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アルジャーノンに花束を

できたひ:2025/08/03 Sun 10:46:06
なおしたひ:2026/08/03 Mon 03:08:09
かかるじかん:とけいのながいはりがやく 8 かいまわるくらい




せんせい、あたまがいいひとたちは、しあわせですか?


【あらすじ】

『アルジャーノンにはなたばお』わアメソカのさっかダニエル・キイスというひとがかいたしょおせつです
アルジャーノンわネズミです
しかしとてもあたまがよくしじゅつをうけたからだそうです

チャーリィ・ゴードンというパソやではたらくひとがいます
チャーリィわあたまわるいです
でもまわりのひととなかよしでいつもわらてました

チャーリィわあたまよくなりたいとおもつていました
あるときあたまがよくなるしじゅつのはなしおききました
せんせえわチャーリィにあたまがよくなるしじゅつしました

チャーリィは知てきしょうがいで知のうしすうは68しかないそうです。
でも手じゅつをうけてからだんだん頭がよくなって色々な本をよんでどんどん知しきを深めていきます。

やがて知能は短期間で大幅に向上し、周囲の人間との関係性も変化していく。
しかし、それはチャーリイの思っていたものとは違い、そして彼にとっても好ましいとは言えないものであった……。


【概要・特徴】

『アルジャーノンに花束を』は、アメリカの作家ダニエル・キイスの小説。
始めは中編として執筆・発表されたが、その後も頭の中からチャーリーが消えず「もっと書いて」と訴えかけてきたそうで、さらに筆を進めて長編版を発表。
日本語訳は、中編版を稲葉由紀(稲葉明雄)、長編版を小尾芙佐(おびふさ)が担当。

小説の分類上ではSFにあたる。
しかし、話に出てくるサイエンス・フィクション的要素は『知能を人為的に向上させる手術』という技術のみ。それも臨床試験段階で、世界観は当時とほぼ変わらない。
ゆえにロボットが出てくるようなSFとは方向性が異なる。

この話はチャーリイ・ゴードンの一人称視点で話が進む。
序盤は「経過報告」として彼の手記という形式で書かれるが、その文章は項目冒頭のように彼の知的レベルによって変化していく。
そのため読者は文字だけでチャーリイの知能指数を把握できるようになっている。

キイスによる英語の原文では、知能指数の低さをスペルミスや文法ミスなどで表現していたが、
日本語訳にあたっては誤字脱字に加えてひらがなと漢字の使い方で表現されており、名翻訳として高く評価されている。
ちなみに、こういう表現には特に名前がないらしい。伝わりやすい表現にするという意味ではローカライズの一種と言えそうだが、あとは「文体調整」という言葉があるくらい。

Amazonのオーディオブック版ではナレーターは知的レベルによって読み上げの抑揚を大きく変えるという形で表現している。

チャーリイの知能の向上を通して、世界の見え方の変化を読者は追体験していく。
そしてそれを通して、知能、幸福、愛とは何かということに疑問を投げかけてくる。



【登場人物】

[メイン]

  • チャーリイ・ゴードン
主人公。30を超える年齢の男性だが、知能指数は68しかない。
本来なら知的障害者の病院に送られるところだったが、知り合いのパン屋の計らいで働かせてもらっており、配達などの雑務を請け負っている。

元々純粋で前向きな性格で、頭が良くなれば周りの人も喜ぶだろうと漠然と考えており、勉強など頑張ってはいるが中々成果はでなかった。
しかし、知能を向上させる手術の被験体に推薦され、人生は一変する。
その手術を受けて頭が良くなり、知能指数は185にまで上昇し、かつてのチャーリイとは思えないような変貌を遂げることとなる。

……しかし、それにより知的障害があったころの自分が周囲からどう思われていたか、思い知らされることになる。例えば、一緒に笑い合った友達だと思っていた人は障害者だった自分をからかって笑っていたし、知能が向上した自身を怖がっていると気づいてしまう。
また家族とのかつての思い出も鮮明に振り返り、自分ではどうしようもないが、母親の気持ちも分かってしまう。
それまで理解できなかった難しい本や芸術に触れて更に知能が向上した反面、敬愛していた人から劣等感を抱かれるようになったり、頭が良いと思っていた人が実は自分より劣ると気づいて失望したりと、孤独を深めていく。
知能は向上しても情緒の成長が追いついておらず、感情を処理しきれないこともしばしば発生している。
また、知的障害者だった自身と今の自身の乖離を感じ、かつての思い人と恋愛関係になるとかつての自分が自分を見ているかのような錯覚を覚えている。


  • アルジャーノン
タイトルに名前はあるが、人ではなく知能を向上させる手術を受けたネズミ。他のネズミよりも高い知能を持ち複雑な迷路を易々と突破してしまう。人によく懐いており、脱走などはしたことはない。

元々は研究者に飼われていたが、チャーリイ・ゴードンが連れ出し、以後は彼のペットのような存在となり共に生活する。
チャーリイが唯一同類と見ていた存在。
チャーリイはアルジャーノンに起こる変化がいずれ自分にも起こる可能性が高いと考えており、その挙動はつぶさに観察されている。




[医師たち]

  • アリス・キニアン
知的障害があった頃のチャーリイが通っていたクラスの女性教師。
チャーリイの学習意欲の高さを見て、手術の被験体に推薦した。
チャーリイを一人の人間として見ており、親身に接している。
チャーリイが思いを寄せていた女性であったが、徐々に傲慢になっていく彼とは距離をおくようになってしまう。

  • ハロルド・ニーマー
知能を向上させる実験を主導する研究主任の教授。
プライドが高く、功名心も高い。
知的障害があった頃のチャーリイの様子を他の人に見せるなどの配慮に欠ける行動が見られ、チャーリイと仲違いすることになる。

  • ジェイ・ストラウス
ハロルドと同様、知能を向上させる実験に携わる医師。
執刀医も務めていた。
ハロルドと違い、チャーリイにはフランクに接している。

[パン屋の関係者]

  • アーサー・ドナー
パン屋の店主。チャーリイのおじのハーマンとの約束で、チャーリイを17歳の時から雇っている。
しかし、知能が向上したチャーリイを次第に恐れるようになり、ギンピィらの陳情を受けて解雇してしまう。

  • ギンピィ
パン屋の職人。厳格な職人気質の人で古株の人。
右脚が不自由で、引き摺って歩いている。
店の売り上げの一部を横領していたが、それをチャーリイに知られてしまう。
チャーリイはギンピィを説得しようとするが、結果的にチャーリイが解雇されるきっかけになってしまう。

  • ジョウ・ガープ、フランク・ライリー
チャーリイの同僚で、知的障害があった頃の彼をからかっていた。

[チャーリイの親族]

  • マット・ゴードン
父親。知的障害を持つチャーリイを比較的受け入れており、妻とは度々対立していた。
チャーリイの記憶では理髪店の道具を扱う仕事をしていたが実は自身の理髪店を開くのが夢で、チャーリイの知能が向上した時点では念願を叶えていた。しかし、客を装って訪れた息子には気が付かなかった。

  • ローズ・ゴードン
母親。ヒステリックな性格で、チャーリイをありのまま受け入れることができず、健常者と同等にしようと教育していたが、チャーリイの知能が成長しないと、仕置きとして虐待。
チャーリイはその仕置きがトラウマとなり、萎縮していた。
妹のノーマが生まれ、ノーマが健常者だと分かると彼女にばかり期待を掛け、チャーリイをいないものと扱うようになり、障害者収容施設のウォレン養護学校に送ろうと考えるようになる。
チャーリイの知能が向上し再会した時点では認知症になっており、ノーマの介護を受けている。

  • ノーマ・ゴードン
妹。知的障害などはなく、母親から期待される。
成長するにつれて母親の教育方針がうつり、チャーリイを実の兄ではないと吹聴するなど、辛く当たるようになる。
チャーリイの知能が向上した後に再会した際には思いやりのある女性に成長しており、そうした過去のふるまいを謝罪し和解している。

  • ハーマン
伯父。直接登場しないがアーサーとは旧知。

[その他]

  • フェイ・リルマン
中年の女性芸術家。離婚歴がある。
奔放で、酒とダンスを好む。
ハロルドらと決別し出奔したチャーリイと仲良くなり交際する。


【映像作品】

海外では度々映像作品として映画化されている。
うち一つは「まごころを君に」の邦題で知られる。

日本では2002年と2015年にテレビドラマ化されている。
2002年のフジテレビ版は岡田惠和脚本・ユースケ・サンタマリア主演で、舞台が日本、登場人物も日本人という設定。
2015年版は野島伸司脚本・山下智久主演で、大筋は2002年版と同様だが、こちらでは主人公の勤め先が花屋になっていたり、頭を良くする手術を受けたり、結末が原作と違う。


【演劇作品】

日本では3団体により演劇作品として上演されている。
最も古い媒体は劇団昴によるもので、1990年より不定期に上演されている。

2005年にはチャーリイを平田広明が演じた。
2006年には荻田浩一脚本・演出の元ミュージカル版が上演。
チャーリイを演じたのはかつてン・ダグバ・ゼバの人間態を演じた浦井健治。浦井氏は本作での演技が評価され、同年に菊田一夫演劇賞を受賞した。
2012年には演劇集団キャラメルボックスが東京と兵庫でツアー公演を打っている。


【余談】

2017年、京都大学はダウン症で知的障害を引き起こす原因の一つとされる遺伝子と、その働きを抑制する化合物の発見に成功、ダウン症の子ネズミを妊娠している母ネズミにその化合物を投与したところ子ネズミの脳構造の異常や学習行動に改善が見られた。
今後のダウン症出生前治療につながる可能性があるとして研究チームはこの化合物に「アルジャーノン」と命名したが、本作を読んだ者からすれば豪華客船に「タイタニック」と名付けるが如き不吉な命名に不安を感じた者も少なくない。
なお京都大学としてはあくまで正式名称は「altered generation of neuron(「ニューロンの世代交代」の意)」、略して「ALGERNON」言い逃れ主張している。


【他の作品での言及】

知性を扱う話や、ネズミでアルジャーノンの名前が出た場合、この作品を意識した可能性はある。とはいえ「アルジャーノン」自体はノルマン系の男性名として一般的なものなので注意。

『夕暮れに、手をつなぐ』
2023年にTBSで放送されたテレビドラマ。
主題歌であるヨルシカの楽曲『アルジャーノン』は「アルジャーノンに花束を」をモチーフとしている。

『スペクトルマン』
1971年放送の特撮ヒーロードラマ。
犬怪獣ボビーと天才怪獣ノーマンが登場する48話・49話の脚本は「アルジャーノンに花束を」を参考にして書かれたとのこと。

ベターマン(BETTERMAN)
1999年放送のアニメ。
アルジャーノンという奇病が登場。劇中では発見した学者の名前からとられたとされる。症状やソムニウムも絡んだ本質から、名前の由来はこの作品と推察されている。

トランスフォーマー』シリーズ
アニメシリーズ内で何度かオマージュされている。
  • 戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010』25話「グリムロックの新しい頭脳」では、知性を得たグリムロックが冷静で理知的な科学者へと変貌しテックボットを生み出すなどの成果を挙げた一方、仲間との距離や孤独を感じるようになる。最終的にその知性を自らテックボットに譲渡し、元の自分へ戻る決断を下す展開は、チャーリイが知性を失っても人間らしさを拠り所にすることを、能動的な選択と解釈してTF的に描いたものと言える。
  • 超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』第21話「友情変形!私のバルクヘッド」では、古代の知識を脳にDLされたバルクヘッド(プライム)が、人格と記憶を失っていくというチャーリイの知性退行を思わせる過程が付加され、ミコの呼びかけで元の記憶を取り戻す。
  • トランスフォーマーアドベンチャー』第32話「グリムロック、天才になる!」では脳筋ゆえの仲間との距離を感じていたグリムロック(上記とは同名の別人)が、突然の天才化によって知性が暴走し肉体や人格に悪影響を及ぼす。グリムロックは最終的に知性を手放して仲間との絆を選んでおり、全体的にトランスフォーマー作品では知性よりも人間らしさを選ぶ物語となることが多い。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
2002年放送のSFアニメ。
第15話「機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES」。自律思考戦車タチコマのAIがその好奇心から、設計時に想定されていた範疇を超えた学習や活動が明確になった回。
多くのタチコマ達は自分達が兵器としては不要な「個性」を獲得しつつあることで、少佐に廃棄処分が検討されているのでは?と緊急会議を開いていたが、その会議そっちのけで読書に勤しんでいる個体が読んでいる本がこれ。
まさに他のタチコマ達の関心ごとより読書の方が面白いと言う「個性」の表れである。
本の感想を聞かれた際には「異文化との交流を描くのがいつの時代においてもエンターテイメントの基本」と評しているが、これはメタ的には作中でのタチコマらロボットと人間との関りについても示唆している。
なお、タチコマ達の大半は結局この件の後にラボ送り(廃棄処分)となるが、この個体は真っ先に解体・解析されたとの事。

『もう一人のチャーリイ・ゴードン』
梶尾真治氏の短編小説。
同名本と『百万年ハネムーン』収録。
本作をオマージュしたと思われる作品で、知能ならぬ若返り実験を受けたある男性の物語を描いている。

『あるジーサンに線香を』
東野圭吾氏の短編集「怪笑小説」に収録されている小説。
若返りの実験を受けることになった老人の物語で、本作のパロディ的な作品。

未来戦隊タイムレンジャー
敵組織「ロンダーズファミリー」の敵幹部「ギエン」がチャーリイに似ていると言われる。
彼は元は数を数えられなくとも無邪気なホームレスの青年だったが、ある日ドン・ドルネロをかくまって重傷を負ったことを機に全身サイボーグへと改造される。
大量の電子頭脳を積まれたことで高い知能を得るが、副作用で性格が変わって残忍で冷酷な悪党に変貌。
物語が進むにつれて凶悪犯や大量破壊兵器を使うなど、暴走がエスカレートし、遂には仲がよかったはずのドルネロすらも殺害し、何度も戦った敵であるタイムレンジャーの事さえ忘れて破壊を繰り返す様になる。
最終的には電子頭脳が破壊され、元の性格に戻りドルネロを想いながら機能停止した。

轟轟戦隊ボウケンジャー
Task.25「禁断の果実」に登場する怪人「アクタガミ」は、ゴミの山から偶然生まれた知能の低いツクモガミで、偶然プレシャス「知恵の果実」を食べたことで天才となる。
知能の向上によりダークシャドウを離脱し、他勢力とも接触して人間社会の愚かさに気づいたと言い
知恵の果実を食べた使命として人類を滅亡から救うと称してゴミを降らせるが、かつて自分を理解しようとしたボウケンシルバー/高丘映士との友情に心を動かされる。
知能が上がることで世界の見え方が変わるというテーマから戦隊版「アルジャーノンに花束を」との呼び声もあり
このとき裏切り者としてヤイバに刺されながら「頭が良くなると言うのは良い事ばかりでは無い」と述懐している。
最終的には知恵の果実の効果が切れ、元の姿に戻り、森で静かに暮らすことになる。

ブレスオブファイアⅡ 使命の子
カプコンから発売のRPGゲーム。
中盤のボスキャラとしてアルジャーノンが登場する。お供にダエルニ、スイキというユニットを連れているので元ネタは間違いなく本作。
しかし「少女の姿と歌声を餌にして獲物をおびき寄せる魔物」であり原作要素はほぼ無い。
ブレスⅡはパロディ要素がいろいろ豊富なゲームなため、名前だけ借りたものと思える。
ちなみにスルー可能なボスでもある。

人類は衰退しました
田中ロミオ氏のライトノベル
主人公の「わたし」がようせいさんの変なスプーンで知能が下がってようせいさんとくらした時に、ペットのテントウムシにアルジャーノンなづけました


ぼくの、しらない、お話を、たくさん、ついか、して、くれたら、とても、うれしい、です




【おわりに】

ダニエル・キイスは作者メッセージの一つとして、こんな内容を寄せている。
知能というものは、テストの点数だけではありません。
他人に対して思いやりをもつ能力がなければ、そんな知能など空しいものです。人間のこの特性を欠いているひとびとは、残忍な嘲笑と空威張りの仮面のかげに隠れるものです。*1
これは「自分も“頭が悪い”と周囲から嘲笑といじめを受けてきたので、チャーリィが自分と重なって見えた」という日本の少女からの手紙に、キイスが励ましと合わせて返信にしたためた内容の一部だそう。
チャーリィと自分を重ねたという感想は世界各国から、老若男女問わずあったそうで、想像以上の反響の大きさにキイスは嬉しさと謙虚な思いを持ったという。



さいごにアルジャーノンのこうもくについき、しゅうせいおねがいします
ぼくわウォレンにいきます

このこうもくがおもしろかったなら\ぽちっと/

最終更新:2026年08月03日 03:08

*1 小尾芙佐訳の早川書房文庫版の序文より。1999年10月15日発行版