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3年3組西条花枝は、B-6エリアのお地蔵さんの前に座り込んで思案していた。
彼女の手には黒い箱。いや、サブマシンガンだ。
このプログラムにおいては、銃器は当たり武器として認識させる。特に、最大の戦力になるであろう
マシンガンを手にできたことは、西条にとってかなりの自信となっていた。

 

西条の目的はただ一つ。他の生徒たちを全員殺して、生きて本土に帰ること、だ。
正直、後輩がかわいそうだとか、同級生に申し訳ないだとか、そういう思考は完全に浮かばなくなっていた。
殺すのは私で、殺されるのは皆。ここで死ぬのが皆で、生きて帰るのは、私。
しかしこのプログラムを頭の中でシミュレーションしてみると、中には西条にとっての【要注意人物】も何人かいた。

 

(1年は、瑞紀の弟)

 

明らかに同級生からはズレた存在であることは以前から知っていた。
その事で鮫島姉から直接相談を受けたこともあったくらいだ。
彼は少女のように可愛らしい顔をしていたが、その下に何か凶悪な仮面を被っているに違いない。


西条はそう信じて疑わなかった。

 

(2年は・・・月彦くんと椿ちゃん、それに、如月さん、かな?)

 

東雲春花の弟と、六條柊の妹、如月は、自分たちの通う学校の中で一番に目をつけられている生徒。
というか、2年は全体的に大人びた雰囲気を持っていて、なんだかハイスペックそうな奴が多かった。
まぁだからといって、私の邪魔になりそうな奴はいち早く排除するに限るのだが。

 

(・・・で、同級生)

 

西条は、ひとりひとり、毎日のように顔を合わせる7人の顔を思い浮かべた。


・・・私に殺せるだろうか、殺してから、後悔したりはしないだろうか?
そんな良心なるものが、私の心の中にまだ残っていたことに驚いたが、それも一瞬で吹き消した。
だめだ、そんなこと言っていたら、この場で生き残ることは難しい。

 

お地蔵様は、さっきから西条の方を見て微笑んでいるばかり。
彼女は、地蔵の頭にぽんと、軽く手を乗せて呟いた。

 

「あんたはいいねぇ。殺し合いなんて、しなくっていいんだもん」

 

それからもう一度、お地蔵さんの頭をぽん、とやった。罰当たりにはならない程度に軽く。あくまで女子高生らしく。
で、誰から殺すかだ。
案外簡単な問題に見えて、実はけっこう、今後の西条のモチベーションに関わってくるかもしれない。
しかし手当たり次第に殺していったんじゃ、品がないと言われるだろう。
と、その時

 

「・・・花枝?花枝なの?」

草木の擦れるガサガサという音に、見覚えのある少女の声。同じクラスの・・・

 

「誰?」
知っているけど、一応。そして当然の如く返ってくる答え。
「え・・・私、柑奈だけど・・・花枝じゃないの?」
今はまだ真夜中で、数メートル離れた相手の顔すら分からないほどに暗く、ここは木に覆われて月明かりも届いてこない。
しかし、それがクラスメイトの古谷柑奈である事はすぐに分かった。だから、あえて惚けたのだ。私が考える時間を作るため。
この子を殺してもいいかどうか。

 

「よかったぁ、やっぱり花枝じゃんか。花枝もひとりで居るの?」
「・・・うん。そう、さっき此処ついたんだけど」
「私も心細かったんだよね、よかった。でもひどいよ花枝、私に向かって誰ーって」
「・・・あぁ、ごめん」

 

正直西条視点で見ても心ここにあらずな返答だった。しかし古谷は西条に会えたことに安心しきっているのか、そのことに
まったく気がついていないようで・・・
「此処に来る途中、花火みたいな音しなかった?」
そう言えば、したような気がする。花火っていうか、あれは確かに・・・
「銃声だよね、あれ」
そう、それ。明らかに誰かが誰かに向けて撃った音。ってことは、もう死人出ちゃったのかな?
「ねぇ信じられる?私たちの中に、人殺しがいたんだよ。簡単に人に鉄砲向けられるような、最低な奴」
そう、ゲームはすでに始まっている。やる気になっている人物もすでにいるのだ。
「私は多分誰も殺せないなぁ、何か・・・怖いよね。イマイチ実感沸かないんだけど、さ」
そう、皆もうやる気になってる。取り残されたんじゃない、私?
「ねぇ花枝、聴いてる?」
そう、ここだったら、誰を殺しても犯罪にはならない。だって、自分が生き残るためにはほかの人を殺さなきゃいけない。
「花枝ってば」
「でも、さ、殺さなきゃならないんだよ、やっぱり」
「・・・え?」
「だって私、しにたくないんだもん」

 

その瞬間、西条の持つサブマシンガンが火を噴いた。彼女の最初の標的は、クラスメイト。
多少の罪悪感もありながら、しかし西条は「生への欲求」に耐えられなかった。
無数の小さな穴が開いたクラスメイトの身体は、お地蔵様にゆっくりと凭れかかっていた。もう、動かない。

 

「あぁ、やっちゃったんだ、私」

 

赤い霧に包まれた彼女は、ただ握り締めた凶器を見つめた。
でもまだ足りない。私が優勝できる人数じゃない。

彼女の中の理性なんて、とっくになかったのだ。
そう、この島に皆で連れてこられたあの時から、恐らく。

 

品性なんてものも、もう必要ない。

 

口元をいびつに歪ませると、西条は迷いなく、古谷のリュックから武器と水を抜き取った。

まだ、始まったばかりだった。

 

 

 

【B-6】
【西条花枝】
[状態]健康 少し動揺
[装備]サブマシンガン
[道具]支給品一式・古谷の武器(ダーツの矢5本)・古谷に支給されていた水
[思考・状況]全員を殺して、優勝する
※ 出逢った者は無差別に殺すつもりです

 

3年3組  35番  古谷 柑奈死亡  残り20人

 

 

 

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最終更新:2012年12月14日 14:13