合成写真の例その2

注:
別撮りの天体と地上風景を合成して一枚の作品とする行為自体は、特に広告写真や商業用途などでは面白い絵作りのための「演出」の一環としてよく行われます。合成であることをキャプション等で明記していれば特に問題はありません。

波照間島の天の川


imageプラグインエラー : 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。
撮影データ
夏の天の川と積乱雲
撮影/宮城隆史
2008年7月4日23時16分33秒 露出120秒
ニコンD3 AF-S Nikko17mm-35mmF2.8ED(19mm)
ISO800 拡散系フィルター使用 タカハシTG-SD
フォトショップCS3/Nikon capture NX2

6月18日に梅雨明けした沖縄地方。この時期は年間で最も高い透明度と 好シーイングに恵まれます。
立ち昇る天の川や木星が海に映り、恒星は全く瞬きません。南の方から時折やってくる積乱雲が、
夏の天の川の光で不思議な色合いを見せていました。

同じ写真が天体写真PEOPLEにも投稿されている。


撮影データ (EXIF ヘッダより抜粋)
Make - NIKON CORPORATION
Model - NIKON D3
Software - Adobe Photoshop CS3 Windows
DateTime - 2008:08:20 01:01:25
ExposureTime - 420.5 seconds
FNumber - 3.20
ExposureProgram - Manual control
ISOSpeedRatings - 400
DateTimeOriginal - 2008:07:04 23:16:33
DateTimeDigitized - 2008:07:04 23:16:33
ExposureBiasValue - 0.00
MaxApertureValue - F 2.83
MeteringMode - Spot
LightSource - Auto
Flash - Not fired
FocalLength - 19 mm
UserComment - 
SubsecTime - 36
SubsecTimeOriginal - 36
SubsecTimeDigitized - 36
SensingMethod - One-chip color area sensor
FileSource - DSC - Digital still camera
SceneType - A directly photographed image
CustomRendered - Custom process
ExposureMode - Manual
White Balance - Auto
DigitalZoomRatio - 1 x
FocalLengthIn35mmFilm - 19 mm
SceneCaptureType - Standard
GainControl - Low gain up
Contrast - Normal
Saturation - Normal
Sharpness - Normal
SubjectDistanceRange - Unknown

疑問点1

この写真には全く同じ構図で積乱雲がないバージョンが存在する。


撮影データ (EXIF ヘッダより抜粋)
Make - NIKON CORPORATION
Model - NIKON D3
Software - Adobe Photoshop CS3 Windows
DateTime - 2009:06:07 22:13:31
ExposureTime - 420.5 seconds
FNumber - 3.20
ExposureProgram - Manual control
ISOSpeedRatings - 400
DateTimeOriginal - 2008:07:04 23:16:33
DateTimeDigitized - 2008:07:04 23:16:33
ExposureBiasValue - 0.00
MaxApertureValue - F 2.83
MeteringMode - Spot
LightSource - Auto
Flash - Not fired
FocalLength - 19 mm
UserComment - 
SubsecTime - 36
SubsecTimeOriginal - 36
SubsecTimeDigitized - 36
SensingMethod - One-chip color area sensor
FileSource - DSC - Digital still camera
SceneType - A directly photographed image
CustomRendered - Custom process
ExposureMode - Manual
White Balance - Auto
DigitalZoomRatio - 1 x
FocalLengthIn35mmFilm - 19 mm
SceneCaptureType - Standard
GainControl - Low gain up
Contrast - Normal
Saturation - Normal
Sharpness - Normal
SubjectDistanceRange - Unknown

EXIF に記録されている撮影時刻が画像 A と全く同一であるため、雲が晴れたときに撮った別のコマではなく、同じコマから作った画像であると考えられる。

疑問点2

星の高度が実際より高い。この写真に写っている施設は波照間島星空観測タワー(北緯24度03分00秒、東経123度47分51.4秒)である。この場所から同一日時に見た空は、シミュレーションソフトでは以下のようになる(写真右下付近の空を拡大)。

画像:ステラナビゲータ8(アストロアーツ)で作成。7.5等星まで表示。太い青線が地平線の位置。(大気差による浮き上がりは考慮されていない)

画像 B で観測タワーの右に写っている四辺形(さいだん座β・δ・η・ζ)に注目しよう。画像 B でさいだん座δ星から地平線までの距離は、β-δ を結んだ線分約2つ分に見える。しかし実際の地平線までの距離は、星図の通り β-δ の線分約1個分にしかならない。つまり、画像 B では星が実際より4~5度も高く浮き上がっている。上の星図は大気差を反映していない図だが、大気差による浮き上がりの量は厳密に求められており、最も浮き上がりの大きい地平線近くでも約34分角(0.57度)にすぎない。よって「食い違いは大気差によるものだ」という説明は成り立たない。

疑問点3

画像下部の星が星図と合わない。ステラナビゲータの星図と比較すると、上の図の緑色の点線より下の領域では星の配置が星図と全く合わないことが分かる。手で描いたか、他の天体写真の星を合成した可能性が高い。

疑問点4

建物に星が重なっている(下の拡大画像の囲み部分)。この建物の屋上部分は鉄柵になっているため、屋上の3個は柵の隙間から写ったという可能性もなくはないが、側面の2個は全く説明がつかない。

2009/10/13 追記:
「撮影前半のフラッシュ発光で建物を写したとすれば、後半は追尾で建物の写野上の位置は発光時よりも左側に移動していくから日周運動で建物の影から出てきた星が前半で写し込まれた建物の像と重なる事になり、本人説明と画像に矛盾は無い」というコメントもあり。

疑問点5

120秒露出なのに建物がブレていない。この写真では星が日周運動で流れていないため、赤道儀で追尾撮影したものと考えられる。しかし追尾撮影すると地上の風景が逆に流れて写るはず。しかしこの建物は全くブレていない。(追尾撮影中に明るいフラッシュをたいて建物を一緒に写しこむ、というテクニックがあるが、その場合でも「ブレた建物」がバックに写っていなければおかしい。)

2009/10/13 追記:
「撮影地が他に街灯などの光源がない完全に真っ暗な場所であれば建物の像は星野上の境界線のブレた黒い影のみになる。撮影前半のフラッシュ発光だとすれば、その影は建物の左側に残るはずだが、画角19mm、南天方向120秒露出という条件ではあまり目立たないかも知れない(要検証)」とのコメントもあり。


以上のことから、

  • まず120秒露出の追尾撮影で天の川を撮影。(地平線・建物は流れて写る)… (a)
  • 建物を固定撮影で撮影。… (b)
  • (a) からブレた地平線・建物を消し、(b) を合成。隙間を適当な星で埋める。→ 画像 B
  • 「星ナビ」には、合成の跡を隠すために積乱雲を描き加えて提出。→ 画像 A

という過程で合成・捏造が行われた可能性が高い。
最終更新:2019年09月15日 16:41
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