始業のベルが校内に鳴り響く。
それに伴い、廊下から生活指導教師の怒鳴り声も加わっていた。
「ねえ。いつから、モハメットはムハンマドに変わったの?」
越智敏樹の机に顎をおいて、浅川麻紀が訊ねた。
「もうすぐ、先生来るぞ。席戻れよ」
「答えてくれたら、戻る」
「知るか! これが答え」
敏樹がそう応えると同時に、担任代理の村崎が入って来る。
いつもはパンツルックの彼女が、今日は珍しくスカートだった。
「はーい。皆、お早う。浅川さん、席に戻る! いつまでも旦那の所にいない!」
教室に笑いが起こる中、麻紀は敏樹に対して言い足りない表情を残し、斜め後ろの自席
へ戻った。
「えー。来週は、いよいよ修学旅行ですね。その後は進路希望のアンケートなどイベント
盛り沢山ですが、いい思い出を作ってください。っと、前振りはここまでで、皆。担任の
笹沢先生が来月が復帰されます」
村崎のこの台詞に、一部ブーイングが出る。
「どこが前振りなんだよー」
「このまま、退職じゃないの?」
「はい。はい。静かに。笹沢先生は術後の経過もよく、先週退院され三学期からの復帰と
なっていたのですが、諸事情や代理の私が力不足で……」
少し声を詰まらせ、村崎は視線を下に向けた。
「先生……」
「ガンバって!」
生徒から声が掛る。
「ありがとう、皆。私、また帰ってくるよ! 皆の下へね」
演技力満載で村崎は顔を上げると笑顔を見せ、生徒も歓声を上げる。
最終更新:2008年05月23日 22:59