「あ、あなたたち・・・!!」
女性が言った。これは生徒たちにも誰だかすぐに分かる。
自分たちが通う学校の、英語教諭だ。
「先生、く、首輪」
前田教諭の受け持つ2年4組の六條椿(六條柊の妹)が、彼女の首元を指差して言った。
彼女も、それを言われて始めて首輪の存在に気がついたようで、自分の首を触って疑問の声を上げる。
「な、なんなのこれ」
「皆さんよく見ててください、皆さんの首にも同じものついてますよね?これは、最近になってあるグループが
開発したプログラム用の首輪です。この中には微量の爆薬が入っていて、皆さんがプログラムにおける
禁止事項を犯してしまった場合に爆発します」
さらりと恋堂は言った。生徒たちに疑問を上げさせる暇もなく続ける。
「微量ですがね、人間の首を一つ飛ばせるくらいの勢いは余裕でありますよ。それを今から、先ほど
この島に到着したばかりの前田美波先生に、実物で説明していただきましょう」
「ど、どういうこと」
「えいっ」
いつの間に取り出したのか、恋堂の手元には小さなスイッチ。それがこの首輪の電源装置なのであると
いう事は誰にでも容易に想像がついた。前田自身の静止の叫びも聞かずに、恋堂はその小さなボタンを押す。
「ピ」という電子音が、3秒おきくらいに鳴り始める。
「え、嘘だろ?」
「本当に爆発すんのこれ」
生徒たちからもさすがに焦りの声が上がり始める。恋堂は至極楽しそうな顔だった。
「もって1分でしょうかねぇ。爆発するまで」
前田の顔色がますます青くなった。自分の行く末を感じ取ったのか、悲痛な叫び声を上げて首輪を引っ張る。
しかしよほど頑丈に作られているのか、首輪はビクともしなかった。
やがて彼女は六條椿と東雲月彦、毎日顔を合わせる教え子のもとへ駆けていく。
二人は一瞬戸惑ったが、そこから逃げ出すような態度はとらず、机に座ったままでいた。
「せ、先生」
「助けて、嫌よ、ねぇ助けて」
前田が正面の東雲のシャツを掴んで激しく揺さぶっている。そのあいだにも、電子音は音量を増すばかりだ。
いっこうに、恋堂がスイッチをオフにする気配などない。
「あー、東雲さん六條さん」
「な・・・なに?」
答えたのは六條椿のほうだ。だがしかし、彼女も前田を落ち着かせるのに必死なようだった。
「もうそろそろ爆発しますよ。そんな真正面に居ると、あなたたちの首も爆風で吹き飛んじゃうかもしれませんね。
それか、あなたたちの首輪が、先生の首輪の爆発に巻き込まれて誘爆が起こるとかも考えられます。
一見すると丈夫な物に見えますが、案外脆いんですよねー」
その瞬間、二人の生徒の目つきが変わった。
二人だけではない。他の生徒たちも悲鳴をあげて、事の中心から逃げ出した。
電子音の間隔が殆どなくなった。もう爆発の直前であるという事は、誰もが予想している。
もう前田はほぼ人語を話していない。ただ叫びながら、必死に目の前にいる二人にしがみついているだけ。
「・・・・・・そろそろ爆発、す、するんじゃないの、?これ」
震える声で六條が言った。
「分かってる!」
その瞬間、東雲が前田の手を振りほどいて、強く前方へと突き飛ばした。
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!」
鋭い悲鳴が、生徒たちの耳を裂いた。恋堂もたまらず耳を塞ぐ。
「ピ」
電子音はそれで最後だった。前田の声が止み、ボン、という音と共に前田教諭の首が粉砕された。
生徒たちはただただ絶句して、眼前で繰り広げられる普通ならあり得ない風景に目を見開く。
爆発の近くにいた生徒は、降り注ぐ肉片や毛髪を被っていて、まさに地獄絵図のような風景だ。
大きな音の余韻がすっかり消え去った頃、一年の女子が最初に悲鳴を上げた。
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真夜中の警鐘《後編》 |