ATC-OG(えーてぃーしー・おーじー)、または新荻鉄型ATCは、2013年から荻鉄が採用している、新しい保安装置である。
概要
2012年まで、
ATC-DCを独自に改良したATC、ATC-DO-Nextまたは改良型のATC-DO-δを使用していたが、保安装置の一本化や
移動閉塞システム、車内信号などを導入し運行本数を増やすために両者を統合、改良を加えたものがATC-OGである。ただし、大元であるATC-DCから比べると簡易化されている部分や地上設備で対応している部分も多く、CTC導入線区と沿線主要駅からの指令が混在する荻鉄グループ向けにカスタマイズされているとも言える。
なお特に地上設備側に多くの相違が見られるものの、指令電文やプロトコル等は共通であるため、特に改造を行うことなくDC搭載車がOG区間へ直通することが可能となっている。ただし、OG搭載車については、車種により一部機器を省いていることからその装置の仮設が必要となることがある(後述)。
ATC-DC、ATC-DO-Nextとの相違点
ATC-DC、ATC-DO-Nextをベースに開発されたため、基本的な性能はATC-DCとなんら変化は無い。しかし、特別に追加搭載された機能があるため、その相違点のみ、ここに記述する。
1.運転モードの変更
ATC-DCには運転モードが搭載されているが、荻鉄の運行上そぐわないものがいくつかある。そのため荻鉄に併せて改良を行っている。
- FBMモードの変更
- 日常的にATC路線とATS路線の相互乗入れがあるため、バックアップの色合いが強かったFBMモードを変更、ATSモードとしている。
- なお切替忘れを防ぐために地上子を設け、自動切替を可能としている。しかし、荻鉄グループでは確認の意味合いも込めて、手動で切り替えることを推奨・励行しており、地上子はバックアップとしての意味合いを持っている。ただし、ATS→ATCは走行中に自動切替される設定になっており、切替を行うのはATC→ATSの時のみとなっている。
- EB発報時間の短縮
- ATC-DCでは自動運転に切り替わるまでの時間が180秒であったが、ATC-OGでは1/3の60秒に設定されている。また、絶対停止機能としておりどちらかと言えば単独のEB装置に近くなっている。これは拡張コードを使用しているため、ATC-OG路線以外では通常のATC-DC同等の機能となっている。
2.閉塞方式の変更(過去)
ATC-DO-Nextでは固定閉塞方式を採用していたが、運行間隔を詰めるため移動閉塞方式を採用していた。しかしながら線内貨物列車の本数が多く、またそれに伴う私有貨車の車両数や車種も多いため(所有者が機器の追加搭載によるランニングコストの上昇を嫌ったためとも言われている。また、長物車など、構造上搭載の難しい車種もあり、線路閉鎖が必要となってしまうケースもあった)、荻鉄電車の現状にそぐわないとして戻されることとなった。現在では、ATC-DCのレベル2に相当する性能となっている。
3.ATO・ATS装置の分割
ATO装置およびATS装置を内包しているATC-DC系ではあるが、荻鉄線内でのATC装置故障時にすべての機能が使用不可となったケースがあった(
※1)。冗長化を図るために装置を敢えて分割、別個のシステムとしている。
4.現示の固定化
1km/h刻みであったATC-DCではあるが、アナログ機器の多い荻鉄車にはそぐわないため、おおよそ10km/h刻みとなっている。ただし、220系以降の新型車、または2013年以降の改造/更新車では1km/h刻みでの表示が可能となっている。そのため、トランスポンダを利用した制御を行っており、細やかな制御を行うことで乗り心地の改善を実施している。
線区による発展型
ATC-OG-F:貨物運用のある路線に、併設して設置されている(車上装置および電文の組み合わせで)もの。自動空気ブレーキ車用に制御方式を切り替えている。ただし、自動緩解ができないため、運転士による緩解が必要となる。
そのため現示に工夫が施されており、75Y、45Y、25Y(それぞれ各速度の予告)を現示することで、運転士によって減速を行う。なお、一定時間内に減速されなかった場合は常用最大にて停車させる。
なおATC-DFとの違いはいくつかある。
まず、固定閉塞を使用していることから機器構成上、最後尾車両への末尾装置搭載が不要となっている。ある意味で簡素化ということではあるが、荻鉄・愛浜臨海鉄道に所属する私有貨車が多岐にわたることと、長物車など構造上難しい(ただし小型装置の開発によってこの問題は解消されつつある)貨車が存在すること、そして、車両のコスト上昇、および搭載機器増加による整備コスト上昇を嫌った車主の存在という三面から地上側で対応することとした。ただし、ER直通列車については相手側に併せる必要があるため、境界となる駅や近隣の貨物ターミナルにて装置を搭載、あるいは直通対応の貨車を末尾とすることで対応している(ただし、車扱貨物の多くが荻鉄線内完結であり、混結される場合であっても対応しているコンテナ車を末尾にする等として対応している)。
また、Y現示という特徴的なものが存在する。上掲している通りではあるが、自動空気ブレーキ車である貨車(および客車)牽引の機関車列車は自動での緩解が難しく(電気機関車以外にもディーゼル機関車も走行する)、またブレーキの反応も電車・気動車列車と比べ良くないことから予告現示を行い、運転士の操作により減速する方式をとっている。これは拡張電文を使用することで現示を実現しており、信号と車上装置の組み合わせによって表示可能としている。ただし、機関車であっても単機走行時に電磁直通ブレーキや電気指令ブレーキなどの応答性の早いブレーキを搭載している車両が単独で走行する場合は、設定を切り替えることにより通常の現示で走行することが可能となっている。
関連項目
注釈
※1:愛浜臨海鉄道文原線ATS故障事故。2012年7月16日、愛浜臨海鉄道文原線榊山駅を出発しようとしていた文原発西坂車庫行2000形2004F(荻鉄西坂車庫所属、運用の都合上文原線・愛浜みなと線・愛浜市内線を直通運行。列車は愛浜港行の1604Mであったが、愛浜港到着後1623Mとして西坂車庫行となる予定だった)のATS装置(ATC-DO-δ装置)が突如ATCモードに切替わり03信号を現示、発車不可能となってしまった。ATCからATSに切替えようとしたが切替わらず、1604M列車は榊山駅で運転を打ち切り、また事故の影響で上下線5本が運休となった。原因はATC装置内の逆配線。2012年6月の検査時に予備のATC装置に交換した(当時ATS区間のみであった軌道線車輛に搭載するのはATS装置のみでよいが、部品共通化のため2000形をはじめとする連接車は鉄道線と同型のATC装置を搭載していた)際、逆配線のあった当該装置と載せ替えてしまったため、今回の事故が発生した。国土交通省はこれを重大インシデントと判断、荻鉄や部品メーカに対し再発防止を求めた。
編集履歴ノート
- 項目追加。 -- 亀山茂則 (2009-03-13 21:22:08)
最終更新:2016年01月19日 21:53