桜「そこまでだ!!!ターロン!!」
フリ「いつの間に!?」
しかし、サンダーブレスが放たれることは無かった。
猫耳桜花が3つの玉と一緒に、ムムムの像の前に立っているのを見てしまったのだから。 ^
リリ「私達は今、ムムムと玉を手に入れたわ!終わりよ、ターロン。
今すぐ雨を止めて、神龍との同化とニャンコ先生の封印を解きなさい!」
ター「馬鹿な…そんな馬鹿な!いつの間に龍玉を…!!」
驚きの声と共に、ターロンは一度集めた雷の気を散じる。
言うまでもなく驚いたのは3つの玉を持ち出した事であり、決して猫耳姿に驚いたのではない。
手に布を巻きつけ、玉に触る準備を済ませた
リリアーナは、びしっとターロンを指差した。
勇ましい言葉とは裏腹に、引き結んだ口元も、ぴんと伸ばした指先も震えているのはご愛嬌だ。
リリ「――――別に、3つの玉とムムムの像を手に入れたからじゃないわよ?
本気であなた達と刺し違える覚悟があれば、私には出来ないことは何も無いの。
それに――――私達がこうしてあなたと戦っている間、ここにいない先生達は何をしていると思う?
ただ、手をこまねいて見物していただけ。・・・・・・・そう、本気で思ってるの?」
フリ「私にだってまだ切り札の一つや二つ残ってますのよ・・・・まあ使うと私自身が死ぬからやりたくは無いのだけれど
ここであなた含めて全員が死ぬよりは少しはマシじゃないかしら?」
ギ「絶対に駄目だよ!みんなで帰ってみんなで遊ぶんだから!!」
リリ「そうよそうよ!」
自分は良くても人は駄目、見事なダブルスタンダードぶりである。
学園に帰ったら帰ったで101匹フリージアさん状態なのだがそれはそれとしてである
フリ「だからってもうひとつの切り札は絶対に嫌ですわよ!!」
もうひとつの切り札・・・・それは使い魔と合体してパワーアップする能力
ソウル・ユニオンであるが、それはあまりにも恥ずかしい格好になるためフリージアは必死でそれを拒否する
フリ「とにかく今ならまだ間に合いますわよ!早く降伏しておしまいなさい!!
私はあんな恥ずかしい格好になるのは嫌ですのよ!!」
ミル(格好なんだ…死ぬよりイヤな格好ってどんなだよ想像できんぞおい…
…ま、まあ、どうやら無事に切り札の3つの玉は手に入れたみたいだし。
これでいざとなればムムムの封印を解いて…ムムム? )
ミル「そうだもしかしたら!」
別の方法を思いついたあたしは、槍レベッカとメイレンさんの生首を持ったまま急いで桜花たちの所に向かった。
リリ「わあっ、ミルク!!何してるの、その手にもってるのは、メイレン様の生首じゃない!!」
ミル「ねえ!ムウ大陸の幻で、ムムムが神龍から受けた傷ってすぐに回復してたよね!?
あれはこの3つの玉の力みたいだったけど、あの力を引き出せないかな!?
そしたらメイレンさんも生き返るんじゃないの!?」
メイレンさんの生首を玉に近づけたり乗っけたりしながら、あたしはそう言った。
メイレンさんとムムム、どっちが安全か選ぶなら、間違いなくメイレンさんだ。
ムムムの封印を解いちゃったらこっちもほぼ死亡確定だもんね。
ミル「ねえ!ムウ大陸の幻で、ムムムが神龍から受けた傷ってすぐに回復してたよね!?
あれはこの3つの玉の力みたいだったけど、あの力を引き出せないかな!?
そしたらメイレンさんも生き返るんじゃないの!?」
リリ「えっ、メイレン様まだ息があるの?!」
レヘ「おぉぉお、心の友よ~!」
レベッカも謎の感動をした。なんだかんだで母親には生きていてほしいらしい。
リリ「妖怪なら可能なのかな・・・・・・。
あ、でももしこの状態から復活できたら、きっとレベッカさんにも応用できるはずだよ!!」
リリアーナはちょっと悩んだ後、自分の髪の毛をひと房切り取り、メイレンの口に入れた。
リリ「いや、妖怪が人を食べて力を得るのなら、身体の一部でも効果があるかも、なんて思っちゃって。
やっぱりだめね、素人考えなんかでは」
ターロンは目を閉じ頭を伏せ、戦意を失ったように静かにとぐろを巻いた。
ター「……なんということだ……
このままあなたたちがムムムの封印を解けば、双方の死のみならず世界にも危機が訪れます。
こうなっては仕方がありません、認めましょう。私の完全な敗北です。
私は神龍の体を解放し、中つ国に帰りましょう。
雨も止め、猫型ゴーレムの封印も解きます。
皆さんは来た時と同じルートを通り、フィジル島にお戻りください。
…しかしそのためにも、龍玉のうち、ただ1つだけをお渡しください。
龍玉は鍵なのです…その力を使わずに、私と神龍との同化を解くことは出来ないでしょう」
ターロンは再び交渉を申し出る。
瞳を閉じたその姿からは、言葉の真偽は伺いしれない。
正直な話、これでターロンがあきらめてくれた事に安心する桜花
キリッとした目でターロンを見てはいるができれば座り込んでしまいたかった。
リリ「ど、どうする?」
桜「その話・・・偽りはないのだな?」
もはや、周りの話を聞く余裕すらない桜花は玉をターロンの方へ転がそうとする
レヘ「おぅ、リーとオウカ達がやってくれたみてぇだな。
これでムムムにタマタマをズッコン☆バッコン☆ハメハメせずに済むんなら、
なんとかターロンとの心中は避けられそうだぜ。」
リリ「え?あの・・・・・・ハメハメって・・・・・・」
リリアーナはレベッカの発言におろおろしている。
ミル「だから下品な言葉を使うなと言っただろうが!」
しかし、とレベッカはつぶやいた。
レヘ「だがこりゃよく考えねぇといけねぇな。
ターロンからすりゃ、ムムムの復活はなんとしてでも避けてぇはずだ。
俺達が玉を一つでも奴に渡せば、その目的は達成される。
場合によっちゃあ、ターロンはそのまま俺達を殺しにかかるかもしれねぇ。
だが、もしも俺達が奴に玉を渡さなかったとして、奴の言ってることが本当だったら、
結局この状態から進展しなくなっちまう。
このまま時間だけがたてば、やはり俺達が不利になってくるぜ。
ターロンが神龍の体になじんでくるだろうし、傷も回復するだろうからなぁ。」
ミル「うーん…渡すのはまずいけど、渡さなくてもターロンに有利になるだけか…
どうしたもんだか…何か良い手はある?」
こんな時はレベッカの知恵に頼るに限る…というのも、ちょっと悲しいなぁ。
でも交渉の時にも分かるように、変態発言を除けばレベッカはこんな時本当に頼りになる。
だから今回も、何か考えがあるに違いない。
そこで、とばかりにレベッカが提案する。
レヘ「もしもターロンに玉を一つ渡すつもりなら、その前に俺のスペルカードを奴の体に貼らせろ。
ターロンが俺達を裏切ったら、そいつを発動させる。
貼り付けるスペルカードの効果は、俺の意のままに対象を操ることだ。
もしもあいつが本当に神龍の体を開放すれば、スペルカードはターロンに対して効果を失う。
スペルカードが貼られるのは、あくまで神龍の体だからな。
ターロンが本気で言ってるなら、断る理由はねぇはずだ。そうだろ!?」
ミル「それならターロンに裏切られる心配もないし、良い考えじゃない!
その作戦、あたしは賛成しちゃうね!
てか、そんな便利な御札が使えるならもっと早く言ってよもー。
心配させるんだからー」
リリ「え?でもこれって、あのターロンがわけてくれた御札なんだよね?」
リリアーナは戸惑った顔をしていたが、とりあえず深く追求はしなかった。
呪札に関しては素人なため、そういう事もあるのかと勝手に納得したようだ。
レベッカの周りに浮いているスペルカードが、 一斉にターロン(神龍の体)に張り付いた。
レベッカが説明した通り、スペルカードが張り付いたからといって、
すぐにターロンがレベッカの意のままになるわけではない。
そもそもそんなことをすればターロンが神龍と分離できなくなってしまう。その点はターロンも承知だろう。
スペルカードの効果が発動するのは、ターロンが裏切った時だけである。
本「あいつらは何をしてるんだ。ムムムの封印も解かずに神龍に勝つ気なのか?」
その頃墓場では、猫耳男の変じた魔本が死王の側で様子を伺っていた。
ナナナは魔本に近づきたがっているが、死王が怖いのか近寄ったり離れたりを繰り返している。
ナナ「ご主人様~。さっきリリアーナさんも聞いてましたけど、この猫耳って魔法の道具なんですか?
ずっと持ってましたけど、ちっとも気づかなかったです~」
本「リリアーナとはあのステータスで希少価値の貧乳か?
教えてやろう!周りに獣耳娘が多いと、ぼぉくのテンションと魔法の威力が上がるのだ!
猫耳にそれ以外の効果などなぁい!!」
ナナ「えええぇ~っ!?」
威張って答える主人の言葉に驚くナナナ。
他の誰が聞いても驚くか怒るかするに違いない。
本「そんな事はどうでもいい!それよりする事がないなら『猫じゃ猫じゃ』でも踊っていろ!」
ナナ「は、はい!えぇ~っと…『♪猫じゃ猫じゃと おしゃますが…』」
本「馬鹿者!そんな古い歌で今の時代を生きていけるか!
もう一つ新しく教えた方の歌を歌うのだ!」
ナナ「あ、あ、新しい方ですか~!?えとえと…『♪ニャンニャン ニャンニャン ニイハオニャン♪』」
言われた通り両手で猫招きをしながら歌い、右を向いたり左を向いたりして踊るナナナ。
とても戦いの場の出来事とは思えないが、魔本もナナナも大まじめだ。
本「聞こえるか。こちらはムムムが復活しても良いように対策を始めた。
他にどんな方法で神龍に対抗する気か知らんが、もしムムムを復活させるなら後始末は任せろ。
ただし、その時は猫耳をつけた者全員ナナナと同じように『猫じゃ猫じゃ』を踊れ!
踊らないとムムム対策をする気はないし、ぼぉくだけただの本の振りをして生き残るからな!」
その場にいたターロン以外の全員に、魔法を使って魔本が言葉を伝える。
ナナ「ご主人様ひどいです~!」と踊りながら言っているナナナの声も聞こえただろうが。
リリ「まあ、ムムムに対抗できるくらいなら神龍にも対抗できるよね。・・・・・・・でも踊らなきゃ魔力アップしないのか・・・・・・。
えーと、何だっけ?【・・・・・・ニャン!!ニャン!!ニャン!!ニャン!!】
ほら、皆も一緒に踊るわよ!せーの!【ニー!!ハオ!!ニャン!!】」
リリアーナは何の疑いも無く、魔本から指定された振り付けで踊り始めた。
ところで、とばかりにレベッカが言った。
無視したいと思っても、どうしてもナナナと猫耳男(+死王?)の会話が耳に入ってしまう。
レヘ「…なぁ、リー。おめぇの彼氏のロックもあんな感じなのかぁ?」
ミル「あんな?…あぁ…あんな、ね…」
リリ「う・・・・・・・」
イヤでも聞こえてくるナナナと猫耳ご主人様の萌え講座に、リリアーナの踊りが止まってしまった。
ロック『貧乳はステータスだぜ!!希少価値だぜ!!』
ロック『猫耳の力はパワーだぜ!!』
ロック『ニャン!!ニャン!!ニャン!!ニャン!!ニー!!ハオ!!ニャン!!…( ゚д゚ )?』
リリ「こっち見んな!じゃなくて!!!うわーん!違う違う!」
リリアーナは脳内に浮かんだ映像を慌てて振り払った。
リリ「そそそそそんなわけ無いでしょ―― っ!何言い出すのよー!!!1!!!!!」
炎を吐きそうな勢いで、真っ赤な顔をしたリリアーナはレベッカに詰め寄った。
レヘ「悪ぃ、んなわけねーよな。」
リリ「う・・・・・・・」
リリアーナは言葉に詰まった。
リリアーナの顔を見たレベッカはそう判断した。
レベッカは、ムムムが復活した後の対処法があるという猫耳男の言葉など、信用していなかった。
リリ「そ、そりゃ必要とあれば、率先して踊ってくれると思うわよ?熱血馬鹿だし、修行大好きだし。
頭に猫耳生えたことだってあるし。
で、でもね、それは元々名より実を取るってことで・・・・・・・人の外見とか上辺にあんまり拘らない人なのよ。
だって私、彼の理想からは程遠いし・・・・・・・」
リリアーナは胸をぱふぱふたたきながら、ぼそぼそ気まずそうな顔で話している。
リリ「そ、そりゃ・・・・・・ステータスとか希少価値とか思っててくれてたらいいなーって思わなくも無いけど
・・・・・・・・って!聞いてないし~!!」
まあ、今はターロンと一種即発の状況である。当然と言えば当然だろう。
ミル(…って、いつの間にか
ヴァンエレンまで着けてるし!
こ、こ、こ……これはあたしも着けないとダメ…かな?ダメだよね?
なんで皆こんな物を抵抗無く着けられるかなー!?
恐る恐る頭に乗っけてみると、猫耳は専用装備みたいにぴったり装着できた。
だけど…だけど…なんだか嬉しくな――い!!
リリ「ん?ミルク猫耳つけたんだ!かわいー!
でも、あの魔本はミルクが猫耳つけてても平気なのかな?
ほら、ミルク今は男じゃない?女は良くても、男の猫耳は死ぬほど嫌いっていう人も世の中にはいるしね」
ター「……良いでしょう。その条件を受け入れましょう」
アナスタシアがそう言う少し前、ターロンは長い沈黙の後レベッカの提案を受け入れていた。
レベッカが指摘したように、ターロンはムムムの復活だけはなんとか避けたいと思っている。
神龍との融合を解くという口実で、実際には必要でもない玉を要求したのもそのためだ。
ムムムの復活を止める保険にもなるし、状況によれば約束を破るつもりだったのだ。
しかし、レベッカの考えでターロンの思惑は根底から覆ることになる。
意のままに操る呪符を貼られては、ムムムの復活を阻止するためには神龍との融合を解くしかない。
長い沈黙は、その決断を下すためのものだった。
死『さて、邪魔が入ったが。
覚悟はいいか?ルズとやら…』
ヴァンエレンがいなくなり、死王はルズへと向き直った。
ルス「えー?何を言って・・・・・・・ます・・・・・・」
指先に魔力が集まっていき断罪すべく解放させる。
黒猫ルズに不細工呼ばわりされて怒る死王の指先に、黒い魔力が集まっていく。
本「言葉責めとは上級者だな…いいぞもっとやれ」
ナナ「はわわわ!ルズさんを殺しちゃダメですー!!」
ルス「ちょ、ちょっと!何ですのこの無駄に大きな魔力は!・・・・・・はっ!もしやブタ猫じゃなくてタヌキ?!」
死『被告クソ猫、裁判官は俺!
判決は言うまでもなく死刑ィィ!』
ルス「ドジこいたーーッ!」
問答無用で前に見せた黒い稲妻を放ち、ルズを殺そうとする死王。
だが、間一髪のところでルズはそれを避けて、そして避けた先にいたのは…ターロンであった。
神龍の体に、レベッカが操る無数の御札が貼りつき、ターロンは神龍との融合を解こうとする。
死王の黒い稲妻が飛来したのはその時だった。
ター「ぐおおおおあああああ!!!」
桜「な・・なんだ・・・」
死『あら…。
あらあらあらあらあらあら。
そっちいっちゃった。
ごめーん』
当然謝る気はゼロに近い。
本「避けられたなら仕方ないな!ツンデレドジっ娘最高!!」
レヘ「あの黒猫…なかなかどうしてやるものだな。少しだけ見直してやるか。
レヘ(やっべw俺あんなの挑発してたのかwwぐはwwやばかったwww)」
ルス「ジョジョジョ、ジョーダンじゃありませんわ~!!フリージア女王様ぁん、あの黒猫が酷いんですぅ~!」
フリ「お~ほっほっほっほ!失礼なことを言うあなたがお馬鹿さんですのよルズさん」
死『あっは、ぎゃ、ぎゃははははははは!!』
ターロンへの予想以上のダメージにルズへの怒りも忘れて大爆笑していらっしゃる。
死王の呪文の威力は凄まじいもので、雷龍の集合体のはずの神龍の体の後ろ半分が吹き飛ぶ。
しかし、それでとどめになったわけではない。
レヘ「ところでミルク、ちょっといいか?」
ミル「うわぉ…すご…。
え、あ。ごめんごめん。なに?」
死王の放った雷撃で神龍の体がごっそり削られるのに見入ってたせいで、ちょっと反応が遅れた。
レヘ「さっき俺はターロンに、“俺の意のままに操るスペルカードを貼る”と言ったな。
ありゃ嘘だ。そんなのが使えたら最初から使ってるっつーの。」
ミル「え……嘘って…でもターロンは操る御札使ってたし…そんな。
じ、じゃあ、あの龍の体にべたべた貼り付いてる御札…あれなに?」
死王の攻撃のおかげか、はたまたターロンが中途半端に融合を解除したせいか。
残された神龍の体は5匹の雷龍と、神龍の額についていた黒龍(多分ターロン本体)に分かれている。
そのうち雷龍の方にはレベッカの御札が一杯くっついてるから、あれで操ればすぐ問題解決一件落着のはず。
レヘ「俺がターロンに貼り付けたのはウーシエ・バーチー(無血八極)、
“血の流れないモノ”が触れると爆発するスペルカードだ。
俺は、ターロンがもしも俺達を裏切るとしたら、
必ず体に張り付いたスペルカードを雷のブレスで焼くと予想した。
そんときゃ、雷に当たったスペルカードが爆発する。
それで少しでもターロンにダメージを与えられると考えてたわけだが…」
苦しむ神龍の体がバラバラになり、後には5匹の雷龍とトカゲ程の大きさの黒龍が残された。
ミル「…つまり、どういう事よ」
レヘ「つまり何が言いたいかというとだな、ミルク。
俺にはターロンどころか、あの分離した龍達さえ思い通りに動かせないというわけだ。
助けてちょ♪」
ミル「はったりだったのかよダメだろ!?
ターロンが見破ってたらどうする気だったんだおい!!」
と、とっさに言ったものの、でもよく考えるとこれは超結果オーライ。
神龍は消えたし、残った龍は攻撃に反応して爆発する御札を貼られている。
いくら龍が手強い敵でも神龍よりよっぽどマシだし、こっちの攻撃の威力も上がるから勝ち目あり!
これだけお膳立てしてもらえたら十分、いや十二分だよな!
ミル「ま、上手く行ったんだからいいか!後始末は任された!
レベッカは大船に乗ったつもりで見物してなさいよっての!」
あちこちに雷のブレスが吐き出される中、一匹の雷龍が死王に向かって突進する。
受けた痛みの怒りから、そのまま大口を開けて黒猫姿の死王を一呑みにしようとしているのだ。
リリ「わ――――!!ナナナさん危ない!!」
ナナ「え?え?え―――!?はわわわご主人様龍が来ちゃいました!」
限りなく人間に近いゴーレムを目的として作られたナナナは、龍の突進を見ても逃げなかった。
正確に言えば、制作者の意図的な設定が効果を発揮して体が動かなかったのだ。
ルス「あぶなーいドジっ娘ゴーレム!とうっ!!」
ルズは魔本の傍ら、つまり、死王の傍で踊っていたナナナに、弾丸のような体当たりを食らわせた!!
ナナ「きゃあぁっ!?…むきゅう……」
ルズの体当たりダイブを受けてひっくり返ったナナナは、後頭部を強く打ったようで気絶してしまった。
ルズのお触りタイムを止められなくなってしまうが、猫なので仕方がない。
迫りくる凶器を気がつきそれを目にしても尚、爆笑をやめずにあろうことかさらにヒートアップする黒猫。
死『あッはっはっは、ははッ』
雷龍の身体に縦に亀裂が入って、死王を避けるようにして左右に分かれて通り過ぎる。
いつの間にやら現れた影絵から切り取ったかのような黒い人物。
その者が斧を振り降ろして雷龍を真っ二つにしたのだ。
仕事が終わった影絵の人物は徐々にその存在が薄くなって最後には完全に消えてしまった。
死『ぐぎゃぐぎゃぐぎゃ!
あー、笑った笑った。
これぐらい楽しいことがなければ来た意味もねぇ。
これだから未知なる場所はおもしれぇんだよな』
本「可愛い犬耳少女が強いとか超萌ゆる!
ヤンデレな所がまたたまりませんなぁ!」
一方ナナナのご主人の猫耳男は、死王の強さがさらに気に入ったような発言を繰り返している。
ヤンデレとは本来愛の為に病んでしまった女性に用いる言葉だが、猫耳男はそんな事を気にしなかった。
今なら死王の頼みなら出来るだけの事をして叶えようとするにちがいない。
一方リリアーナ達は。
リリ「わ――――!!龍がばらばらに!!こ、これって何がどうなったの?!」
ターロンの分離と共に、神龍の体を構成していた龍もまた融合を解かれたのだ。
ターロンの支配を離れた雷龍たちは、体に御札を貼り付けたまま受けた痛みの記憶に暴れ回り始めた。
リリ「桜花さんにヴァンエレン、こっちこっち!!ヴァンエレン、ムムムの身体、忘れないでね」
桜「あ・・・ああぁ・・・わかった。」
寄らば大樹の陰、とばかりに、リリアーナはフリージアの背中に隠れようとする。
リリ「桜花さん、顔色悪いわ。あんなにがんばったのに、楽させてあげられなくてごめん」
桜「いや・・・それはいいんだ。しかし、状況が飲み込めない。
全く、いくら魔力が空っぽに近いからといって敵が居る前でボーッとしてしまうとは私もやきが回ったな」
気を引き締めるべく、自分の頬を軽く張る桜花
フリ「敵が弱くなったと喜ぶべきか・・・それとも敵が増えたと悲しむべきか
それが問題ですわ」
ギ「そんなこと言ってる暇はないよ、来るよ!!」
フリージアに襲い掛かる雷龍
フリ「ターロンという頭脳があった頃ならともかくこれぐらいの単純な動き楽勝ですわv」
ひょいっと避けるフリージアさん
ギ「ジルベリアンホワイトベアーの方がまだいい動きをしますわね
さあ反撃のお時間ですわよ!!」
フリージアは氷結根を生み出した
フリ「神龍ならともかくあなた程度ならこれで十分ですわ!氷結百裂根!!」
厚さ60cmの石の壁も粉砕するフリージアの根が雷龍を襲う
フリ「せい!せい!せい!せい!せい!せやぁ!!」
お札とお札の隙間を器用に縫い繰り出される氷結百裂根
なぜ直接根をお札に当てないか?
それはこの距離で爆発するとフリージアさんがアフロになるためである
根が当たる度に剥がれる雷龍の鱗
必死にそれをかき集めるギズモ
他の龍たちも無差別に手近な人間に襲いかかり、あるいは噛みつき、あるいは雷の吐息で焼き尽くそうとする。
リリ「うわっ、何が一体どうなって・・・・・・これ、全部ターロンなの?それとも・・・・・・」
桜「いや、もしターロンが動かしているならあまりに御粗末な動かし方だ
何らかの理由で神龍との融合が解除された、と考えていいだろう。」
状況を確認すると冷静に考え始める桜花
ミル「メギドラ!!」
核熱の爆発が雷龍の体を吹き飛ばすけど、爆発はさらに連鎖的に続いた。
狙い通りレベッカの御札が爆発して雷龍に追撃を加えたのだ。
結果、魔法が予想以上の破壊力を発揮して、あたしは見事雷龍の撃破に成功する。
よっし!まずは一匹!
死王が一匹釣ってくれてるから残りは3匹!
ミル「みんな!攻撃する時は、龍の体に貼り付いたレベッカの御札を上手く使って!
触れたものに反応して爆発するから、攻撃の威力をぐっと上げられるから!」
リリ「わ、わかった!やってみる!皆もやるよ!!」
桜「わかった。とりあえず、レベッカさんの御札を狙えばいいんだな」
リリアーナは、雷龍の御札をロックバスターで狙い撃ち始めた。
ナイフを一本構える桜花。しかし
桜(駄目だな・・・魔力も集中力も欠いた今の状態では一本で的確に御札に命中させる事はできない
だが・・・一本で無理なら・・・)
単発が駄目なら物量。複数のナイフを取り出す桜花
桜「時を止めるだけが私の取り柄ではない!この程度の龍、いくら出てこようと私たちの友情の前には・・・」
龍に張り付いたお札を一睨みすると
桜「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁ!!」
素早いナイフ捌きで両手にあったナイフを瞬く間に投げつくす
ちなみにこの間に投げたナイフの本数は無駄一回に付き一本である
フリ「これで止めですわ!取っておきなさいな!!」
棒高飛びの要領で雷龍から距離を取ると相手を切り刻む高速回転する雪の結晶をお札に当たるように投げる
龍「ギャオオオオン!?」
次々と爆発が起こり苦しみ悶えそして動かなくなる雷龍
ギ「雷龍のお肉はスタッフが後でおいしくいただきましたv」
フリ「食べませんわよ!!」
フリ「これで後は2匹とターロンですわ!」
ふと、視界の隅を横切る黒い何かに目が止まる。
あれは…確か…
ミル「げげっ!ターロンが逃げる!!
ちょっとこら逃げるな!返せ!戻せーっ!!」
リリ「ヴァンエレン!使い魔蝙蝠使って追いかけて!! 」
ヴ「うー…。
あまり行かせたくはないのだが。
仕方あるまい」
どひゃーとマントの中から出てくる蝙蝠の群れ。
一斉にターロンの追跡を開始し、距離を縮めていく。
フリ「ギズモちゃん!追いかけなさいな!!」
空が飛べるギズモに命令するフリージア
ギ「わかったギズモウィィィング!!」
ターロンを追いかけるべく羽ばたくギズモ
だがしかし追いついても戦闘力がないギズモがどうしようというのだろう?
ルス「ああ・・・・・・・・・・・そういえば・・・・・・・・」
ナナ「うぅ…頭痛いです……。何が、あったんですか…?」
再び視点をナナナに向けると、ようやく気絶から目を覚まし、周りを見回している所だった。
ただ、同時に自分を押し倒したルズにも気づき、はわわわと慌て始める。
ルス「そう言えば・・・・・・図書室の・・・・・・・カバメイド長。
ターロンに洗脳されたか、そんな感じでしたわね・・・・・・。
今はアイシャ様がお相手している・・・・・・はず・・・・・・ぐふっ」
ルズは倒れた。だがそれは死んだのではなく、単に鼻血を出しすぎたためだ。
ナナ「ふええっ!?メイド長操られてたんですか!?
そそそそれにっ!気絶してる間に私の体に何かしませんでしたか~!?」
ルス「メイドさぁいこ~なのですわ~」
ナナ「ふええぇぇん!!もうお嫁に行けないです~!!」
ルズに何をされたか大体理解したナナナはショックを受けたようだが、今はそれどころではない。
ナナナはメイド長にテレパシーを送り、地上の様子を確認する。
ナナ「メイド長!ご無事なんですか~!?
あっはい。こちらはみなさんのおかげで今は無事ですけど…
そうですか!良かった~!!
はい!はい!わかりました!メイド長よくご存知ですね~!
それでは皆さんにそう伝えます~」
メイドゴーレムのテレパシーは周囲からは聞き取れないため、内容は説明してもらわないとわからない。
レヘ「さすが、と言うべきか。それとも、当然と考えるべきか。
ところで、ギズモとヴァンエレンの使い魔が、
ターロンを追いかけていったみてーだな。
…どうするんだ?奴を殺す気か?」
レベッカがそう皆に話しかけた。
ミル「それなんだよねぇ…どうしたもんかな…」
レヘ「別に悪いとは思わねぇよ、俺は。
おめぇらは、俺も含めて、奴に殺されかけてるんだ。
復讐したいと思っても、別に不思議じゃねぇよ。
だが、俺達があいつと戦ったのは、
あいつが神龍の力を悪用する可能性があったからだ。
神龍と分離した今、奴にはもうたいした力もねぇ。
元の体もムムムに叩き斬られちまったしなぁ。
だからターロンをわざわざ殺す必要もねぇんじゃねぇかと、
そう思っちまっただけさ。」
リリ「えっ、神龍の力って、もうターロンと分離してるの?!」
レヘ「もっとも、俺がそんなこと決める義理もねぇか。
殺りたきゃ、好きにしな。」
レベッカは別にターロンに情けをかけるつもりなどなかった。
ただ、敵を徹底して追い詰めるのは愚策だと言う兵法に倣っているにすぎない。
ミル「んー…。アホ姉とかはサクッと殺っちゃえって言いそうだけど、あたしはレベッカに賛成。
だって力もほとんど残ってないみたいだし、死人に鞭打ちみたいなのはちょっと…ねえ?
瓶詰め保存して持ち帰って、薬学科の実験に付き合わせるくらいで良いんじゃないかな」
リリ「ん~~~。異論は無いんだけど・・・・・・。
ねえ、確かターロンって、呪い解いたりお札でボディとか作れるんだよね?」
リリアーナはまた何やらあれこれ考えあぐねているようだ。
リリ「ああそうだわ、ねえ桜花さん結局玉はどうなったの?ターロンにひとつ渡しちゃったんだっけ?!」
桜「もはや、お前は将棋やチェスで言う詰み(チェックメイト)にはまったのだ!
無駄無駄無駄無駄無駄むd・・・えっ?」
駄目押しとばかりに再びナイフを取り出し投げていた桜花だったがリリアーナの言葉にぴたりと止まる
一方のリリアーナは、大口を開けて桜花を指差したまま、完全に固まっていた。
ミル「なんか…性格変わってないかあんた…」
怒濤の勢いで雷龍にラッシュをしかけててる桜花の姿は、ほんと驚きものでしたよええ。
なんかこう、桜花ってもうちょっと大人しいというか、冷静沈着なイメージだったんだけどなー。
戦う時は本人の性格が出るって言うけど、元はこんな性格なのか?
桜花はコホンとひとつ咳払いをしてから
桜「すまない、少々元気を出しすぎた。玉はターロンに渡そうとしたがその前に事が起こってしまったからな
今も私が持っている」
丸めたコートの中には確かに三つの玉が入っていた
リリ「やったー!玉は無事だったのね!さっすが桜花さん!!」
ミル「ようするに、ターロンは神龍と分かれるのに、別に玉はいらなかったってわけか。
はいそうですかと渡してたら、今頃どうなってた事やら…
ま、そのターロンも捕まえたし雷龍もだいたい倒しちゃったし、もう安心かな?」
ギ「捕ったどぉぉぉ!!」
あっさりとターロンを捕まえるギズモ
なぜか抵抗しないターロン
リリ「ねえ皆、神龍の身体はばらばらになったみたいだけど、神龍の力はどうなったの!?
もしかして、まだターロンが握ったままなの?!
まずいよ、雨が止んだかなんてここじゃ分からないし、ニャンコ先生の封印解除出来たのかも分かんないし! 」
ミル「へ?あ、あぁ…えっと」
そうだった、まだ問題が残ってたんだっけ…
あたしはリリアーナの剣幕に押されながら、残された問題を考える。
ミル「ターロンがあっさり捕まった所を見ると、もう神龍の力は持ってないと思う。
力がどうなったかは分かんないけど……雨もニャンコ先生の封印も分からないけど…」
リリ「ああ、そうだ、その前にメイレン様を置いていけないわ。ご遺体をどうにかしないと!!」
リリアーナはあたふた1人で焦りまくった挙句、皮袋を片手にメイレンの死体を集めにいこうとする。
レヘ「ところで、リー。いつまでメイレンにてめぇの髪の毛咥えさせておく気だ? 」
リリ「え・・・・・・だって目とか指とかはあげられないんだもん。
髪の毛って霊力が篭るっていうし、何かの役に立つんじゃないかって思って・・・・・・」
レヘ「おめぇらは山羊を食うとき、髭も一緒に食うわけじゃねぇだろが。
いい加減取っておけよ。……悪ぃ、もう取ってたのか。
そりゃそうだよな。いくらなんでも、髪の毛食ったりしねぇもんな。」
リリアーナがメイレンの口に入れた彼女の髪の毛が消えているのを見て、レベッカがそう言った。
メイレンのパーツを拾い集めているリリアーナが、いぶかしげな顔をした。
ミルクが拾い上げた当初は満足そうな顔をしていたメイレンの顔が、
“何これ?まずい”的な顔になっているが、きっと気のせいだ。
ミル「え?おかしいな…リリアーナ髪の毛なんか取りに来てないはずだけど…」
不思議に思ってメイレンさんの首をのぞき込むと。
……髪の毛が無くなってる…しかも表情が変わってる……
ミル「ね、ねえ。リリアーナ?
髪の毛は素早く取ったんだよね?
メイレンさんの表情が変わってる気がするけど、気のせいだよね…? 」
リリ「え?何の話?私、何もしてないよ?
ねえ・・・・・・そう言えばメイレン様、心なしか嫌そうな顔なさって無い?」
もしかして……さっき龍玉の上に乗せたから再生効果が出ちゃった…のかな…」
リリ「それすごいよ!だったらもうしばらく、メイレン様の首を玉に乗せておこう!!桜花さん、構わないかな?
ねえギズモ、ギズモ、良かったら、その持ってる鱗、少し分けてくれない?弱ってるメイレン様に食べさせたいの」
ギ「別にいいけどおなか壊しても知らないよ」
だがそもそも壊すお腹が無い・・・・物理的意味で 。
それとミルク、両手ふさがってると大変でしょう?メイレン様かレベッカさん、どちらか私が引き受けるよ」
そう言ってリリアーナは、「はい」とミルクに手を差し出した。
ナナ「え~っと、地上では雨が止まって水が引き始めてるそうです!
それからお仲間の人の為にも、外とのゲートが開いたら他のゲートを同調させてくれるみたいですね!
ゲートはニャンコ先生にお願いすればどこにでも繋いでくれますから、もう安心ですよ~!
それから、みなさんに騙して悪かったと謝って欲しいそうです…
でもでも!メイド長は操られてたんですよね!?
だからその…できればメイド長の事を許して上げてください……お願いします!」
深々と頭を下げたナナナは、そこで残った問題に気づいた。
ナナ「あ…でもニャンコ先生、封印されてたんですよね…封印は解けてるんでしょうか…」
レヘ「なるほど、見てみろよ。さっき俺達が若返りの薬を見つけた宝物庫から、
地下墓地へ繋ぐ空間の裂け目も復活してるみてぇだぜ。良かったな。」
ちなみに、レベッカは特にメイド長に恨みはない。
むしろよくやったと褒めてやりたいところだぁ。
リリ「メイド長が操られてたのは別に気にしてないけど。だって、おいしいもの食べさせてもらったわけだし。
・・・・・・・そっか、じゃあメイド長のあの顔は、ターロンの趣味だったんだね」
リリアーナは明後日の方向で変に納得している。
リリ「あ、でもメイド長がミルクにかけた男性化の呪いの方はどうにかならないのかなぁ。
このままじゃミルクは、本当にユリさんと結婚する羽目になっちゃうよ」
(154で〆)
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最終更新:2009年12月21日 17:08