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涙の向こう側 ― 第4部

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lupinduke

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涙の向こう側 ― 第4部
The Far Side of Tears, Part Four
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フリーポートのセイジより購入できる本です。
もちろん、購入後クエストをクリアしないと読める形にはなりません。

 涙の向こう側 ― 第4部

この一連の書を締めくくる第4部では、L.M.S. Assault号の乗組員がデスフィスト軍によるフリーポート港の封鎖を破るためにいかに巧みな計画を考案したかを知ることになる。
 艦長は乗組員をAssault号とDevastator号に振り分けた。私は艦長とともにAssault号に残ることになった。2隻をつなぐ綱を切る前、艦長はDevastator号の船内をくまなく歩いてAssault号との違いをメモに残していた。オークたちは主に内部空間の割り当て方に小さな改良を施していた。こうした変更がDevastator号の高速化につながっているとは思えなかったが、艦長はそのやり方をAssault号にも採り入れるつもりだった。それほど期待してはいないが、とにかくやってみよう、というわけだ。 「計画を変更する」と艦長が皆に告げた。「我々は再びカラディムに向かい、そこで味方であるフリーポートの船を集める。そのうえでフリーポートに戻り、デスフィスト海軍を蹴散らすのだ」艦長は集まった乗組員の顔を見回すと、さらにこう続けた。「我々は敵の旗を掲げて敵を装うつもりだ。異議あるものは申し出よ。船から放り出してPrexus'HoldでDevastator号のオークどもの仲間に加えてやろう」口を開くものはおらず、隣の者とうなづきあうばかりだった。何しろ、敵の旗を掲げるという戦法は、海賊が得意とするいわば裏技だったのだ。
我々は方向転換し、敵の旗が翻っているカラディムに向けて2隻の船を進めた。艦長の目的ははっきりしていた。デスフィスト海軍をだましてAssault号を捕獲したと信じ込ませるのだった。その一方で、あちこちにいるフリーポートの船に対しては、自分たちがフリーポートの者だと信じてもらうための巧妙な手口が必要だった。しかし、Assault号もDevastator号も涙の海を行くどの船よりもずっと機敏に動くことができた。Freeportの船の上にいる男たちに我々がオークでも海賊でもないことを見てわからせるように、我々はどんどん近づきながら彼らの周りを回った。そうやってカラディムの港に入るまでに、艦長はかなりの勢力を味方に引き入れたのだった。 港から逃げ出そうとする敵の退路をふさぐためにAssault号とDevastator号をカラディム港の片側に接岸させると、フリーポートの残りの船が港内に押し寄せ、停泊中のデスフィストの船団に襲いかかった。不意をつかれたオークたちはみな、剣を突き出されて次々と海中に投げ込まれたのだった。必要な食料品を奪って我々の船に積み込むと、我々は何日かぶりに初めて休息をとることができた。それはまるで休暇をとったかのような素晴らしい気分だった。
 艦長は、港沿岸の住人たちから水兵を募集した。集まった志願者の中には、がっしりとした体格で浅黒いドワーフたちや、ちょっとした突風で吹き飛ばされそうなほどすらりとしたエルフたちがいた。デスフィストのオークたちに対する憎しみの炎を一様にその目に灯した彼らは、喜んで我々の隊列に加わった。彼らは、フリーポート政府に対する一抹の疑念を残しながらも、港を支配するデスフィストを打ち破れば、封鎖されている通称航路を再び開くことができると考え、進んで我々に協力してくれたのだった。 休息をとり、補給を済ませ、兵を増強し終えると、我々の艦隊はAssault号とDevastator号を先頭にフリーポートに向けて再び涙の海へと出た。この航海はいささかゆっくりとしたものだった。艦隊を構成する船のほとんどは古い商船だったのだ。航海の2日目になると、封鎖されたフリーポートが見えてきた。この港は、カラディム湾とは違って内陸側にかなり入り込んでいるので、封鎖の陣形はより広い地域を覆う半円の形になっていた。我々はすばやくデスフィスト艦隊の船の数を数え上げた ― 数の上ではほぼ互角だった。
 デスフィストのオークたちは、ヒューマンは黄昏どきから夜明けにかけてが殺しやすい、などと豪語していた。我々の目は暗闇に不慣れなので、これはある意味では正しいといえた。しかし、このときの我々の船には、山々の地下を切り開いた都市に住むドワーフたちや、オークよりも感覚の鋭いエルフたちがいた。艦長はすべての船に彼らを乗り込ませ、その生まれつき備わった能力を活かそうとしていたのだ。また、Assault号には、以前私も会ったことのある美しいエルフの女性たちが乗り込んでいた。まったく艦長の観察眼には恐れ入るばかりだ。 カラディム攻撃の時とは違い、我々は、攻撃前に敵の船団のまっただなかに飛び込むのではなく、波に乗って南から接近した。最初に我々に遭遇した敵の船は、これほど大規模で装備の行き届いたフリーポート艦隊がいようとは予期していなかったらしく、完全に不意をつかれた。さらに、Devastator号とAssault号(どちらもまだデスフィスト海軍旗を掲げていた)を見た彼らは、仲間が応援に駆けつけたのだと勘違いしたのだった。やがて、さらに北にいた敵の船団がこちらに向かってくるころには、我々の艦隊は波を立てて前進し、そのあとには沈み行くデスフィストの船ばかりが残された。
 両軍が接近し、魔法の呪文とそれに対抗する呪文とによって空気がパチパチと音を立てると、船のあいだを矢が飛び交いはじめた。初めて目にする稲妻のような光がDevastator号のメインマストに落ちると、その先端は爆発で吹っ飛び、帆が炎に包まれた。乗組員はすばやく火を抑えるとともに、燃えさかる帆をつなぎとめている綱を断ち切った。一方、Assault号がデスフィストの旗艦に向かって突進すると、我々の心にはより激しい戦意がわきおこった。海面には破壊された数十隻もの船の残骸があふれ、船の操舵を難しくしていたが、Assault号はこの海域上の船の中で最も機敏に動きまわった。 Devastator号の帆を焦がす炎をその目に映した艦長は、オークの旗艦の側面をまっすぐに目指す進路をとった。さすがに旗艦だけあって、船体は金属の装甲で補強されていたが、大きさ、速度、攻撃力のどれをとっても我々の船にはかなわなかった。その船体のど真ん中にAssault号が突っ込むと、側面がおもちゃのように裂け、粉々になった。やがて敵の旗艦は横に傾いて海中に沈んでいった。私が港を見渡すと、差し込んだ夜明けの光によって、あたりに散らばるオークの船の残骸が浮かび上がった。やった、ついに成し遂げたのだ!そして、Assault号はフリーポートに帰港した。

 
というわけで、"涙の向こう側"の完結です。
元商船のくせに衝角とか付いてたんですかねこの船。

ともかく、描写は好きなんですが、第1部の誤訳が気になってプラマイゼロ…
資料的価値はそこそこかなぁと言った程度の連作でした。

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