去るものは追わず

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mangaroyale

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去るものは追わず ◆uiAEn7XS/.


桐山和雄は感情というものを持たない人間だ。 
ゆえにその思考は合理性に基づいて構築される。

「なあ……何でこっちに行くんだ?何も無いだろ?」
背後からの声。その声の主は平賀才人。
桐山にこのプログラムからの脱出を提案した人間だ。
殺し合いでもどちらでもよかったが、『コインが表』だった。
だからその提案に乗った、それだけだ。
桐山はショットガンを右手に持ち、デイパックを左肩にかけたまま道路を西に向かって歩いていた。
才人はその後ろを不安げな足どりでついていく。
「どうせなら南に行こうぜ……あいつらからなるべく遠ざかったほうがいいだろ。あ、ホテルとかあるから、誰かいるかも」
こいつの話によれば、すぐ北の方に殺し合いに乗った者が二人いるという。
しかもそいつらは、二人とも人間とは思えない化け物だったということだ。
普通ならばにわかには信じ難い。
が、最初の広間で見かけた大男や、紙から出てきた銃などといったものを考えれば、桐山自身の常識の外こそがこの世界の常識と考えるべきだろう。

「だから、早く南に――」
「その必要は無い」

才人の言葉を遮って、そして桐山は足を止めて振り返った。
「え……え?」
「そいつらが殺し合いに乗っているなら、まずは他の人間が集まりそうな場所を目指すはずだ。
おまえが言ったようなホテル、または街の中心といった場所に……他の人間を効率よく狩るために」
それを聞いて才人の顔色が変わる。
「ルイズ……!だ、駄目だ!早く助けなきゃ、ルイズがっ!」
何だ、この反応は?そいつらから遠ざかりたいのではなかったのか。
「なあ桐山!頼む、一緒に来てくれ!俺の知り合いが何処かにいるはずなんだ!
捜して助け出さなきゃ……ルイズは――ルイズは俺の大切な人間なんだ!」


「――断る」


「な、何で!?」
「助ける、という言葉は救助の手段を持った人間が使うものだ。現段階で俺達は脱出の方法も、その化け物に対抗する手段も持ち合わせていない」
そんな自分達が救助活動を行おうとしたところで、逆に要救助者になるだけだ。
この平賀才人という人間は、なぜそんな事も解らないのか。
化け物とやらに遭遇して、恐怖で判断力が低下しているのか?
「それでも……それでも俺はっ……」
なにやらうつむいて肩を震わせている。

――――理解不能だ。

「……平賀」
「助けられなくても。守る事はできるはずだっ!!」
そう叫んだ途端、背を向けてそのまま走り出した。
桐山があずけたバヨネットを握り締めたままで。

……
…………
………………

まあ、いい。まだショットガンがある。
まずは西へ向かって、この地図の端がどうなっているのか確かめる必要がある。
簡単に脱出できるとは思っていないが、問題を見ずにテストの解答を書くことは不可能だ。
どのみち確認はしておかなくてはならない。
「あとは……変電所か」
ここにくる途中までで見たところ、街灯の灯りは点いている。
つまり電気が通っているということだ。
それを管理するはずの変電所には、このプログラムを管理する側の人間か、もしくはシステムが存在しているかもしれない。
だが可能性は薄いだろう。桐山があの老人の立場なら、そんな隙をわざわざ見せてやる必要はどこにもない。
しかしこれも確認する必要はある。
駄目で元々、期待はしていない。
というか、そんなものは桐山の思考には存在しない。
どんな状況が眼前にあろうとも、その現実にただ「そうか」と思うだけだ。
「行くか……」
もはや才人の消えた方向を見ることもなく、桐山和雄は西へと歩を進めるのだった。

     *

平賀才人はホテルに向かう道をひたすらに走っていた。
「ちくしょう……ルイズっ!」
守らなきゃ。
あのときの、シエスタの二の舞なんて絶対にごめんだ。
その一心で疲労を訴える肉体にムチを入れる。だが何事にも限界というものはある。
やがて自身の肉体の訴えを無視できなくなり、才人は走る事を止めた。
 それでもせめて、歩みを止めてはならない。ほとんど意地で、悲鳴をあげつつある足の筋肉を一歩一歩動かしていく。
「ぜえ……ぜえっ……みず……」
確か支給された品のなかに水筒があったはずだ。
が、先刻アーカードから逃れる際に、全ての荷物を放り出してしまった事に気付く。
「くそっ……くそっ……」
だが例えいくら頭を冷やしても熱は消えないだろう。
その原因は才人自身の焦りなのだが、本人は気付かない。
「頼む……生きていてくれっ……!」
守ってみせる。それが自分の役目なんだ。
自分にそう言い聞かせて、手の中のバヨネットを強く握り締めた。
「あ……」
そこではじめて気付く。その剣をくれた人物のことを。
初対面で銃を突きつけられた。
だけど撃たなかった。
そして自分にこの剣を預けてくれた。
「桐山……」
なのに自分は勝手な都合で一人で突っ走って、そしてここまで来てしまって。
振り返る。もう桐山の姿など見えるはずもない。
「ごめん……」
せめて一言、謝っておけばよかった。
だが今さら戻る時間も惜しい。
今できる事は、一刻も早くルイズを捜し出して守ること。
そしてタバサやキュルケ、他の脱出を志す人間と共にこのゲームをぶち壊すこと。

「また……会えるさ」

きっと。
志が同じなら。

そして再び歩き出す。
生きて再会できることを願って。


【B-7北東部 路上 一日目 早朝】
【平賀才人@ゼロの使い魔】
{状態}かなりの疲労 まだ少し混乱気味 アーカードとDIOへの潜在的恐怖は健在
{装備}バヨネット×2@HELLSING
{道具}紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)
{思考・状況}
1:とりあえずホテルを目指す。
2:ルイズを探し出して守る。
3:竜の羽衣、デルフリンガーを始めとする身を守る武器が欲しい。
4:武器を手に入れて、シェスタの仇(光成、他)を討つ。
5:キュルケ、タバサ、葉陰覚悟《名前は知らない》との合流、武器の捜索。 桐山に謝りたい。


【B-6西端 路上 一日目 早朝】
【桐山和雄@BATTLE ROYALE】
{状態}健康
{装備}レミントン M31(4/4)@BATTLE ROYALE
{道具}支給品一式 レミントン M31の予備弾24
{思考・状況}
1:A-6の西端に向かい、境界を確かめる。その後、変電所へ向かう。
2:乗ってない人間を見つけ協力するなら仲間にする
3:襲ってきた人間に対しては一切の手加減をしない
4:首謀者を倒す。
基本行動方針
首謀者の思惑を外すべく、死者が一人でも減るように行動する


043:マリアさんが見られてる 投下順 045:ひとりぼっちのエスケープ
043:マリアさんが見られてる 時系列順 046:希望の砦
018:夜空にコインが煌めいて…… 平賀才人 075:双剣のサーヴァント   ―I have created over a thousand blades.―
018:夜空にコインが煌めいて…… 桐山和雄 060:Contact



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