メイレン、メイファ、メイリンからなる妖怪チームは、
現在学園から離れた森の中を歩き続けていた。
ファ「ね~、どこまで歩くの?」
メイファがくたびれたように言った。
練「もうちょっと歩くのよ。ゲートを使う時にまわりの魔法を終わらせてしまうから、
うんと離れてからでないと迷惑になっちゃうでしょ?ねえ、リンちゃん?」
メイリンはうんうんと頷いた。
ファ「ちえ~っ。」
レン「そう言えば、あなたは瞬間移動しないの?中つ国まですぐに帰れるじゃない。」
ファ「だめなの。フィジル島の境界だけは瞬間移動で通り抜けられないわ。」
メイレンは首を捻った。
レン「じゃあ、あなたはどうやってフィジル島に入ったのよ?テンちゃんについて行ったの?」
ファ「これよ。」
メイファは小さな金属の輪のようなものをメイレンに手渡した。
レン「何これ?」
ファ「魔法使いの指輪。これを持っていると、魔法使い達のゲートを使って移動できるのよ。
一人に一つ必要だから、お母さん達は使えないけどね~。」
メイファは得意そうに言った。
レン「でも、これってあなたの名前じゃないわよね~?」
指輪には『魔力を燃やせ!!フィフスエレメントに目覚めよ』
と刻まれている他、『ブルース』という名前が入っていた。
ファ「中つ国にいた魔法使いからうば…“借りた”のよ。」
メイファは慌てて訂正した。もしも正直に“奪った”と言えば、また叱られたかもしれない。
しかし、メイファが叱られる運命は変わらないのだ。
レン「(後でお父さんにうんと叱ってもらいましょ。)」
しんがりを歩くメイリンは、時々立ち止まった。
ファ「ほら~、また足が止まってる。早く行こうよ、リン姉ちゃん!」
メイファはその度にメイリンを引っ張らなくてはいけなかった。
きっとメイファには、メイリンが感じている不安などまるでわからないのだろう。
それがわかるのは、棒メイリンを見ている者だけだ。
ファ「リン姉ちゃん!?」
メイファが悲鳴をあげた。
背後から魔力を感じ、振り向いた瞬間メイリンがメイファを突き飛ばす。
その直後、何か紙切れのようなものがメイリンに当たり、メイリンが倒れてしまったのだ。
メイファは、メイリンに当たった紙切れをよく見た。
ファ「これは…スペルカード!?テン姉ちゃんと同じ…でもどうして?」
レン「さわっちゃだめよ!ファちゃん!」
メイレンも異変に気づき、メイファの手を引っ張って自分の後ろに隠した。
ファ「誰かいるのよ!つけられてたんだわ!」
レン「しーっ。」
メイレンはメイファを黙らせた。
森とは、都会の人間が思っている以上にさまざまな騒音に溢れている。
鳥のさえずり、木の葉のすれる音、川のせせらぎ…
その中から、メイレンは追跡者の出す音を聞き取ろうとした。しかし…
レン「(わからない。さっきの攻撃は魔法だったけど、魔力も感じ取れない。
魔力の発散を出来るだけ抑えているのね…テンちゃんと同じように…)」
ファ「お母さん!あそこよ!」
レン「えっ!?」
メイファは、まるで魔力など感じない方向を指差したので、メイレンは面食らった。
ファ「あの魔法使いは魔力を消しているわ。だったら、不自然に魔力が無いところを攻撃すれば良いのよ!」
そう、ここは魔の森である。魔力はいたるところから溢れている。
その中において、魔力をあえて消して行動している存在は異質なのだ。
おそらく、この追跡者は普通の森と同じ感覚で行動したのだろう。
例え今から魔力を発散したところでもう遅い。メイファのお尻から、ぶわっと12本の尻尾がはえた。
ファ「ナーシナリー!」
メイファの尻尾が6本に減った。そのかわり、ナース服を着たメイファの分身が6体現れ、
それぞれが大きな注射器を持って追跡者のいる方向へ突撃して行った。
勝負はあっという間に終わった。
レン「…誰かしらねぇ、“この子”?」
メイレンは、倒れた襲撃者の顔を覗き込みながら首をかしげた。
服装から察するに、どうやら学園の生徒の一人らしい。メイリンの様子を診ていたメイファが叫んだ。
ファ「大丈夫よ、お母さん!リン姉ちゃんは眠ってるだけみたい!睡眠呪文だったのね!」
レン「そう…」
メイレンは少し考えた後、メイファに言った。
レン「ファちゃん、リンちゃんが目を覚ましたら一緒に中つ国に帰りなさい。
私はちょっと“この子”と学園に戻るわ。どうして“この子”が私達に差し向けられたのかを調べないとね。」
ファ「え?…でもどうするの?お母さん、一人じゃ中つ国に帰れないじゃない。」
レン「大丈夫よ、これがあるもの。」
メイレンは、メイファから預かっていた魔法の指輪を彼女に見せた。
レン「バショーセンをファちゃんに預けとくわね。もしも秘密警察が学園長を拘束していたら、これで吹き飛ばしちゃいなさい。」
憧れのバショーセンを手にしたメイファの顔が、ポワッと明るくなった。
ファ「じゃあ、ちょっと行ってくるわね。」
メイレンは襲撃者を袋詰めにして歩き出した。サンタクロース?いいえ、メイレンです。
一方、棒メイリンの台詞を見て猫耳メイド喫茶を飛び出したミルクはメイレン達を追って森の近くに到着した。
チャイナドレスとドレスと中つ国の民族衣装の、怪しい3人組はどっちに行ったか?
と聞いてまわれば、メイレンたちの行き先はすぐにわかったからだ。
ただ、暗くなりつつある森の中に灯りも持たないで1人で入ればどうなるか、ミルク自身がよく知っている。
ミル「おーい!メイレンさーん!メイリーン!メイファー!
聞こえるーっ!?聞こえたら返事してーっ!!」
森に入れないため、とりあえずミルクは大声でメイレンたちを呼ぶことにした。
レン「あたいっ!」
ミルクのすぐ前の茂みからメイレンが飛び出た。\あたいっ!/は冗談である。
ミル「どわあああっ!?…って、あれ?
…メイレンさんじゃないですか。驚かさないでくださいよもう…」
メイレンさんはさっきまで持ってなかったはずの、サンタクロースみたいにでっかい袋を担いでいる。
まあ、人喰いの本能があるとわかった以上、サンタというより黒サンタって感じですが。
ちなみに黒サンタっていうのは、悪い子を袋でぶん殴ったり、袋に詰めてさらったりする奴の事。
……森で夜食の材料でも捕まえてきたとかか?
キョロキョロ周りを見回すメイレンさんからは、棒メイリンの言葉に見えた緊迫感が感じられないんだけど…
レン「あら、ミルクちゃん。わざわざ迎えに来てくれたの?助かるわ~。」
メイレンはミルクの周りを見回した。怪しそうな人物は特に見えない。
ミル「えーと、迎えに来たわけじゃなかったんですが…
まあその、無事で何よりです。はい」
レン「それじゃあ、さっそく案内してもらいましょうか?さっきの皆のところへ。ちょっと は な し があるのよ。」
ミル「…は?」
な、なんか怖いぞメイレンさん!
メイリンやメイファもいないし、森で何があったんだ!?
ミル「あ、ああ、案内ね、案内。それじゃあ、さっそく行きましょうか」
なんとなく機嫌を損ねるとマズい気がしたので、あたしは回れ右して猫耳メイド喫茶に戻ることにした。
それにしても は な し ってなんだろ。
気が変わったから、すぐ関係者を食べたくなったとか言い出さないだろうな。
ミル「えー、メイレンさん?メイリンやメイファは一緒じゃなかったんですか?
メイリンが大ピンチみたいな情報が入ったんで、様子を見に来たんですけど…
後、話っていったい……」
レン「あら、リンちゃんが狙われたのがわかっているなら話が早いわね~。
もっとも、どうして“メイリンが大ピンチ”って情報をあなた達が持っているのか…
その理由によっては長い話し合いになるわよ~?」
歩きながらメイレンさんの話を聞いていると、メイレンさんが担いでいる袋の中で何かが動いたような気がした。
それも、けっこう大きい何かがだ。
ミル「あの…ものすごーく聞きづらいんですが…その袋、何が入ってるんですか…?」
レン「わからないの?それともわからないフリをしているの?
どちらにしても、後でこれが何かをハッキリさせるわ。」
ミル「いや、わからないから聞いてみたんですが…」
何この反応。もしかして、襲ったのがあたしたちだと思われてるのか?
おーい!!という大きな声が聞こえてきたので見上げると、
窓から中庭の方に身を乗り出している
リリアーナが見えた。
リリ「メイレン様~!もうお話はついたのですか?それとメイリ・・・・・・お連れ様達はどちらに?」
ただでさえ、人波の中で頭が飛び出てるメイレンさんと一緒だから、目立つ目立つ。
やー、ここで叫び返したら余計注目されるよなー。
手だけ振り替えしておこ。
レン「あの子ったら…」
メイレンはつぶやきながらリリアーナに手を振った。
レン「私の名前を大声で叫んでどうするつもりなのよ。」
ミル「リリアーナは善人なんですけど天然なんです。察してあげてください」
メイレンとミルクは猫耳メイド喫茶に戻ってきた。
(41で〆)
最終更新:2009年04月17日 18:07