神龍は目を開き、ターロンの声で話し始める。
ター「皆さんの協力に感謝しましょう。私はこのように神龍と同化することができたからです。
力を手に入れた以上いろいろとすべき事はありますが、まずはクリムゾンヘッドの始末から行いましょう。
リリアーナさん、あなたの力でクリムゾンヘッドを生き返らせてもらいましょうか」
ターロンはリリアーナに貼られたままの白い御札の力を使い、リリアーナを操ろうとした。
カドゥケウスを封じていた封印の石は、すでにその力をうしなっている。
リリ「やめ・・・・・・嫌ああぁぁあ!」
リリアーナは悲鳴をあげると、頭を抱えて蹲った。
世界がぐにゃりとゆがむ。
目の前で血まみれで倒れているロクーと、自分の想い人との認識が頭の中でごちゃ混ぜになる。
ミル「ちょ…!リリアーナしっかりして!リリアーナってば!
どうしちゃったのよ急に!?」
頭を抱えてしゃがみ込むリリアーナに駆けよって抱き寄せるけど、リリアーナは苦しそうにもがくばかり。
リリ「やめて!私の中に入ってこないで!」
レヘ「無理矢理だと!?馬鹿な!
スペルカード発動!てめぇをぶっとばす!…あれ?」
レベッカが発動させた無数のスペルカードが、あらぬ方向に飛んで行き、図書館から出て行ってしまった。
そもそもこのスペルカードはターロンのものである。レベッカがうまく使えないとしても当然かも知れない。
ミル「無理矢理!?リリアーナ操られてるの!?
…てかレベッカ!スペルカード変な所に飛んでっちゃったじゃないか、何してるんだよーっ!」
精神操作系の魔法は解除が難しい、というのはあたしでも知っている事。
最悪、術者が死んだら解除もできなくなる、なんてこともあるらしい。
だからここはターロンと同じ御札使いのレベッカに、と期待したのにこいつはぁぁ!!
ター「彼の死ぬ直前の言葉には、見過ごせない不審な点がいくつかありました。
クリムゾンヘッドが生き返ったなら、彼の望み通り拘束し、思ひ出の糸車で情報を引き出すことにしましょう。
ケルビムとはどんな組織なのか?
ホワイト博士とはどんな人物か?
妹と会うとはどんな意味だったのか?
聞きたいことは他にも沢山あります」
ターロンは、リリアーナ以外の全員にも語りかける。
ター「秘密結社ケルビムとホワイト博士は魔法使いを敵視しています。
このまま放置する事の危険性は極めて明白であり、皆さんにもおわかりいただけるはずです。
どうかリリアーナさんの説得にご協力ください」
ベル「貴様の言いたい事は分かる…
だが…」
そう言うとベルジンは上着の懐に手をいれ杖を握った
ベル「リリアーナ君…どうか…分かって欲しい…」
リリアーナを操りクリムゾンヘッドを復活させようとたくらむターロン
フリ「さっきから生き返らせるとか何とか言ってるけど
クリムゾンヘッドは敵になったときにはすでにゾンビでしたのよ
ゾンビって死んでるからゾンビなんじゃなくて?
死んでるものが2回も死ぬなんて考えられないしどっちかというと活動停止という表現が正しいんじゃないかしら
リリアーナさんの能力で死んだ人間は復活できても活動停止したゾンビは再活動させられるものなのかしら?」
ギ「そうだよねどっちかというとネクロマンサーの仕事だよね」
ギ「それに頭だけの状態で生き返らせたら誰かの体を乗っ取ろうとするかもしれないじゃないの
それより今の状態で頭だけ回収して脳味噌から情報を聞き出したほうが・・・」
そんなサイバーパンクじゃあるまいしそんなあれな技術は無い・・・・よね
ギ「今のまま生き返ったらゾンビからデュラハンにレベルアップだねv」
生首を前にそんな気楽な会話が出来るギズモっていったい・・・・
ベル「私は君を傷つけたくはない…
頼む…ターロンの要求を飲んで貰えないか…」
ベルジンは握った杖を懐から取り出し リリアーナへと切っ先を向ける
彼女へ向けた声には苦渋の決断をした沈痛さが滲んでいた
ベル「これは私達魔法使い全員に関係する…
もしこのまま手を拱いていては必ず事態は悪化するだろう…
狙われるのは我々なのだ…」
ター「そう、大義の前には小義を捨てねばならぬ時があり、今がその時である事を先生はよくおわかりのようだ。
ミシェル先生、敵を影を操るのが精一杯だ、などと侮ってはいけません。
今までにどれほど大勢の者が敵を侮ったために敗北したかを、お忘れ無きように。
事は重大であり、一個人の意志で左右されて良いものではないのです」
ベルジンを止めようとするミシェルと桜花にも語りかけながら、ターロンはリリアーナに圧力をかけ続ける。
全員に聞こえるよう語りかけた後 ベルジンはもう一度リリアーナに視線を戻した
ベル「全ては君に懸かっている…
どうか聞き入れて貰いたい…」
リリ「絶対に、い・・・いや!」
ベルジンの懇願にも、リリアーナはきっぱりと拒絶した。
ミシ「スナウト、お前正気か?私にはとても教え導く者にはあるまじき姿に見えるがね
影を操るのが精一杯の奴を何故恐れる?
私はリリアーナ君がどういう力をどういう経緯で封じたか興味はない
だが持たない者が持たない故に渇望するように、持つ者は持つが故に苦悩するものだ
きみのそれは魔法使い全体を言い訳にした私情だよ。もう一度言おう
今のきみは正気か?」
こう言ったミシェルだが魔法使いが受ける迫害について実体験には薄い。
何せミシェルが人生の大半を過ごしてきた教会という組織は特殊な場所だ。
魔法使いを迫害するような輩も、聖書にある言葉を喋り十字を切ればミシェル、即ち魔法使いにも頭を下げる。
知識や記述で知ってはいても体験してないからこそ言える清々しいまでの正論であろう。
ベル「…確かに正気であれば生徒に杖を向けるような真似はすまい…
だがシェスター 君は魔法使いであるという理由で石を投げられた事があるのか…?
私情に駆られている部分は否定しない…
しかし このままでは罪の無い子供が私と同じような境遇におかれてしまうかもしれん…
君も教師ならば分かってもらえるはずだ…」
ミシェルの言った事は確かに『清々しいまでの正論』ではあった
教師として大きな間違いを犯したのも事実である
だが過去の境遇と比べては天秤はあるまじき方に傾いたなかもしれない
そしてミシェルは、リリアーナには優しい笑顔を向けるのである。
ミシ「私は甘い先生ですから、きみの決めたことを否定はしませんよ
命を絶ったのはアレの意識だ。きみが関わらないと決めたのなら、それは間違いではないさ」
ギ「別に僕は魔法使いじゃないから関係ないけど・・・・
こんなの生き返らせるぐらいならレベッカさんを先に生き返らせるべきだよ」
ベル「ならば口を挟むのはやめろ…
理解できぬ者はいつもそうだ…綺麗事を振りかざすしかできぬ…」
ギズモを睨みつけ一喝するベルジン
彼も心の中ではどちらが正しいのか否か葛藤を繰り返していた
桜「そこまでです、ベルジン先生」
ベルジン先生がリリアーナに杖を向けるのと同じように
桜花はベルジン先生に対してナイフを向ける。
桜「私には貴方の言う事が分からない。
自分の教え子が拒否しているのになぜ無理強いをする。
事態の悪化?私達魔法使い全ての問題?
そんなもの関係ない!
彼女が苦しんでいるんだ!
秘密結社ケルビム?ホワイト博士?
知ったことではない!
私が一番重要なのは友人である彼女だ。
リリアーナさんにちょっとでも打つ素振りを見せてみろ…!
例え相手が教師であろうと、私は貴方を刺す事を躊躇したりはしない………!」
桜花の目は本気である
桜「他の人がどう思おうと構わない。だが私は
望まない力を振るわせる事など断固させない…!
貴方は魔法使いの未来とやらの大義名分の旗を掲げているといい…!」
険しい顔でミシェルはベルジンに詰め寄る。
苦しみに歪んでいたリリアーナの口元が、ふっと緩んだ。
理解し、信じてくれる者がいるのはとても心強かった。
リリ(ありがとう、皆)
ベル「君のような素晴らしい友人がいたら私も変われたかな…」
ベルジンは桜花の目をじっと見つめ虚無的に笑う
ベル「どうやら本気のようだな…
悪いが少し大人しくしていて貰う…」
そう言うとベルジンは杖の切っ先をリリアーナから桜花へと変えた
ベル「…“武装解除”!」
永唱の後、桜花の握っていたナイフは手から弾き落とされた
桜「・・・・・・!」
ナイフを飛ばされた桜花は素早く次のナイフをとろうとするが・・・・・
リリアーナは杖を構えるベルジンの目を見た。
リリ(・・・・・・・そうか!分かったわ!!
ベルジン先生は、ターロンの油断を誘って、その隙をついて御札を破壊してくれるつもりなんだわ!)
操作系の呪縛は解除が難しい。
下手に破壊すると、被害者の精神まで壊して俳人にしてしまう恐れがあるからだ。
だが、ベルジンは闇魔法防衛論の教師でもある。
魔法と呪札では系統は違うが、対処はきっと知っているはずだった。
ベルジンの本意はともかく、リリアーナはこの状況をそう判断した。
リリ『ベルジン先生、構いません。ターロンの呪札を破壊してください。
大丈夫。私、先生のこと信じてますから』
リリアーナはベルジンから注意をそらせるべく、ターロンと会話を試みた。
リリ「死人を蘇らせるなんて・・・・・む、無理。
ロクーから聞き出さなくても、第二、第三のロクーの出、現、待てばいい。
恐らく彼らは、データを、共有してる。
だから私を操るより・・・・・彼らを、と、捕らえて・・・・・っ・・・問い詰めた方、がっ、早い・・・・・・ぅ」
杖を召喚しようとする左腕を右手で押さえつけた。
ばちっと御札から火花が飛び散った。
ター「苦し紛れの嘘をつかれては困ります。
もしあなたの力がアンデッドに効果が無いのなら、あなたが苦しみながら抵抗するはずがない。
先んずればすなわち人を制し、遅れればすなわち人の制するところとなるのです。
ケルビムの次の一手を待つ必要など、どこにもありません」
リリアーナは苦しげに背を丸めた後、ターロンを見てせせら笑った。
リリ「ずいぶん浮かれてるみたいだけど・・・・・メイレン様が、本当に亡くなっ・・・た、の?
力得ても・・・心配、じゃないの?」
レヘ「心配じゃねぇだろうさ、リー。あいつの目的は、最初から神龍と同化することだったのさ。
俺達はうまいことあいつのシナリオ通り踊らされてたってわけだ。メイレンもなぁ。」
今まで沈黙を続けていたレベッカが、やっと口を開いた。
ター「レベッカ様は賢いお方だ」
レヘ「俺はクリムゾンヘッドを生き返らせるのは賛成だぜ。」
レベッカが意外なことを言い出した。レベッカは真剣に言ったのだ。
そこにはベルジンのように、苦渋の決断であるかのような印象は全くない。
ミル「あんたまでいきなり何言い出すんだよ!
リリアーナがこんなにイヤがってるのに、それ見てまだそんな事言うのか!?
あんた一体どっちの味方なんだよレベッカ!」
レヘ「俺もあいつの正体が気がかりだ。危険因子は早めに粛清するのが中つ国スタイルだからな。
ターロンは何でもお見通し、ごもっともだ。……ところで、そのリリアーナの力とやらは、例えば
死 体 が 無 く な っ て も 使 え る 能 力 な の か ~ ? (笑)」
ミル「は?死体?」
ター「どういう意味です…?」
ターロンはクリムゾンヘッドが倒れていた場所を見て、死体が消えた事実にようやく気づいた。
すぐに能力を使って探そうとするが、死体どころかクリムゾンヘッドがいた痕跡さえ見つからない。
クリムゾンヘッドの死体はおろか、所持品、壊れたノビールアームの破片にいたるまで全て、
その場から消失してしまったのだから。“見えない”のではない、“ない”のである。
なぜかリリアーナがクリムゾンヘッドの顔にかけた白い布はその場に残ったが…
ター「な…馬鹿な!完全に活動は停止していたはずだ!」
レヘ「おっかしいな~?どこに行ったんだろうな~?(笑)」
ミル「声笑ってるわよレベッカ…」
なるほど。レベッカの奴、どさくさに紛れて死体を隠したな。
これならターロンは、リリアーナを操るだけじゃなく死体探しまでする必要が出てくる。
うまいやり方だな…とは思うけど。
演技派すぎるんだよ敵を欺く前に味方を欺きすぎだろ…
レヘ「まぁ、しかたねぇか。クリムゾンヘッドから情報を聞き出せないのは残念だが、
ターロンの言いなりになるって~のも、残念には違いねぇしな。」
ベル「そうか……なら仕方ない…な…」
断固として拒否するリリアーナに対し、ベルジンは残念そうに再度杖を向ける
ベル「君の信念は例え…拷問したとて変わるまい…
だが今は私情より優先すべき物がある…」
小さくため息をつくと 小さな声で呪文を永唱した
ベル「……“・・・・・”!」
呪文を唱えた後 ベルジンは着ていたコートを空中へ放り投げると
コートは重力に従う事無く宙に浮き続け呪札の力を次々と吸収していく
力を吸い札を無効化し終えるとコートはばさりと地面へと落下した
リリアーナを苛んでいた圧力が、ふっと途絶える。
リリアーナは、ターロンから解放された。
ベル「すまぬなターロン…やはり気が変わった…
悪いが協力はできん…」
桜「・・・ありがとう先生。」
ベルジン先生は思い直し、リリアーナさんを救ってくれた
ベルジンの葛藤など知らないリリアーナは、ベルジンに向けてびっと親指を立て、次に他の皆に向けた。
桜花もリリアーナに親指を立てる。
桜「ここでのしがらみは残す所あなただけだ、ターロン。」
体制は調った。桜花は真の敵である、ターロンへナイフを向ける
リリ「レベッカさん、ロクーの死体が消えちゃったわ。一体どうやったの?」
レヘ「しらにゃい。」
レベッカは適当に答えた。今はまだ説明するべき時ではない。
ミル「当てが外れて残念ねターロン!
悪いけど、あんたに協力しようなんて考える奴は誰もいないわよ!」
もうリリアーナを操る事はできなくなり、ターロンに賛同する者もいなくなった。
それでも、ターロンの余裕は崩れない。
ター「くくく…ははははは!!私にそこまで協力したくないとは…!
どうやらまだみなさんは、ご自分たちの置かれた状況をご存知ないようだ!
いいでしょう。みなさんが今どんなに危うい立場にいるかをお見せしましょう!」
神龍と化したターロンが吼えると、ムウ大陸の城の様子が天井に映し出された。
猛烈な雨が降り、視界が限られた中ではあったが。
レヘ「あの野郎!神龍の力を使ってやがる。けしからんぜ!」
ター「ご覧のように、愚か者の手に力が渡るのを防ぐため、ムウ大陸は私が水に沈めます。
この地下図書館が水没するのも、そう遠いことではないでしょう…さらに」
天井に開いた穴から、御札の貼られた招き猫の像が落ちてきた。
それは一同をムウ大陸に連れてきた、にゃんこ先生の像だ。
リリ「ああ、ニャンコ先生!!」
リリアーナはよろよろとニャンコ先生の元へと急いだ。
リリ「ああ、つるふかの先生が~!ニャンコ先生が招き猫の姿に~!!」
リリアーナは張り付いた御札を剥がそうと奮闘するが、残念ながらびくともしなかった。
リリ「レベッカさん、ベルジン先生、何とかならない?
できることがあれば協力しますので!!」
レヘ「…この呪符を解除するのは…無理だ、今の俺には。」
ター「そのゴーレムの空間を移動する力は私が封じました。
例えレベッカ様といえど、全てが水没する前に封印を解くことは不可能です。
つまり…メイレン様亡き今、あなた方に沈むムウ大陸から脱出する術はありません」
桜「・・・・・・・・・なんて事を・・」
桜(なんて事だ・・これじゃ、早く問題を片付けてリリアーナさん達と遊びに行こう大作戦が・・・・
いやいや、そんな事より下手をするとこのままみんなでここに永住!?そうゆうのも・・・・悪く・・ないかも・・・・
いやいやいやいや、アホか私は!!!)
アホな考えを振り払う桜花
ターロンは嬉しそうに先を続ける。
ター「しかし、心配する必要はないのです。
これからみなさんの魂が、遥かに遠く死出の旅路です…退路を心配する必要がありましょうか!」
レヘ「いや、まだ別の道があるぜ。そいつは、ムウ大陸が沈む前におめぇを倒すことだターロン。
みんな聞け。こいつは見ての通り大水を操る神龍の力を手に入れた。
つまり、奴に逆らう奴は、みんな国ごと海の底に沈められちまうわけだ。
だから…あいつだけは……絶対に、ここで倒さなきゃなんねぇ!!」
槍レベッカの周りに無数の呪符が展開される。
レヘ「スペルカード発動!ジェン・ファーフオ!…全てを焼き尽くすだけだ。」
レベッカは、呪符・珍発火を発動した。呪符に触れたものを発火させるスペルだ。
無数の呪符は怒涛の弾幕となり、ターロンに襲いかかる。
レヘ「ありゃー!?」
ミル「レベッカのバカー!また全弾外れてるじゃないかーっ!!」
どうも他人の物は使いこなせないのか、またまたあさっての方向に飛んでいくスペルカードたち。
使えないなら無理して使って期待させるなよなーっ!
ヴ「それは困ったなぁ」
リリ「ちょっと吸血鬼、もっと困りなさいよ大変なことになったのよ!」
変わり果てたニャンコ先生の姿に愕然としていたリリアーナだったが、
ヴァンエレンののほほんとした声でようやく我に返った。
と同時に、ターロンはリリアーナが持っている杖の本質を知っているのではないかと感じた。
リリアーナの杖の特性は、生死を操る力。
そして、異なる空間でもつなぐほどの空間操作である。
リリ「それ以前に、私達にかまけてていいの?
若返りの秘密を知っているのはターロン、あなたもだってこと忘れてない?
それに、メイレン様が本当に死んでなかったらどうするの?
あの方も本気で、中つ国のために神龍の力を得ようとしていたのよ」
ター「秘密結社ケルビムはいわば軽い皮膚病のようなものですが、あなたたちは重い内臓の病気です。
まずは重い内臓の病を治療し、それから皮膚病の治療法を考えることにしましょう。
メイレン様については、レベッカ様がなんでもお見通しです。
神龍の力を手に入れた以上、すでにメイレン様の生死など問題ではないのですよ!」
リリアーナはさらにターロンを揺さぶろうとしたが、優位を確信したターロンは相手にしなかった。
リリアーナはレベッカ以外の味方にテレパシーを試みた。
リリ『フリージアが使ったあの時間を食べる時計、もっと時間食べられないのかな?』
もしかしたらお腹がいっぱいなのだろうか?
ほんの数時間でいいのだが、とリリアーナは思った。
リリ『その時計、もしかして生きてるのかな?それともアイテムなのかな?
ちょこっと壊した後使い魔カプセルに突っ込んだら、時計は回復したりする?』
使い魔カプセルの中の時間の流れは特殊で、中にいるものにあわせて時間の流れが違う。
怪我をした使い魔が中に入れば速く、回復したものが入ればゆっくりと流れるのだ。
フリ「嫌ですわねえリリアーナさん時計が生き物のはずがありませんわ」
リリ「そっか、やっぱりそうだよね・・・・・・・・」
フリ「でもあと一年は食べられるみたいですわよ」
リリ「ごめん、私ったら・・・・・って!会話してるぅ?!」
フリ「これ以上大きくなったらどうなるのかしら?
え?夢はでっかく時計塔ですって?」
ギ「そうか!?巨大化した時計をターロンにぶつけるんだね!!」
リリ「え、えーと・・・・・・・あははは。
いや、ターロンの時間を吸い取ったら、時間が戻って元のお札に戻るかな~なんて・・・・・。
あれ?ということは、怪我したり魔力使い切った後で時間を食べてもらえば、もしかしt」
フリ「時間を食べさせても時間を食べられた者の時間は進むだけですわ
もしそんなことが出来るのなら若返りの薬は必要無いのですもの」
そんなことが出来るのならこの時計を使って若返ればいいのだから若返りの薬は必要ない
必要の無いものは作られ無い。だが現実に若返りの薬は存在する
ゆえに時計にそんな能力は無いと否定するフリージア
ルス「女王様もアナスタシア様も酷いのですわ~どうしてわたくしを助けないのです~!」
くやしーと地面にガンガン頭を打ち付けるルズ。
リリ「わわっ!ルズ何してるの?!」
ルズの乱心とターロンの尻尾攻撃のため、リリアーナの話は中断された。
ターロンは丸太のような尻尾を素早く動かし、リリアーナたちをなぎ払おうとした。
桜「そんな旅路はごめんこうむる。私は問題を片付けた後、新しい友人たちと遊びに行きたいんだ。」
尻尾を避ける桜花
ヴ「げぇっ、しまった!」
リリ「キャ――――ッ!!」
ミル「総員退避ーっ!」
容赦なくなぎ払われる日和見主義者のヴァンエレン。
死に至ることはありませんでした…が、しかし目を回して気絶してしまった。
フリ「一日に何度も吹き飛ばされてたまるものですか!!」
さっきノビールアームに吹っ飛ばされたフリージアさんは雪の結晶で編まれた鎖を本棚に巻きつけ
それを手繰って反動を利用する事により回避する
ミル「ぎゃ―――っ!痛っ!!」
尻尾の直撃は免れたものの、ミルクは砕けた本棚から落ちて体を打つ結果になりました。
リリアーナは招き猫と槍を抱え、必死で回避しようとするものの、間に合わない。
直撃こそしなかったが、思いっきり吹き飛ばされたところを
桜「時よ!止まれ!」
時を止める桜花が救った。
リリ「だめだ走馬灯が見える・・・・・・・・はっ?!
・・・・・・・・・あ、あれ?私は尻尾攻撃で吹き飛んだはずじゃ・・・・・???」
何が起こったかわからないリリアーナは、不思議そうな顔で桜花の手と顔を何度も見比べている。
だがオウカに助けられなければ、リリアーナもレベッカも危ないところだったのだけは分かった。
リリ「オウカさん!」
桜(残り魔力から考えて後二回と言ったところか・・)
桜「大丈夫か?リリアーナさん?」
みんなが気づいた時には桜花はリリアーナさんの手を握りとめていた。
オウカに助けられなければ、リリアーナもレベッカも危ないところだった。
レヘ「オウカさん!また助けてもらったわね!大好き(愛好)!」
リリ「また助けて・・・・・え?あ、あれっ?」
レベッカはリリアーナの声真似をしてオウカにお礼を言った。
桜「へっ!?あっ!?・・・」
真っ赤になった桜花だったが言ったのがレッベカだと気づくと無言でナイフを取り出す。
リリアーナは焦って槍と桜花を何度も見比べていたが、結局恥ずかしそうに
桜「あまり、人をからかわない方がいi――」
リリ「えっと・・・・・・ありがとう(愛好)。身体、大丈夫?(愛好)」
と微笑んだ。
桜「へへぇ!?あの・・その・・・」
リリアーナに言われた桜花は今度こそ真っ赤になって黙った。
桜花は東方の国の生まれであり、中つ国の言葉についても多少知識がある
(レッベカさん・・・グラッツェ・・・)
もちろん、[愛好]の意味は知るところである。
桜「いや、あの・・ありがとう。」
ミル「あつつ…痛いなぁもう…死んだらどうしてくれるんだよ…
そだ、みんなは…ヴァンエレン!?生きてる!?」
近くに倒れた吸血鬼に駆け寄ると、どうやら目を回しているだけなようで。
よかったよかった…てか、吸血鬼なんだから死なないよな。滅びるだけだよな。
でも気絶する吸血鬼なんてヴァンエレンだけだよね、絶対…
フリ「ギズモちゃんは?」
ギ「僕は無事だよ!!」
元から射程範囲外にいたギズモは影響を受けなかったようだ
レヘ「さてと…みんな避難できたようだな。“俺の攻撃”から。」
レベッカが周りを見渡してそう言った。
リリ「ええっ、俺の攻撃ってどういうこと?」
そしてターロンに向って叫ぶ。
レヘ「ターロン!貴様は何度でも俺に騙されるぞ。
このレベッカ・ウォンがスペルカードを使う時、それさえも貴様を欺くぜ。」
ところで、みんな覚えているだろうか?
神龍になったばかりのターロンがリリアーナを操ろうとした時、
レベッカがターロンに向けて放ったスペルカードが、
コントロールがきかないかのように図書館から出て行ってしまったことを。
レヘ「教えてやろう。俺が貴様に最初に放ったスペルカードは、
鉄布硬功夫(ティエプ・インゴンフー)。
スペルカードに触れたものを鉄に変える呪いだ。
貴様がマリオに対して、そうしたようになぁ。
そして、上を見ろ。ターロン!」
ター「なにいっ!?」
リリ「ああっ、天井が――――溶ける?!」
上を見上げたターロンは、ようやくレベッカの意図に気づいた。
天井が全て銀色、 すなわち鉄と化したことがわかるだろう。
そう、レベッカは呪符のコントロールがきかないふりをして、
図書館の外側から天井を鉄化させたのだ。
そして、その天井に無数に張り付いている呪符。
ターロンの真上付近に集中して張り付いているそれは、
ターロンを避けるように飛んでいった、さきほどの呪符・珍発火だ。
珍発火の貼られた部分が瞬く間に赤熱する。
すぐにその場を離れようとするが、間に合わない。
レヘ「もう一度言う。全てを焼き尽くすだけだ。」
天井に貼られた珍発火が、自らの効果による熱に耐えられなくなり、燃え尽きる。
と同時に、今やマグマの様相を呈する鉄の天井から、
ポタポタと灼熱の雨が降り出した。
フリ「ギズモちゃん!氷の剣じゃダメージは期待できませんわ!!
このおっきい図書館の本棚をぶつけてやりなさい!!
大丈夫!フリージングドールのパワーはクドリャフカさんの1.5倍ですわ!!」
クドリャフカそれはフリージアが怪力の持ち主として認識している女性徒である
ギ「じゃあこの柱時計は横に置いて置いて・・・・と」
ギズモはフリージングドールの片腕で抱いていた柱時計を降ろすと
図書館の本棚を引っこ抜きターロン目掛けてぶん投げた
あくまでこれはフリージアさん主観の彼女の1.5倍であり
実際の人物の1.5倍とは関係ありません
ギ「弾はいくらでもあるよ!ここ図書館だからね!!」
レベッカの術だけでなく、フリージングドールが投げつける本棚にも引火し、 ターロンに向って飛んでいく。
ター「ぐわああああああっっ!!」
ミル「メギド!」
溶け落ち鉄に焼かれて悲鳴を上げるターロンに、ギズモとミルクが波状攻撃をしかける。
手応えあり、ざまみろと思った瞬間、ターロンの周りが真っ白い蒸気で覆われた。
ミル「な、なにあれ!?」
リリ「霧――――じゃない、湯気?!なんで?
フリージア、今は氷魔法だって使ってないのに!」
ターロンが神龍として完全な状態なら、攻撃は効果がなかったかもしれない。
しかし、現状ターロンの体は百匹の下位龍の寄せ集めでしかない。
その鱗の強度も推して知るべしだ。
鱗の防御力に頼れないターロンは大量の水を召喚し、その水を防壁として攻撃を防ぐ。
ミルクが見た水蒸気は、この水が蒸発したものだったのだ。
ひやりと、ミルクは足下に冷たい感触を感じる。
踏み出せば、ぱしゃりと足下で鳴る水音。
いつの間にか、図書館の床に水が貯まり始めている。
水?まさか、もう上の洪水の水が下まで来た!?
慌てて天井を見上げても、水漏れの気配も見あたらない。
リリ「凄い量の水!レベッカさん、あれがさっき言ってた神龍の力って奴なのね!
も~!腹立つわね~――――ん?」
リリアーナは悔しそうに唇をかんでいたが、ふと足元の地面がおかしい事に気づいた。
リリ「なんか足元がやわらか――――わあっ、ヴァンエレンが!!」
そう。リリアーナは、気絶したヴァンエレンを思いっきり踏んづけていたのだった。
そして、慌てて身体の上から降りたことで、床が濡れていることにも遅ればせながら気づいた。
リリ「な、なんで?いつの間にそんな場所にっ?!――――大変!溺れちゃう!
何でこんなに床が濡れてるの?浸水してるの?!」
今のところ目立った変化は無かったが、ターロンの脅しが真実なら、浸水するのも時間の問題だろう。
リリ「ヴァンエレン、起きて!ヴァンエレンったら!」」
リリアーナは気絶したヴァンエレンを起こそうとしたが、状況は芳しくないようだ。
リリ「・・・・・・・・・んもう!こうなったら最後の手段よ!」
リリアーナはこほんと咳払いをひとつすると、なぜか妙にきりっとした顔になった。
リリ『――――ヴァンエレン、こら、起きろよヴ・ァ・ン・エ・レ・ン。
使い魔がマスターより後に起きるなんてダ・メ・だ・ろ?僕は許さないぞっ!
か、勘違いするなよ?
別にお前が目を覚まさないから、僕が寂しいなんてことは無いんだからなっ!!』
そう、リリアーナはヴァンエレンの耳元で、彼(彼女?)の主であるマオの声真似をしたのであった。
リリ「う~ん、やっぱりこれじゃだめかな?じゃあマオマオお色気ヴァージョンを」
披露しようとしていたリリアーナだったが、水蒸気の向こうに見える神龍の口を見て真っ青になった。
リリ「皆、あれ見て!!」
水蒸気の向こう、神龍の口元で雷光がきらめく。
ター「三流以下の雑魚どもが小賢しい真似をぉぉ!!
貴様らなど神龍の吐息でまとめて消し去ってくれるわぁ!!」
ミル「サンダーブレスかよ!?」
大口開けたターロンの口の中、雷の玉が解き放たれる瞬間を待って輝いている。
ごごごご冗談を!足下濡れてる中でそんなものぶっ放されたら感電死するぞ!
ミル「ヤバい電気だ!水から上がれーっ!」
リリ「あ、あれ雷だよねっ?!まずいわ、早く水場から離れなくちゃ!オウカさん、手を貸して!!」
桜「ああ、わかった」
まだ[愛好]のダメージが残っている桜花は真っ赤な顔のままリリアーナに答える。
桜「しっかりしろ、吸血鬼。男の子だろ」
リリアーナと共にヴァンエレンを起こしサンダーブレスの範囲から逃れる
フリ「あんなものを食らったら気絶判定通り越して死亡判定のダイスロールが必要になりますわ!!」
必死に雷の有効範囲から逃れようとするフリージア
ターロンは水の防壁から頭だけを出し、大きく開けた口から雷を吐き出した。
リリ「キャ――――っ!!」
あたりが一瞬真っ白になるほどの、すさまじい雷光。
物凄い音がして、足元や壁がぐらぐらと揺れた。
ミル(あぶねーっ!間一髪セーフ!)
桜「ちっ!!さすがの威力だな。腐っても神龍の力か」
ターロンのサンダーブレスを回避した桜花たちだがあまりの威力に驚く
リリ「あ、あんなの何発も食らったら、この地下図書館の建物自体がばらばらになっちゃうよ!
早くあいつを倒して、ここから逃げないと
だって私達、皆で遊ぶ予定なんだもんね!」
フリ「そうですわね!その為なら私も手段を選びませんわ! 」
桜「ふ、二人とも・・聞いてたのか・・・」
自分の恥ずかしい宣言を聞かれていたことに落ち込む桜花
フリ「時を食べる時計よ!私の呪文詠唱時間を食べることを許可しますわ!!」
フリージアは時を食べる時計に呪文詠唱時間を食べさせ
本来ならば3分掛かるフリージング・ディストラクション発射の準備を一瞬で終わらせようというのである
ターロンは皮膚病扱いしていたが、リリアーナとしてはクリムゾンヘッドの遺言も気になった。
リリ「ねえ、ムムムはあいつを・・・・・神龍を殺したんだよね?
だったら今のターロンにこれ使ったら、そのときの様子とか――――弱点とか、分かるかな?」
桜「わからないが、やってみる価値はあると思う」
リリアーナは、服のポケットから思ひ出の糸車を取り出した。
たとえ弱点まではわからなくても、クリムゾンヘッドに使った時のように、心に隙が出来ればいい。
あとは先生や戦えるものが何とかしてくれるだろう。
フリ「これを一回やるごとに私の寿命は3分縮むけど・・・・あなたを倒す為なら躊躇しませんわ!
氷結姫フリージア最大奥義!フリィィィィジングディストラクショョョョョン!!」
ちなみにタバコ一本ごとに減る寿命は5分30秒なのでそれに比べればかなり軽い代償である
リリ「うわわっ?!」
発射時の風に煽られ、せっせと操っていた思ひ出の糸先が流されてしまう。
リリ「うう、集中集中・・・・・・」
リリアーナは、再びターロンへ向かって糸を動かし始めた。
サンダーブレスにカウンター気味に合わせられる、フリージングディストラクション。
3分踊っていればターロンは頭を水中に引っ込めていただろうが、詠唱時間短縮の成果でそうはいかなかった。
フリージアの拳から放たれるフリージング・ディストラクションの白い光
だが、ターロンは水の壁を動かし、フリージアの攻撃を防ぐ。
ター「そんな攻撃が水の壁を破れるとでも…むうっ!?」
頭を引っ込めようとしたターロンは、氷の壁に固められて動きが取れなくなった事に気付いた。
間抜けな話だが、今の状況で水の壁で冷気を守ればどうなるか。まで考えていなかったのだ。
フリ「実体の無い相手と人間サイズには当たった試しはほとんど無いけど、壁を凍らせるのなら簡単ですわ!!」
フリージングディストラクションの残り回数は後4回(ギズモの魔力含む)
リリアーナが操る思ひ出の糸車の糸は、静かにターロンへと接近していく。
リリ「そっか、時計さんは食べるだけで、がばっと吐き出すことは出来ないんだね!」
糸を操りながら、おもむろにリリアーナは叫んだ。
どうやら今頃になってようやく時計と時間の話を飲み込めたようだ。
レベッカは今までの話を反芻していた。
李『え、えーと・・・・・・・あははは。
いや、ターロンの時間を吸い取ったら、時間が戻って元のお札に戻るかな~なんて・・・・・。
あれ?ということは、怪我したり魔力使い切った後で時間を食べてもらえば、もしかしt』
振『時間を食べさせても時間を食べられた者の時間は進むだけですわ
もしそんなことが出来るのなら若返りの薬は必要無いのですもの』
李『そっか、時間さんは食べるだけで、がばっと吐き出すことは出来ないんだね!』
レヘ「(若返りの薬は必要ない…時間が戻る…怪我したり魔力使い切った後…
消えたクリムゾンヘッド…イェスタディ・ワンスモア…吐き出す時間……はっ!)」
レベッカは今までわからなかった謎の答えがわかった。そして叫んだ。
レヘ「そうか!そういうことだったのか!クリムゾンヘッド!」
ター「壁など凍らせてどうしようというのですか!
まさかこれで私の動きを封じたつもりではないでしょうね!?」
ターロンが力を込めて暴れると、氷の壁にはひびが入り、砕け散り、ターロンは自由になった。
一時的に固定されていた頭には、すでにリリアーナの持つ思ひ出の糸車の糸が迫っている。
糸が神龍の頭に当たると、その場所から白い光があふれ出した。
リリ「・・・・・・・やった!」
それは神龍の記憶のあふれ出す様であり、その場の全員が、光の中で過去の幻を見ることになる。
参ったと言いたそうにミシェルは周りを見渡す。
ミシ「皆さん、なんとか外へ出ませんか!?」
と言った時に眩い光が図書館を包んだ。一瞬困惑したミシェルもすぐにマジックアイテムが発動したのだと理解した。
(92で〆)
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最終更新:2009年11月28日 15:13