穏やかに晴れた空が覆う山間の学校。
御昼休みが終わり、先生の登場を待ってる生徒達。
午後の授業はなんだろうと楽しそうに待っている。
この春、入学した生徒達が元気よく動きまわる。
ここ数年、数は減ってきていたが、人の努力で最盛期程ではないが増加の傾向にあった。
「あっちの方が、いっぱいあるよ」
「そんなことないよ! こっちの方が多いよ」
「今日はどんだけ泳げるかな?」
子供等は口ぐちに楽しい一日を過ごそうとしている
そんな時、慌てて、先生が駆け込んでくる。
「皆! 直ぐにここを離れて!」
「せんせい? どうしたの?」
「いいから! 隣の川に――」
先生が指示を言い終わる前に周りが真っ暗になると轟音共に、山が崩れて来た。
「きゃあ」
「うわ」
「うわーん」
泣き声と悲鳴が響き渡る。
「さ、早く!」
先生は必死で生徒を誘導する。
それでも、最初の山崩れで避けられなかった生徒も。
「そこの細い場所を行くのよ!」
残った生徒を必死で、まだ無事な場所に導く先生。
「せんせいは? 来てくれないの?」
「まだ、残ってる子がいるから。心配しないで。さ、行きなさい。
そしてね、もう少しだけ希望をもってね」
言われた生徒は振り返りながら細い通路を奥に入っていくと、
しばらくして先程先生に見送られた場所もあの大きな轟音と共に埋まっていく。
「せ、せんせい!」
「即刻工事を中断しなさい!」
「不法行為だぞ!」
ヘルメット姿の男に食って掛る数十人の団体。
「そんなこと言われても、こちらは依頼を受けて」
「たったいま、判決が出たんですよ。環境庁も保全登録したんです。造成開発は中止
なんですよ!」
「え……。判決出たんです……か?」
「そうですよ。それを……。判決が出るまでは、作業は中断だったんでは!」
「この件は、充分、そちらは訴える材料になりますよ!!」
ヘルメット姿の男は肩をすぼめ、数人に囲まれた。
そんな騒ぎの中心から少し離れた所に男性とまだ幼い女の子が立っていた。
どうやら親子の様子。
「おとうさん……メダカさんのお家なくなってる」
女の子は哀しそうに、父親を見上げる。
「う……ん。ごめんよ……。もっと監視しとくべきだった……」
女の子は膝を抱えうずくまる。
すると、小川の横の小さな水場を見つける。
「おとうさん!」
女の子は、父親の手を引っ張った。
「よし。これで全部かな」
父親は手の平にそっと小さなメダカ達をすくい、別の小川に移した。
「おとうさん、おとうさん! がっこ出来るかな?」
「え? ああ、メダカの学校かい?」
「うん。おばあちゃんが歌ってくれたの。おばあちゃんが小さい時は、がっこが、いっぱーい
あったんだって」
「そうだな。お父さんの小さい時もあったよ。美知も一杯、メダカさんの学校見たいよな」
「うん。一緒にがっこ行くの」
「それは無理だけど。いつまでも守っていこうな」
父親は微笑むと女の子も微笑んだ。
そんな二人の足元で、新しい住処を小さなメダカ達が様子を伺いながら、元気よく泳いでいた。
終
最終更新:2008年05月20日 17:49