澪梓wiki内検索 / 「甘くて幸せな時間を共に」で検索した結果

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  • 甘くて幸せな時間を共に
    「もう来てるかな……あっ」  学校が終わり家の近くにある公園までやってくると、その一角にあるベンチで私の先輩にして……私の恋人が既に待っていた。  まるで黒曜石でも溶かし込んだような艶やかで綺麗な黒い髪をたゆたわせ、暇を潰すかのように携帯を適当に操作していたが、私がやって来たことに気付くと携帯を懐にしまいこちらに顔を向け、柔らかく微笑んでくれた。 「おかえり、梓」 「す、すいません澪先輩、待たせちゃいましたか?」 「ううん、今来たところさ」  以前よりも心なしか華麗さを感じるようになった澪先輩の瞳に見つめられ、何だか意味もなくどきどきしてしまう。 「じゃ、行こっか?」 「はいっ」  澪先輩はベンチから立ち上がると、そっと私の手を取ってくれて。  そのまま私達は一緒に歩きだした。  ――今日は2月14日、今年もまたバレンタインデ...
  • ss6
    ...txt35 126 甘くて幸せな時間を共に 避難所に投下されたもの。txt36 127 お引っ越し! 避難所に投下されたもの。 一つ前のページにもどる
  • 幸せの在り処
     鼻に届く甘い香り、肌に感じるあたたかな体温と柔らかな感触。  耳に聞こえるのは自分の鼓動と……そして澪先輩の鼓動。 「ん? どうかした?」  布団の中でひょこっと顔を上げると枕元にある小さいスタンドの明かりが、それこそ目と鼻の距離にあるお互いの顔をぼんやりと照らしだす。 「眠くなった? そろそろ寝よっか?」 「あ、いえ、あの……」  目の前で優しくたずねてくる先輩の笑顔はスタンドの明かりよりも眩しく見えて、私の鼓動が少しばかり早くなる。  ――今日は二連休の最初の休みで、澪先輩とデートをして……お互いにすっごく楽しかった。  夜は両親が二人とも泊まりがけの仕事でいないので、デートの終わり際に「よ、よかったら、私の家に来ませんか」と先輩にドキドキしながら誘った所、快くOKしてくれて。  家に帰ってきてからは一緒に居間でまったりと音楽を聞...
  • 茜色の触れ合い
     ――西に大きく傾いた太陽の夕日が室内を照らしている。  今は茜色に染まっている外もあと一時間もすれば真っ暗になる代わりに、空にはまばゆい星の海が見えるだろう。 「ん……」 「ん……んん……」  茜色に染まる家の自室が少しずつ暗くなりはじめようとする中、私は澪先輩とベッドに座った状態で唇を重ね合い、先輩とのキスにひたっている。  先輩とのキスはとっても甘くて、長くしていたらとろけちゃいそうなぐらい。  静かに唇が離れると当時にゆっくりと目を開くと、先輩は頬を赤く染めながらも柔らかな笑みで私を見つめる。  私もきっと先輩と同じように、頬を赤く染めているって思う。 「……くすっ」 「ん、どうした?」  はにかみながら笑みをこぼす私に、先輩が耳元で優しくたずねる。 「もう何回目でしょうね、こうして澪先輩とキスするの」 「んー、何回...
  • 欲情!
    「澪先輩っ、次はどこに行きます?」 「んー、どこに行こうか?」  休日のある日、今日は久しぶりに梓と会って現在、デートを満喫中。  デートとはいえこれといって行く場所は決めておらず、行き当たりばったりに街を散策しているだけなんだけどな。  ――私が大学に入ってからは月に一、二回程度しか梓に会えないものの、その分こうして梓と一緒にいられる時間がとても貴重で価値のあるものに思える。  行き当たりばったりな今日のデートも正直、こうして梓と一緒にいられるだけで嬉しくて楽しくて、そのためか行く先は特に決めていなかったのだった。 「私は梓と一緒ならどこだって構わないぞ?」 「もー、澪先輩ったら今日そればっかりじゃないですかー」  けど梓も私と同じような感じで、一緒に適当に街をうろついているだけでも……すごく嬉しそうで。  それに連られて、私もまた更に嬉しくなっ...
  • 聖夜の幸せ
    「じゃ、乾杯」 「乾杯です、澪先輩」 12月24日・・・今日、この日はクリスマスイブ。 私は最愛の後輩であり、恋人である梓を家に呼び二人きりでささやかなパーティーを開いていた。 クリスマスだからといって恋人と過ごす道理は無いけど、それでも。 「ごめんな、なんだかクリスマスって感じが余りしないかもしれないけど・・・」 テーブルにこそ、それなりの食事を用意はしているが部屋には特にこれといった飾り付けなどしておらず、部屋の片隅に申し訳程度に小型のクリスマスツリーが置かれてあるぐらいだ。 「そんな事ないですよ、飾り付けすればいいってものじゃないですしそれに・・・」 「それに?」 「こういった、おしとやかな方が私達らしくてなんかいいなって思います」 確かにお互い、装飾華美が好きというわけではないのでそういった意味ではこれはこれで良かったのかな。...
  • 真冬の声が聴きたくて
    自然のささやきは、とても小さく控え目である。 だからこそ常に心を研ぎ澄ませ耳を傾けていなければならない。     ◇  ◆  ◇ 真冬の声を聴いてみたかった。 休みの日の早朝に自転車でこの公園にやってくるのが、いつの間にか私の日課になっていた。 なにより空気が澄んでいて、しかもめったに人に出会うこともない。 自然の音にそっと耳を傾けるには絶好の時間帯だ。 人気のない公園の入り口に自転車を置き、きちんと鍵をかけてることを確認してから、なるべく足音を殺して手近なベンチにそろそろと歩み寄る。 使い捨てカイロを2個、左右のジーパンのポケットに押し込んでから、さらに途中で買ったホットココアのプルタブを引き、ゴクリと一口。 焼けるような感触が舌や喉の奥にまで広がり、寒さと眠気が一気に吹き飛ばされていくのを感じる。 ここまで走ってきた道路は薄明の光によっ...
  • ファーストキス
     ――あたたかく、柔らかな光が降り注ぐ白い世界で、一人の小さな少女を抱きしめている。  ぴったり重なっているお互いの体はまるで磁石が引き合っているかのように強く離れがたいものを感じ、私はずっと彼女を自分の手元に置いておくかのように、ぎゅっと腕の中に収めていた。  ふと、腕の中の少女がわずかに身じろぎして私を見上げる。  ――ごめん、苦しい?  私の問いに少女は小さく首を振り、にこっと微笑む。私も微笑み返す。  と、腕の中の少女が目を閉じて、ほんの少しだけ唇を突き出した。  キスしやすそうな、可愛い形をした唇が私の目の前にある。  いいのかな、と思いながらも私は目の前の唇の感触を味わいたくて、そっと唇を近づけ――  ジリリリリリ………! 「………はっ!!」  けたたましい目覚まし時計の目覚まし音で、はっと目が覚め...
  • 小ネタ 無題44
    澪「ここなら視聴者も読者も誰も見てないな」ギュッ 梓「もう、澪先輩ったら……」ギュッ 澪「梓の身体、あたたかくて柔らかいな……」 梓「そんな、澪先輩のほうがずっとあったかくって柔らかいです」ムニュ 澪「こーら、どこに顔をうずめながら言ってるんだ?」ツン 梓「だ、だってぇ……」 澪「まったく……でも、こうして梓を抱きしめてると凄く幸せな気分だ……」 梓「私も澪先輩に抱きしめられていると凄く幸せです……」 澪「梓」 梓「澪せんぱ……んっ」チュッ 澪「大好きだよ、梓」ギュッ 梓「大好きです、澪先輩」ギュッ
  • 小ネタ 無題40
     朝4時。新聞配達でかけずり回るカブのエンジン音が、夜闇に響く。そんな時間帯。  昼夜逆転廃人どもが寝ようかと思い始めているだろう時間に、彼女は目を覚ました。 「………」  のっそりと身体を起こし、無言で携帯を開き、時間を確認する。  もちろん目覚まし時計は使っていない。使ったら親にバレるからだ。  布団から少々身体を出した少女は、朝の冷え込みに身体を震わせた。一回布団に戻ろうとする仕草を見せたが、勇気を出して布団から抜け出し、準備を始める。  本当は、朝ご飯を食べたり、シャワーを浴びたかったり、髪をしっかり梳いたりといろいろと遣りたいことはあるけれども、今日は必ず成し遂げなければならないミッションがある。  普段着――といっても、かなりの防寒装備を施す――に着替える。  タイツを二重に穿き、ジャージを穿き、ウィンドブレーカーを穿いた。正直、ダサいと彼女も...
  • 小ネタ 無題42
     とある人に勧められて借りた恋愛(?)マンガ。  課題も終わったし、寝るまでちょっと余裕があるから読んで見たんだけど――。  なんか読みふけっちゃって寝る時間をいつもより1時間ぐらいすぎていた。  今読んでる4巻まで読み終わったら寝よう! と決めてまた読み始めた。  ページをめくって、びっくりする台詞が目に飛び込んできた。  『ぶっちゃけ、その相手とやりたい?』  真っ赤になってマンガを閉じた。  私は――。   :   :   :  あーもう、寝よう寝よう!  ベッドに入り、寝ようと目を閉じた。  だけど、さっきの台詞が忘れられない。    流れるような、艶やかな黒髪。    小動物のように愛くるしい瞳。    小さくも桃のように甘く、みずみずしい唇。    私の腕の中にすっぽりと収まる感触。 「――!」...
  • 笑顔と共に
    「まったく……あいつのせいかな、調子がよくないのは……」 私はぶつぶつ言いながら制服に着替え、学校への支度を確認する。 いつも通りの平日の朝……なのだが、今日の朝はどうにもいつになく身体がだるかった。 ――多分、その原因は昨日の夜。 明日の準備を済ませて寝ようとしていた所、律から急に携帯に電話が掛かってきて何やら弟の聡と久々に格闘ゲームで対戦した所、こてんこてんにやられたって事で長々と愚痴を聞かされたのだ。 「(それでさあ、遠距離からチマチマと一方的に牽制してきてさ……こっちの使ってるキャラは遠距離戦は何も出来ないってのに) 「(はあ……)」 「(んで、そっから容赦なくコンボに持ち込んでくるんだから。全く、少しは姉を敬えってーのっ!)」 「(そ、そうか……)」 寝る直前にそんな事があったおかげか、どうにも昨日は寝付けなかったのだった。 ...
  • 永遠の輝き、永遠の想い
     ――チュンチュン、チチチ……。 「ん……朝、か」  外から聞こえる小鳥のさえずり、そしてカーテンの隙間からもれる朝の陽射しで目が覚めた。  日はまだ昇ったばかりみたいで、外はまだほんの少し薄暗い。  ――と、 「……む?」  体を起こそうとしたところ、何だかやけに身体がスースーしている妙な感じに加え自分以外に温かくて柔らかな感触がすぐ傍にあるような。  横に目をやると、 「うーん……むにゃ……」 「……あ」  梓が、私の傍らでわずかに背を丸めて幸せそうに眠っている。  おまけにお互い何も着ておらず、生まれた時のままの姿だった。  ――そうだ、そうだった。  昨日は一緒にお風呂に入って――お風呂に入ってる時もイチャイチャしたんだけど――上がってからそのまま一緒に布団に潜り込んで抱き合って……。 「...
  • 甘い口元、あたたかな心
    「うーん……やっぱり今は共通の分を渡すだけにしといた方がいいよね……」  放課後を迎え部室に向かう最中、私はどのようにチョコを渡そうか考えを巡らせていた。  ――バレンタインデーである今日この日、私は日頃お世話になってる意味も兼ねて、先輩達にチョコを作ってきた。  そしてそれとは別に、恋人である澪先輩に渡す、いわゆる本命チョコももちろん作ってきた。  ただ他の先輩達がいる前で渡すわけにもいかないし、やっぱり帰る際に二人きりになった時に渡すのが無難だよね。  他の先輩達に見られたら、どういう感じにからかわれるか分かったものじゃないし……。  そう考えをまとめた所で、部室に入る。 「こんにちはー……って、あれ?」 「あ、おつかれ梓」  室内にはソファに座っている澪先輩だけで、他の先輩達の姿は見当たらない。 「澪先輩、唯先輩達は?」 ...
  • いけない夢
    現在、時刻は夜12時を過ぎた所。 ムスタングの手入れをしてたらすっかり寝るのが遅くなっちゃった・・・そろそろ布団に入って寝よう、と思ったとき。 「梓、起きてる?」 「お姉ちゃん?今寝ようかと思ったとこだけど・・・どうしたの?」 お姉ちゃんがテスト前でもないのにこんな時間に起きていて、尚且つ私の部屋を訪ねてくるなんて珍しい。 「澪お姉ちゃん?」 「ああ、いや、そのなんだ・・・」 部屋に入ってきたにも関わらず、黙りこみ何やら頬を赤らめてもじもじしている。 と、何か意を決した様子で口を開くと、 「今夜、一緒に寝てもいいかな・・・?」 「・・・え?」 そんなコトを、口にしていた。 「い、一緒にって、私もうそんな幼い歳じゃ」 「・・・もう、この歳になったんならどういう事か分かってるくせに」 「・・・え、え?」 「意地悪だぞ、梓」...
  • 心の重なり
    「……い、せんぱい」  ――誰かが私を呼んでいる。  私を呼ぶ声に深く眠りに落ちていた意識がゆっくりと、確実に浮上していく。 「ん……うーん……」  重い目蓋を開け、顔を上げると最初に飛び込んできたのは赤い陽射しに染まった教室と、そして日本人形のようにしなやかな長い黒髪―― 「あっ、起きましたか? 澪先輩」 「あずさ……?」  どうして梓が三年の教室にいるのか。  起きぬけの頭ではその答えは出せずにいると、 「もうすぐ下校時間ですよ、先輩」 「え、わわっこんな時間になるまで眠ってたのか!?」  梓の言葉に教室の時計を見ると、もう5時半を過ぎようという所だった。  梓が起こしてくれなければ6時を過ぎても眠っていたかもしれないな……。 「先輩、どうして教室で眠ってなんて?」 「あ、ああ、それは……」  ―...
  • 「あ~ずにゃん!」
    「あ~ずにゃん!」 「うわぁ!やめてください、唯先輩!」 部室の扉を開けて入ってきた梓に、さっそく抱きつく唯・・・私の恋人に、そう簡単に抱きつかないでくれるかな? 私なんて、恥ずかしいやら、なんやらで、抱きつく勇気もないのに・・・ 「澪先輩?」 「えっ?」 「どうしたんですか?元気ないですね・・・」 心配そうな梓の顔。 「ごめん、なんでもないよ」 ニコリといつもの笑顔で、言うと 「・・・わかりました。でも、何かあったなら、何でも言ってくださいね」 不安な顔を残しながら、梓はそう言ってくれた。・・・梓は優しいな、ごめん、本当たいしたことじゃないんだよ。 ただ、君を思い切り抱きしめて、君をもっともっと近くで感じたいだけなんだ・・・・ ◇ 「・・・それで、私に相談してきたと・・・」 なぜだか、律が頭を抱えながら...
  • 愛くるしい笑顔
    「梓、遅いな……どうしたんだろう」  部室を出て階段を下りると、私は少し駆け足で梓がいると思われる二年生の教室を目指す。  いつものように放課後を迎え、いつものようにみんなとティータイムを過ごしていたが、今日は時間が経ってもなかなか梓が部室にやってこない。  何かしら用事があって休むとしても先に部室に来て断りを入れてから帰るはずなので、こうして顔も見せにこないのはちょっと心配。  だからかこうして、いてもたってもいられず部室を出て、梓を探しにきていたのだった。 「教室にいなかったら携帯にかけてみるとして……さて」  梓のことを考えながら二年生の教室までやってきた所で、中をそっと覗く。  黄色い陽射しに染め上げられた教室は静まり返っていて、人の気配を感じさせない。  他の生徒たちはみんな早々に下校したか、それぞれの部活に行ってしまったようだった。...
  • 澪先輩に相談してみよう
    梓「あっ、澪先輩こんばんは 今お時間大丈夫ですか?」 澪『うん、もちろん 待ってたよ梓』 先輩たちが高校を卒業した後 その寂しさを埋めるかのように毎晩澪先輩に電話することが 私の日課であり一番楽しみな時間になっていた 澪『梓も明日からいよいよ高校三年生か~』 梓「ふふっ 澪先輩そんなしみじみした言い方してるとお婆ちゃんみたいですよ」 澪『むむっ‥ うら若き乙女を捕まえてそういうこと言うかーこの後輩は』 梓「えへへっ ごめんなさ~い」 澪『はははっ 冗談は置いといて軽音部の方はどう? とりあえず4人そ 梓「もちろん軽音部の部長として皆を引っ張っていけるよう頑張りますよ!」 澪『うおっ‥! う、うん 梓がそれだけ元気なら心配ないかな』 梓「任せてください! うふふん♪ それに私にはちょっとした秘策があるんです」...
  • 部活後の逢い引き
    「静かだな……」  ――窓の外では、夕焼けに染まった空が次第に暮れはじめている。  すでに部活は終わり誰もいない部室で、私は一人の女の子が戻ってくるのを待っていた。  と、部室の外からトットットッ……と誰かが階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきて。  その駆け上がる足音で誰がやってきたのか、私にはもう既に分かってしまっていた。 「お待たせしました、澪先輩」 「ふふっ、そんなに待ってないよ」  ドアが開き、荒い息遣いで部室に戻ってきた梓に私はふっと微笑む。  梓のことだから、私をあまり待たせないように急いできたんだろうな。 「唯先輩達には、宿題に使う教科書を教室に忘れたって言ってきました」 「ん、私は学校帰りにそのまま両親と外食に行くって言って別れてきたから、これで怪しまれることはないな」 「お互い行き先は別の場所なので、大丈夫です...
  • 補給!
    「んまいっ!」 「まったくだ、授業終わりに飲むムギのお茶はやっぱ最高だぜ!」 「うふふ、ありがとう」  今日もまたいつも通りの放課後を迎え、部室にてムギ先輩のいれてくれたお茶をありがたく頂いている。  確かに律先輩の言うように、授業を終えた後こうしてムギ先輩のお茶を飲むと少し疲れた体にしみ渡ってより美味しく感じる気がするな。 「今日のもまた香りがすごく良いな、このバラの香りが鼻に抜けていくのが爽やかで……」 「味も甘味や酸味、渋味とすべての釣り合いが絶妙です」 「そして飲んだあとの後味がさわやかで甘くて、いつまでも香りが口から鼻に抜けて気持ちが浮き立つような感じになるよ」  実際、今日のムギ先輩のいれてくれたお茶もまたすごく美味しくて。  澪先輩と一緒にちょっとした味の感想を……って言っても大半は私ではなく澪先輩が言っちゃっているけどね。 「まあ...
  • 澪「よし! 梓の等身大布ポスターを抱き枕に縫いつけ終わったぞ!」
    澪「よし! 梓の等身大布ポスターを抱き枕に縫いつけ終わったぞ!」 澪「興奮して手元が狂っちゃったせいでちょっと歪んだり、我慢できず途中で使ってシミ付けちゃったけど」 澪「とにかく完成したぞ。この為にBD2枚買ったんだからな」 澪「私だけの抱き枕。私だけの……梓///」 澪「」ジー 澪「ああああ梓が私を見つめてるよぉおおおおおおおお////」 澪「どうしよう興奮してきた」 澪「だ、抱きしめちゃおうかな/// そのための抱き枕だもんな」 澪「」ギュー 澪「ああああああ梓可愛いよおおおおおおおおおおおお」 澪「ふふふ、梓は可愛いな」ツンツン 澪「何時間眺めてても飽きないよ///」 澪「何で梓はこんなに可愛いんだろう」 澪「梓、愛してるよ////」 澪(裏...
  • バレンタイン・ストーム ~その3 可能行動~
        ◇  ◆  ◇  定期試験直前といった特別の理由でもない限り、放課後になると私たち軽音部の部員は誰からともなく部室へと集まってくる。もちろんそれは今日も例外じゃない。バレンタインデーに女子ばかりで集まっているというのがちょっと悲しいが、裏を返せば今年も抜け駆けした子がいないという意味でもあるから、まったく悪いことばかりとは言えない。  私が部室に顔を出したときには、すでに他の二年生部員が全員そろっていた。つまりリードギター担当の平沢唯とキーボード担当の琴吹紬、そして我が不肖の幼なじみにしてパワーに溢れすぎなオデコのドラマー、部長の田井中律である。するとそれまで唯とバカ話で盛り上がっていた律が、急に私の方を振り返った。 「澪。なんか今、ものすごく失礼なこと考えてただろ」 「……別に」  平静を装いながらも内心で舌を巻く。ほんと、こういうところだけは鋭...
  • 想いはいつも傍に
    「さてと……部屋の整理も終えたし、明日に備えて寝るかな」  ――卒業式を迎え、高校生活に終わりをつげてから数日後。  私は大学生活に向けて今日この日、一人暮らしするアパートの方に部屋の大半の物を移動させた。  そして明日からは早い内に新しい生活に慣れるため家を離れ、アパートでの一人暮らしに移る予定だ。 「しばらくは自分の部屋ともお別れだな」  部屋を見渡してみると随分すっきりとして、こんなに自分の部屋って広かったかな? と思わず感じてしまったり。  とはいえ、長期の休みになったら家に戻ってくるつもりなので机や布団はそのまま家に置いておくことにした。 「と、寝る前に歯を磨いておかないと」  淡い感傷を思いながら部屋を出て、洗面所に向かうと梓がいた。 「あ、お姉ちゃん」 「歯磨きに来たんだけど、梓が使ってたとこかな?」 「う、うん...
  • 純「ねえ、梓」
    純「ねえ、梓」 梓「何?」 純「今度澪先輩と買い物に行きたいと思っててさ~」 梓「どうして急に?」 純「ほら、もうすぐ先輩達卒業しちゃうじゃん」 梓「そうだね」 純「だから卒業までに澪先輩と一緒に甘いひと時をすごしたいと思って・・・」 梓「甘いひと時って・・・」 純「ほら!私、澪先輩に憧れてるじゃん。だから一回くらいは澪先輩と・・・その・・・」 梓「わかったわ。澪先輩に伝えとく」 純「本当!」 梓「ただし、私も一緒に行くからね」 純「えぇ~何で~」 梓「あたりまえでしょ。澪先輩と絡んだことあるの?」 純「そりゃあんまりないけど・・・」 梓「だろうね。澪先輩は人見知りなんだから、私も同行します」 純「うぅ・・・わかったよ」 そりゃ、私だって澪先輩と買い物と...
  • 朝焼けの光
    「んん……むにゃ……ん……?」  ぎゅっと抱きしめていた感触がいつの間にか無くなっていて、朝を迎えたのかなとまどろみの中で無意識に思って重いまぶたをゆっくりと開く。  しかしまだ室内はぼんやりと薄暗くて、夜が明けはじめてはいるみたいだけど太陽はまだ顔を見せていない……そんな時間帯のようだった。  そんな中に、 「きれいな髪……」  ――窓際に佇む、黒く艶やかな黒髪。  ――同じ女性の私から見ても美しいって感じる横顔。  寝ぼけまなこな今の私でも、自然と目が釘付けになる。 「あ、ごめん起こしちゃったか?」  私の視線を感じたのか、澪先輩がこちらを向く。 「どうしたんですかぁ……こんな朝早くからぁ……あっ」  むくりとベッドから起きて窓際にいる先輩に近寄ろうとした所、足がもつれて転びそうになる。  しかし、 ...
  • 梅雨のお昼休み
     朝方はぽつぽつと降っていた雨が今現在、ざあざあという音に変わり本降りになっている。  この調子だと今日は一日中、雨が降り続けそうな感じかな……ま、それはいったん置いておこう。 「じゃ、いただきます」 「いただきます」  お昼休みを迎え、私は今日部室で梓と二人で昼食を共にしていた。  本当なら昼は屋上で一緒に食べようとしていたのだが今日はあいにくの雨で、それが朝から今に至るまで降り続いていて。  それで今日は部室の方で一緒に食べることにしたのだった。 「雨が降ってなければ、屋上で食べれたんですけど……」 「んー、けどしょうがないよ、今は梅雨だしさ。 それに部室で食べるっていうのも悪くないよ」  普段、放課後にみんなと騒いで楽しむ空気も好きだけど、こうして梓と昼に部室で二人きりというのはとても貴重な感じ。  これはこれで、なんだか良いな...
  • 二人の時間
     ダムが決壊して水が押し寄せるように、いろいろなことを喋った。  他の人たちにとって些細なことも、梓と私にとっては一つ一つ大切なコト。  まだまだ話したかったけど――時計をみたら日が変わろうとしていた。  徹夜は良くない。健康にも、美容にも、ね。 「もう十二時回るし、寝よっか」 「あ、そうですね。寝ましょう」  二人で一階に下りて、洗面所に。 「はい、歯ブラシ」 「あ、ありがとうございます」  梓にお客様用の歯ブラシとコップを渡して、自分の歯ブラシを手に取る。  二人で歯を磨いている姿は本当に姉妹みたいで。中学入ったばっかりの私にそっくり。  妙な恥ずかしさを感じながら歯磨きを続けた。  :  :  :  部屋に戻って。 「じゃあ寝ようか。先に布団入ってて。電気消すから」 「はい!」  満面の笑みと返事を返してくれた。  梓が布...
  • 「止めて下さい」
    「止めて下さい」  梓は唐突ともいえるタイミングで、澪の話を遮った。 「ん?いきなりどうしたんだ?」  普段と変わらぬ話しか澪はしていないが、 常日頃から梓はその話題が気に入らなかった。 「律先輩の話は、止めて下さい」  澪の展開する話題は、その殆どが律で占められている。 澪に対して好意を抱く梓は、 恋の宿敵と目している存在を嬉々と語る事に不満を抱いていた。 「何で?」  長い脚を組んで椅子に座る澪は、 意地の悪い笑みを浮かべて問いかけてきた。 梓のこれ見よがしな好意を、澪が気付いていないはずがない。 否、気付いているからこそ、澪の顔には意地悪い笑みが張り付いているのだ。 「いつも言ってるじゃないですか、私は澪先輩の事が好きだって。 なのに何で、他の女の話をするんですかっ? 今は私だけに集中して下さい。 二人っきりの時は、私だけの澪先輩で居て下さい」  ...
  • 暖かさと温もりと
    放課後を迎え、教室を出ると私は足早に部室に向かう。 最近は急に気温が下がったこともあるけど、今日はまた天気予報で言ってた予想気温より更に下回っていると思われるような寒さ。もう廊下にいるだけで震えてきてしまう程。 こんなに早く行ってもまだ先輩達も来てないだろうし部室も暖かいわけじゃないけど先に来て部室の暖房を入れる事ぐらいは出来るかな、と思いながら部室に入る。 と、 「梓?今日はまた早いな」 「澪先輩!?」 澪先輩だけが先に来ていたようで、少し驚いてしまった。 「澪先輩一人だけですか?他の皆さんは・・・」 「ああ、それが・・・」 澪先輩は何やらため息混じりで話し始める。 「今日はまた一段と寒くなったからさ、なんか部室にすぐ行って暖房を入れても部室全体に行き渡るまでが寒いよ~って唯が言い出して・・・」 「はあ」 「で、なんか律の提案で...
  • ネコネコ子ネコ!(前編)
    「ネコ……?」 「うん、またで悪いんだけど預かってくれない? 週末の土日、家族と出かけるもんでさ」  授業が終わって放課後になり、部活に向かうとしていた梓を、純が引き留めた。  要約すると、祖父の実家に行くらしい。  梓は、ちょっとだけ考えた。週末は特になかったはず。今週末は親がライブだかなんだかでいない日だし。 「まあ、特に予定はないからいいよ」 「ありがと! じゃあ土曜日連れて行くから!」  というやいなや、ばたばたと教室を出て行ってしまった。 「ネコ……ね」  初めて子ネコを預かったときは、不安で仕方なかった。  何せ、初めて動物と一緒の時間を過ごしたのだ。  最初はふれ合うことも怖かったが、子ネコも気を許してくれたし、ふれ合うのも楽しかったし。  荷物をまとめ、ムスタングを肩に掛けて教室をでる。  久しぶりの再会。 (楽しみだなぁ...
  • Cold Turkey
    「梓と付き合ってるのか?」  寄りかかっていた澪から離れて、律はそう問いかけた。 問いに肯定を返すように澪の頬が赤く染まったが、 口から否定の言葉が放たれた。 「いや、違」 「違わないですっ。付き合ってます」  否定の言葉は梓に遮られた。 律は梓の返事を答えとして採用する。 「そっか。やっぱ、二人付き合ってたんだな」 「……よく分かったな」  澪は観念したように溜息を吐いた。 「最近さ、お前と仲良くする度に梓の鋭い視線を感じて。 さっき寄りかかってた時も、結構キツい感じの目で睨まれたし。 それがあからさまだったからさ、梓が勝手に澪好いてるんじゃなくって、 堂々と嫉妬しても許される関係になってるんじゃないかって思った」  律は深呼吸した後、意を決したように言葉を続ける。 「本当に付き合ってるなら、もう澪に抱きついたりしないよ。 二人っきりで帰るのも止めにする...
  • 蒼空に駆ける決意
    ギィー、という建て付けの悪い音と共に屋上の扉を開けて外に出る。 昼休みを迎え、今日この日は昼食もそこそこにして私は学校の屋上にやってきていた。 「やっぱり寒いな……」 春先や夏場なら他の生徒たちで賑わう屋上だが、今の冬の寒さの前には閑古鳥が鳴くのも仕方ない所だ。 そんな屋上で冷たい寒気の中にいる自分はなんとも変わり者というか、おかしな奴というか。 軽い自嘲を考えながら風の当たらない物陰のほうに移動して、さっと座る所を軽くはたいて腰を下ろす。 ――と、その時。 ギィー、と入り口の方で自分の入ってきた時と同じように建て付けの悪い扉の開く音が。 私以外でいったい誰が?と思ったが、 「澪先輩? いるんですか?」 声を聞いて誰が屋上にやってきたのか、考えるまでもなく私には分かった。 「梓? 私ならこっちの方にいるよ」 ...
  • 興奮しすぎて眠れない。
    ………… 興奮しすぎて眠れない。 だって憧れのロンドンに来てるんだ。無理もない。 同室の律とムギは…… 律「グゴー、グゴー」 紬「スースー」 二人ともぐっすり寝ているようだ。 昼間はしゃいでたからな。 ちょっと気分を落ち着けるため、ホテル内でも散歩してくるか。 上着を羽織り、廊下に出る。 辺りは賑わっていた昼間とは違い静かだ。 静かな廊下を歩いて行く。 外が見渡せる大きな窓がある場所に出た。 ベンチもあるし、丁度良い。 澪「綺麗な夜景だな」 ベンチに腰掛け、一人そんな事を呟く。 澪「!」 ふいに気配を感じ、慌てる。 お化け?まさかな。 きっとあれだ、ホテルの従業員が見回りに来たんだ。 自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと振り向く。 ...
  • 妹のような恋人
    「ふう……ふう……」  息を切らせながら、ぱたりと布団に倒れる。  体全体には汗が滲み、額には汗のせいで前髪が少し張り付いている。  けど、それは私だけではなくて―― 「はぁ……はぁ……」  腕の中に抱きしめている梓も同じような様子だ。  少し強く抱きしめすぎたか、梓は私の体に顔をうずめたまま僅かに身じろぎする。 「梓、大丈夫?」 「あ……はい……大丈夫です」 「ごめん、ちょっと無理させちゃったかな」  いくら梓が可愛いからって、愛しすぎて逆に負担をかけてしまっていてはどうしようもない。  だがしかし、 「いえっ、最初に好きにしていいですって言ったのは私ですし……それに私、嬉しかったです」  にこっと微笑みながら梓がそんなことを言うので、落ち着きはじめていた私の心臓がまたドキドキしてしまう。 「もう、ようやく...
  • その日、ライブを終えた澪は不機嫌そのものだった。
    その日、ライブを終えた澪は不機嫌そのものだった。  澪はずっと深刻な顔のまま黙り込んでいた。 梓が話を振ると一応は返事をするのだが、どう見てもその心は上の空、といったところだ。 そして、澪は突然ベースを片手に飛び出してしまったのだ。 あまりに唐突な澪の行動に、唯達は呆然としている。 「ちょっと私見てきます」  こんな状態の澪は放っておけない。遅れて梓も澪の後を追って部屋を出ていった。 外はもう完全に日が沈んで、外は漆黒の世界だ。 居るとしたら近くの夜間照明が設置されている公園しか無い。 「……あ」  そして、その場所に澪はいた。  駆け足で此処へ向かったのか、既に澪は練習に取り組んでいる。その表情には 鬼気迫るものがあり、いつもの澪とは違う。梓はしばらく物陰から様子を伺う事にした。 「ど...
  • 『私の大切な――』side 澪.
     私は、いま、思い人へ告白をする。 「――の事が好きなんだ」 「ごめんなさい、――のことは好きになれません。……――がそんな人だとは思わなかったです」  私の言の葉は思い人の心を揺り動かす力もなく、無情にも振り払われた。 「では」  私の前から去っていく思い人。 「――待って!!」  私らしくもない大声を上げても――思い人は振り返ることはなかった。  その場に立ち尽くす。  ぽっかりと、私の心に穴が開いた感覚。  足下が無くなり、ただひたすらに墜ちていく感覚。  ――暗転する世界。  ――――  ――目が覚めた。まだ外は薄暗いし、目覚まし時計も鳴ってない。  手探りで携帯を手に取り、携帯を開いた。  ……まぶしい。反射的に目を閉じてしまった。  うっすらと目を開けて、携帯の液晶を見た。  決戦の日。朝の...
  • 誰よりも早く、愛する人に
    「ふぁ・・・もう夜の12時になったし、そろそろ寝ようかな」 そうして私が床に着こうとしていると携帯に着信が。 「メール?誰だろう、こんな時間に・・・え?」 ================== 差出人:秋山澪 件名:誕生日おめでとう! 時刻:11/11 0:01 本文:誕生日おめでとう、梓! ただそれだけなんだけど、誰よりも真っ先に祝いたかったから日付が変わったのと同時にお祝いのメールを送りました。 大好きだよ、梓。 ================== 「え?あ、11/11って私の誕生日・・・!?すっかり忘れてた・・・。  でも・・・なんだか凄く嬉しいな」 自分の誕生日を忘れてたのはちょっと恥ずかしく感じたが、それ以上に大好きな先輩に真っ先に誕生日を祝ってもらえた事が何だか本当に嬉しかった。 そして私はす...
  • 寝言は正直
     プシュー、という音と共にバスの扉が開き、私達はバスに乗り込む。  早めにバス停に来ていたこともあって、ちょうど空いていた一番後ろの席で澪先輩と隣同士に座ることが出来た。 「今日は楽しかったですね、澪先輩」 「ああ、でも今日はって、まだ終わりじゃないだろ?」 「えっ?」 「だってこれから私、梓の家に泊まりに行くんだからさ」 「あっ、そうでしたね、えへへ……」 「うふふっ」  ――今日は朝早くから中心街のほうに澪先輩とデートに出掛け、色んな所を回ってきた。  デパートでショッピングを楽しんだり、昼食は公園にて先輩が作ってきたお弁当を一緒に食べたり、先程までは喫茶店で普段の部活の時とはまた一味違ったまったりとした時間を過ごしたりして……。  そうしてバスが出発して先輩の綺麗な横顔に見とれていると、次第にウトウトとして瞼が重くなってきた。  先...
  • 沖縄から帰って来てから数日
    沖縄から帰って来てから数日 梓「み~お、電話だよ」 あの星空での告白以来変わった事が少しある。  私が澪先輩に対して名前だけで呼ぶ事  私とみお、2人の左手薬指のリング、これ私がみおに頼まれ デパートに取りに行った品物だったのはビックリだった。  一番大事なのが、私こと中野梓から《秋山梓》になりました/// これに至るまでは大事な事なのに、拍子抜けする位ポンポンと話 が進んじゃたんだよね。 (回想)  沖縄から帰ってすぐに、みおが自分の両親と私の両親に家に来 るように連絡して都合の合う日に来て貰った。 澪「大事な話が有ります」 みおは2人の両親の前で切り出したんだよね緊張しちゃたよ。 澪「私と梓は、同性しか好きになれないんだ。   そして2人は交際していて、夫婦とかにはなれないけど、   梓と一緒に生きて行きたいんだ、だから2人でいる事を   許して下さい...
  • 返してあげたいこと
    「梓」 「ふぁい?」 「大好きだよ」 「ぶふっ!?」  ――げほっ、けほっ、こほっ。  澪先輩のいきなりのど真ん中直球、ストレートな愛情表現に喉を通り食道を通過しようとしていたコーヒーが気管に入ってしまい激しくむせて。 「わわっ!? 大丈夫か梓!」  先輩が慌てて近くに置いてあったティッシュ箱を持ってきて、私の背中をゆっくりとさすりながら口元をティッシュで拭いてくれた。  ティッシュ越しに口元に感じる先輩の指が、ほんのりあったかい。 「けほっけほっ、はあっ……びっくりしました……」 「ご、ごめんな」  何とか呼吸が整うと、先輩は新たにティッシュを何枚か取り、今度は私がコーヒーを吹き出して少しばかり……いや結構な惨状となったテーブルを拭き始めた。 「あっ、自分で拭きますっ」 「いいよ、私のせいでむせちゃったんだから。梓は座ってて」...
  • 澪は三十分も前から待ち合わせ場所にいた。
     澪は三十分も前から待ち合わせ場所にいた。 やや早過ぎる気もするが、元々待つ事は嫌いじゃない。  目的地はすぐ目の前にあるアミューズメントパークである。今日は梓と二人きりでここで遊ぶ事となったのだ。 タダででチケットが2枚手に入ったからと勇気を振り絞り梓を誘ってみたら快くOKしてくれた。 「すいませーん、お待たせしました」  梓の声に、それまで俯いていた澪は破顔する。 「そんなに慌てなくても。まだ約束の時間の十分前だぞ」 「ワクワクしちゃって、ちょっとでも早く来たかったんです」  えへへ、と梓が笑うと、つられて澪も笑っている。 「早く行きましょう」 そう言って梓は澪の手を取り、ゲートへと走り出す。 「わわっ、も、もう強引なんだから……!」  梓の行動に澪はやんわりと抗議するが、その表情から溢れてくる嬉しさは隠せなかった...
  • すとぱん!
     『すとぱん!(前篇)』 ────────────  小さいころ、あの空の向こうにあるって信じてた。  友だち、夢、名誉、恋、運命。  その、全てが。     ◇  ◆  ◇  ここ数日では一番に眺めがよくて、絶好の飛行日和だった。  水平視界は極めて良好。上空は蒼い空だけど、眼下には地平線まで真っ白な雲海が広がっている。おまけに上方やや左手から照り付ける太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。これが観光旅行だったら雄大な景色に歓声のひとつも上げたいところだけど、残念ながら現在は作戦の真っ最中。とてもそんな不謹慎な真似はできない。  高度34,000フィート。気温マイナス53℃。大気圧は地上の半分以下。魔法がなければ10秒と命を保っていられない、この成層圏という名の異世界。そんな天国と地獄の境目を、今日も私たちは音速のおよそ80パーセントと...
  • 『私の大切な――』 side 梓.
     修了式も終わって、3月中旬、平日の朝9時。  軽音部の部室――もとい、音楽準備室には私、ひとり。 「はぁ……」  ここに来てから幾度もため息をつき、準備室から見える運動場を見る。  さすがに新年度までは運動部も活動をしてないのか、運動場も閑散としてる。  誰もいない運動場を見ててもおもしろくないから、今度は部屋の中に視線を移す。  部室の中は、唯先輩や律先輩が置いていったものが残っている。そんな中、ある人が忘れていった人形を見た瞬間―― 「――先輩」  自然に涙がこぼれた。  信頼? 尊敬?   ううん、違う。これは「好き」という感情。  最初は尊敬だった、と思う。  先輩は、何事にもひたむきに努力して、それで結果をちゃんと出している。  自分にもそういうところがあったから、私と先輩を重ねて見ていたんだと思う。最初は。  ...
  • 3年目の初詣
    ~年末のとある日~ 純「梓って来年も軽音部の先輩達と一緒に初詣行くんでしょ?」 梓「うん、そのつもり」 純「あ~いいな~‥ 澪先輩達と初詣‥」 梓「えへへ~ いいでしょ~?」フンス 憂「純ちゃんはお正月おばあちゃんの家で過ごすんだっけ?」 純「そー もう毎年の恒例行事だけどねー たまには憂達と過ごしたいよ」 憂「純ちゃんが帰ってきたらまた3人でお出かけしようよ」 梓「去年の初詣といえば晴れ着姿が素敵だったな~」 憂「うんうん! 私も見たことあるけど素敵だったよね~」 梓「ムギ先輩の」 憂「澪先輩の」 梓「‥‥えっ?」 憂「あっ‥そうか 今年は澪先輩晴れ着着てこなかったんだっけ」 梓「ちょ‥ちょっとまって憂! 澪先輩のは‥晴れ着姿!? 私聞いてないっ!!」 憂「おっ落ち着いて...
  • お茶会のあと、そして
    怖い話は苦手。 痛い話なんて聞きたくない。 でも一生に一度くらいは、立ち向かわなくちゃいけないことだってあるんだ。     ◇  ◆  ◇ ようやく地獄のような時間が終わった。 『秋山澪ファンクラブお茶会』は、なんとか無事に幕を閉じた。 いろいろグダグダだったけど、最後の新曲のお披露目と写真撮影には会員の人たちも大満足だったみたい。 そして終わってしまった宴のあとで、いつもの軽音部のメンバーに和 ──なんと二代目ファンクラブ会長なんだよ、コイツ── を加えて、簡単な打ち上げをやっている。 とはいっても私は、もっぱら盛り上がるみんなを横で眺めているだけだ。 「いやーしかし、会員の子たちの反応が初々しくてよかったよなー」 「澪ちゃんの『板垣退助』めっちゃ受けてたし」 「そうそう。あ、それと、やっぱり澪ちゃんへ百の質問とか、」 ...
  • シックス・イレブン作戦
     また、夢を見た。もうひとつの世界での私達の夢を。     ◇  ◆  ◇  そうこうしてるうちに、先輩から絶え間なく吐き出されるジェット噴流が、かすかに細く長い飛行機雲を発生させはじめた。それをかぶってしまわないよう、私はほんの少しだけ高度を下げる。すると必然的に、先輩の身体を下から見上げるような形になる。たとえば風になびく長くつややかな黒髪とか、ストライカーユニットからチラリと見える真っ白いフトモモとか、そして何よりも野暮ったい軍服の上からでもはっきりとわかる女性らしいシルエットとか──。  と、その時。 『エニワ02、梓。ちゃんと空中警戒してる?』 「は、はい。すいません、先輩」 『何に気を取られてるか知らないけど、もう少し集中しような』 「了解です。気をつけます」  全身から冷汗が吹き出し、同時に鳥肌が立つのを感じる。私より前を飛んでる...
  • バレンタイン・ストーム ~外伝1 紅い悪魔~
     民よ故郷よ安んじよ。われらは汝らが醜(しこ)の御盾なれば。     ◇  ◆  ◇  ”限られた戦力の柔軟な運用”  そうホワイトボードに大書すると、我らが敬愛する生徒会会長、曽我部恵先輩はこんなことを言い出した。 「敵は強大であり、対する我々は限られた戦力しか持たない。そのような場合、どのように戦うべきか。歴史はこんな風に教えてくれている」  これに対して私を含めた生徒会役員たちの全員は、ただ黙って耳を傾けている。内心どう思っているかまでは知らないが、少なくともあからさまに反抗的な態度を取る者はいなかった。 「それが『限られた戦力の柔軟な運用』よ。敵の弱い部分に我々の力を集中するとか、逆に可能な限り戦力を温存して長期戦に持ち込むという風にね。自身の力をもっとも有効に、敵の力をもっとも無効にする場所や時間や方法を考えること」  なか...
  • 結ばれる絆、繋がる心
    「はぁ・・・やっぱり落ち着くな・・・」 「・・・あ、あの」 先輩達の卒業式が間近になってきたある日、澪先輩から「大事なことがあるから家に来てくれないか?」と、こうして先輩の家にやってきたのだけど・・・。 「こうしてるとやっぱり心が安らぐ・・・」 「・・・あのっ」 ええっと・・・澪先輩の家に来て、そして自室までやってきて。澪先輩がベッドに座って、「大事なことって何ですか?」と私が言いながら近づいたら、こうして膝の上に乗せられて、後ろからぎゅーっと抱きしめられて。 いや、勿論こうして澪先輩から抱きしめられるのは嫌などころかむしろ嬉しいし、私を抱きしめてすっごく幸せそうな顔をしてる澪先輩を見てるとこっちも何だか幸せになってくる。 けど少々いきなりすぎて、頭が軽く混乱してる。 「あ、あのっ・・・澪先輩っ?」 「ん?・・・ああ、ごめん。部屋まで来たら何...
  • 澪先輩の家政婦になって数ヶ月がたった。
    澪先輩の家政婦になって数ヶ月がたった。 先輩は相変わらず忙しい日々だけど、一番近くに居れる家政婦は私にとって凄く嬉しくて楽しい・・・けど澪先輩に依存しちゃて良いのか不安にならない事もない。 結論を後回しにするのは悪い癖だけど、今この時は澪先輩の役に立てるならと思い気を引き締め晩御飯の準備に取りかかった。 あいなしに、澪先輩がキッチンに入って私に話掛けてきた。 澪「梓頼みがあるんだ。」 何だろう? 梓「どうしたんですか?」 澪「先週一緒に行ったデパートに取りに行って貰いたい品物があってな。   インフォメーションに置いて貰ってあるからお願いできるかな?   今日はもう遅いから明日で良いんだけど」 梓「了解です。    澪先輩は行けないんですか?」 澪「今晩から明後日までは仕事が詰ちゃってさ」 梓「大丈夫ですか?澪先輩無理してませんか」  澪「明後日まで頑張れば、明...
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