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 魔法少女――
 それは万国共通、夢見る子女が思い描く理想のカタチ。
 箒に乗れば軽やかに空を舞い、魔法の呪文を口ずさめばお菓子の山が現れる。
 弱きを助けて悪を挫く、優しく可憐な小さな英雄。
 フリルの衣装はお人形のように可愛らしいのに、ひとたび困っている人を見つければ誰よりも華麗に助けてのける。
 希望を信じる魔法少女。時代が変わっても、子どもたちの心に姿を変えて在り続ける、存在。

 ――――夢の中にしかいない、都合のいい理想の象徴。

 困っていたら助けてくれる。
 可愛いお顔と可愛い衣装。
 肩に乗せた妖精は不思議の国からやって来た光の使者。

 違う。
 希望を信じた“彼女たち”は知っている。
 いつだって希望の反対側には絶望があって。
 誰かの命が救われる度に、魔法少女たちの未来は消えていく。
 妖精なんて嘘っぱち。
 魔法少女を作り上げるのはいつだって破滅への運び屋。
 不思議の国も、光の使者も、そんなものはどこにもないし、どこにもいない。
 希望を持つ限り、誰も救われない。希望と絶望の相転移現象を生み出す為に消費され続ける乱造品。

 けれど、そんな予定調和に霹靂が生じるとしたら?
 現実の中に光り輝く、小説よりも奇怪な奇跡。
 おとぎ話のように誰もが幸せになれるかもしれない、禁断の果実という可能性。

 そんなものがもし、本当にあるのだとしたら――

 一筋の光にすがって、彼女たちは果実を齧る。
 奇跡を成す為に。
 救済を成す為に。
 何度繰り返しても手に入らなかった、理想の未来を手に入れる為に。
 三画の縁(よすが)をもとに、目の前にぶら下げられた最後のチャンスに、彼女たちは手を伸ばす。


 ――懲りずに。
   二度目の絶望へと、欲を剥き出して。


.

■


















 第一部―― 『それが、私の願い』


















■


 絶望で幕を閉じる、魔法少女の物語。
 もう、みんな死ぬしかないじゃない。
 それを“覚えている”少女は、ひとり膝を抱えて泣き腫らした。

 「――いや、違うな。望みはまだ、潰えてなどいないよ」

 そう言って、彼女の前へ現れたのは黒衣の神父。
 凡そこれほど僧衣が似合わない人間が居るだろうかと、少女は思った。
 救世主めいた装いで現れたその姿には、どこか冒涜の色彩がついて回る。
 それでも――神父の甘言に、抗う術など、この少女は持っていなかった。


 斯くして七番目の契約が成る。
 祈りを抱く魔法少女の数、七つ。
 杯を求め蘇った英霊の数、同じく七つ。
 最早退路は断たれた。
 少女達に残された道は、最後の一人になるまで皆殺しにし続ける事のみ。
 イェホーシュアの逸話を彷彿とさせる殺陣の末にこそ、聖なる杯は存在する。

 「さて、これで席は埋まったわけだが――」

 剣の英霊。
 弓の英霊。
 槍の英霊。
 騎手の英霊。
 魔術師の英霊。
 暗殺者の英霊。
 狂戦士の英霊。
 国を焼き尽くす近代兵器にも匹敵しよう武威の塊を侍らせて、希望同士の蟲毒が始まるのだ。

 「この盤面。貴様は如何に思うのだろうな。インキュベーター」

 絶望の運び手のいない世界で。
 起こるはずのない聖杯戦争が、月夜の晩に開幕した。


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最終更新:2014年11月09日 16:01