澪梓wiki内検索 / 「蒼空に駆ける決意」で検索した結果

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  • 蒼空に駆ける決意
    ギィー、という建て付けの悪い音と共に屋上の扉を開けて外に出る。 昼休みを迎え、今日この日は昼食もそこそこにして私は学校の屋上にやってきていた。 「やっぱり寒いな……」 春先や夏場なら他の生徒たちで賑わう屋上だが、今の冬の寒さの前には閑古鳥が鳴くのも仕方ない所だ。 そんな屋上で冷たい寒気の中にいる自分はなんとも変わり者というか、おかしな奴というか。 軽い自嘲を考えながら風の当たらない物陰のほうに移動して、さっと座る所を軽くはたいて腰を下ろす。 ――と、その時。 ギィー、と入り口の方で自分の入ってきた時と同じように建て付けの悪い扉の開く音が。 私以外でいったい誰が?と思ったが、 「澪先輩? いるんですか?」 声を聞いて誰が屋上にやってきたのか、考えるまでもなく私には分かった。 「梓? 私ならこっちの方にいるよ」 ...
  • ss3
    ... 守る盾になるまで 蒼空に駆ける決意の後日談。律視点。 64 甘い口元、あたたかな心 65 キスの味 txt12 66 誰だよ澪にあんなマンガ読ませたの 小ネタ 無題42が元ネタ。txt13 67 永遠の輝き、永遠の想い 68 守りたい願いと意志 69 すとぱん! ~妖精占い~ すとぱん!の続編。txt14 70 羽ばたける光 蒼空に駆ける決意の後日談で守る盾になるまでと同時期。紬視点。 71 白き願い 72 その心のままに 73 想いはいつも傍に 姉妹設定。 74 砂粒 75 二人の時間 『私の大切な――』side 澪.の続編。 76 まっすぐな心 一つ前のページにもどる
  • ss2
    ...ずにゃん! 55 蒼空に駆ける決意 一つ前のページにもどる
  • 羽ばたける光
     秋晴れの空が窓の外に広がっているお昼休み。  暖かな陽射しが入る校舎の中を、私はゆっくりと歩いていました。  ――と、 「あら? 梓ちゃん?」  廊下の角っこにいる、小さい体ながら黒く艶やかな長いツインテール。  遠目からでも一目で分かりました。 「……ですね、……朝……頃に……しょう。  細……事は……後、部…が終わっ……ら決め……ょうか。  じゃあ放……、…活で」  梓ちゃんはどうやら携帯で誰かと話しているみたいだけど……?  電話が終わった所で、近づいて声をかけます。 「楽しみだなぁ……えへへ」 「こんにちは、梓ちゃん」 「ひゃっ!」  声をかけると梓ちゃんは猫のようにびくっ、と驚きながらこちらに振り向きました。 「ム、ムギ先輩、こんにちは」 「梓ちゃん、いま電話で誰かと話していたみたいだけど……何かい...
  • 恋心
    卒業式を間近に控え秋山澪は悩んでいた。 悩みと言っても勉学ではない。 大学も無事、合格した。 そう言った類の悩みではない。 けど、彼女の胸の内にはもやもやとした感覚が有るのだった。 澪「律に相談してみようか?でも多分冷やかされるから止めとこう」 卒業式当日 今日でこの学校に通うのも最後。 そして、高校で軽音部5人揃うのも最後。 澪はある決意をして、学校に向かうのだった。 そう、胸のもやもやを取り払うため。 律「おーっす」 いつもの様に律と学校に向かう。 卒業式を無事終え、軽音部の仲間と部室に向かった。 ここでこうやって過ごすのも最後か。などと思いにふける。 やがて、梓もやってきて軽音部5人が揃った。 梓「お礼の手紙を書いてきたんです」 梓から卒業する3...
  • スミレの花咲く庭先で
    ずいぶんと日が落ちる時間が遅くなった。部活を終えて帰ってくるこの時間。 冬場ならもう真っ暗になっているはずの家の周りも、まだ茜色に染め上げられている。 少し前まで身を切るような冷たい風だったけど、それさえも爽やかさを運んできてくれるようになった。 もう暖を求めて玄関に駆けこむ必要もない。 「……あ」 ふと庭の片隅に目をやると、一輪の小さなスミレが花を咲かせていたのに気づいた。 桜吹雪に目を奪われがちだけど、この時期はこの子たちの季節でもあるんだよね。 「でも、そういえば──」 だけど確か、夜には雨が降るかもしれない、という予報だったことを思い出す。 あわててケータイを取り出してスミレの姿を写真を撮り、それをすぐに澪先輩にメールで送る。 『もしよかったら、明日にでも見に来ませんか?』 すると、ものの20秒もしないうちに返事が返ってきた...
  • 聖夜の幸せ
    「じゃ、乾杯」 「乾杯です、澪先輩」 12月24日・・・今日、この日はクリスマスイブ。 私は最愛の後輩であり、恋人である梓を家に呼び二人きりでささやかなパーティーを開いていた。 クリスマスだからといって恋人と過ごす道理は無いけど、それでも。 「ごめんな、なんだかクリスマスって感じが余りしないかもしれないけど・・・」 テーブルにこそ、それなりの食事を用意はしているが部屋には特にこれといった飾り付けなどしておらず、部屋の片隅に申し訳程度に小型のクリスマスツリーが置かれてあるぐらいだ。 「そんな事ないですよ、飾り付けすればいいってものじゃないですしそれに・・・」 「それに?」 「こういった、おしとやかな方が私達らしくてなんかいいなって思います」 確かにお互い、装飾華美が好きというわけではないのでそういった意味ではこれはこれで良かったのかな。...
  • そして17歳になった先輩と
    貴女はどこから来たの。貴女はどこへ行くの。私たちはいったい、何。     ◇  ◆  ◇ 「なんですか、このお祭り騒ぎ……」 「やっぱり梓は知らないか」 呆然とする私に対して、苦笑いを浮かべながら、澪先輩はそんな反応を示した。 先日の約束に従ってやってきた公園の光景は、いつものそれとはまるで違っていた。 普段はロクに人気もないのに、今日に限って何十人という見物客が集まっている。 半分以上は子どもだろうか。 その中心では正月飾りのたぐいや、だるまの人形なんかがうず高く積み上げられ、今にも紅蓮の炎で焼き尽くされようとしていた。 まるでキャンプファイヤーか何かのようだ。ただし、かなり場違いな。 「『どんど焼き』って言うんだ。聞いたことはない?」 「ごめんなさい、全然知りませんでした」 イマイチ状況が呑み込めず首を左右に振る私へ、澪先輩が...
  • 守りたい願いと意志
    「ふう……今回のテストはそれなりに良かったかな」  期末テストが終わり休日が明けた今日、一通りのテストが返ってきたがどの教科も90~80点代をキープ出来ていて特に大きな問題はなかった。  ただ数学での途中の計算間違い、英語での英単語の綴り間違いなど、細かいミスがあったので家に帰ったらきちんと復習しておかないと……。  今年は受験だし細かいミスを無くすよう、もっと頑張らなきゃな。  そう考えながら放課後、みんなより一足先に――唯と律は追試で一時間は遅くなり、ムギは教室の掃除で少し遅くなる――部室に入る。 「あ、お疲れさまです澪先輩!」 「梓、お疲れ……って、え?」  部室に入ると、壁際に脚立がたっており、梓がそれに登っている。  私は肩にかけてあるエリザベスを近くの壁に立て掛けながら聞いてみた。 「梓、脚立に登ってなにやってるんだ?...
  • 25話より
    25話より ~生徒会室にて~ 梓「はっ‥こ、これって‥一昨年の学園祭のDVD!?」 律「そう、一昨年のライブといえば‥」 紬「澪ちゃんを一躍スターダムに押し上げたあの‥」 律・紬「伝説の~!!」キラキラ 澪「思い出させるなッ!!」 梓「ぐふっ‥!」ガクッ 澪「お、おい‥梓?」 ついつい思い出しちゃった‥ いや、忘れもしない‥あの伝説の学園祭‥ 澪先輩が最後にスッ転んで私達を導いたあの縞々の楽園に‥ ただ私はあの光景を生で見ることが出来なかったそれだけが今でも悔やまれるっ‥ 澪「お、おおおオイ梓しっかしりろっ!」 梓「あ‥あれ? み、澪センパ‥イ?」 澪「急に倒れかけたからびっくりしたじゃないか! ‥だ、だだだ大丈夫か!?」 梓(私が倒れた時一番早くに駆けつけてくれたんだ‥澪先輩優しい‥...
  • 小ネタ 無題30
    25話より ~生徒会室にて~ 梓「はっ‥こ、これって‥一昨年の学園祭のDVD!?」 律「そう、一昨年のライブといえば‥」 紬「澪ちゃんを一躍スターダムに押し上げたあの‥」 律・紬「伝説の~!!」キラキラ 澪「思い出させるなッ!!」 梓「ぐふっ‥!」ガクッ 澪「お、おい‥梓?」 ついつい思い出しちゃった‥ いや、忘れもしない‥あの伝説の学園祭‥ 澪先輩が最後にスッ転んで私達を導いたあの縞々の楽園に‥ ただ私はあの光景を生で見ることが出来なかったそれだけが今でも悔やまれるっ‥ 澪「お、おおおオイ梓しっかしりろっ!」 梓「あ‥あれ? み、澪センパ‥イ?」 澪「急に倒れかけたからびっくりしたじゃないか! ‥だ、だだだ大丈夫か!?」 梓(私が倒れた時一番早くに駆けつけてくれたんだ‥澪先輩優しい‥...
  • 恐れ以上の想い
    ――暗い。 私は右も左も分からず、上も下すら分からないような完全な闇の中にいる。 何も無い一点の光もない暗闇の中をあてもなく私は、冷たさと心細さに震えながらも出口を探していた。 と、前方に何か人影が見えた。 すらりと伸びた手足、腰まで届く長い黒髪。見間違えるハズがない、澪先輩だ。 「澪先輩、先輩っ!」 どうしてこんな所に、いやこんな暗闇に澪先輩一人いたらガクガクと震えてきっと怖がっているんじゃないか、という思いもよぎったけど何より自分一人だけこんな所にいたくなかった。 だから必死に先輩の元に駆け寄ろうとした。 しかし、いくら走っても走っても先輩との距離は一向に縮まらない。逆に少しずつ、その後ろ姿は遠くなっていく。 「どうして、きゃっ!?」 足がもつれ、勢いよく転んだ。 転んだというのに痛みらしい痛みが無いのが逆に不気味で怖くな...
  • 冷たい雨の放課後に
    雨は嫌い。 特に春先の冷たい雨はサイアク。 暗くて寒くて、心まで凍えてしまいそうなんだもん。 もしも、こんな日でも『悪くない』なんて言う人がいたとしたら。 間違いなく私は、その人の正気を疑ってしまうと思う。 だけど。     ◇  ◆  ◇ 『まるで冬に逆戻りしたような寒い一日になるでしょう』 そんな朝の天気予報の言うとおりの空模様だった。 まったく。ここ数日はあちこちから春の便りが伝えられていたくらいだというのに。 ここら辺だって、昨日までは春を飛び越して初夏を思わせるほどの陽気だったというのに。それにすっかり慣れ緩んでしまった身体には、同じ気温でも冬よりずっと寒さが身にしみる。 「梓ちゃん、がんばってねー」 そんな憂の声援を背に受けながら、私はゴミ箱を抱えて廊下に出る。 彼女の性格なら『手伝おうか?』とか『代わりに私が...
  • そして16歳になった君へ
    貴女はどこから来たの。貴女はどこへ行くの。私たちはいったい、何。     ◇  ◆  ◇ 「むぐっ……!」 カラン、と右手に持っていたフォークを床に取り落とすと、そのまま唯が口とノドに手をあてて目を白黒させ始めた。 「おい唯、大丈夫か。なんかすっげー顔色悪いぞ」 「むごごぐっ……!」 「まあ大変、きっとケーキがノドに詰まってしまったのね」 「んむごぎぐごぐっ……!」 心配そうに律とムギが唯を顔をのぞき込む。 だけど私の見たところ、当の唯はそこまでせっぱつまってるような感じじゃなかった。 強いていえば小学校の学芸会でも見せられてるような気分とでもいおうか。 「あの、そういうことなら、とりあえず飲み物でも──」 心配そうに自分のカップを差し出そうとする梓を、あわてて律が両手で制止する。 「いいや梓、そういう素人の生モノは...
  • 守る盾になるまで
    「じゃ居眠りとかするなよー、ねーちゃん」 「へん、お前もなー」  家を出て軽口を叩きながら少し歩いた所で、弟と分かれる。  私の学校と聡の学校は家を出てすぐの交差点から逆方向にあるので、こっから別々だ。 「んーっ、今日はいい天気だな」  今日は珍しく早めに起きれたし、寝覚めもいい。  朝はうっかり寝過ごして、時間ギリギリに慌ただしく登校する事が多い自分にとっては最速タイムで登校出来そうな素晴らしい速さである。  そうしてしばらく歩くと、前方に私が間違いようのない幼なじみの姿が。  何やら両肩を交互に回しながら歩いているが、なんかあったんだろうか? 「おーっす、澪」 「? ああ、おはよう律。今日は随分と早いな」 「へっへーん、私だってたまには早起きするのさ」 「たまにじゃなくて、いつも早起き出来るようにしろよ」 「へいへい」  ...
  • 私は中野梓、今年桜ヶ丘女子高に入学しました。
    私は中野梓、今年桜ヶ丘女子高に入学しました。 新歓のクラブ発表で、軽音部の演奏に感動して 入部する事にした楽しみだな。 顔合わせの日がやってきた。 私が自己紹介を始めるとすぐに質問責めに有った 中々に明るい部らしい。 質問してきた先輩お二方はカチューシャを付けた 人とヘアピンを付けた先輩・・・ 確かカチューシャの先輩はドラムでヘアピンの先 輩はギター&ボーカルの先輩だ。 この先輩のギターの音色、テクニック云々じゃな くて暖かく優しい感じのする音に憧れたんだよね。 でも、自己紹介が進まないで困惑してると、2人 の後ろから、「落ち着け、中野さんが困ってるだ ろ」と制止てくれた。 声の方を振り向くと別の2人の先輩が・・・お一人は ニコニコと優しい笑みを湛え、もうお一人はやれやれ と呆れ顔でこちらを見ていた。 落ち着いた所で自己紹介を続け終わらせる。 次に先輩...
  • 澪は三十分も前から待ち合わせ場所にいた。
     澪は三十分も前から待ち合わせ場所にいた。 やや早過ぎる気もするが、元々待つ事は嫌いじゃない。  目的地はすぐ目の前にあるアミューズメントパークである。今日は梓と二人きりでここで遊ぶ事となったのだ。 タダででチケットが2枚手に入ったからと勇気を振り絞り梓を誘ってみたら快くOKしてくれた。 「すいませーん、お待たせしました」  梓の声に、それまで俯いていた澪は破顔する。 「そんなに慌てなくても。まだ約束の時間の十分前だぞ」 「ワクワクしちゃって、ちょっとでも早く来たかったんです」  えへへ、と梓が笑うと、つられて澪も笑っている。 「早く行きましょう」 そう言って梓は澪の手を取り、ゲートへと走り出す。 「わわっ、も、もう強引なんだから……!」  梓の行動に澪はやんわりと抗議するが、その表情から溢れてくる嬉しさは隠せなかった...
  • 澪先輩の家政婦になって数ヶ月がたった。
    澪先輩の家政婦になって数ヶ月がたった。 先輩は相変わらず忙しい日々だけど、一番近くに居れる家政婦は私にとって凄く嬉しくて楽しい・・・けど澪先輩に依存しちゃて良いのか不安にならない事もない。 結論を後回しにするのは悪い癖だけど、今この時は澪先輩の役に立てるならと思い気を引き締め晩御飯の準備に取りかかった。 あいなしに、澪先輩がキッチンに入って私に話掛けてきた。 澪「梓頼みがあるんだ。」 何だろう? 梓「どうしたんですか?」 澪「先週一緒に行ったデパートに取りに行って貰いたい品物があってな。   インフォメーションに置いて貰ってあるからお願いできるかな?   今日はもう遅いから明日で良いんだけど」 梓「了解です。    澪先輩は行けないんですか?」 澪「今晩から明後日までは仕事が詰ちゃってさ」 梓「大丈夫ですか?澪先輩無理してませんか」  澪「明後日まで頑張れば、明...
  • 永遠の輝き、永遠の想い
     ――チュンチュン、チチチ……。 「ん……朝、か」  外から聞こえる小鳥のさえずり、そしてカーテンの隙間からもれる朝の陽射しで目が覚めた。  日はまだ昇ったばかりみたいで、外はまだほんの少し薄暗い。  ――と、 「……む?」  体を起こそうとしたところ、何だかやけに身体がスースーしている妙な感じに加え自分以外に温かくて柔らかな感触がすぐ傍にあるような。  横に目をやると、 「うーん……むにゃ……」 「……あ」  梓が、私の傍らでわずかに背を丸めて幸せそうに眠っている。  おまけにお互い何も着ておらず、生まれた時のままの姿だった。  ――そうだ、そうだった。  昨日は一緒にお風呂に入って――お風呂に入ってる時もイチャイチャしたんだけど――上がってからそのまま一緒に布団に潜り込んで抱き合って……。 「...
  • 静かな夜に
    最近そろそろテストが近いという事もあり、私は今日は澪先輩の家に来て勉強を教えていただいていました。 最初は受験生である澪先輩の手を借りるのは迷惑では、と思っていたけれど澪先輩は「私としても基礎の見直しになるよ」と言ってくれて付き合ってくれたのは何だか申し訳なく思いつつも嬉しかった。 「澪先輩、この部分はどう・・・」 「それはこうだよ」 「なるほど・・・ありがとうございます」 澪先輩はすぐ隣で親身になって、分からない所も丁寧に教えてくれるので一人でやる時より苦にならず勉強に集中する事が出来ました。 「ふう、大体の範囲はこれで終わったかな?」 「そうですね、大体ここまでです」 「そっか・・・じゃあ一通り終わったな。お疲れさま、梓」 「こちらこそ今日はありがとうございました、澪先輩っ」 私はぺこりと頭を下げて感謝を表す。 「ううん、私としてもい...
  • 小ネタ 無題26
    梓「むー」 澪「その突き出した唇は何のつもりだ?」 梓「たまには澪先輩からもキスして欲しいなぁ~って」 澪「たまにはって、いつも梓が一方的にキスしてくるだけだろ///」 梓「え~、澪先輩嫌だったんですか?」 澪「・・・い、嫌では無いけどな///」 梓「じゃあキスして下さい」 澪「・・・・いきなり言われてもな・・」 梓「だって寂しいんです」 澪「だからって、キ、キスとか・・・」 澪が恥ずかしくて何も出来ずにいたら、梓はフッと微笑んで顔を近づけた。 澪も反射的に目を閉じる。  触れるか触れないかの、ささやかなキス。 「もっと・・・・」と言いたくなるような衝動に駆られる澪。 梓はそんな切なげな表情の澪の顔をジッと見つめた。 梓「澪先輩、キスして欲しい」 そう言うや否や、澪に口付けられる。 軽いキスを二、三度重ね、少しだけ離れる。 梓「ん、もっと・・・・」...
  • 水着姿でつかまえて
    真夏の陽光、潮風の香り、打ち寄せる波の音、そして……先輩の声。 「梓、こら待てっ!」 「あはははっ、こっちですよー先輩っ」 もちろん本気で追いかけっこしてるわけじゃない。ほんのちょっとした、そう、仔猫同士のじゃれあいみたいなものだった。だけど……。 「きゃ…!」 うかつにも私は砂に足を取られ、顔面から砂地に突っ込んでしまった。 「大丈夫か、梓!?」 あわてて駆け寄ってきた先輩に半身を起してもらう。 「はいっ。ちょっと砂が……ぺっぺっ」 「まったく、小学生みたいにはしゃいでるから」 やれやれと言いながらも、澪先輩は私の髪やほっぺについた砂粒を丁寧に払ってくれた。 そのひとつひとつの仕草に、とてもドキドキしてしまう。 顔を寄せ、細く長く指であちこち触られているという、たったそれだけのことに。 もちろん澪先輩に他意が...
  • バレンタイン・ストーム ~その3 可能行動~
        ◇  ◆  ◇  定期試験直前といった特別の理由でもない限り、放課後になると私たち軽音部の部員は誰からともなく部室へと集まってくる。もちろんそれは今日も例外じゃない。バレンタインデーに女子ばかりで集まっているというのがちょっと悲しいが、裏を返せば今年も抜け駆けした子がいないという意味でもあるから、まったく悪いことばかりとは言えない。  私が部室に顔を出したときには、すでに他の二年生部員が全員そろっていた。つまりリードギター担当の平沢唯とキーボード担当の琴吹紬、そして我が不肖の幼なじみにしてパワーに溢れすぎなオデコのドラマー、部長の田井中律である。するとそれまで唯とバカ話で盛り上がっていた律が、急に私の方を振り返った。 「澪。なんか今、ものすごく失礼なこと考えてただろ」 「……別に」  平静を装いながらも内心で舌を巻く。ほんと、こういうところだけは鋭...
  • 誕生日会の後に
    「んっ、涼しい……」  ――現在、時刻は深夜0時半。  居間の窓を開け外に出ると、緩やかな風が私の髪を揺らす。  雲はほとんど出ていないみたいで空には満天の星空が広がっており、綺麗でどこか幻想的に見え、夢のようにも思える。  何をするでもなくベランダに座っていると、ほんの少し前まであった喧騒がまるでなかったかのように、今はすごく静かに感じられた。 「……けどちゃんと現実にあったし、楽しかったし嬉しかったな」  ――もう日付は変わってしまったが、ほんの少し前までの11月11日……私の誕生日だった。  学校が終わってから、先輩方が私の家に集まってみんなで誕生日会を開いてお祝いしてくれて――ネコ耳だけでなく尻尾まで付けられちゃったりしたのはあんまり思い出したくないけど。  次の日は土曜で休みということもあって、皆さんには客間の方を使って私...
  • 曽我部先輩、最後の勝利
     贖罪。     ◇  ◆  ◇  秋山澪ファンクラブのお茶会は盛況のうちに終了し、今は参加者たちがひな壇に並んで記念撮影の真っ最中。もちろんその中心にいるのは我らがアイドル、秋山澪その人である。ズイブンと微笑ましい光景だ。もっとも当の本人の笑顔だけが、どこか引きつっているようにも見えるのは、ただの気のせいだろうか。大学受験も近づいていることだし、今のうちにメガネの度数に問題がないか、眼科で再検査してもらった方がいいかも知れない。  やれやれ。どうしてこう物事を斜に見てしまうだろう。我ながらつくづくイヤになってしまう。ファンクラブ会長であり、何よりお茶会の発案者という立場でありながら、おそらくこの私だけがこのバカ騒ぎを醒めた目で眺めているという現実に。いやむしろ、この後に──。  おっと、もう一人いたわね。この場から浮いている子が。会場の一角で所在なさげに撮...
  • 決戦の朝
    みんなとの待ち合わせには少し早い時間だったけど、両親にいってきますと言い残して玄関を開けた。 するとまだ暗い歩道に、小さな黒い人影が立っているのが目に映った。 「どうした梓。何かあったのか」 あわてて駆け寄る。白い息が身体にまとわりつく。昨日から雪が積もるほどの寒さだったから。 「昨日、夜、テレビを見てたんです。そしたら……」 そのままうつむいて言いよどむ。 「そしたら……?」 できるだけ優しい声音で私は先を促す。すると再び梓が顔を上げる。 「ストレスやプレッシャーに一番効き目があるのは『抱きしめてあげること』なんだって」 消え入りそうな声で。 「それで、今朝は本命の大学の受験日だから、きっと先輩もプレッシャー凄いんじゃないかと思って」 ひたむきな色をたたえた瞳で。 「だから、あの、もし私でよかったら...
  • 愛くるしい笑顔
    「梓、遅いな……どうしたんだろう」  部室を出て階段を下りると、私は少し駆け足で梓がいると思われる二年生の教室を目指す。  いつものように放課後を迎え、いつものようにみんなとティータイムを過ごしていたが、今日は時間が経ってもなかなか梓が部室にやってこない。  何かしら用事があって休むとしても先に部室に来て断りを入れてから帰るはずなので、こうして顔も見せにこないのはちょっと心配。  だからかこうして、いてもたってもいられず部室を出て、梓を探しにきていたのだった。 「教室にいなかったら携帯にかけてみるとして……さて」  梓のことを考えながら二年生の教室までやってきた所で、中をそっと覗く。  黄色い陽射しに染め上げられた教室は静まり返っていて、人の気配を感じさせない。  他の生徒たちはみんな早々に下校したか、それぞれの部活に行ってしまったようだった。...
  • 部活後の逢い引き
    「静かだな……」  ――窓の外では、夕焼けに染まった空が次第に暮れはじめている。  すでに部活は終わり誰もいない部室で、私は一人の女の子が戻ってくるのを待っていた。  と、部室の外からトットットッ……と誰かが階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきて。  その駆け上がる足音で誰がやってきたのか、私にはもう既に分かってしまっていた。 「お待たせしました、澪先輩」 「ふふっ、そんなに待ってないよ」  ドアが開き、荒い息遣いで部室に戻ってきた梓に私はふっと微笑む。  梓のことだから、私をあまり待たせないように急いできたんだろうな。 「唯先輩達には、宿題に使う教科書を教室に忘れたって言ってきました」 「ん、私は学校帰りにそのまま両親と外食に行くって言って別れてきたから、これで怪しまれることはないな」 「お互い行き先は別の場所なので、大丈夫です...
  • 会長はネコ耳様!
     ──「あ、あの……何ですかこれ」  ──「何ってネコ耳だけど」  ──「いや、それはわかるんですけど……えと、これをどうすれば」                   (「けいおん!」#09「新入部員!」より)     ◇  ◆  ◇  可愛いマフラーを巻き終えた真鍋さんが、私に向かって別れの挨拶を告げた。 「それでは会長、お先に失礼します」 「はい、お疲れさまでした」  秋の日はつるべ落としなどと言われるが、つい先ほどまで明るかったはずの窓の外は、いつの間にかすっかり闇に包まれていた。どうやら少しばかり仕事に没頭しすぎたらしい。 「もうすっかり遅くなってしまったから、真鍋さんも気をつけて帰って」 「わかりました。会長も、あまり無理しないでくださいね」 「ありがとう。そうする」  ぱたん、と生徒会室の扉が閉まる。  ...
  • 小ネタ 無題40
     朝4時。新聞配達でかけずり回るカブのエンジン音が、夜闇に響く。そんな時間帯。  昼夜逆転廃人どもが寝ようかと思い始めているだろう時間に、彼女は目を覚ました。 「………」  のっそりと身体を起こし、無言で携帯を開き、時間を確認する。  もちろん目覚まし時計は使っていない。使ったら親にバレるからだ。  布団から少々身体を出した少女は、朝の冷え込みに身体を震わせた。一回布団に戻ろうとする仕草を見せたが、勇気を出して布団から抜け出し、準備を始める。  本当は、朝ご飯を食べたり、シャワーを浴びたかったり、髪をしっかり梳いたりといろいろと遣りたいことはあるけれども、今日は必ず成し遂げなければならないミッションがある。  普段着――といっても、かなりの防寒装備を施す――に着替える。  タイツを二重に穿き、ジャージを穿き、ウィンドブレーカーを穿いた。正直、ダサいと彼女も...
  • Cold Turkey
    「梓と付き合ってるのか?」  寄りかかっていた澪から離れて、律はそう問いかけた。 問いに肯定を返すように澪の頬が赤く染まったが、 口から否定の言葉が放たれた。 「いや、違」 「違わないですっ。付き合ってます」  否定の言葉は梓に遮られた。 律は梓の返事を答えとして採用する。 「そっか。やっぱ、二人付き合ってたんだな」 「……よく分かったな」  澪は観念したように溜息を吐いた。 「最近さ、お前と仲良くする度に梓の鋭い視線を感じて。 さっき寄りかかってた時も、結構キツい感じの目で睨まれたし。 それがあからさまだったからさ、梓が勝手に澪好いてるんじゃなくって、 堂々と嫉妬しても許される関係になってるんじゃないかって思った」  律は深呼吸した後、意を決したように言葉を続ける。 「本当に付き合ってるなら、もう澪に抱きついたりしないよ。 二人っきりで帰るのも止めにする...
  • 想いはいつも傍に
    「さてと……部屋の整理も終えたし、明日に備えて寝るかな」  ――卒業式を迎え、高校生活に終わりをつげてから数日後。  私は大学生活に向けて今日この日、一人暮らしするアパートの方に部屋の大半の物を移動させた。  そして明日からは早い内に新しい生活に慣れるため家を離れ、アパートでの一人暮らしに移る予定だ。 「しばらくは自分の部屋ともお別れだな」  部屋を見渡してみると随分すっきりとして、こんなに自分の部屋って広かったかな? と思わず感じてしまったり。  とはいえ、長期の休みになったら家に戻ってくるつもりなので机や布団はそのまま家に置いておくことにした。 「と、寝る前に歯を磨いておかないと」  淡い感傷を思いながら部屋を出て、洗面所に向かうと梓がいた。 「あ、お姉ちゃん」 「歯磨きに来たんだけど、梓が使ってたとこかな?」 「う、うん...
  • 茜色の触れ合い
     ――西に大きく傾いた太陽の夕日が室内を照らしている。  今は茜色に染まっている外もあと一時間もすれば真っ暗になる代わりに、空にはまばゆい星の海が見えるだろう。 「ん……」 「ん……んん……」  茜色に染まる家の自室が少しずつ暗くなりはじめようとする中、私は澪先輩とベッドに座った状態で唇を重ね合い、先輩とのキスにひたっている。  先輩とのキスはとっても甘くて、長くしていたらとろけちゃいそうなぐらい。  静かに唇が離れると当時にゆっくりと目を開くと、先輩は頬を赤く染めながらも柔らかな笑みで私を見つめる。  私もきっと先輩と同じように、頬を赤く染めているって思う。 「……くすっ」 「ん、どうした?」  はにかみながら笑みをこぼす私に、先輩が耳元で優しくたずねる。 「もう何回目でしょうね、こうして澪先輩とキスするの」 「んー、何回...
  • すとぱん!
     『すとぱん!(前篇)』 ────────────  小さいころ、あの空の向こうにあるって信じてた。  友だち、夢、名誉、恋、運命。  その、全てが。     ◇  ◆  ◇  ここ数日では一番に眺めがよくて、絶好の飛行日和だった。  水平視界は極めて良好。上空は蒼い空だけど、眼下には地平線まで真っ白な雲海が広がっている。おまけに上方やや左手から照り付ける太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。これが観光旅行だったら雄大な景色に歓声のひとつも上げたいところだけど、残念ながら現在は作戦の真っ最中。とてもそんな不謹慎な真似はできない。  高度34,000フィート。気温マイナス53℃。大気圧は地上の半分以下。魔法がなければ10秒と命を保っていられない、この成層圏という名の異世界。そんな天国と地獄の境目を、今日も私たちは音速のおよそ80パーセントと...
  • 守る想い、助けになる想い
    「ふう・・・一人で残ってやってたからって、ちょっと練習に熱を入れすぎたかな」 今日はどうにも練習での自分の演奏に納得が出来なかったので、先輩達が帰った後も私は一人で残って練習をしていた。 そうしてしばらく一人で練習したのち下校時間も近付き、外も暗くなってきた所で私もそろそろ帰る事に。 「もう他の生徒も残ってないだろうし、早く帰ろ・・・」 そうして部室前の階段を下りていた所、肩に担いでいるムスタングがずり落ちかけたので担ぎ直そうとした瞬間、 ―ずるっ、 「きゃっ!?」 ―だんっ!どさっ! 「いっ・・・いったあっ・・・!」 ムスタングがずり落ちかけたのを担ぎ直そうとした時に足元を見ずに階段を下りたのがまずかったのか、私は階段を踏み外してしまった。 幸い、ねんざとかはせずにムスタングも無事だったけど踏み外した時に階段に勢い...
  • たそがれ時のゲームプレイヤーたちに
     どこにでもいるような普通の女子高生なんですよ、私は。     ◇  ◆  ◇ 「無理ですよ、次の生徒会長だなんて」  現生徒会長、曽我部恵先輩の言葉を、私はあっさりと一蹴した。たった二人しかいない放課後の生徒会室とはいえ、自分の声が予想以上に響いたのが意外だった。それほど緊張していたつもりはなかったのに。 「そうかしら。私はそうは思わないんだけれど」  私の否定をやんわりと退けながら、先輩が言葉を重ねていく。 「むしろ真鍋さん以上にふさわしい人がいたら、ぜひ名前を挙げてほしいわね」  この柔らかな物腰と聡明な頭脳が、多くの生徒や教師たちの信頼を勝ち得てきたことは確かだ。もちろん私もその一人に加えていい。だからこそ、たとえ誰が後を継いだとしても、前の生徒会長のほうがよかったと言われ続けるのは確実だ。  それはもう想像するだけで...
  • すとぱん! ~妖精占い~
     『すとぱん!』  ~妖精占い~ ────  スオムス。そこは広大な森と無数の湖、そして妖精たちの王国。     ◇  ◆  ◇ 「そういやムギって、占いとか得意なんだってな」  不意に律先輩の大声が耳に飛び込んできた。MP3プレーヤーのノイズキャンセラーを最大にしていたはずなのに、それでも律先輩の突然の前振りまでは消去し切れないらしい。それとも『占い』というステキワードに反応してしまった私の方の問題だろうか。こっそりプレーヤーの音量を下げながら、それまで閉じていた目をゆっくりと開け、そっと辺りの様子をうかがう。 「得意というほどよく当たるわけじゃないけど、好きなことは確かよ」  柔らかなトーンの声でムギ先輩が答えている。もっとも、この人が声を荒げる場面なんて、あんまり想像できないけど。  こうやって私たちがゴロゴロし...
  • その日、ライブを終えた澪は不機嫌そのものだった。
    その日、ライブを終えた澪は不機嫌そのものだった。  澪はずっと深刻な顔のまま黙り込んでいた。 梓が話を振ると一応は返事をするのだが、どう見てもその心は上の空、といったところだ。 そして、澪は突然ベースを片手に飛び出してしまったのだ。 あまりに唐突な澪の行動に、唯達は呆然としている。 「ちょっと私見てきます」  こんな状態の澪は放っておけない。遅れて梓も澪の後を追って部屋を出ていった。 外はもう完全に日が沈んで、外は漆黒の世界だ。 居るとしたら近くの夜間照明が設置されている公園しか無い。 「……あ」  そして、その場所に澪はいた。  駆け足で此処へ向かったのか、既に澪は練習に取り組んでいる。その表情には 鬼気迫るものがあり、いつもの澪とは違う。梓はしばらく物陰から様子を伺う事にした。 「ど...
  • バレンタイン・ストーム ~外伝2 クリスタルナハト~
     戦いにはたいていの場合、勝者と敗者が存在するものだ。  しばしば全員が敗者ということもめずらしくない。  そして全員が勝者になれるケースは稀有である。     ◇  ◆  ◇  そろそろ世間一般では深夜と呼んでも差し支えない時間。いちおうは閑静な住宅街だというのに、今夜はびっくりするほど無数の星々が夜空をにぎわせています。そんなどこかミスマッチな光景を、さきほどから車の後部座席の窓越しに、ぼんやりと私は眺めていました。もうメールの返事をいただいてから随分と待たされているのですが、かの人は未だにあらわれず。  ──クリスタルナハト。  記憶の深淵から忌まわしい言葉が浮かんできたのと同時に、暗い路上で何かが動いたような気がしました。そちらに視線を向け、目をこらします。もしかしたら勘違いでしょうか。いえいえ、確かに動きました。さらにその暗がりを注目してみまし...
  • 甘い口元、あたたかな心
    「うーん……やっぱり今は共通の分を渡すだけにしといた方がいいよね……」  放課後を迎え部室に向かう最中、私はどのようにチョコを渡そうか考えを巡らせていた。  ――バレンタインデーである今日この日、私は日頃お世話になってる意味も兼ねて、先輩達にチョコを作ってきた。  そしてそれとは別に、恋人である澪先輩に渡す、いわゆる本命チョコももちろん作ってきた。  ただ他の先輩達がいる前で渡すわけにもいかないし、やっぱり帰る際に二人きりになった時に渡すのが無難だよね。  他の先輩達に見られたら、どういう感じにからかわれるか分かったものじゃないし……。  そう考えをまとめた所で、部室に入る。 「こんにちはー……って、あれ?」 「あ、おつかれ梓」  室内にはソファに座っている澪先輩だけで、他の先輩達の姿は見当たらない。 「澪先輩、唯先輩達は?」 ...
  • バレンタイン・ストーム ~外伝1 紅い悪魔~
     民よ故郷よ安んじよ。われらは汝らが醜(しこ)の御盾なれば。     ◇  ◆  ◇  ”限られた戦力の柔軟な運用”  そうホワイトボードに大書すると、我らが敬愛する生徒会会長、曽我部恵先輩はこんなことを言い出した。 「敵は強大であり、対する我々は限られた戦力しか持たない。そのような場合、どのように戦うべきか。歴史はこんな風に教えてくれている」  これに対して私を含めた生徒会役員たちの全員は、ただ黙って耳を傾けている。内心どう思っているかまでは知らないが、少なくともあからさまに反抗的な態度を取る者はいなかった。 「それが『限られた戦力の柔軟な運用』よ。敵の弱い部分に我々の力を集中するとか、逆に可能な限り戦力を温存して長期戦に持ち込むという風にね。自身の力をもっとも有効に、敵の力をもっとも無効にする場所や時間や方法を考えること」  なか...
  • キスの味
    今日は部室に澪先輩と私だけ。 唯先輩達は、クラスの用事で遅くなるらしい。 澪先輩は、新しい歌詞を書いている。 邪魔しちゃ悪いなと、私は一人ギターを弾く。 不意に、澪が梓に問いかける。 澪「梓、キスした事ある?」 梓「えええっ」 突然の質問に梓はびっくりした。 梓「し、した事無いです」 ふるふると首を横に振る。 澪は続ける。 澪「参考に、と思ってミュージシャンの歌詞とか見てるんだけどさ」 澪「例えば宇多田ヒカルのFirst Loveの歌詞 最後のキスはタバコのflavorがした」 澪「これってキスは煙草の風味がしたって事だよな?」 梓「そうだと思います」 澪「普段煙草吸う人は煙草の味、じゃあ吸わない人はどんな味なんだろ?」 梓「どうなんでしょうね?」 ……...
  • 天使のささやき
    私は自室でベッドに横たわり、天井を見つめている。 頭には鈍い痛みがありつつも何だかぼんやりとした妙な感じで、体全体はだるく、腕にはどうにも力が入らない。 ――今の状態を簡単に説明すると、どうやら私は風邪を引いてしまったらしい。 「三十七度四分・・・やっぱり熱ありますね。幸いかなりの高熱ってわけじゃないのはまだよかったです」 測った体温計を見て少しほっとした表情をする梓。 ゆるゆると手を額に当てるとそれなりに熱いので、ある程度の熱があるのは覚悟していた所。 「それで熱以外はどうですか?頭が痛いとか、喉が痛いとかは・・・」 「ああ、ちょっと頭に鈍い痛みがあるけど我慢出来ない程じゃないし、喉が痛いとかは無いよ。体がだるくて力があまり入らないっていうのはあるけど横になってる分にはあまり関係ないしさ」 変に梓を心配させないように、私はあくまで症状は軽い...
  • プレゼントには、赤いリボンを巻いて
     台風のような誕生日会だった。  ……いや、竜巻か。  台風ならば、中心である私は『台風の目』になっているはずだから静かなはずだ、と比較的どうでもいいことを考える。  唯・憂・律・ムギ・和・純・さわ子先生(なぜいる!)……そして、愛しの梓の8人で私の誕生日を祝ってくれた。  お誕生会の内容については省略する。あんまり思い出したくないと言えば思い出してくない。  楽しかったけどね。  みんなが私に贈ってくれた手紙を、鍵付きの引き出しにそっと仕舞い、とりあえずは―― 「片付けるか……」  ある程度は片付けてくれたけど、至る所に散らばっているゴミとかを拾う作業に入る。  ――と、帰ったはずのムギが戻ってきた。結構大きめの箱を抱えて。 「澪ちゃん、私からプレゼント」 「その大きな箱……は、なに?」  誕生日プレゼントにしては大きすぎないかな。 「開...
  • ガチャ
    ガチャ 授業を終え澪が部室に入るとソファーで居眠りしている梓がいた。 「気持ちよさそうに寝てるなw」 「んんっ……」 可愛い寝顔を眺めていると、不意に梓が澪の方に寝返りをうつ。 (うわ……可愛い) 急に近くなった梓の顔に澪の胸は高鳴る。 ピンク色の唇が澪の理性を壊す。クークーと言う吐息が聞こえ、頭がくらくらする。 (ちょっとだけ・・・・) 「・・・・ちゅっ」 澪は梓の柔らかい唇にそっとキスをした。目を閉じて梓だけを感じる。 (梓ごめん……) 心の中で何度も謝った。 唇を離し目を開けると梓と目が合う。 「あっ、梓!?」 「寝てる隙に唇奪わないで下さいよもー。」 パクパクと口を動かし澪は呆然としている。 突然のことにどうして良いかわからない。 「こ、これは違うんだ。あの、その///」 「お詫びに私からもキスさせて下さい。」 「へ?」 ...
  • 列車にて
    あれ、ここはどこだ。 寝ぼけまなこで辺りを見回す。どうやら列車のボックスシートらしい。 車窓の外はすでに夕闇が広がり始めていた。 そしてすぐ傍に、心配そうに私のことをのぞき込む梓の顔があった。 照れ隠しにあわてて腕時計を見ると、なんともう6時近い。 いったい何時間乗っていたのだろう。 「なんで起こしてくれなかったんだっ」 「だって……澪先輩の寝顔があんまり可愛くて……」 しゅんとする梓の姿を見て肩の力が抜ける。ほんとに、しょうがない奴だなあ。 せっかく気分転換に時々出かける日本海の景色が見たいって言うから、こうやって出かけてきたのに。 この時間じゃもう家に戻るしかなさそうだ。 「きっと昨晩の疲れが残ってたんですよ、先輩。すいません。なんだか私、少しはしゃぎすぎちゃって」 落胆が顔に浮かんでいたのだろうか。フォローするように梓が口を...
  • 深紅のまどろみ
     ――紅い。  夕暮れの商店街は、何かで塗りたくられたかのように紅かった。  まるでペンキがまだ塗りたてのベンチのように、足につくもの手につくもの全てが、ぬちゃりと音をたてているみたい。  ――商店街の真ん中を進む。  自分だけが歩いていて、商店街は静まりかえっていた。  みんな息を潜めて隠れているのか、それとも元から誰もいないんだろうか。  ……しかし、目が痛い。  目を酷使させるほどの強い紅色に目眩がするほど。  それに、商店街があまりに無人すぎる。  何か私だけ気が付かないままで大掛かりな避難勧告でもあったんだろうか。  そう思うと、これだけの強い紅色にも納得がいくけど。  ……家に帰ろう。  そう思い、紅い町並みの中で家路に着こうとする。  ――と、  遠くに人影が見えた。 「澪先輩?」  あれは、澪先...
  • SS紹介5
    タイトル 備考 唯「今日から琴吹家の使用人になる!」 前半澪の性格注意。 澪「梓におっぱいを押し当て続けるとどうなるか」 澪「不公平」 澪がキャラ崩壊、変態ネタあり。 澪「誘惑!」 一つ前のページにもどる
  • 興奮しすぎて眠れない。
    ………… 興奮しすぎて眠れない。 だって憧れのロンドンに来てるんだ。無理もない。 同室の律とムギは…… 律「グゴー、グゴー」 紬「スースー」 二人ともぐっすり寝ているようだ。 昼間はしゃいでたからな。 ちょっと気分を落ち着けるため、ホテル内でも散歩してくるか。 上着を羽織り、廊下に出る。 辺りは賑わっていた昼間とは違い静かだ。 静かな廊下を歩いて行く。 外が見渡せる大きな窓がある場所に出た。 ベンチもあるし、丁度良い。 澪「綺麗な夜景だな」 ベンチに腰掛け、一人そんな事を呟く。 澪「!」 ふいに気配を感じ、慌てる。 お化け?まさかな。 きっとあれだ、ホテルの従業員が見回りに来たんだ。 自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと振り向く。 ...
  • 今できる、精いっぱいのことを
    こんな形で悪夢が現実になるなんて。 風邪でダウンしていた唯が奇跡的に復活し、ほっと安心したのもつかの間。 大事なギターを家に忘れてきたことがわかり、彼女はそれを取りに戻ることに。 私たちはその間、唯抜きで二度目の学祭ライブを決行することになった。 万が一のことを考えてあらかじめ準備していた編成で。 つまり、さわ子先生がサイド、梓がリード、そして私がヴォーカルというわけだ。 正直、動揺はある。しかも、かなり。 一度は唯が顔を見せてくれたから、これで今回はヴォーカルをやらないですむ、とすっかり油断してしまっていた。 だからこの状況は半ば不意打ちにも等しい。 いやでも思い出してしまう。一年前の学祭ライブの大失態。 とっくに覚悟を決めていたつもりだったのに、おじけ虫がもぞもぞと動き出す。 ひざが笑う。身体の震えがとまらない。 なんでこんなことに。怖い...
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