盗作検証画像その2

※当初は「合成写真の例その3」として公開していましたが、その後単なる合成・捏造ではなく盗作であったことが明らかになったためページ名を変更しました。

2007年8月28日皆既月食



皆既月食中の月を望遠鏡で拡大撮影したもので、背景に恒星がたくさん写っている。満月の近くにある恒星は月の明るさが落ちる月食の最中にしか同時に写しこむことができないので、もし本物であれば天文ファンの興味を引く佳作と言える。

撮影データ(1枚目のみ抜粋)
タイトル:(1枚目)「石垣島での2007年8月28日の皆既月食」
撮影者: Riyuji Shimoji 下地隆史
撮影日時:(1枚目)2007年8月28日 20時05分00秒、露出 6秒
撮影地: 沖縄県石垣市 サザンブリッジ海浜公園
撮影機材等: (1枚目機材)タカハシ SKY90、EXQ1.6× エクステンダー(合成fl=800mm 合成F8.8)、
             富士フイルム FinePix S5Pro、タカハシ P2-Z赤道儀
             (1枚目処理)Hyper-Utility HS-V3、Photoshop CS3 RAW
その他:(1枚目)赤道儀のモータードライブ速度を、月の移動速度に合わせる。
コメント:(1枚目)北海道へ遠征予定でしたが、沖縄地方は、2日位前より透明度、シーイングが
ひじょうに良くなる気象条件になり、シーイング気流状態の悪い北海道遠征は取りやめ、石垣島で撮影。
S5Pro ダイナミックレンジ400% W2 により、カラーリバーサルフィルムと、カラーネガフィルムの
両方の利点を掛け合わせた様な、シャープで、ハイライトからシャドーまで繊細かつ格調豊かな、
微妙な皆既月食の色の再現に成功しました。もちろん、透明度、シーイングに恵まれた恩恵の方が
影響大です。次の大彗星出現にも微妙な青~緑色の柔らかい格調豊かな色の表現に期待したいと思います。

疑問点1

恒星の配置が星図と合わない。月の周辺を切り出し、背景のレベルを調整して暗い星を見やすくすると↓のようになる。


これをステラナビゲータ 8 の同一日時・同一観測地でのシミュレーションと比較すると以下のようになる。(月の北極が上になるように合わせた)


  • 月の下にある1~5の恒星がシミュレーションと一致しない。時刻のずれによるものであれば全ての星が一方向にずれるはずだが、5個の星がばらばらの方向にずれてしまっている。(シミュレーションソフトの恒星の位置データは1秒角未満の精度を持っているため、画像に強い歪曲などがない限り、通常は完全に一致するはずである。)
  • 月の左上にある a~f の恒星もシミュレーションと一致しないだけでなく、全体的に反時計回りに回転ずれしている。

試しに星図の向きを、シミュレーションソフトのデフォルトの状態である「天頂を上」(地平座標モード)に変えて比較すると以下のようになる。


  • a~f の回転ずれがなくなったものの、相互の配置はやはりずれている。
  • 今度は 1~5 の星が時計回りに回転ずれするようになる。

以上のことから、

  • まずシミュレーションソフトの画面表示を写真に合わせて「月の北極を上」にした状態で 1~5 の恒星を描き加えた。(ただし、5個の星のうち最も明るい3番の星は本物かもしれない。)
  • 続けて月の上の方の星を描く際に、何らかの理由でシミュレーションソフトが地平座標モードに切り替わり、それに気づかないままずれた位置に a~f の星を描き加えてしまった。

といった手順で捏造を行ったとみられる。

疑問点2

星の位置が異なる別バージョンが存在する


なお、この画像の左上隅には日食の盗作のときと同じく「白い線」がわずかに入っている。この理由も謎。

疑問点3

撮影時刻での月の高度が12.5度と低空だったにもかかわらず月が鮮明すぎる。

疑問点4

カリフォルニア州で撮られた元画像を回転して重ねると特徴が完全に一致する

特に、石垣島とカリフォルニア州とで撮った場合、地球上での観測場所の違いによって、月の秤動(月の向き)にはっきりとずれ(視差)が生じるはず。しかし宮城氏の画像はカリフォルニア州で撮られた元画像と比べても全く視差がなく、極めて不自然。

カリフォルニアでBehyar-Bakhshandeh氏が撮影した月面とそのシミュレーション画像を重ねて検証してみる
この通り時刻と場所を指定して再現するとほとんど一致する事が分かる(月の模様がずれない)

だが石垣島で宮城氏が撮影したとされる月面はシミュレーションと一致しない(模様がずれる)
この写真はBehyar-Bakhshandeh氏のものとほぼ同一の為、むしろカリフォルニアのシミュレーションに一致する
よってこの写真が石垣島で撮影されていない事は明らかである

疑問点5

背景を明るくすると月の縁に加工の跡がある。また、月の周りに出るはずの大気による散乱光が全くない。(上が宮城氏の画像、下が元画像)

以上のことから、Bakhshandeh 氏の画像を盗作し、画像を回転させて背景に星を描き込んだ捏造である可能性が高い。
最終更新:2009年10月11日 01:02
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