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雪子の視線を受けながら、僕は何時間も前に学校を出た。
よく考えてみれば、あの時ちゃんと雪子の順番を待って、
二人で一緒に逃げれば良かったんだ。
なのに僕は、その場にジッとしてることが怖くて
学校を出た途端、行く当てもなく走って逃げてしまった。

僕たち1年生の中からも、当然のように死者が出ていた。

てっきり僕は、少しでも馴染みのある人物が殺されると
もう何も考えられなくなるぐらいにパニックに陥ると
思っていたんだけれど、放送が終わった今思い返すと、
現実離れしすぎていて案外冷静でいられた。


僕、高里雪弥は今、幼馴染の大内要と共に
島の南の方・・・H-3エリアの診療所に居た。


彼とは此処へ来る途中に会った。
順番は僕の次が相田先輩、その次が要だったから、
出会ったのは学校を出てあまり時間の経たないうち。
彼とは幼馴染という事もあってか、この場においては
雪子と同じくらいに信頼できる人物だったから、
僕も何の疑念も示さず一緒に行動する事になった。

 

因みに僕の武器はメガホン、要の武器は毒薬だ。

 

メガホンなんて何に使うか分からないし、
毒薬だって、使う機会があるとは思えない。
だから二人共、診療所にあったメスを拾った。
でも僕は気が小さいから、多分誰も殺せないんだろうと思う。
勿論双子の妹である雪子だってそう。
だからこそ、早く合流したかった。
生き残れるのが一人だけとか、そんな事はどうでもいい。
弱い僕では、この二日間を生き延びることは不可能だろうから、
せめて死ぬ前に、雪子に一目会っておきたいのだ。


「雪弥、飯できた」
「あ、うん」

住居スペースの方から、何やらいい匂いが漂ってきた。
この診療所は医者の自宅も兼ねているようで、
収納からは、まだ食べられそうな食品類も少量ながら見つかった。
ここが最後まで禁止エリアに指定されなくても、2日くらいなら
余裕で生き延びられそうな量ではある。
ただ、その可能性は無いに等しいんだろうけど・・・。


僕の顔を見ながら、雑炊の皿を二つ持った要が聞いた。
「さっきの放送聞いただろ。雪子、無事だったんだよ」
「わかってるよ」
「あいつの事だから、どうせ一人でどっかに隠れてるに決まってる」
気を利かせた言葉のつもりなのだろうが、僕にも彼にも、
その言葉は気休めでしかないという事が良くわかっていた。


だって、こんな島の中にいちゃ、いつ死んだっておかしくないんだ。


しかも、此処で殺人を犯したとしても、その全てが犯罪として
法の裁きを受けることは絶対にない。


そして僕は、このプログラムという言葉に
ひどく既視感を覚えていた。


僕が過去にプログラムを経験したなんて事はまずない。
それに、両親が・・・なんて話も違うような気がする。
だとしたら、このモヤっとした感覚は何なんだろう?


「雪弥、そんな顔すんなよ」
「・・・あ、ごめん」
考えれば考える程、僕の表情は曇っていく。
でも、こんな状況で楽しいことなんて考えられるはずがなかった。


「・・・俺だって怖いよ」


要がぽつりと言った。
僕は驚いて、スプーンを持つ手を止める。


「・・・だって、今までずっと仲良かったのに、
いきなりあんなに死んでるんだぞ?
誰が何人殺したかなんて分からないし、もしかしたら
全員自殺したのかもしれないし、何かの間違いかもしれないんだし・・・
でも、本当の事知る方法なんて、今の俺たちには
ないんだよ」

「・・・うん・・・」


要が氷山を好きだったことは、前から知っていた。
あの大人っぽい雰囲気が良いとか、詳しいことも色々。
なのに、もう氷山は死んでいた。
開始6時間で、あっけなく。

まだ僕には雪子がいる。
だから、本当に悲しいのは要の方なんだ。

 


僕がもっと、強くならなきゃ・・・

 


【H-3】
【高里雪弥】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式
[思考・目的]高里雪子の捜索
多少の覚悟は決めた模様


【H-3】
【大内要】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式
[思考・状況]高里雪子の捜索
自分たちの安全も図る

最終更新:2013年02月17日 19:20