そんなこんなで再び、墳墓のお外に戻ります。
「こいつら市街地戦に慣れてるね… 」
ヒット&ウェイで攻撃しすかさず、仲間と入れ替わりで建物の暗がりへ入っていく。これでは満足に反撃できない
頭を倒せばある統率が乱れるのだが、同じ仮面をつけていて同じ格好をしている。誰が誰だかわからない
「そういう事か。」
「なんだい?一人で納得してんじゃないよ。」
「この戦い方には覚えがあってな… そのおかげでヘリオスとか言う反乱軍の後ろで、糸を引いている人物が浮かび上がってきた。 」
投げナイフや奇襲を仕掛けてくる敵に対してリーチの長い槍で応戦しながら答える。
ライツァー将の頭上から何本ものナイフが飛んでくるとそれを全て叩き落す。頭上のナイフに気を取られているライツァーに、追い討ちをかけ何人もの仮面の集団が襲い掛かるが、槍をすばやく薙いで敵を退け散らす。
再び距離を置く仮面の集団の中、一人がいきなり前に出てくると、仮面をはずす。
「そいつが分かった所で、ここから生きて帰れないと意味が無いんだぜ? ライツァー将…」
仮面をはずした男はニヤニヤとライツァーを見下すと、すばやく数本のナイフ投げで攻撃する。
再び槍で叩き落そうとするも、一本は捌ききれず顔を掠める。。
「お前は… やはり、イヨゼル卿が絡んでいたか。 側近のお前がここにいるんだ、これで確定したな」
頬から血を一筋流れ、親指でそれをぬぐい、男を睨みつける。
「ふん! 言ったはずだぜ? ここから生きて帰れなきゃそれが分かっても意味ないんだぜ?」
傷を負わしたことに満足そうにしている男は数本のナイフを取り出して、再び投げようとする
「わざわざ自分がリーダーだって教えてくれてありがとよ。 頭がなかなかおめでたいねぇ。」
「てめぇ、クソ女… 楽に死ねると思うな!」
挑発してきたギィへ取り出したナイフを投げつけ攻撃するが、ライツァーの様に防御しようとせずギィはその場から大きく動き全てのナイフを回避する。
「ヒヒ… 頭がおめでたいのはお前だよ。」
大きく回避する事で隙ができる。 致命傷を与えるため影に控えていた仮面の敵が隙をつき、3人一斉に襲い掛かる。
3人のうち一人、背後から攻撃してきた敵には、背中にナイフが突き刺さる寸前で横へ避け、顔にストレートを食らわし怯ませる。
残りの二人の攻撃はそのまま、地上では避けられないのかと思ったのか高々と飛び上がり、
ジャンプで回避する。残りの攻撃が回避された二人は追い討ちをかけるために一直線に飛び上がり
ダメージを与えようとした。
その飛び上がった男の相方の一人に突然ギィの履いていた靴が顔に落ちてくる。
男はそれを片手で払いのけようとした瞬間に、靴で出来た死角からギィに顔を強烈に蹴り付けられる。
もう片方の敵は、相方がやられたのを動じる事無く空中で動けない彼女に突きを繰り出すが、しなやかに体をひねり、ギィは体にナイフが刺さるスレスレのところで回避する。
そのまま突きを繰り出し、無防備になった男の黒い服を掴むと先ほど顔を踏んだ男に向かって放り投げる。投げ飛ばされた男はその仲間にぶつかり、体勢を崩して受身が取れず地面へ激突してのびてしまう。
そして、最初の拳で怯んでいた男も、ようやく攻撃を仕掛けようと上を見上げるが、その瞬間そのまま着地するギィに顔を踏まれて気絶してしまう。
「…」
埃が付いた服をパンパンと払い、ライツァーの様に男を睨みつける。
「死ぬつもりは毛頭ないんだよ。 かかってきな… 残らず叩きのめしてやるから。」
「い… いい度胸じゃねぇか。 全力で相手してやる!」
ライツァーに勝るとも劣らないその鋭い眼光に、男は気圧されてどうもる。 ギィが一筋縄ではいかない相手だと理解してか、ライツァーに回していた自分の仲間を一部を自分に集めると、仮面の集団は一斉に白いナイフをちらつかせギィににじり寄る。
多勢無勢か… そんな事を考え加勢に向かおうとライツァーは考えるが彼女の瞳に恐れは無く。むしろ、余裕が感じられる
(ほう… 伊達に
ルアルネ傭兵団で戦い抜いてきただけはあるな。 戦いでは頼りになりそうだな。)
アレだけの敵を前にして全く恐怖を感じさせないその表情。 ギィの力強い眼差しはまっすぐと敵を見定めている。
「オラオラァ!! 」
男に対して強く言いかぶる彼女に冷や汗をかくライツァー… 彼の中には戦いは神聖なものだという考えがあるのだが、どうも彼女にはそれは当てはまりそうにも無い
「その顔面、仮面ごとぶち砕いて、ボコボコにしてやるよ!」
(品性の欠片も無いがな…)
過剰に己の野生をむき出し敵を威嚇する彼女に少しげんなりする…
「なんだよ? 口だけか女ぁ!! 無抵抗になぶられるだけかよ!?」
「なーにが「全力で相手してやる!」だよ。 やるなら一対一で戦えってんだよ。」
「これが俺の戦い方なのさ。 ほら、もしかしてさっきのはまぐれか? さっさと反撃して来いよ。」
円形に囲うように男達は、ギィを中心に規則的に陣を組むと時計回りにすばやく移動してかく乱する。
円陣からすばやく数人の仮面の男達が飛び出し、ギィへ襲い掛かり攻撃を加えるとすぐに円陣へ戻る。
「ライツァーの奴が居なけりゃ、こっちのモンだ! 野郎ども!! もてなしてやれぇ!」
「っち… うざったい…!」
前後左右から襲い掛かる敵に対処しきれない彼女は少しずつ傷が増していく。
「沢山殺せば、それだけに認めてくれるはずだ… イヨゼル卿も入ってきたばかりのあんな
ディメスキンとかいう奴を側近から解任して、俺を選んでくれるはずだ! あの野郎… ひょっこり現れて俺の地位を奪いやがった挙句、この傷を負わしやがった… 許せねぇ!!」
「うおっ! 何独り言いってんだい!! それに男の癖にメソメソすんなコラ!」
ギィのやられる姿を見ながら、ぶつぶつと独り言を言い出す。 攻撃を紙一重で回避するとしっかり聞こえていたのか、男に対してきっちり挑発をしておくギィ。。
「何だとクソ女? そういえば… くく… お前か? ルアルネ傭兵団からの助っ人は… こりゃあいい。 お前を殺したとなりゃ俺の株も上がるってもんだ。」
「人を出世に利用するなっての!」
攻撃の速度が速くなっていき、防戦一方になる。それでもきちんと男の言葉が聞こえているのかしっかりと言葉を返す。
「ヒャハハハハハ! 何が最強のルアルネ傭兵団だ! 一方的じゃねぇか!! 弱え弱え!」
「ああ? 今何って言った…」
男の蔑む言葉に青筋を受かべ、男を睨みつける。
「弱え! つったんだよコラ!! まあ、それも仕方が無い事だがなぁ、何せ俺達の相手をするんだから…」
「オラァァァ!!」
「え!? あ!」
「くっちゃべってないでこっちに来い…」
あの武器… 「流星手戟(りゅうせいしゅげき)」だ。 頬を掠めるよう放たれたそれは、その男のつけていた仮面を吹き飛ばし再びその男の素顔が晒される。
男はアレだけの仮面をつけた敵の中、自分だけを見つけ出し事に驚くが、見た事もない武器にその男は激しく困惑する。
「ルアルネが「弱い」かどうか、教えてやるよ。 お前もかかってきたらどうだ? チョイ役雑魚男。」
アレだけべらべら喋っていれば場所を割り出すのは当たり前だ… と投げた「流星手戟」を手元に引き寄せ
まわりの敵はリーダーがやられたのか!?っと言った感じか思わず攻撃の手を止め二人のやり取りを動かず見ている。
彼女の挑発してきたその言葉に目を血走らせ、男は懐から新たに仮面を取り出すとそれを装着し、再び軍団の中に溶け込む。
「そんなに死にたきゃ今すぐ殺して…!!」
「…おい」
「はぁ!? ラ、ライツァー!! いつの間に!?」
苛立つ男は突然声を掛けられ振り向くと自分の部下と交戦していたはずの彼が目の前に立っていた。
「おい じゃじゃ馬女、あちらは片付いた。」
「馬鹿な!? あっちは選び抜かれた精鋭だぞ! ホラをふくんじゃねェ!!」
彼は多少の傷は負っているものの、ダメージが残っているとは思えない。男はこうもあっさりと仲間がやられた事に驚愕を隠せないでいる。
「私は墳墓の奥に向かう。
ヒッキー殿たちが心配だ。さっさとそいつを片付けて、お前も奥へ向かえ。」
「ああ…」
完璧に男そっちのけで話を進める彼は、劣勢の彼女を加勢するかと思いきや、さっさと用件だけ伝えると横をてくてく通り過ぎていく。ギィも加勢を頼むでもなく。返事だけすると武器で応戦を始める。
ライツァーが見えなくなると男は完璧に自分が雑魚扱いされていることに憤慨して、地団太を踏む。
「どいつもコイツも俺をなめやがって…! この女ぶち殺した後は、あのライツァーも後悔させてやらぁ!!」
「お前如きが? 分不相応すぎて笑いが出るよ。」
漫画で言うなら「ブチッ」と堪忍袋の緒が切れた音がするのだろうか? 男は部下に手で合図を送ると全員が身構える。
「死ね!!」
その言葉とともに円陣を組んでいた男達は一斉にギィに襲い掛かる。
「いいね…! 燃えてきたよ!!」
絶望的の状況の中で彼女の不敵な笑みが敵の影から垣間見える。
そして、二人から完璧に忘れられてるニーダは今…
「ほんぎょばあああああああ!!」
遺跡にとどろく無様な悲鳴。無い体力を振り絞り彼は路地を爆走していた。
「…」
「…」
そんな彼を追うのは二人の仮面の男。 白いナイフを持ちニーダを追っていた。彼は戦闘の邪魔にならないようにそそくさとその場を後にしたのだが、当たり前の如くつけられていた様で命を狙われている。
バタバタと走る彼は道の石につまずき、顔面から地面にこけてしまう。
鼻血を出ているのも気付かずに、尻餅をついて男達の方へ体の向きを変え自分の事情を説明する
「ウリは暴力反対派ニダ! 話し合いに来ただけニダぁ! 」
首をブンブン振りながら必死に説得を試みるが、男は関係ないと言わんばかりに距離を縮めてくる。
「おほああああああ! ノゴオオオオオオ!! ぴょるがああああああああ!!」
男が一歩一歩距離を縮めて来るたび、彼は奇想天外な叫び声をあげる。
「…」
「…」
すでに音波兵器と化した彼に、耳を押さえたいのを根性で耐え近づく二人組み。 ニーダを殺れる間合いに入ると、武器を持つ手を静かに振り上げる。
「ウリは食べてもおいしくないニダ! 暴力反対! 分かったニダ! 分かった!お腹減ってるニダね!? これをあげるニダ! ウリの宝物、金色の「1upキムチ」ニダ! 最高級の厳選された食材と職人の技が(r」
涙でくしゃくしゃになる顔を必死に笑みに代えて、奥の手?のキムチを差し出し最後の勝負にでるニーダ。
命がかかっているのだから当たり前なのだが、ここまで無様に命乞いを続ける彼に戦意も敵意も無くなる二人。
(なあ、兄弟。 俺、物凄くアホらしくなってきたんだが…)
(ブラザー…。それは気のせいじゃないぜ。 何かもう… こいつの相手すんの馬鹿らしくなってた
シナー)
こんなの相手している自分達が逆に情けなくなったのか、その瞳からはなぜか涙が溢れてくる。
(…泣いてる!?まさかウリに同情して…?)
男達の不意に流した涙が頬を伝い仮面の隙間から一つのしずくとなって地面に落ちる。その涙を見て盛大な
勘違いをするニーダは土下座を始めると、今度はおいおいと泣き出す。
「ウリには、祖国に残したたくさんの子供達(と実験資材)がいるニダ! ウリがもしここで死んだら、あの子達が不憫でしょうがないニダァァァァァ…!!」
彼はここぞと言わんばかりに身の上話をはじめ、同情を誘う
子供がいるはずが無いのは一目瞭然… 嘘なのは分かりきっているが、もう恥も何もない彼を見て、ついに男達はニーダの相手をするのが耐えられなくなる
(ライツァー将。 シリアスキャラの上にめちゃくちゃ強いってさ…)
(うん… ブラザー… それ以上は何も言うな。 こんなの殺しても手柄にもなりゃしないシナー。 戻るか…)
振り上げた手を下ろし、トボトボと来た道をお互いを慰めあい帰っていく二人組み。
「た… 助かったニダ? フ… フフフ… こ、これもウリの人徳がなせる技ニダ!」
妙に静かになったので、静かに頭を上げて様子を見ると 自分を殺そうとした男達はすで消えていた。
男達に差し出すはずであったキムチが置き去りにされているのを見て、そのキムチのつぼをおもむろに開けるとキムチを一口食べる。
「これはうまい! うますぎるニダ!! これぞウリの宝物ニダ! ウェハハハ!!!!」
遺跡全体にとどろくような笑い声を響かせひとしきり笑い終えると、周りをキョロキョロと見渡し出す。
「…えーと、墳墓はこっちニダね。 さっさと行くニダ。」
兎にも角にも彼が無事でよかった… のか?
そんなやり取りの最中に土埃の中ギィは立っていた。 体中傷だらけになり敵からの容赦ない攻撃を防ぎきれず、体からは流血も見られる。
せめてダメージを最小限に抑えるように防御しても多勢に無勢… 到底受けきれるものではない。
「流石に疲れたね。」
そのセイフとともに土埃は風により散漫し、霧が晴れたように辺りの様子が次第に浮き彫りになる。
死屍累々… 20体近い仮面の男達は地に伏したまま動こうともしない。 いや、動けない…
一人だけ何とか意識をつなぐ事が出来たのは、リーダーだった男。 仮面は粉々に割れ、あたりに散乱し、すでにこの男も今はまともに動ける状態ではない。
「馬鹿な… 女一人に俺達がやられるなんて…」
そう言い残し、意識を失いかける男の胸倉を掴み、ギィは気絶しそうになる男の意識を強引に保たせる。
「おい、これに懲りたら二度とくだらない事を口にするな。」
胸倉をつかまれ、ヒューヒューと息苦しそうにしている男にそう吐き捨てると、地面へ放り投げる。
「ちくしょお… 女の癖に… 俺を…」
悔しそうにうめくとギィに放り投げられ、とうとう気絶して全身の力が抜け地面に大の字になる
「気絶したか…」
「ひいいい!その人死んじゃったニダ!? ギィがついに人を殺したニダ!!」
墳墓に向かう途中で偶然その場に居合わせたニーダは、絶叫する
「あんた、いきなり出てきて頭おかしいのかい? くだらない事いってないで「ふんぼ」に行くよ!」
「わ…わかったニダ。」
戦闘が終わって間もないのに、息もつかさぬ内に行動を開始する。
そして、誰も(恐らくは)死んでいないのに馬鹿騒ぎするニーダに叱咤して「太陽」が待つ墳墓を向かうことになる
「…!! あんたキムチ臭ぁ! もしかして私達が戦ってる中のんきに飯喰ってたのかい!?」
鼻を押さえて素早く距離置くと、ニーダに石を投げつける。
「危な! 侵害ニダ、ウリだって死に掛けたニダ! って、ギィは大丈夫ニダ? 血だらけニダ…」
この程度の傷は慣れっこだ。骨が折れた状態で任務遂行のために戦った事もある。 この程度、彼女にとっては本当に「かすり傷」の様な物だ
「まあ、深い傷を負わなかったからまだまだ余裕だよ。 さて、無駄話はこれまでにして行くよ!」
遺跡の入り口付近に近づいたライツァー将だが、見張りがいたらしく戦闘になっている。
しかし、人数もそれほどでもなく、実力も彼には遠く及ばぬ連中であり終始、ライツァーが劣勢になる事は無かった。
全員叩き伏せて遺跡に入ろうと改めて足を進めようとした時に、後ろから砂煙を上げて男女二人組みが走ってくる。
「じゃじゃ馬女にニーダ殿… 墳墓にたどり着いたか」
「遅れた! すまないね!」
「外の兵士には引き続き、建物に潜んだ敵の掃討に当たってもらっている。 突入するのは我々のみだ。」
「はぁはぁ… ごめんなさいニダ… ライツァー将、うえええっ!」
「うわあ! コイツ、ゲロ吐きやがった!吐きやがった! クッセェ! キムチなんて食うからだボケ! 」
(…一生やっていろ。)
これ以上相手をするだけ時間の無駄だ。 彼は二人の事はもうほっといて先に進むことにするライツァーであった。
「ハアアアアア!」
ライツァーはそう猛ると入り口を塞ぐ岩の扉を槍にて粉砕して強引に中へ進入する。
(おーおー、やるねぇ。 扉が粉々になったよ)
大変な事になったニーダを介助しながら、改めて岩をも粉砕する彼の槍の威力を思い知る。一撃でもまともに喰らえばほぼ確実に人間は立ち上がれなくなるだろう。
遺跡に侵入したライツァー将だが中に漂う濃いある匂いに足が止まる。
「…! この匂いは「血」か…」
「戦闘があったのかい? レフティス参謀にギャシャールが付いてりゃ問題はないと思ってたんだがね… 急いだ方が良さそうだね」
もしかしたらトラップの可能性も考えられる。彼らの安否を確認するのが先決だろう。
そんな事を考えていると、まだ気分が悪そうなニーダが申し訳なさそうに遺跡の中に入ってくる。
「ホントにごめんなさいニダ… 」
「たく… おかげであたいの持ってた水を全部使っちまったよ。 大丈夫かい?」
「もう迷惑かけないニダ… 許して… って、え? 今なんて…」
「ここの通路を一直線いけばいいだけだ。脇道が存在するが無視してもかまわん。」
奥を指差すライツァーの説明に突然げんなりするニーダ。
「えーと。 ま… また走るニダ?」
さっきのアクシデントもあり、正直もう走るのはかなりきつい… 本日二発めの直下型ボムが、もしかすると落ちる可能性も十分ある
「ヒッキーやギャシャールが心配じゃないのかい?」
「がんばって走りますニダ…」
ジト目で彼女にそういわれると、そう返事を返すしかない… ニーダは気合を入れると奥へ走り出す。
ギィもライツァーも走り出しニーダを抜くと二人して一瞬で奥へ行きえていく。
「二人とも… 早すぎニダ… ウリは体力が… えふぅ… ぶふぇ!」
20秒ほど走った所で体力の限界を迎えた彼の足はすでにふらつき始める。
そんな中でずるりと何か足を滑らし前に頭から転倒して、頭を押さえて転げまわる。
「…ん? いやあああああああああ!!!」
一体何が原因で滑ったのか手で確かめると、べっとりと真っ赤な血が周囲に流れている。
「うるさいってんだよ!! それに女みたいな悲鳴上げるなキモイ!」
「ニーダ殿… いい加減にしてくれないか…」
ヒロイン張りのイヤボーンを発するニーダに、半切れのギィと呆れ面をしたライツァーが戻って来る。
「し… 死体ニダァ!」
その言葉に二人が身構え、指差す先を警戒するとその奥で確かに人が倒れている。
「う…これは…!」
「…ッ! こいつは! 案内人をしていた男か!」
鈍器で殴打されたかのようで、激しく流血している案内人の男の周りを警戒しながら近づく3人。
「ひどい… 血だらけニダ… うっ! また、吐き気が…」
位置も左手に持っていたハリセンは丸められ口の中に詰め込まれ、その横には誰も物とも分からないへし折られたPSPが転がっている
ピクピクと痙攣しているところを見ると死んではいないようだ。
「何でコイツがこんな目にあってるんだい? それにこれ…」
「人間の所業とは思えんな… しかも、なんだ? 体中に文字が… 「一生童貞」、「僕の息子はポークビッツ\(^o^)/」…?それにところどころにニーダ殿の名前も…」
「まるで、呪詛だね… 体余す事無く書き尽くすなんて… コイツはむかつく奴だったけど、これはさすがに哀れだね。油性マジックって… 」
体中に書かれた落書き(油性マジック)をみて、そろって後ずさりする3人。誰がこんなことをしたのか分からないが、こんな事をする輩を敵には回したくないものである。
「なおさら、ヒッキー殿達が心配だ! 先へ急ぐぞ!」
「言われなくても分かってるよ!」
「まってニダ~!!」
再び走り出し、奥へ進む3人だった
最終更新:2009年05月03日 01:09