闇の中をひた走る少女。
それに追いすがる、いくつもの影。
ジャガーの姿。蝙蝠の姿。リザードの姿。
そして――その頭目として現れた男。
須賀京太郎。
またの名を、タイプ:マスクドライダー、
「見つけたぞ、ディケイド。そのベルト――ショッカーに返してもらう」
「だ、誰ですか!?」
「Version3。それがお前に死を齎すものの名前だ」
――V3と呼んだ。
新世代型のマスクドライダー。
ショッカーの作り出した、最高峰の改造人間・ライダータイプ。
既に離反した二体だが、追っ手を退けるその性能。
それを踏まえて、より強力なライダーを作り出した。
故のV3。第三期の改造人間である。
生体と機械の拒絶反応を抑え込むシステム。
他のライダータイプを踏襲、凌駕する性能。
まさに当代に於いて、史上最高の改造人間。
「おとなしくベルトを渡せば、殺しはしない」
「……本当ですか?」
「ああ、本当だ」
「……でも、改造とかするんですよね?」
「……」
「黙らないでくださいよ!」
……で。
「あー、音撃打のカード使っちゃいましたぁ……」
「うん、なんかゴメン。本当ゴメン」
洗脳装置をブッ壊されて。
須賀京太郎は今、ここに居ます。
失ってしまったカードの力を取り戻すために、夢乃マホ――仮面ライダーディケイドと旅に出ました。
メーテルと機械の星に旅立つのならともかく、既に体は機械です。
おもちを触ろうとしたら握りつぶしてしまう。完全に地獄だった。
そしてどんなおもちを見ても、心がときめいても下半身はときめかない。
本当に地獄である。
「……それじゃあ、君は」
「はいっ、大ショッカーを倒します!」
「……判った。俺も付き合う」
未確認生命体の侵攻。
しかしそれに対して――ショッカーは人類を守った。
あらゆる政治・企業へと取り入ったショッカーは、容易く日本を占拠してしまっていた。
実際のところ、ショッカーという名は出ていない。
ただ、コングマリットとしてショッカーは現実として存在する。
それはメディアに浸透し、社会に根を張り、少しずつ静かに――すべてを犯していく。
彼らが作り上げた、あらゆるライダーの可能性を破壊する装置。
それがディケイド。
世界中に散らばったピースが、万一にでも作動しないように。
己たちに牙を剥く事がないように、破壊を目的に製作された。
京太郎のような改造人間部門。
それとはまた別の部門が作り上げた、ドライバーだった。
「こんな体になっちまったけど……それでも俺は、人を守りたいんだ」
「京太郎さん……!」
「……だから、君の旅を手伝わせてくれよ」
「はいっ!」
「ここが……えっと、オルタナティブの世界ですね」
「何それ」
「大体わかってくださいよ!」
「わからねーから。絶対わからねーから」
夢乃マホと名乗った少女と共に、世界を巡る。
元の世界は、大ショッカーによって支配されてしまっている。
それをどうにかする為の、鉤となるのがディケイドのベルト。
失ってしまった力を取り戻すために――すべてのライダーと絆を結ぶのだ。
「……この世界、壊れちゃいます」
「甦ったアンデッドによって、地球上の生物が滅ぶかもしれない――か」
「勿論、マホたちで助けますよね?」
「……そうしたいけど、あんまり首突っ込むのもな」
「どうしてですか?」
自分たちは稀人だ。
本来ならその世界に存在しない人間。いてはならないイレギュラー。
確かに、この力があれば人を助ける事が出来る。護る事ができる。
しかし、いつまでもそこに留まれる訳ではない。
京太郎たちの力を当てにさせてはならない。
一時。ただ一時、その世界に立ち寄った存在。
物語の根本を歪めてはならない。本当に立ち向かうのはその世界の人間だ。
ほんの少し、誰かが挫けそうになったのなら――足を止めてしまったのなら。
その時、立ち上がるだけの時間を稼ぐ。言葉を与える。
それだけで、十分だった。
「なるほど、この世界の敵は……デカすぎるだろ、あれェ!」
「邪神14です!」
「名前はいいから……なんだあれ、どうすりゃいいんだよ……!?」
「諦めちゃだめです! ライダーなんだから、諦めちゃだめですよ!」
「なるほど――言うとおり、だなッ」
そしてめぐる、別の世界。
彼らの旅は続く――回り出す運命。
「ここは何の世界だ?」
「デルタの世界です!」
「……どこも、異常は見られないけどさ」
撃ち出される弾丸。突如、姿を変える人々。
否――人々ではない。
街中の雑踏、全てがオルフェノクであったのだ。
「なるほど……オーガか。いい性能だぜ」
オルフェノクの中にも、人間との共存を臨むものがいる。
姿が変わってしまったとはいえ、昨日今日ですべてを捨て去れるほど――彼らは残酷ではなかった。
或いはただ、人間が絶滅動物を保護するのと同じかもしれない。
どちらにしても、人類の絶滅を臨んでいるものはいなかった。
なのに――。
スマートブレイン。
京太郎とマホの世界でのショッカーに当たる組織が、人類への虐殺命令を出し続ける。
従わないものには、その武力を以って私刑を執行。
恐怖心による支配。暴力による支配。
ここは――そんな世界だった。
あと一歩。そんなときに謎の勢力に敗れ、攫われてしまった人類の希望。
暴力に虐げられる人々。暴力に支配されるオルフェノク。
放っておけないというマホに従って、京太郎も立ち上がった。
予感が当たるのならば、これは大ショッカーからの追っ手であろう。
「だが、日本じゃ二番目だな」
「勿論一番はマホですよねっ」
「流れ的に俺だろ!」
そしてまた、次の世界に。
異世界にかかる“橋”。それを利用して、大ショッカーは各世界に侵攻するのだと言う。
目的はその世界――ではない。
全てのライダーの抹殺。
そして、その力を己の世界に利用する事。
事実、そんな異世界の技術を利用されて作り出された、改造人間まで現れる。
ただカードの力を取り戻す為だった旅は。
いつからか、全てのライダーを助ける為の旅となる。
そしてそれは己の世界を守る事に繋がり、人々を助ける事となる。
「で、ここは?」
「パンチホッパーの世界です」
「……結局その一言じゃわからねーんだけど」
この世界は、全ての種族が手を取り合って暮らす世界。
軋轢がないとは言えない。差別がないとは言えない。
それでも誰もが、歩み寄っている世界だ。
だが――不穏分子と言うのはいつの時代にも存在する。
大ショッカーの技術。
提供されたその技術による、各勢力トップの誘拐。
己の世界の不始末。
それは、自分たちが付けなければならない。
「人間じゃないとか、そうじゃないとかよりも――さ」
「ええ、大事な事があるんです! 誰かを思いやる心というものが!」
「だからなんで俺の台詞取るんだよ!」
この世界を救う事は出来ない。問題の解決はできない。
ただ、一瞬であろうとも手を取る。
そして、大ショッカーの野望を食い止めるのだ――。
次に来た世界。
荒廃はしていない。どう見ても普通の世界。
「ここは、ナスカの世界ですね」
「……で、どんな感じなんだ?」
「人々を助ける仮面ライダーって都市伝説が――あっ」
「どうした!?」
「この世界、今、書き変わりました……ショッカーが統治する世界に」
最強の敵、ショッカーグリード。
敗れて捕えられたライダーたち。オーズが存在しない世界。
新たなるグリードを、誰も止める事ができない。
全てのグリードを束ね、そして支配するショッカー。
ガイアインパクトによる人類の選別。悍ましい計画。
立ち向かう京太郎とマホもしかし、グリードに敗れてしまう。
間一髪助け出された。
目の前には、見知らぬライダー。
「ここは……それにあんたは、敵か!?」
「ノーウェイ、落ち着いてください。私は戒能良子。仮面ライダーNEW電王です」
「まだ、ショッカーにやられてないライダーがいたんですね……驚きです」
そして彼女から事の顛末を聞く。
ショッカーが時の列車を占拠。
そして過去に現れてショッカーの為の基盤を作り、全ての勢力をまとめ上げたと。
これはいわばプロトタイプ。
京太郎たちの世界の前身。或いは鏡に映しだされた似姿。
「なら――前哨戦ってことで、どうですか?」
「オッケー、気に入った。どの道ショッカーは倒さなきゃいけないんだからな」
「その意気ですっ!」
そして彼らは本来の世界に帰還する。
全てのライダーとの絆を深めて、戻ったカードの力。
いや、それだけではない。
もっと大切なものを――受け継いだのだ。
「……敵は多いですね」
「ああ……」
「……でも、大丈夫です。だって今は――」
「そう――俺たちはダブルライダーだ。それに」
「仮面ライダーは、護るべき人たちの為にも負けちゃいけないんですよねっ!」
あらゆる世界からの技術を集約したショッカー。
その恐ろしい改造人間の数々。
それを目の前にしても、二人は挫けない。膝を付かない。
ライダーというのは――人々にとっての、希望なのだ。
「さて――それじゃあ、行きましょうか」
「ああ……俺たちの戦いは、これからだ――!」
最終更新:2014年03月02日 15:55