「オーズとメダルと特異点」
ウヴァ――グリードたちとの戦闘の後、京太郎たちは列車の中に居た。
時を駆けるという、デンライナーに。
春「……」
京太郎「いえ……」
食べるか、と差し出された黒糖の袋を手で断る。
それどころではない状況であるのが一つ。
デンライナーの車内には、実に奇妙な光景が広がっている。
まずはどう見ても怪物が5人。
カザリ、赤鬼(モモタロス)、青亀(ウラタロス)、金熊(キンタロス)、紫竜(リュウタロス)。
それから、チャーハンを食べているステッキの壮年の男性。
この電車のオーナーらしい。
テレビで見た事があるような顔だが、他人の空似だろう。
それから美人が6人。
タイトな衣装に身を包んだ給仕役の少女――ナオミ。
そして、巫女服の5人組。
そのスタイルの良さには思わず手放しで喜びたいものがあるが、いかんせん状況がつかめない。
警戒するように京太郎の傍に近寄るカザリを見習って、顔を引き締める。
味方ではある。おそらく。
だけどもあまりにも異様な光景過ぎる。ここは間違った日本観を持ったアメコミの、ハロウィンの世界だろうか。
小蒔「えーっと、その初めまして」
京太郎「あ、どうも。初めまして」
深々と下げられた頭に、こちらも同じぐらいの角度で返す。
なんだろうか。ちょっと毒気が抜かれた。
さて――
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選択肢 |
1:目の前の女性に先ほどのものは何だったか、このデンライナーとは何かを訊いてみる
2:カザリに先ほどのグリードたちの事や、メダル、事情を訊いてみる
3:その他(行動や台詞などを)
↓3
242 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/04(月) 20:49:13.58 ID:ZIPBplDAO
2
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京太郎「なあ、カザリ」
カザリ「……なんだい、オーズ」
京太郎「さっきのグリードってのは何なんだ。それに、あのメダルとか……お前の事とか」
京太郎「教えてくれないか?」
ひとまず目の前の人物たちに会釈をしたのち。
カザリに向き合って、問いかける。
オーズと呼ばれた力。
カザリやウヴァや、メズールやガメルといった存在。
そして、カザリが何故追われていたのか。
聞きたいことは、山ほどあった。
この電車のこともさることながら、それ以上である。
カザリ「……」
ここで話すのか――と。
当たりを見回し、逡巡するカザリ。
確かにこの――よくわからない――人の中、事情を話せというのは軽率だったか。
ひょっとしたら喋りにくい内容なのかもしれないが……。
カザリ「……ま、いいよ。簡単に説明するけど」
カザリ「僕たちグリードは、800年前にある王の命令によって生み出されたんだ」
カザリ「その王がオーズ。君がさっき使った、ベルトを作った人間さ」
カザリ「僕たちは――メダルをコアにして活動をしている」
カザリ「言うなれば……」
辺りを軽く見回して。
先ほど勧められた――京太郎もカザリも拒否した――モモタロスたちの飲むコーヒーを指さす。
カザリ「あのカップがコアメダル。中身がセルメダルってところかな?」
カザリ「コアメダルが足りなければ、それじゃあ僕たちはただの水。形を保てない」
カザリ「でも、セルメダルが足りなければ……コーヒーという飲み物でもなくなる」
カザリ「コアメダルが芯や骨。セルメダルが肉ってことになるのかな?」
カザリ「だから、コアメダルを奪われると僕たちの存在はあやふやになる」
カザリ「でも、セルメダルが足りなければ、結局のところまともな形を保てない」
カザリ「……ま、ちょっと違うかもしれないけど。そんなものだと思ってくれていいよ」
カザリ「……で、僕たちのコアは本来なら、9枚。それぞれ3種類が3つ」
カザリ「そんな僕たちのコアを奪い取って……」
カザリ「その力を引き出して、それで戦うのがオーズの力だよ」
『奪い取って』のあたりを強調された。
どうやらやはりグリードたちの口ぶりから、オーズにいい思い出はないらしい。
カザリ「それで……まあ、僕たちは800年前に作られたって言ったね?」
カザリ「どうして今ここにいるのかって話だけど……」
カザリ「僕たちは封印されたんだよ。先代のオーズに」
カザリ「それから、今になって封印が解放された。ま、大方誰かが僕たちの封印の器を開きでもしたんじゃないの?」
カザリ「それで、まあ――きっとその人間がコアを奪ったのか――僕たちはコアが少なかった」
カザリ「それからは、争いさ。さっき君が見たようにね」
京太郎「……」
京太郎「お前のコアは、アンクって奴に奪われてよな」
カザリ「だから僕も向こうのを奪い返してやったけどね。流石に4対1だと勝負にならなかった」
残念だよ、と。
手のひらを上に向けると、腕を組みなおすカザリ。
そのまま話は終わったとでも言うように、壁に背中を預ける。
そこで、声が入った。
ウラタロス「ちょっといい?」
青い亀の怪人――ウラタロス――からだった。
なんというか、その一人称も相俟って、どことなくカザリに似ている。
そんな印象を抱かせる怪人だ。
カザリが、やれやれと身を起こす。
人間なら眉でも寄せているだろう。
ウラタロス「それで、君たちグリードは何が目的なの」
カザリ「……」
カザリ「完全体になる――自分のメダルを集めることだけど。それがどうかした?」
カザリ「僕たちは生み出されたとき、元々は完全体だった」
カザリ「それから、コアを奪われる度に力が抜けていくんだ」
カザリ「人間でいうなら、手足に重りでもつけられているようなものってところかな」
カザリ「だから、僕たちは完全体に戻りたい。生み出されたその頃の自分にね」
つまり、カザリの目的は。
失ってしまった自分の肉体の一部を取り戻したい。そういう事なのだろう。
気持ちは判らなくもない。
あの時に――戻りたいという気持ちは。
カザリ「ああ、それと……これも大事なことだけどさ」
カザリ「僕たちグリードにとってセルメダルは身体を構成するものっていったよね?」
カザリ「僕たちは、これを手に入れる為に……あることをやる。できるって言った方がいいかな」
カザリ「こんな風に」
そしてカザリが巫女服の女性の一人に手をかざすと。
そこに、自動販売機の硬貨投入口のようなものが生み出された。
そしてウヴァから拾ったセルメダルを手で弄んだ。
カザリ「そしてここにメダルを入れる事で、僕たちはヤミー――怪人を生み出す事が出来る」
カザリ「生み出したヤミーは、その親の欲望を叶える事でセルメダルを増やす」
カザリ「それから、そのセルメダルを僕たちに還元するんだ」
カザリ「多分……ウヴァあたりは、これからヤミーを作るんじゃないかな」
カザリ「大分、君たちとの戦いでセルを削られたからね。必死じゃないの」
カザリ「他にも……僕を含めて、皆セルメダルが足りてない」
カザリ「きっとメズール立ちが慎重だったのも、それが理由だろうね」
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ステータス |
情報が更新されました
【カザリ】
コア:3枚(ライオン×1、トラ×1、チーター×1)
状態:《セルメダル不足状態》
能力:40
HP:30/30(35)
スタミナ:30/30(35)
気力:60/60
ATK:25(30)
DEF:25(30)
(レンジ:至近距離~中距離)
- グリード:コアメダルの枚数によって技能値及びHP・スタミナ・ATK・DEFが変動
コアメダル1枚時、技能・HP・スタミナの基礎値を25、ATK・DEF基礎値を20として、以後コアメダル1枚につき+5
これらの補正に関して、他者のコアメダルを使用した場合、+3
- グリード:セルメダルの枚数によってHP・スタミナ・ATK・DEFが変動
戦闘中受けたダメージの分セルメダルを落とす。ダメージの5分の1、HPとスタミナの上限値を低下させる。(5ダメージ毎にカウント)
《セルメダル不足状態》:上記の効能により、基礎HP値からその10分の1以上のHP・スタミナの上限値が減衰する事で発動
ATK・DEF-5
《セルメダル十分状態》:HP・スタミナ・ATK・DEFを基礎値として運用する
《セルメダル多分状態》:HP・スタミナの基礎値から5以上HP・スタミナの上限値が増加する事で発動
ATK・DEF・戦闘判定+5。以降、基礎値の上昇1に対してATK・DEF・戦闘判定+1ずつ上昇させる
- 猫科の王:技能+5。戦闘・奇襲・追撃・撤退判定+5。温存判定時の与ダメージ量を変化させない。
コアメダルが一定数に達する事で、レンジを遠距離に変更し、自分の戦闘判定勝利時に全体に攻撃を与える
グリードについては、ウヴァ・メズール・ガメル・アンクと共通です
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ウラタロス「……そういうところは、イマジンに似てるね」
イマジン――という単語の意味は分からないが。
まあ、これからあと……彼らの事情も説明されるだろう。
カザリ「……ま、イマジンってのは知らないけど。僕たちグリードとヤミーの話はこれでほとんどだよ」
カザリ「グリードはヤミーを生み出して、人の欲望を叶える事でセルメダルを集める」
カザリ「セルメダルやコアメダルを失うと、グリードは形を保っていられない」
カザリ「こんなところ」
それから。
カザリは壁を離れて、京太郎に正対する。
顔と顔をほとんど突き合わせた状態。そんな距離まで近づいてきたのだ。
それから、囁くように言った。
カザリ「ところで君に聞きたいんだけどさ」
カザリ「オーズ」
カザリ「僕を守ってくれたのはありがとう。君のおかげで助かったよ」
カザリ「ま、あのときは一蓮托生って話だったし……今はそんなピンチを抜けたよね」
カザリ「これから、どうするつもり?」
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選択肢 |
1:完全体になるまで協力する
2:条件付きで協力する
3:まだ質問が残っている(可能なら質問の内容も)
4:まだあちら(電王たち)の話を聞いてないのでそれから結論
5:その他(内容も)
↓3
261 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2013/02/04(月) 21:41:46.77 ID:FSCUQByd0
まあ4だろう
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京太郎「……まだ、向こうの話を聞いてない」
京太郎「だから、それからだ」
カザリ「……そう。判ったよ」
それじゃあと、壁に寄りかかるカザリ。
相変わらず周囲と微妙に距離を取っている。何かあれば逃げ出せるように、だろうか。
それでもこちらとの距離は心なしか近い。そんな気がする。
小蒔「それじゃあ、私たちからなんですけど……」
ウラタロス「ま、ここは僕が説明した方がいいんじゃないの?」
ウラタロス「小蒔ちゃんたちは、こっちに来てからってことで」
そう言って、片腕を胸の前で組んで。
こちらに向かい合うウラタロス。
さっきから思っているが、どうにも彼――おそらく――はこの列車の中でも、説明役。あるいは交渉役なのかもしれない。
ウラタロス「僕たちは……どこから説明したらいいかな」
ウラタロス「時の運航を守るために戦ってる、とでも言っておくよ」
京太郎「……時の運航?」
ウラタロス「うーん、難しい話なんだけど」
ウラタロス「正しい時間の流れというのが存在していて、そんな時間の流れになるように保とうとしているって言うかな」
ウラタロス「僕たちの敵のイマジンは……時間の流れを乱すことで、歴史を改変しようとしている」
ウラタロス「そんなイマジンを倒すのが僕たちと――それと、電王って訳さ」
そう言って、先ほどの巫女服の女性を手のひらで示すウラタロス。
電王というのは、あの仮面ライダーというのの正式な名前なのだろう。
どこか生真面目そうな印象を受ける彼女は、大仰に「はい」と頷いた。
それにしても、歴史を改変だなんてスケールの大きな話だ。
未確認生命体やグリードというのも大概ではあるが。
こちらの話もまた、随分と現実離れしている。
カザリも少し、呆然としているようだ。
ウラタロス「イマジンは……その人の願いを叶える事で、過去への扉を開く」
ウラタロス「願いを叶えるって言っても随分と杜撰だけどね。星をずっと見たいって言ったら木に縛り付けられたり」
ウラタロス「それで――その扉から過去に向かっていって、過去を壊して、現在を改変しようとするんだ」
京太郎「……何が目的で?」
ウラタロス「それは僕たちにも正確には分からない」
ウラタロス「ただ、イマジンってのは『選ばれなかった時間の住人』なんだ」
ウラタロス「だから改変を起こして、時間を自分たちのいた未来につなげようとしている――ってとこ」
京太郎「……改変されたら、今はどうなる?」
ウラタロス「変わってしまうよ。場合によっては、消えるだろうね」
ウラタロス「そして、誰もその改変に気付かない。親しいものが消えてしまっても、過去で殺されてしまっても」
ウラタロス「それが『本来の時間の流れ』だと思って、生活する事になるんだ」
京太郎「……」
カザリ「……」
ウラタロス「まあ、大丈夫だよ」
ウラタロス「特異点――電王への変身者の資格を持つ者がいれば、時は本来の流れに戻されるから」
ウラタロス「この場合は、小蒔ちゃんかな」
ウラタロス「特異点は、あらゆる時間の改変の影響を受けない」
ウラタロス「それから、特異点がいるならば、その記憶を元に時間は正常なものへと修復されるんだ」
つまりは――。
電王。
彼女――小蒔がいなければこの時間はいつ改変されてもおかしくなく。
そして、どうなったとしても戻らない。
そういうことだろう。
ウラタロス「それで、なんで僕たちがここに居るかなんだけど――」
ウラタロス「元々、僕たちはここじゃない世界の人間だ。別の時間軸のね」
ウラタロス「それで――イマジンを追ってきて、この世界に来てて」
キンタロス「それで、閉じ込められたっちゅーとこやな」
モモタロス「ったく、天丼の奴とは逸れちまうしよぉ……」
ウラタロス「おねーちゃんに拾って貰えなかったら危なかったよねー」
ウラタロスの説明に、他の3人が飛び込んだ。
いつまでも続く説明に、我慢の限界だったのだろう。
それから互いに口を挟むなとか。邪魔だとか。自分にも喋らせろとか。
喧々囂々と、騒ぎ立てていた。
つまりまとめるとこうだ。
・ウラタロスたちは別の世界の人間(イマジン)
・とある切っ掛けで世界を渡ったイマジンを追ってこちらの世界に来た
・倒して帰ろうと思ったら、何故だかこちらから帰れなくなっていた
・そして、この世界もイマジンに狙われている
・たまたま見つけた特異点である神代小蒔に協力を頼んで(正確には事情を聞いた彼女が申し出て)電王として戦っている
・仲間であるイマジン1体と逸れてしまったらしい
ひとまずの説明は終わって、一旦、ブレイクタイムとなった。
モモタロスたちは毒々しい色のコーヒーを飲んでいる。
神代小蒔とその周辺の巫女服の女性――こちらの世界の人々らしい――も口にしていないあたり、
あれを飲もうとしなかった京太郎とカザリは正解だったらしい。
流石に、まずいものを飲むのは御免だ。
そう告げると、カザリは押し黙って背中を壁に預ける。
どうかしたのだろうか。
イマジンと巫女服の和気藹々とした空気を眺めながら、カザリと共に壁に寄りかかる。
一際グラマラスな女性はリュウタロスに慕われていて――姉と言うより母と子供を思わせる風格だ――。
先ほどの黒糖の女性は、キンタロスと黒糖を貪っている。食べるたびに「泣けるで」と呟くキンタロスと頷く女性は何ともシュールだ。
ウラタロスは色黒の女性――というより体格的に少女――と、眼鏡の女性と言葉を交わしている。
モモタロスは、神代小蒔と何やら話し合っていた。
カザリが、ポツリと呟いた。
カザリ「……イマジンか。厄介だね」
京太郎「ああ、確かにな」
カザリ「……でも、考えようによってはこれはチャンスかもしれない」
カザリ「イマジンとグリード――ヤミーのやり方っていうのは似てる」
カザリ「お互いかち合って、争い合う事もあり得るし」
カザリ「イマジンが先に欲望を満たしちゃったのなら、ヤミーを作る余地がなくなる」
カザリ「そうなったら――ウヴァはともかく、メズールあたりなら警戒し始めるだろうし」
カザリ「こっちを狙いに来るって事も、あまりなくなるだろうね。ヤミーとイマジンで争うかもしれないけどさ」
京太郎「……」
カザリ「それで……オーズ。君に聞きたいんだけど」
カザリ「君はこれから、どうしたい? 一応聞いておくよ」
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選択肢 |
271 1 ◆B6xkwd67zxGJ[saga] 投稿日:2013/02/04(月) 22:25:21.31 ID:b4a3T7D9o
1:電王との協調もするが、あくまでカザリが完全体になるまでを主眼に協力する
2:電王との共闘も考え、また、メダルの為に人を傷つけないなどを条件にカザリに協力する
3:まだカザリに質問が残っている(可能なら質問の内容も)
4:その他(内容も)
↓3
274 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/04(月) 22:28:43.10 ID:mjgdMq0l0
2
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京太郎「……」
思い出されるのは――あの夢。
理由は分からない。そんな覚えもない。
だけど、咲が離れて行ってしまう夢。どこかに戦いに。悲しみと怒りを背負って、離れて行ってしまう夢。
あれは――ただの夢だ。そんなのは現実じゃない。
だけれども。もしかしたらあの夢は本当であるかもしれない。
京太郎が忘れてしまっているか――或いは、それこそ過去が改変されたか何かで。
ただの夢として思い出されるだけの存在になっている。
勿論、特異点以外が――京太郎は特異点ではなかった――記憶する事もないはずなので、そんな夢など見るはずもないが。
そして思った。イマジンの所業を。
忘れられるというのは。人が生きた歴史すべてがなくなるという事だ。
それは、死ぬことよりもなお一層酷い。
死んだならば死んでしまったと、辛い別れになったと記憶に残るだろう。思い出が残されるだろう。
だが、消えてしまうのなら。
それは初めからいないのと同じだ。失うよりも、更に辛辣な奪われ方。
許しておける理由がない。
そして、あのウラタロスというイマジンの口ぶり。
イマジンが願いをかなえるのは、ヤミーと殆ど同じ。
ヤミーだって、セルメダルの為にだけ人の欲望を叶えるのだ。
つまりは――先ほどの例に挙げられたイマジンの行為のように――ヤミーのそれも、人を傷つけるものである可能性が高い。
人の欲望の中には、他者を蹴落としても構わないというものは純然と存在する。
故に、ヤミーという異形の力を持ったのなら、そんなことは容易く起こり得るだろう。
その犠牲者が――。
ある日の片岡優希かも知れない。原村和かもしれない。染谷まこかもしれない。竹井久かもしれない。
傷つけられた人間。
その痛みは波紋する。人が失われるという喪失は、ブラックホールが如く周囲の人間の心をも飲み込んでいく。
まさに、ここにいる須賀京太郎のように。
だから――。
京太郎「お前に協力する。お前のメダル集めにも」
カザリ「へー……!」
京太郎「でも、イマジンも放ってはおけない。そんな存在は、倒さなきゃいけない」
京太郎「俺には力が必要なんだ。誰かを守るための力が。戦うための力が」
京太郎(そう……)
京太郎(これ以上、俺のような存在を生み出さない為の力が……)
京太郎「だから、俺はお前のメダルを集める。代わりにお前は俺の戦いに協力してくれ」
カザリ「ギブアンドテイクってこと?」
京太郎「……そう思ってくれてもいい」
京太郎「ただ、出来れば純粋にお前を手伝ってやりたいとも思ってるのは本当だ」
カザリ「……」
京太郎「ただし、メダルの為に人を傷つけるな。メダルを人命より優先するな」
京太郎「この条件は飲んでもらうけどな」
カザリ「……」
カザリ「『力を貸す』『人を傷つけない』……僕のメリットに対して、君の方の条件の方が多くない?」
京太郎「……それは」
カザリ「……」
カザリ「ま、借りが一つあるってことで……いいよ。君に付き合ってあげる」
カザリ「僕にとっても、イマジンってのは邪魔だしね」
カザリ「君が人を守る為に戦うっていうんなら、傷つけないっていうのもその内に入るだろうからね」
京太郎「カザリ……!」
カザリ「ま、そういうことで――よろしくね、オーズ」
こちらへ向き合うカザリに、手を差し出す。
怪訝そうに肩を揺らすカザリに、改めて告げる。
京太郎「俺の名前は――須賀、京太郎だ」
京太郎「よろしくな……カザリ」
カザリ「ああ。よろしく」
カザリ(……)
カザリ(……イマジンってのは、どうにも厄介だね)
カザリ(現状、僕だけじゃ対処できそうにない。ありえないだろうけど、ウヴァたちがいてもそれは変わらない)
カザリ(ってなると、ここは電王と一緒に居た方がいい)
カザリ(それに……)
カザリ(僕のコアは奪われたものを含めて5つ。4つが行方不明)
カザリ(これの場所が分かるまでは……慎重に行動するべきだ)
カザリ(それまでは――役に立ってもらうよ、オーズ)
この後、神代小蒔――電王である彼女。
石戸霞――リュウタロスの母親のようなオーラを放つ女性。
滝見春――キンタロスと黒糖を貪っていた女性。
狩宿巴――ウラタロスと喋っていた眼鏡の女性。
薄墨初美――ウラタロスと海の話題で盛り上がっていた色黒の少女。痴女?
と、連絡先を交換した。
彼女たちは戦闘要員ではなく、電王にも変身できない。
それでも神代小蒔のサポートの為、またウラタロス曰く彼女たちの身の安全の為にデンライナーに乗車している。
あのむっつりとしたオーナー曰くグレーらしいが、緊急事態の為、可だそうだ。
夜も更けた(デンライナーに時間の経過は関係ないが)。明日、学校もある。
細かい情報交換などについては後日に回す事にして、一旦は今日、別れる事にした。
カザリ「……ところで、僕を家に連れてって大丈夫なの?」
京太郎「……ああ」
京太郎「俺は寮じゃないし、一人暮らしだからな」
カザリ「……そう。ならいいんだけど」
京太郎「お前こそ、何か好き嫌いとかあるのか? 猫だから玉ねぎだとか、烏賊は駄目とかさ」
カザリ「……いや」
カザリ「僕はグリードだからね。食事なんて、必要ないよ」
京太郎「そっか」
京太郎「じゃあ、気が向いたら言ってくれよ。何か作るから」
カザリ「……気が向いたら、ね」
京太郎「……」
カザリ「……」
最終更新:2014年03月08日 17:14