聞いたこともない少女の声に、冴山第3高等学校の生徒たちは目を覚ました。
「おはようございます、皆さん」
教壇に立つセーラー服の小柄な少女は、そう言って深くお辞儀をした。
少女の周りには、映画でしか見たことのないような軍服の大人たちが、
銃を抱えて直立不動の姿勢を取っている。
「此処・・・何処?」
最初に行ったのは、3年3組の古谷柑奈である。
自分たちの学び舎とは明らかに異なった、しかし勉強するのには不自由しなさそうな
設備の整った薄暗い室内。窓には全て鉄の板のようなものが打ち付けられていて、
到底外の様子など知れそうになかった。
「ここは、M県の南西部に位置する無人島です。人首島といいます。人の首と書いて、
ひとかべ、です。現在時刻は、9月21日の午後11時半。皆さんが眠ってから、
もう12時間は経ってますね。長旅ご苦労様です」
少女ははにかみながら、再び生徒たちに軽い会釈をする。
しかし彼らは何も反応できない。未だに分からない。自分たちが置かれたこの状況が。
5秒ほどの短い沈黙のあと、次に口を開いたのは3年4組の六條柊。
首にかかった見覚えのない首輪に手をかけながら聞く。
「えっと・・・何スかこれ、ドッキリ?」
「違います」
「ぁ・・・・・・ソっすか」
会話はそれだけだった。他に答えるべき言葉が無いのを確認すると、少女が言った。
「皆さん、改めましてコンバンハ。私、元南洋学園中3年の、恋堂(れんどう)と申します。今回はこの様な
強引な形で皆様をお連れすることになってしまい、誠に申し訳ありませんでした」
「・・・・・・・・・」
「そのお詫びと言ってはなんですが、今回は規定より人数も少し減らしましたので。・・・お許し下さい」
恋堂と名乗った少女は、およそ中3とは思えない態度で、目の前に並ぶ21人の高校生相手に詫びの
言葉を述べた。しかし、それを意味のある言葉としてきちんと捉えられている生徒などひとりもいない。
「質問いいですか」
いや、たったひとり、ここに全てを理解できているであろう生徒が居た。
「いいですよ。えと・・・1年2組の、鮫島和紀さん、でよろしいですね」
「うん。僕さっきからずっと思ってたんだけど・・・」
3年でさえ恐れの態度をとっているのに、この鮫島和紀という生徒は何の遠慮もなく言葉を紡いでいた。
それには恋堂自身も少し驚いたようだ。
鮫島はもったいぶるようにゆっくりと言葉を口に出したが、やがて、一番言いたいであろう確信に触れる。
「これってさ、プログラムだよね?」
「・・・・・・おや、貴方はなかなか察しがよろしいようで?」
恋堂が苦笑した。
「肯定だね。」
「・・・な、なにぃ?和紀くん、プログラムって、なんのことぉ?」
彼の姉、鮫島瑞紀も口を開く。プログラム、という聞きなれない言葉にすっかり困惑しているようだ。
「ご存知ない方もいらっしゃるのですね。いいでしょう、なら、早速ですがルール説明をさせていただきますよ。
まぁまずみなさんの首に付いてるその首輪ですがね」
その時、いきなり教室のドアが勢いよく開いて、ひとりの女性が入ってきた。
最終更新:2012年12月14日 14:22