たった少し希望と不器用な優しさと◆UcWYlNNFZY
ぎゅっと。
ぎゅっと目を閉じる。
力強く。
ぎゅっと。
ぎゅっと手を握る。
力強く。
汗が全身から吹き出てくるのを感じる。
落ち着け。
落ち着け。
ここで物音を立ててはいけない。
見つかってはいけない。
向かってくる者が安心であるとは言えないのだから。
今私は何も武器を持っていない。
だから会うことは極めて危険。
だから、ここで会ってはいけない。
生きなければならない。
私はここで死ぬわけにはいかない。
圭一達と脱出しなければならないから。
皆と会わないまま死ぬなんて嫌だ。
絶対に嫌だから。
だから
落ち着け。
落ち着け。
落ち着きなさい。
なのにこんなにも心臓がバクバクと音を奏でている。
かすかにしている息がとても荒い。
駄目だ。
こんなのじゃ気付かれてしまう。
カツカツと足音が聞こえてきて、また段々その音が大きくなっていく。
それに連動するかのように心臓の鼓動も激しくなっていく。
私の心臓の音が足音の主に聞こえるんではないかとさえ錯覚してしまう。
大丈夫。
大丈夫。
そんな事はありえない。
今の所完璧に隠れてる筈。
大丈夫よ。
大丈夫。
未だ、希望は潰えていない。
圭一もレナも魅音も沙都子も詩音もきっと大丈夫。
皆が居ればきっときっと。
運命だって覆す事できる。
だから私もここで死ねない。
希望を信じろ。
古手梨花。
不意に圭一達の声が頭の中に響いていく。
わいわいとやかましい声。
部活の時のような楽しい声。
皆を気にかけるような優しい声。
思いやりが溢れているやすらかな声。
声、声、声。
沢山の声。
それが何故だか私を落ち着かせていく。
あれだけ激しくなっていた胸の音が静かになっていく。
うん、もう大丈夫。
大丈夫。
ありがとう、皆。
足音も、もう聞こえない。
きっと気付かず立ち去っていたのだろう。
良かった。
本当に良かった。
ふぅと息をつく。
一先ずの危機が去った事に安心して。
とりあえずここから逃げよう。
まだ周りに居るかもしれない。
そう想って目を開ける。
だけど
「……ひっ!?」
そこには黒衣の男がわたしを見下ろしている。
サングラスをかけていて瞳が見えない。
故に何を考えてるか分からない。
可笑しい。
足音は聞こえなかったのに!?
何故なの!?
私。
ここで終わるの?
そんなの。
そんなの絶対に嫌だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
何や……?
ワイは辺りを見回す。
さっきから気配がする。
せやけど姿は見えへん。
隠れてるのかせえへんけど……
甘い。
あれで隠れ通すつもりなんか?
そんなら甘すぎる。
バレバレや。
見つけてくださいーと言っとるもんや。
馬鹿なら騙せるかもせんけど……ワイ相手では無理や。
異能の暗殺集団「ミカエルの眼」、ニコラス・D・ウルフウッド相手には無謀や。
ワイは気配がする方に向かって歩き出す。
足音を立てずに。
程なくしてワイは隠れている主を見つけだした。
何や四角い鉄の箱の陰にひっそりと。
あっちは眼を瞑って阿呆な事に未だにワイに気付いておらへん。
そう
ガキがそこにおった。
ちみっこい姿をし震えとる。
殺し合いが怖いんやろか。
さて、ワイはどないしようかね。
ぶっちゃけめんどーや。
錯乱しとるなら更に落ち着かせんといかんし。
何より、もし一緒に行動しようにもえらい足手纏いにしかならん。
今のワイには武器もないしな。
関わらんほーがいいだろ。
あっちが接触したいならとっくに顔出しとる筈やしな。
殺気も出しては居ないし。
ほな、決めた。
ワイは踵を返した。
悪いが知らん。
トンガリとさっさと合流せんとな。
そう思い歩きだそうとした瞬間
あの坊主が血塗れて息絶えてる姿がフラッシュバックした。
そしてあの嬢ちゃんが死体になってる姿までも想い浮かんでしまった。
……っ!
あかん。
あかんぞ。
メンドーや。
武器もない。
そんなワイに穣ちゃんを守れる訳があらへん。
無理にきまっとる。
せやのに。
おい、坊主。
仇はとったるとはいったがこんな時まで出てくるなや。
ワイは余計なもんは背負いたくないんや。
せやけど……
……ちっ。
あーもう。
恨むで、坊主。
それに、嬢ちゃん。
隠れんならちゃんと隠れろや。
見ちまったさかい、関わってしまったやないか。
接点もってしまったら……仕方ないやないか。
ああ、クソ、イライラする。
そしてトンガリ!
本来そういうのはオドレの役目やないか。
何やってるんや。
面倒事ばっか押し付けおって。
あーなんやと?
任す?
ふざんけな、アホ。
ニヤニヤ笑ってんな。
後でぶん殴るからな。
……ったく。
えらい迷惑や。
そして嬢ちゃんの前に着く。
未だに気付いておらへん。
着たはいいがどないしよ……
そう思った矢先嬢ちゃんが眼を開ける。
眼を大きく開け震えている。
どうやらワイに驚いてらしい。
そりゃそうか。
まぁええ。
「おい、嬢ちゃん……そんなとこでなにしとるんや?」
「……何もしてないわ」
それでも嬢ちゃんは虚勢を張って応える。
まぁええか。
色々考えてたどめんどい。
もう、これでいい。
「何もしてないなら……ついとこい。ワイはニコラスや」
「……は?」
そう応えて嬢ちゃんに背を向け歩き出す。
もーめんどい。
ワイの役目やないけ。
トンガリ、お前がやれや。
……ったく。
甘くなったな。
トンガリ
……恨むで、ホンマ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
何だかよく分からない。
ニコラスと名乗った男は殺し合いに乗ってないらしい。
無愛想についとこいと。
ついてくか迷ったけど……
独りよりは良かった。
危害を与えないみたいだし。
殺せるならあの時殺してるはず。
安易な信頼をするわけじゃない。
でも……独りであるよりは良かった。
そんな訳で私は彼を追っかけている。
しかし会話も殆ど無くのしのしと歩く彼の背を私は追っかけるだけ。
あった会話は武器はあるか?という問いのみ。
私はあるのは、服、鍵、そして楽器のみだった。
無いと応えるとそうかしか言わなかった。
本当、無愛想。
その男の背は何処か怖くて無愛想。
なんかついてくのを止めたくなるぐらい。
どうなるのかしら……私。
弱気になっちゃ駄目よ、私。
まだ、死ねないのだから。
皆に会うまで、絶対。
私は、死ねない。
「……ぶっ……な、何?」
そう考え事をしていたら立ち止まってたニコラスの背にぶつかる。
何で彼は立ち止まってるのだろう?
そう思った矢先
「……うまいで? これ」
そう言われなんかの果物を渡された。
彼はまた何も言わず歩き始める。
な、何なのよ、もう。
私は渡された果物を食べる。
あ……美味しい。
そう思ったら何故かとても安心できた。
前を歩く彼の背が何処か優しく見えた。
そうか。
これが彼なりの優しさかもしれないんだとそう思う事ができて。
途端に嬉しくなって。
私の足取りは軽くなってきた。
皆。
私は大丈夫。
だから、皆も頑張って。
絶対に。
絶対に。
会いましょう。
【F-2/遊園地入り口前/一日目/早朝】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 (少々の不安はあるが前向きに)
[装備]:
[道具]:支給品一式、王の財宝(の鍵剣)、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム
[思考・状況]
1:ニコラスと行動
2:その後に遊園地か駅にいると思われる人に対してもどうするか
3:必ず生き残る。
4:圭一達を見つける。
5:安全な場所に行きたい。
6:ネズミ?
※王の財宝の使い方(発動のさせ方)を分かっていません。(説明書もありません)
※ウルフウッドをやや信頼。
※電車に誰か(
橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。
※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:健康
[装備]: [道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ) デザートイーグル50AE(使用不能)
SPAS12(使用不能) スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険
チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
1:襲われたら返り討ち、必要以上に危険な事に首は突っ込まない。
2:古手梨花を守る
3:ヴァッシュとの合流、リヴィオとの接触
4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。
5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー
6:なんや今の悲鳴は?
7:この木の実結構ウマイ
【備考】
※リヴィオは自分が知っているリヴィオだと思っています。
※まだループには気づいていません
※参戦時期は未定です
【支給品解説】
ミッドバレイのサクソフォン@トライガン・マキシマム
ガンホーガンズの一人、ミッドバレイ・ホーンスリークの武器である楽器。
中には内蔵の銃が仕込まれている。
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最終更新:2012年11月28日 01:44