学園長室を出た後、ロックは
リリアーナに尋ねた。
69「大丈夫かリリアーナ?顔色が良くないぜ?」
リリ「えっ、そんなこと無いよ。すごく元気元気」
69「そんなことをしたところで、俺をごまかせないぞ!」
とロックはリリアーナに言った。ロックは有言実行の男である。
人前でいちゃいちゃするのは嫌いだと言った以上、
リリアーナの顔を舐めて“これは嘘をついている味だ”とかは言わない。
リリ「本当にたいしたことじゃないの。ちょっとした偶然に驚いただけ。
んっと、桜花さんは知ってるかな?かつてこの学園にやって来た、マリアベルという名の魔法使いのこと。
彼とヨハネカインは、なんと義理の兄弟だったのよ。もー、ホントーにすっごい偶然!びっくりしちゃった。あはは」
ギ「なん・・・だと」
彼がフリージアと出会ったきっかけはマリアベルとの一連の事件であり
それが無ければ今の立場が無かっただろうし
念願の人間の姿を手に入れることも出来なかっただろう
69「本当かリリアーナ!でも、一体どうしてそんなことを知って…」
リリアーナは笑い飛ばした後、ロックからの質問を遮るように早口で続ける。
おかげでロックは発言できなかった。ロックはふくれてしまった。
リリ「そんな事より、皆、私の部屋に来て来て。
ロック一人では、メイレン様がもしも乱心なさった時対処できないもの。皆がいてくれた方が絶対いい!
あ!でも私の部屋には結界があって、攻撃魔法とか一切効果がなくなるのよね。
妖怪のメイレン様には効果なくて、魔法使いだけに有効だったら困るかな。
それ以前にレベッカさん、槍の身体で決壊の中に入って大丈夫なのかな?
やっぱり他のお部屋に集まった方がいいのかも?
フリージアの部屋は・・・・・・寒いから無理よね。寒くてこごえちゃう。
レベッカさんの部屋はまだ荷解き終わってないんでしょう?
ずっと長く一緒だった気がするけど、昨日転入したばかりだもんね。となると・・・・・・」
リリアーナはちらっと桜花の方を見たが、さすがにいきなり部屋に大勢押しかけるのもどうかと思ったようだ。
リリ「あ、いや。やっぱり私の部屋にしようか」
かなり落ち着きが無いというか、一言で言うと、挙動不審である。
キ「さすがにこう大人数だと狭いよね」
フリ「文句を言わないの!」
それをたしなめるフリージア
レ「結界は普通に大丈夫だろ。リーの部屋でいいぜ、俺は。」
レベッカはリリアーナのミーティング場所の提案にそう答えた。
ロックとリリアーナが“ジャキーン!!”するのを期待しているのは秘密である。
ター「ヨハネカイン博士のことならば心配には及びません。
屈指の実力を持つ魔法使いの居城に、準備も無しに乗り込んで悪事を働く者はそういないでしょう。
以前のマリアベル事件は私も知っていますが、あれは不運な偶然が重なった結果にすぎません」
リリ「べ、別にロックに何かされるんじゃないかー、なんて心配なんかしてないわよっ!全然!!
・・・・・・・・・あっ!そういえばターロン、何で妖怪のあんたがマリアベルのこと知ってるのよ――――!!」
レ「ちょっ、待っ…アッー!」
リリアーナは、ターロンに巻きつかれているレベッカごとぶんぶん揺さぶった。
レベッカからすればいい迷惑である。
ター「おおおぉ…!?」
ぶんぶん振り回されてターロンは目を回した。
ター「無茶はおよしなさい。蛇の道は蛇と申しまして、裏には裏の情報網があるのです。
私がマリアベルについて知っていた所で、なんの不思議もありません」
リリアーナが振り回すのを止めた所でそう言うターロンだが、実は彼が知っているのは
【マリアベルという名の悪魔使いが学園を襲撃したが惜しい所で失敗した】
という点だけなのだ。
しかし、そこまで正直に言うつもりはターロンにはなかった。
その話を聞いた時にはマリアベルの準備不足を冷笑した手前、自分も失敗した以上なおさら言えるわけがない。
レ「(それにしてもさっきのリーの発言、まるでロックがマリアベルと何か関係のありそうな感じだな。
俺はマリアベルが何者なのかまるでわからんが、
ヨハネカインと義理の兄弟関係があるなら、知っておくべきだろうな。)」
(もっとも、ターロンは妖怪でありながら魔法使いだ。
魔法使いならば、襲撃事件の情報を多少なりとも持っていようが、なんら不自然ではない)
ター「仮にヨハネカイン博士に企みがあったとしても、こちらにはメイレン様もおられます。
無論、微力ながらこのターロンも、レベッカ様のご学友のために尽力する所存です。
ケルビムにどのような策があろうとも、容易く乗せられは致しませんよ」
学園長室では借りてきた猫のように静かだったターロンも、部屋を出れば雄弁だった。
レベッカたちの発言が自分の今後の扱いに大きく関係する事を思えば、それも当然かもしれない。
以前レベッカが言ったように、ターロンも生きてさえいればこの先はどうにでもなると思っている。
学園長による封印などの結末を避けるためには、ターロンとしても協力的な姿勢を見せるしかないのだ。
ギ「どうせまた自分がやばくなったらホワイト博士に鞍替えするんでしょ」
フリ「その時はその時ですわ」
ターロンが裏切ったら一緒に氷漬けにする気満々である
リリ「ふーん。レベッカさんだけじゃなくて、私達のためにも尽力してくれるんだー。
ムウ大陸で力を解放しろって責められる前に、その言葉、聞きたかったなー。
って・・・・・・・・・・・・・あーっ!! 」
リリアーナはやっと重要なことを思い出した。
リリ「ターロン、そういえばあなた、よくもムウ大陸で私の封印解いたわねっ!!
ヨハネカインの目的は死を克服する能力の破棄でしょ!どーしてくれるの!!
3日後にヨハネカインが学園に乗り込んで来る。
その時、リリアーナの中に封じた力を知られたら最後だ。
リリ「今すぐ封印を元に戻しなさいよ!
このままじゃ私、間違いなくヨハネカインに消されるじゃないのよ!
どーしてくれるのよこのおバカぁ―――― っ!!」
リリアーナは先程の3倍増しで、レベッカごと槍にへばりついたターロンをぶんぶんぶんぶんぶんぶん揺さぶった。
レ「アッー!アッーー!!アッーーーッ!!!」
無論レベッカも一緒である。
フリ「安心しなさいな!いざとなったら私がリリアーナさんを守りますわよターロンさんを盾にして」
リリ「ふ、フリージア~!!ありがとう!!」
リリアーナはフリージアの言葉に感動した。
リリ「でも、ターロンは盾にするには小さすぎるよー!!」
ターロンは振り回されながら、本気で中つ国に逃げ帰ることも検討し始める。
しかし帰った所でレベッカやメイレンに見つかれば、やはり危険な目に遭うことに変わりはない。
今できるのは、天に昇る時を沼に潜んで待つ龍のごとき心境でひたすら耐えることだけなのだ。
ター「無茶はおよしなさいと言ったでしょう。
逆に考えなさい。危険とは同時に好機でもあるのです。
ヨハネカイン博士が危険人物ならば、あなたの能力を知れば必ずや本性を現すことでしょう。
人を人とも思わぬ輩をあぶり出す、またとない機会ではありませんか。
それでは困ると言うならば、学園長殿にもう一度杖を封印してもらう手もあります。
3日も猶予はあるのですから、対策も十二分に取れるでしょう」
自分がマリオを鉄像にした事は棚に上げてターロンはそう言った。
リリ「そ、そっかなー。うーん、そうだよね」
リリアーナは半信半疑ながらも、まだ3日も猶予があるのだしと一応納得した。
フリ「具体的にはどう情報を集めろというのかしら?
秘密結社の情報なんておいそれとは公開されてないだろうし
たとえ公開されていてもそれは表向きの医療機関の情報に過ぎませんわ
この学園内にケルビムの工作員がいてスパイ活動をしていたとしてもそれが誰だとはわかりませんのよ」
ギ「スパイなんているわけないじゃない漫画や小説じゃあるまいし
それにそんなのいたら嘘感知の魔法や敵感知の魔法に引っかかるよ
そんなことより図書館で文献を探したほうが早いんじゃない?」
フリ「図書館の本だっていつも最新の情報が載っているわけじゃありませんのよ
紙に書かれた情報はどんどん劣化して古くなっていつかは役に立たなくなりますわ」
と図書館の本の情報は古くて役に立たないだろうとフリージアは返した
フリ「せめてここに物見の水晶でもあればいいのですのに・・・・・」
物見の水晶・・・それは望みのものを見ることができるマジックアイテムである
購入者の大半が風呂を覗くなどの犯罪行為に走った為、製造中止になったが
こういう本当に必要な時には役に立つだろう
まあ見たら見たで”貴様・・・見ているな”される事間違い無しではあるが
リリ「ねえ、ロックはどう思う?やっぱり私、危険かな?」
リリアーナはロックの意見を聞こうと彼の方を見た。
ふと、今の話を耳にしたロックの反応が気になったのだ。
心配されすぎても困るが、不謹慎ながら少しは心配して欲しいなという不謹慎な思いがあることも否めない。
だが。
当のロックといえば――――
ナナ 「はわわわ…」
一方でナナナは、落ち着かない様子でキョロキョロと周囲を見回しながら、リリアーナたちの後をついてくる。
メイド長にテレパシーを送っても、いつもは返る返事が返らない。
猫耳男からは返答があったが、しばらく考え事をするから話しかけるなと言われてしまった。
その上見知らぬ場所に飛ばされてしまったままなのだから、挙動不審になるのも無理はない。
今の彼女の支えは、ムウ大陸を再興すると言ってくれたレベッカだけなのだ。
しかし、邪魔にならない時に話しかけようとしてもタイミングがわからない。
結果ナナナは、はわはわ言いながらレベッカの後をずっとついて行くだけになっている。
すっかり発言権を喪失したロックは、同じく発言するタイミングを見出せないナナナに話しかけた。
69「俺はロックだ!お前が誰であろうと俺の知ったことではない!
だが、俺は困ったメイドさんを助けることは大好きだ!
勘違いするなよ!メイドさんが好きなんじゃない!困ったメイドさんを助けるのが好きなんだ!
だからお前が何に困っているのか話してくれたら、俺がどうにかしてやるぜ!」
ナナ「ほ、本当ですか!?」
ロックはリリアーナのことそっちのけで、ナナナと仲睦まじく話をしていた。
リリ「・・・・・・・・・・・・・・。」
リリアーナの表情が見る見る険しいものになっていく。
彼女の脳内では、二人のやり取りが3割増しで仲睦まじいものになっているだろう。
フリ「ロックさん・・・・若くて綺麗なメイドさんなんて実在するわけないじゃありませんの
あなた幻覚を見ているんですわ!!」
ナナ「ひ、ヒドいです?!私、幻覚じゃありません!!」
69「俺はバットで殴ったら怒るメイドさんしか知らないぜ?」
リリ「そうだよねー。でもその怒るメイドさんを追いかけて、ずーっと学園を留守にしてたんだけどねー(棒)」
ギ「じゃあお母さんの存在も幻覚だね・・・今時、縦ロールのお嬢様が実在するわけ無いもの
ナナナお姉ちゃんは見た目は若いけど実年齢は(ry
下手すると学園長やメイレンさんより(ry」
ナナ「はううう?」
結局続くフリージアとギズモの言葉に、そんな気持ちも急転直下させられるのだが。
69「この人が仮に幻覚でも俺は、
夢と希望と真実と勇気と自由と正義と愛と平和と“か弱き女性”を守る使者!
不条理だらけの世の中で!愛と勇気と希望を抱き!正義の拳で悪を討つ!
どんな逆境にも負けない愛の為に生きる男!
…だから助けないと我慢できないぜ!でも破廉恥なのは勘弁な!」
リリ「そうだよねー。
だったら一生、か弱いメイドさんを守って愛のために生きればいいんじゃないー?」
リリアーナは不機嫌な顔でまぜっかえした。
リリ(ロックのバカ!いいもん!
どうせ、ロックなんか女の人にモテた事なんてないんだから・・・・・・・)
だが。ここでありえないことが起こった!
ナナ「か…か…か…かっこいいです……」
しかしそれでも自説を曲げないロックを、ナナナは目をウルウルさせながら見つめる。
リリ「え―――――――――――― っ!!!!」
今ナナナの脳内を誰かが見ることが出来たなら、ロックが3割り増しでかっこよく見えるだろう。
リリ(ら、ライバル出現――――!!!)
リリアーナは真っ白になって口をパクパクさせている。
フリ「と・・・まあ冗談はこれまでにしてホワイト博士の目的が死を克服する能力の破棄だというのなら
人間じゃない存在になって不死になったヴァンエレンさんやアナスタシア先生ってやばくありませんの?」
と人間じゃなくなって不死になった人達を心配するフリージア
ギ「ヴァンエレンさんは元から死んでるからこれ以上死なないだけだよお母さん
それを言うなら死霊科の存在自体がやばいじゃない」
それは大丈夫だろうという希望的憶測を述べるギズモ
ター「そもそも医者の本分は人の命を救うことのはずです。
その医者が人の命を奪い、死を克服する能力を消し去ろうとするとは情けない話ではありませんか。
おそらく人の生死に多く関わるうちに増長してしまったのでしょう。全く嘆かわしい」
レ「そもそもホワイト博士の目的は本当に“魔法による不死”の廃絶なのかぁ?
案外そんなものはロクーや他の構成員を集めるための口実かもしれねぇぞ?
今やどこもかしこも魔法使いで溢れかえってるんだ。
魔法使いに不満をもつ輩は少なくねぇかもしれねぇしよぉ。」
ター「本音と建前は別というわけですか?
確かに魔法使いを妬む者は多いでしょうが…そうなれば、ますます相手の出方がわからなくなります。
3日の猶予があるわけですから、まずはケルビムの情報を集め、それから対策を考えてはいかがでしょう?」
ターロンが雑談に興じているうちに、ナナナは恐る恐るロックに近寄った。
ナナ「あの…私の名前は、ナナナといいます。
…その…お聞きしたいんですけど、ここってどこなんでしょうか…
それと、レベッカさんにムウ大陸の復興をお願いしたんですけど、なんだか忙しそうで…
ひょっとして、滅びたムウ大陸を再興するなんて無理なんでしょうか…」
69「?何かしてほしいことがあるなら、そいつをはっきりと言え!
俺はそこらへんの事情はよくわから…う、わ!?」
リリ「ああ、そんなことなら私に聞いてよ!ロックより私の方が学園にはくわしいわよー!!」
いきなり放心状態からり復活したリリアーナは、ロックを突き飛ばしナナナの間に割り込んできた。
ナナ「はわわ!?」
69「何ぃ!?」
急に話題に割り込んできたリリアーナに、ロックと一緒にナナナも驚いた。
リリ「解説するわー。ここはフィジル島にある魔法学園なの。後で地図見せてあげるね。 ]
ナナ「フィジル島…聞いたことないです…」
聞いた島の名前を知っているか考えるナナナだが、心当たりはないようだ。
リリ「レベッカさんは今訳あって槍だけど、3日もすれば元に戻れると思うわー。
あ、ロックそろそろ通行許可証出して。ターロンは・・・・・・使い魔扱いでいいのかな?」
69「だーっ!」
ロックは全力で通行許可証を出した。
レ「ターロンはよぉ、ぶっちゃけどっか閉じ込めておかねーか?
ヨハネカインにもしも俺が変なことをされた時によぉ、逃げられたらまずいからよぉ?」
ター「ははは、レベッカ様は冗談がお好きなようだ。
このターロン確かにレベッカ様たちとは敵対していましたが、それは過去の事。
今は忠実なレベッカ様の臣下として、粉骨砕身する所存であります。
この身を盾にしてもレベッカ様をお守りするつもりでおりますのに、逃げるなどととんでもない。」
レベッカに全く信用されていないのを知って、ターロンは慌ててそう言った。
ギズモにもあっさり捕まるほど弱くなった今現在、レベッカからの信用度は死活問題になるからだ。
もちろんターロンは危なくなったら逃げるつもりでいるので、レベッカの予想は正しい。
リリアーナは一同を自分の部屋に通した。
リリ「ルームメイトはまだ帰ってないみたい。ま、本人も用事があるって言ってたけど。
ムウ大陸ツアーより大事な用事って何なんだろうね?
ああごめん、みんな適当に座って座って。
でも一応警告しておくね。
あの線より向こう側は、私のルームメイトのテリトリーなのね。
万が一私物いじったりしたら、平穏な学園生活も、命の保証もしかねるから。そのつもりでねー」
ナナ「そ、そんな危険な人がルームメイトなんですか~!?」
学園とは、友達と仲良く暮らしながら勉学に励む場所である。
本から学んだ知識でそう思い込んでいたナナナはショックを受けた。
読んでいたのは猫耳男の持っていた萌え系の偏った本だったから、あまり現状とずれていないはずなのだが。
やはり『命の保証はしかねる』の一言の効果は抜群のようだ。
その後リリアーナは、カントリー調の本棚から大きくて薄い本を引っ張り出してきた。
リリ「はい、ナナナ。ここが今の現在地。でもムウ大陸は、この地図には描かれてないのよね。
んーと、何だったっけ?ムウ大陸はフィジルの裏側にあるーみたいな話らしいんだけど。
あれは、誰が教えてくれたんだったかな? 」
ナナ「えーと、えーと…あっ!ここがムウ大陸のあった場所で…あれ…?」
ナナナは、地図上のムウ大陸のあった場所を指さした。
その場所がちょうど、リリアーナが現在地として示した場所とぴたりと重なったのだ。
ナナ「ここが現在地って事は、私たち、まだムウ大陸にいるんですか!?」
リリ「ああっ!!その絨毯の上に座ったらダメ!マジックアイテムなの、殴られるよ!!」
ナナ「はわわわ!ごめんなさい!」
ナナナは慌てて地図から指をはなし、絨毯から距離を取った。
リリアーナは代わりにクッションを引っ張り出し、床に座ろうとした者に配った。
リリ「ところでナナナ、復興復興って言うけど、具体的にどういうのが復興したことになるの?
いくらお城を直しても、ムウ大陸に誰も今住んでないわけよね?
あなたのマスターもこっちに居るわけだし。
ナナナは、ムウ大陸をどうしたいのかな?」
ナナ「それは…あの…」
身を乗り出したところで、ぐーっとリリアーナのおなかが鳴った。
彼女の顔が真っ赤に染まった。
リリ「あ、ご、ごめん!そういえばまだお客さんにお茶すら出して無かった!」
リリアーナは備え付けの小さなキッチンに飛び込むと、お茶とお菓子を持って戻ってきた。
リリ「こ、紅茶でいいかな?」
69「いいぜ。それにレモンパイもある。皆で食べようぜ。」
ロックはそう言って、さっきもらったリリアーナとアナスタシアのレモンパイを出した。
リリ「うん!」
リリアーナはうきうきとレモンパイを切り分けた。
1人だけリリアーナの分まで皿に盛られた者がいるが、気づいてもいちいち指摘するものはいないだろう。
リリ「はい、ターロン。あなたもレモンパイをどうぞ」
皆がナナナの処遇について考えている間、
リリアーナは小ビンの中にレモンパイの欠片を入れ、ターロンを誘った。
一応「閉じ込めておけ」というレベッカのアドバイスに従った行動のようだが・・・・・
あのターロンが、はいそうですかと小瓶に入るかは怪しいものである。
69「ナナナと言ったな?今無事に生きているお前がわざわざムウ大陸を復興させる必要があるのか?
この学園は決して来る者を拒まない。ここに暮らせばいいだろ。」
レ「いや、そうはいかねぇよロック。ナナナにも愛国心ってのがあるだろう。
そいつがあるかぎり、自分の国を復興してぇと思うのは当然だ。…だろう? 」
ナナ「そ…そうです!」
ナナナはレベッカにそう返事した。
自分の考えが愛国心と呼べるものかはわからなかったが、そう返事した。
レ「だが、ムウ大陸にいつも行けるわけじゃあねぇんだよなぁ。」
ナナ「ニャンコ先生がいれば、移動用ゴーレムを動かしてもらえるんですけど…
先生どこに行っちゃったんでしょうか…」
ナナナはキョロキョロと周りを見回したが、リリアーナの部屋にはニャンコ先生は居なかった。
フリ「ムーの騎士団によるとまだまだ世界中にムーの末裔が生き残ってるらしいから探してみてはいかがかしら?
まあその冊子によると私がムーの女王の生まれ変わりらしいからかなり怪しいものなんですけどね」
ナナ「そうなんですか!?」
ナナ「そうなんですか!?」
リリ「ええっ?!そうだったの!!」
ロク「何ぃ!?」
ナナナ同様、リリアーナもロックもあっさりフリージアの言葉を信じた。
リリ「前々から只者じゃないとは思ってたけど、前世が女王様だったなんて・・・・・・。
レベッカさんもすごいけど、フリージアもすごいよねー。ロックもそう」
ロックもそう思うでしょう?と言いかけて、リリアーナははっと口を噤んだ。
リリ「・・・・・・ごめん」
リリアーナは悄然とうな垂れた。
誰もが素晴らしい前世を送ったとは限らないことを、リリアーナは少し忘れていた。
ロックは聞こえなかったふりをして黒いレモンパイを口に入れた。(ロックに33のダメージ)
『来世も一緒だ!』なんてセリフが頭をよぎったが、皆の前では恥ずかしくて言えない。
ナナ「きっとフリージアさんは本当にムーの女王の生まれ変わりなんですよ!
私が知ってる女王様もフリージアさんと同じ髪型をしていましたから、間違いないと思います!
フリージアさんも一緒にムウ大陸の子孫の方を探しましょう!」
ギ「ナナナさんにはまだまだ時間がたっぷりあるんだからゆっくりやればいいんだよ
だってナナナさんは永遠に活動できるんだから」
と人間よりも寿命が長いが定められた命の持ち主であるギズモは言う
永遠に生きることができればいくらでも望みをかなえるチャンスはあるだろう
ナナ「す、すみません…嬉しかったのでつい…」
道が見えてきたように思えて1人で舞い上がっていたナナナは、ギズモに言われて恐縮した。
焦ってすぐに出来ることではないのだから、言われたとおりゆっくりとしていけばいい。
そう考えて、ナナナは気持ちを落ち着かせる。
フリ「たとえ本当にそうでも前世は前世、今は今ですわ
でもムウ大陸の子孫を探す手伝いぐらいはしてもよくてよ」
どうせ卒業後の進路も決まってないしそんな果てしない目的であっても
どっかの金持ち貴族と政略結婚するよりは100倍増しだと安請け合いをするフリージア
「ムー大陸に帰ろうツアーだねお母さんv」
とギズモ……はて?どっかで聞いたような?
ともあれ、これでナナナも希望を持つことができるようになったわけだ。
リリ「ねえ、さっき言い忘れてたこと、今言っても良いかな?」
前世話を断ち切ろうと、リリアーナが話の腰を折った。
リリ「私がヨハネカインとマリアベルの関係を知ったのは、学園長からテレパシーで教えてもらったからよ。
レベッカさんが言っていたように、もしかしたら、ヨハネカインの目的は、不死の根絶とは別にあるのかもしれない。
だってホワイト家は魔法界では名門よ?
どれほど医術に長けていても、魔法が全く使えない者が後継者だなんて考えられない」
永遠の絆についての話は黙っていた。ターロンもいるこの場で話すには、いささか不都合な話題だからだ。
69「残念だが、俺にもさっぱりわからない。」
ロックはそう言った。事実、そうであった。
マリアベルとしても、ホワイト家の繁栄には興味が無かったのだ。
リリ「フリージアがさっき言ってたように、まずは一度、ケルビムについて調べてみた方がいいかもね。
まあまだ3日もあるし、何とかなるわよねー」
リリアーナはすっかり楽観視しているようだ。
まさかたった今ヨハネカインが学園に来たのだ、などと分かるはずも無い。
リリ「ナナナ、ニャンコ先生はきっとまだムウ大陸だよ。
大丈夫、
連絡用の招き猫はあるんだし、心配しなくてもそのうち連絡くれるわよ。
もしかしたら一年後になるかもしれないけど」
リリアーナは、学生達がムウ大陸に転移した時の儀式(?)を、ナナナにも話した。
リリ「あ、でもでも!学園長に頼めば何とかなるかもしれないし!げ、元気出して!!
さっき怯えてたけど、私のルームメイトだって根は悪い人じゃないのよ!
ちょっと危ないマジックアイテム持ってたり、ちょっぴり意地悪な時もあるけど!
ほらほら、私、ちゃんと生きてるでしょ?」
リリアーナはフォローになっていない事を力説している。
リリ「まあ・・・・・・・気の毒だとは思うけど、視点を変えれば、これってけっこうチャンスじゃない?
実はこの学園って、魔法使いが世界中から集まってくるのね。
世界をあても無く彷徨うより、ここで情報が集まるのを待つのも悪くないかもよ。
それに、さっきナナナが地図で押さえてた場所は、このフィジルだよ。
となれば、ムウの王族の末裔だって、この島にやってくる可能性だって高いとは思わない?」
ね?とリリアーナはナナナに頷いて見せた後、メイレンの前にもレモンパイを置いた。
ロックにはそれがあまり意味のある行為だと思えなかった。
メイレンは、相変わらずロックの腕を噛んだまま離さない。
リリ「それに、レベッカさんだってこの学園に来たばかりなの。
まだまだこの学園に心残りがあるはずだと思うのよ。ね?レベッカさん。
・・・・・・・レベッカさん?え、ちょっと、レベッカさん?ふざけてる?ねえねえ!!」
69「どうしたんだ、リリアーナ?」
リリアーナは槍に向かって何度も呼びかけた。 だが反応が無い。
リリ「どどど、どうしよう!レベッカさんがただの槍になっちゃった!!!・・・・・ん?」
リリ「
ヴァンエレン!どうしたの血相変えて!ああダメよ、この部屋の窓は結界はってあるから簡単には開かないのよ!
ちょっと待って、今、窓を開けるから!」
リリアーナは手馴れた様子でお札を剥がし、ヴァンエレンを迎え入れた。
リリアーナが間戸をバンバン叩いている影に気をとられたその時、
バサッと音がして本棚から一冊の本が落ちてきた。
床に落ちたその本に文字が浮かび上がる。ロックはそれを手にとって読んだ。
『ヨハネカイン博士はまもなく学園にやってくる。』
69「何…だと…!?」
リリ「どうしたの?・・・・・・あ、もしかして血液ゲットできたの?
それより今こっちは大変なのよ!レベッカさんが突然うんともすんとも言わなくなって!」
ロックは窓から入ってきたヴァンエレンにもその本を見せた。
ヴ「ん?ああ血液は入手できたよ。
ってそうじゃなくてアナスタシアから伝言ヨハネカインがもう…来とる!?はやっ!?」
レベッカの魂が宿る槍が声をかけても一向に反応しないで混乱しているリリアーナ、
そしてあまりの到着の速さに吃驚するヴァンエレン。
69「リリアーナ、きっとヨハネカインがレベッカを治療したから槍に反応が無くなったんだぜ!」
とロックは混乱しているリリアーナに言った。
ヴ「ん?変態レベッカがうんともすんとも言わなくなった?叩いてみてもダメ?」
魂はもう肉体に戻ってますからダメです。
69「ヴァンエレン、叩いてもいいがそれは後からだ!
まずは俺の手に噛み付いている変態をなんとかするんだぜ!
皆からちょっとずつ集めた血液を、このミセス・スイションの口に流し込むんだ!」
ロックはなにげに始めてヴァンエレンの名前を呼んでそう言った。
メイレンが満足するまで血を飲ませたら、彼女は回復してロックの腕から離れるだろう。
「どうせ皆ヨハネカインを見に行くんだろ?
窓の外からフリージアの氷に乗っていけばすぐに保健室に着くはずだぜ!
先に行っててくれ!ミセス・スイションの頭が俺の腕から外れたらすぐに行くぜ!」
フリ「それはいいんだけど……このままの姿でホワイト博士に遭遇したらまずいのじゃありませんこと?
もしかしたらクリムゾンヘッドが私たちの情報を洩らしてるかも知れませんのよ」
とこのままの姿でホワイト博士を見に行くことは危険ではないかと考えるフリージア
フリ「とりあえず私が、私であるとはわからないように特徴を変えて行きましょう」
縦ロールを横にして真ん中に寄せるよう縮めスプレーで固めるフリージア
なんということでしょうフリージアの縦ロールがフリージアの縦ロールが
大きなバームクーヘンが二つに変わったではありませんか
ギ「お、お母さんの頭にタイヤが二つ・・・」
あっと驚くギズモきゅん
それもそのはずであるフリージアといえば縦ロール縦ロールといえばフリージアとも言える
その大きな特徴をスプレー一本で変えてしまったのだから
フリ「伸びるモップの柄と同じ原理で逆に縮めましたのよ……でもこれで終わりでなくてよ」
フリ「芸術を司る色彩の精霊よ……私の髪の毛を桃色に変えなさいな」
氷の魔法使いであるフリージアが透明な氷に色をつける為に使う呪文
これを自分の髪の毛に引用したのだ
頭の両端にタイヤが付いたピンク髪の少女……フリージアの特徴である金髪縦ロールとは大きくかけ離れた髪型である
まさに髪型と色が変われば別のキャラという現象を見事に利用した変装といえよう
そして仕上げとしていつもとは違うピンク色の口紅をつけるフリージア
フリ「そうですわねぇ……この姿の私のことはクーラとでも呼んでもらおうかしら?」
4段階目の変身をしそうな名前で呼んでくれとみんなに言うフリージア
フリ「わかったよフリージアお母さん」
とお約束のボケをするギズモ
さあホワイト博士のところに出発だ!とばかりに外に出て空飛ぶ雪の結晶を製造するフリージア
はたしてヨハネカイン・ホワイトが学園から脱出するまでに間に合うのだろうか?
そして学園長は生きているのだろうか?
フリ「さあ出発ですわよ!!」
(24で〆)
最終更新:2010年01月30日 00:27