前5世紀頃の、新年前日に行われる祭りが起源であり、All Hallows' Eveが変化してHalloweenと呼ばれるようになったそうです。
そもそもの起源からして、ハロウィンは、聖人の霊を祭るAll Hallows(=All Saints)の前夜祭であり、死人の霊を慰める意味で、「死人のおとない」もまんまハロウィンといえばハロウィンだという話です。

http://www.google.com/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=ADBS,ADBS:2006-42,ADBS:ja&q=%e3%83%8f%e3%83%ad%e3%82%a6%e3%82%a3%e3%83%b3%e3%80%80%e8%b5%b7%e6%ba%90

もちろんこの辺で調べて適当に吹いてるだけですが。

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