以下の記述は、この項の著者:開米瑞浩の私見です。学界の定説のようなものではまったくありませんのでご注意ください。また、
黒木玄 @genkuroki氏コメント:「そもそも掛算にはAGとかTOの二つ以外にも多彩なイメージがある。異なるイメージを自由に使い分けたり、同じ問題に同時に複数のイメージを適用したり、なんでもやり放題というのが基本。あたかも基本イメージが二つしかないように思った人は算数を理解していない」
↑このコメントにはこの項の著者、開米もまったく同意です。この項の内容は、「なんでかけ算順序固定派の人たちってどうしてこうもしょーもないことにこだわるんだろう? 理解しがたい・・・」と感じている方のために、「あ、こういう発想なのか!」と、順序固定派の考え方の根底にあるものを感じ取ってもらうために書きました。それ以上のことは意図していません。
では、以下本文です。
「掛け算を認識する2種類のメンタルモデル」
人間が世界を認知するときは、外界から得た情報を、自分の持つ「メンタルモデル」に当てはめて解釈することで理解にたどり着きます。この「メンタルモデル」の個人差が相当に大きい場合もあります。
同一の現象を観察しているにもかかわらず、理解しがたいほど違う結論を出す人がいた場合、メンタルモデルの違いが隠れている可能性を考慮に入れるべきです。その差を自覚していない人同士が話をすると、よくこういう現象がおきますので。
「かけ算の順序」論争についても、「かけ算」という単純な操作に関して2つの異なるメンタルモデルが存在している可能性があります。双方でまったく話が通じないのは、お互いにこれを自覚しないままで話をしているから、かもしれません。
そこで、参考までに「かけ算を解釈する2種類のメンタルモデル」を書いておきます。(なお、この2種類しかない、ということではないのでご注意ください)
それは
1.アレイ・グリッド (AG)モデル
2.ターゲット・オペレーション (TO)モデル
の2種類。それぞれどういうものかを説明します。
■アレイ・グリッド モデルとは
簡単に書くとこういうモデルです。
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これが、アレイ・グリッドモデルによる思考。途中で「n行m列」のアレイ状に並べたイメージへ抽象化されるので、こういう名前をつけました。(ちなみに、ここでは「アレイ」も「グリッド」も大まかに言うと同じ意味で使っているので「アレイモデル」とか「グリッドモデル」と呼んでも可ですが)
このモデルで考える人にとっては、いったん「アレイ」という無単位の配列イメージが得られるため、「順序はどうでもいい」ということが自明な結論になります。
■ターゲット・オペレーション モデルとは
「ターゲット」に対して「操作(オペレーション)」を行う、というイメージで考えるモデルです。
たとえば、仮に「操作を加える」という演算子を op で表現するとすると、「水を加熱するとお湯になります」という文はこんな式で表せます。
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実際、このようなモデルで認知できる世界もあるのは確かです。そして、このようなモデルのもとでは、「当然の結論として」以下のような規則が成り立ちます。
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もし「かけ算」という操作をも暗黙のうちにこのようなモデルで認識していれば、「当然の結論として」順序固定の原則やサンドイッチ記法の原則を認める、という考え方になることでしょう。
当方にとって気になるのは、「かけ算の立式順序は固定すべき」と主張する方は、このTOモデルを無前提に正しいと信じ込み、AGモデルはありえないし使ってはいけない、と考えているように見受けられることです。
実際には、わかっているならAGでもTOでもあるいはその他の何かでも、使いやすいものを自由に使って答を出していいはずである・・・にもかかわらず、「1あたり数×いくつ分」以外の立式順は認めず、しかも「1あたり数」の解釈も特定のものしか認めない、というのはおかしいでしょう。
実際のターゲット・オペレーションモデル使用例
最終更新:2015年11月22日 11:49