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~オープニング~

「ついに…この時が来た……」

 霧の漂う城の中からひとつの声が漏れた。
 高くなければ、低くもない不気味な声…。
 その声の主の眼には醜悪な“欲望”のみが宿っている。

「…過去と未来が再び交わる時、大いなる力目覚めん」

 古い石版を手にとりながら、記された文字を唱える。
 薄い笑みを浮かべた後、その男は消えた。
 一枚の漆黒の羽を残して…。
 その羽は、これから起こる不吉を予言しているようだった。

カーテンを開けると、朝が飛び込んできた。
 ガラス板の向こう側には真っ青な空が広がっている。
 大きく息を吸って吐く。

 今日から、また新しい一日が始まる…。
 少女は、寝癖のついた髪をくしでときながら今までの出来事を思い出していた。
「あいつと出会ってから、ホントに世界が180度変わったのよね…」
 私は、ほんの2、3カ月前までは都立飛燕魔導師養成学校に通う普通の学生だった。
 でも、今はある“もの”を求めて、当てのない旅を続けている。
 そのある“もの”とは……

「エレン!!いつまで寝てんだよ!お前が来ないと朝食が…」
 朝の静寂をやぶる声が、私の思考をさえぎる。
 この声の主こそが、私をこの旅に巻き込んだ張本人!

 カルナ=イエスタン
 炎にように紅い短髪に、鳶色の瞳。
 身長は、私より少し高くて170ぐらい。
 顔は、わりかし整っていて結構モテる。
 こいつの、笑顔に泣いた娘(こ)がどれだけいることか…。

 あいつの、説明はこの辺にしてそろそろ話を戻そう。
 まず、なぜカルナの言葉が途中で途切れたかというと…エレンが裏拳で容赦なくぶっとばした
からである。
 だって、あのままだと近所迷惑でしょ♪
 壁に埋まっているカルナを完全無視し、エレンは軽い足取りで階段をおりていく。
 その日、カルナが朝食を一口も食べられなかったのは言うまでもない…。

「あー、腹減ったなー」
 所々にコケの生えた石の床を歩きながら、目の前にいる少女に言ってみる。
 相変わらず、返事はなし。これで、13回シカトされたことになる。
 うたれ強いオレも、さすがにここまで来ると傷つく……。
 …ってかオレ、あいつに怒られようなことしたっけ?

 そうこう考えているうちに、遺跡の最深部にたどり着いた。
「んー、なんか文字が書いてあるわね。カルナ、読んでみて」
 エレンが壁の一部を指差す。
 どうやら怒っていたわけじゃなさそうだ。
 えっと…これを読むんだな。
 そこには、古代文字でこう書かれていた。
「この世の始まりの力を、我に向け放て。さすれば、汝の願い叶うなり…って書いてある
みたいだけどどうする?」
「どうするって…。この世の始まりの力ってあれしかないでしょ?」
 エレンが、当然のごとく答える。

 “この世の始まりの力”
 それは、おそらくこの世界を形成する四大元素のことだ。
 魔法、環境、地理、実生活…など、あらゆる分野での基本となされている。

「でも、同時にってことは最低でも4人は魔導士がいるんじゃ…?」
 ごく普通の質問をしてみた。…はずだったが、あっさり冷たく言い返された。
「精霊かツカイ魔を呼び出したらいいでしょ!下級層の奴なら、同時に四体ぐらい楽に維
持できるし」 
 あー、なるほどね。
 納得するオレを横目でチラリと見て、ため息をつきながら詠唱を始めるエレン。
『獰猛なる火の精霊イフリートよ!我、汝と誓いをたてるものなり。主の呼びかけに答え、
全てを燃えつくしたる力を与えよ』
『神秘なる水の精霊アクエリアよ!汝、我と契りを結び、全てを凍結する力を与えよ』
『荒れ狂う風の精霊シルフよ!汝、我と契約を誓い、全てをいざなう力を与えよ』
『謙虚なる土の精霊ケノンよ!汝、我に答え、全てを飲みこむ力を与えよ』
 目の前に魔方陣が出現し、四色の光があたりを包み込んだ。
最終更新:2008年06月17日 23:22