愛される温かさ、愛する嬉しさ

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mioazu

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―キーンコーンカーンコーン。

「はあ・・・」

現在、6時間目の授業開始のチャイムが鳴り響いた所。

だというのに、自分は今こうして保健室の窓際にあるベッドで横になっているのは何ともいかがなものか。

「まあ、仕方ないといえば仕方ないし自業自得といえば自業自得だけど」

事は先程の5時間目の体育のバスケットの最中。
ジャンプシュートを放った時に着地がまずかったのか、片足を捻ってしまった。

最初はちょっと鈍い痛みぐらいだったので気にしないようにしてたが、授業が終わる頃には痛くてまともに歩くのも辛い状態になってしまい、律に肩を貸してもらう形で保健室にやってきた。

しかし、今日に限って保健の先生が出払っており治療としてはただテーピングでガチガチに固めただけ――先生がいないのに勝手に使っていいのかと思ったが、律が「ちょっとぐらい構わないだろ」と強引に拝借してきた――の大雑把なものだった。

そうして教室に戻ろうとすると、

「全く、そんな状態で授業に出る気か?事情はこっちで話しとくから休んでろって」

と律に言われ、こうして今現在、誰もいない保健室で軽いため息をしつつベッドで横になっている状態だ。

「ま、文字通り骨休みって所かな・・・」

とその時、静かに保健室の入口が開く音と共に聞き間違いようのない声が。

「澪先輩?」
「その声・・・梓か?」




とたとたと足音が近づき、閉まっているカーテンからそっと顔を覗かせたのは紛れも無く梓だった。

「澪先輩っ、大丈夫ですか!?保健室に運ばれたって聞いたので」
「あ、ああ、ちょっと足を捻っただけでそんなたいしたことはないよ・・・って」

最愛の後輩がわざわざ見舞いに来てくれたのは嬉しいが、

「今は6時間目の真っ最中だぞ?心配して来てくれるのは嬉しいけど、授業をさぼってまでくるのは感心しないな」
「うちのクラス、今の時間自習なんです。だからこうして」
「む・・・そうなのか」

となるとすぐ教室に戻らせるのも何だと思い、まあそこにでも座ってとベッドの横にある椅子に座らせる。

「体育で澪先輩が怪我をして保健室に運ばれたって聞いた時は心臓が潰れそうになりましたよ・・・」
「おいおい、大袈裟だよ」
「だって、もし先輩が大怪我をしてたらと考えると心配でたまらなかったんです。だから」

そこまで言うと私の手を両手で取り、

「澪先輩が無事で本当によかったです・・・」

心からの、安堵の表情を浮かべていた。

「梓・・・」

何だかその様子が、ただひたすら愛おしく感じて。
私はそっと、梓の長い髪にもう片方の手を伸ばしていた。

「え・・・先輩?」
「梓、こっち」

髪に触れた手を肩に下ろし、そのままぐいっと抱き寄せる。




「!?あっ、あの、先輩?」
「ごめんな・・・心配させて。
でも本当に大丈夫だからさ、安心して」

そっと梓の頭を撫でてあげながら、優しく抱きしめる。
抗いなどはなく、すぐに柔らかくもたれ掛かってきてくれた。

「ごめん、苦しいかな?」
「い、いえ、何だか安心してしまって・・・」
「そっか、よかった」

腕の中にいる梓を覗くと、すっかり頬を紅くしている。

「梓」
「せんぱ・・・んっ」

顔を近づけ、そっと梓の頭と背中を抱き抱えながら唇を重ねる。
少しの間、唇を通して梓の優しさを感じていた。

そうして唇が離れると、お互い何をするでもなくベッドに横になる。

「先輩」
「ん、なんだ?」
「もうしばらくこのままでいても・・・いいですか?」

私の背にそっと腕を回しながら、そう尋ねてくる。

「ああ、この時間は誰も来ないだろうし梓が望むならいくらでも・・・」

横になりながらも梓をぎゅっと腕の中に抱きしめ、その身体の柔らかさや細さを感じながら答えた。

「ありがとうございます・・・澪先輩」

それきり会話が途切れ、少しすると梓はかすかな寝息をたてて眠ってしまった。

背には太陽。黄色に染まり始めた室内には暖かな陽射しが差し込む。
そしてすぐ横にいる梓の柔らかな感触と温もりに次第に私もウトウトしてくる。

そんな中で。
梓と二人でいると気恥ずかしさより嬉しさの方がいつも勝ってしまうな、と考えながら私はしばしの眠りに落ちていった――

「みおせんぱい・・・むにゃ」
「あずさ・・・すー」

(FIN)
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