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ある訓練生の試練

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lupinduke

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『ある訓練生の試練』
The Trainee's Test
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フリーポートのセイジより購入できる本です。
もちろん、購入後クエストをクリアしないと読める形にはなりません。

 『ある訓練生の試練』
フリーポート南区のバード、Anon Emous作

Lord Villanianがじきじきに指導するときの訓練は、じつに熱のこもったものになる。その間Delairaは、目を半眼にしてLord Villanianの一挙一動を見つめ、学ぶべきことを学びとろうとしている。手首をひねっただけにしか見えないのに、Lord Villanianの得物は稽古をつけている相手の生徒が持っていた武器を(生徒がだらけているときは手首ごと)確実に叩き落とした。今日もLord Villanianの動きはネコのようにしなやかで、流れる水のように淀みがなく、その動きから心中をうかがうことはできなかった。

「来い!」彼はDelairaに呼びかけ、敗れた訓練生たちが先刻まで列を作っていた場所を指さした。すり減った革靴のつま先でDelairaはおがくずをならし、血のしみを覆った。倒れたものの汗と血を吸わせるため、闘技場の床には常に木の削りくずやおがくずが撒かれているのだ。Lord Villanianは小さくうなずいて戦いの開始を告げると、いきなり最初の一撃を繰り出してきた。Delairaはつま先でバランスを取り、すばやく横に避けた。 今度は負けない、彼女は思った。この前の練習試合で受けた傷が癒えてからというもの、彼女は時間を無駄にしなかった。教官の動きをずっと観察し続け、左に視線を向けてから不意をついて右を攻撃する癖も見つけている。相手の目をよく見ながらDelairaは後ずさり、バルディッシュの柄を両手で握り直した。この武器の銀色に輝く鋭い刃、それにバランスのとれた木の柄の手ざわりを彼女は愛していた。
師と弟子は互いに相手から目を離さず、ゆっくりと円を描くように動いた。互いに急な動作でフェイントをかけ、相手の反応を試す。Delairaは師の隙を見つけ、いったん力を緩めてから行動に出た。あたかも腹を狙っているかのように、バルディッシュを下から振り上げる。師の動きは完全に予測したとおりで、すばやく腰をひねり、自分の武器を打ち下ろしてDelairaの武器を払おうとした。その瞬間を逃さず、Delairaはすばやくバルディッシュの刃を下に向けた。 「馬鹿め、早すぎるわ」鍛錬を重ねたLord Villanianの動きは難なく彼女の奇襲をかわした。Delairaは舌打ちした。「まだまだだな。修行が足らぬぞ」そう言うや否や、彼は腰を落とし、Delairaの脚をなぎ払いにきた。これも予測した展開だったので、彼女はバルディッシュを地面に打ち込むようにして身を浮かせ、師の顔を狙って蹴りを放った。今度は決まった。見物する訓練生たちが感嘆の声があがるのを彼女は耳にした。
「いい動きだ」。Lord Villanianの言葉に、Delairaは心の中で会心の笑みを浮かべた。Lord Villanianの賛辞としては、これは今まで誰も受けたことのない、最大級のものだったからだ。だが、Delairaは感情を表に出さないまま師にうなずき返し、2人は武器を型どおりに構えたまま円を描くように動きつづけた。見学している生徒たちの誰かが動いたが、DelairaはLord Villanianから視線を外さなかった。Delairaが武器を振るうとLord Villanianも打ち返し、Lord Villanianが突きを繰り出すと、Delairaがたくみにそれを受け流す。「私を疲れさせようというのね」戦いながらDelairaは考えた、「だけど二度と後れをとりはしないわ」 両者は再び互いに突きを繰り出した。2人の武器がぶつかり合う。そのとき、誰かがパンパンと手を叩きながら近寄ってきた。DelairaもLord Villanianも驚いて振り返ると、大またで歩いてきたのは誰あろう覇王その人であった。「何だこれは?子供の遊戯か?」そう言うと覇王は武器を選び取り、手を振ってDelairaを追い払うとLord Villanianに向き合った。彼女はこの数週間ずっと教官を観察し続けてきたが、師の顔に緊張の色が浮かぶのを見たのはこれが初めてだった。
「ではお手並み拝見といこうか」覇王はそう言うと、軽い足取りでLord Villanianに近づいた。「ぐるりぐるりと踊り続けてどちらかが手洗いに行きたくなるまで待つのがここの訓練なのか?」「何を!」教官は叫び、それから誰にものを言っているのかを思い出して自制した。「閣下もご存じの通り、戦闘に勝利する方法は幾通りもあります。学ぶべき教訓の一つは忍耐であり、敵を一撃で倒す好機を辛抱強く待つことです」 覇王は笑った。その声は訓練生の集まる広い闘技場に不気味に響いた。「ほう、親愛なるVillanial殿は、それを待っていたのか。敵を倒す好機?それなら貴様はとうの昔に逃しているぞ」Lord Villanianがぎくりと顔を上げた時には、覇王の剣が一閃していた。「余がその好機をつかんだようだ。Villanian、貴様に好機が訪れることはない。二度とな」
Villanianの剣が生命を失った手から落ち、鈍い音を立てた。覇王は嫌悪もあらわに死体を押しやると、Delairaを手招きした。「覇王様の手にかかって死ねるなら幸せだわ」そう思い定めた彼女は、覇王の前に立ち、礼儀として目を伏せた。覇王はそんな彼女を値踏みするようにじっくりとながめ回した。「今日から貴様がこの情けない訓練校の教官だ。貴様なら前任者の轍を踏むことはあるまい」それだけ言うと、倒れた敵手の屍を踏み越え、覇王は闇に消えていった。  

 
かっこいいこと言った大吟醸Lucan様ですが、500年前はいいカモだったらしいです。
ttp://eqbeastiary.allakhazam.com/search.shtml?id=1171
下のコメントに"Easy Kill""Easy to Pull Alone"なんて書いてありますし。
必死こいて500年頑張ればこその実力。もうSoulfireは渡さないみたいな。

人前に顔出さないのも、この辺のトラウマを考えれば、さもありなんと言ったところでしょうか。

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