「すげえ死んでる・・・マジかよ・・・・・・」
放送を聴き終わって唖然としているのは、2年1組の如月千絵。
先程恋堂相手にマジギレして、あやうく蜂の巣になりかけた彼女である。
「・・・人類皆友達なんじゃねえのかよ・・・」
泣きそうになる彼女の右手には鍋の蓋。
これこそが、如月に支給された武器だった。
「ここが・・・えっと・・・」
地図をクルクルと回しながら、彼女は現在の位置を確認した。
「C-5か・・・移動はなしだな」
生まれながらに持った持久力と馬鹿力だけは温存したい。
彼女は、最後のほう何人かまで生き残れば、もしかしたら
生きて帰れるかもしれないと考えていた。
「寒い・・・」
制服の上にジャージを羽織っているが、海に囲まれた小さな島の気温は低い。
彼女は一度身震いして、その場に座り込んだ。
(私は・・・誰も殺せないなぁ・・・)
大した知力も女性らしいおしとやかさも手先の器用さも持ち合わせていない
彼女にとって、誇れるのはこの運動能力だけ。
これを行使すれば、他人の武器を奪ってそれを使用することも可能だろうが、
それは何があってもとりたくない行動手段だった。
殺す者は悪で、殺されるものは何の罪もない善。それが彼女の考え。
そう言えば、同じ学年からすでに3人の死者が出ていた事にはかなり驚いた。
その中には、同じクラスの源も含まれている。
良い奴だったのにな、と、彼女は悲しくなった。
相田や寄川だってそうだ。同じクラスになった事は無いが、風紀委員である相田には、
窓ガラスを割ったりした時にお世話になったし、寄川も、スカートの下に穿く見せパンを
露出しすぎていると、彼女によく叱られているのを目の当たりにした事があった。
(2年の残りは、私以外だと月彦と椿、それに香月か)
この3人とは、1年の頃から交流があった。
月彦と椿とは去年クラスが一緒で、香月は月彦の幼馴染として
よくクラスにも遊びに来ていた。
(そう言えば椿、中学の頃は私立の女子高に通ってたって言ってたっけ。
で、雰囲気が合わなかったからこっちに来たって・・・すげえな)
そんなどうでもいいことを思い出す。
こんな事を考えている時間だけが、彼女を不安から守る貴重なもの。
「おいお前、私にもしものことがあったら、その時は頼んだぞ」
月明かりを受けて金色に輝く鍋の蓋を、彼女は力を入れて抱きしめた。
【C-5】
【如月千絵】
[状態]健康
[装備]鍋の蓋・学校指定ジャージ
[道具]支給品一式
[思考・状況]誰も殺さない
戦闘に巻き込まれたら逃げる
死にたくはない