量×量モデルは同数累加モデルよりも難しい?

 (この文書は、掛け算順序問題に関する、開米瑞浩@kmic67による個人的論考です。
 ご意見などはtwitter #掛算 タグつきで @kmic67 へリプライをください。
(この文書のPDF版は→2012-0120-DosuRuika.pdf

 まずは主張1と主張2をご覧ください。

  • 主張1:子供にかけ算を初めて教えるときは、「1つ分の数」を「いくつ分」という形で教える。問題状況の理解を測る上でこの区別は重要だから、a×bとb×aは意味が違うとするべきだ
  • 主張2:長方形に並べればa×bでもb×aでも同じなのは自明でしょう。この程度のことは小2でもわかる。どうして順番にこだわるの?

 主張1のほうは、実質的には1960年代に「かけ算の導入時の教え方」として主流だった「同数累加」方式の変形です(それは違うと言う人もいるでしょうが、その議論はまた別途)。
 さらにこの両者はそれぞれ

  • 主張1 : 途中の「過程」に注目した、同数累加モデル
  • 主張2 : 最後の「結果」に注目した、量×量モデル

 という主張になっています。

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 さてここでもう1つ考えておきたいのは図中の上下の間にある「○○操作」の部分。
 かけ算順序固定方式に否定的な立場としては、

同数累加すればそのまんま量×量になるんだから
順序可換でいいじゃねーか。
なにくだらないところにこだわってんだよ

 と言いたくなるところですが、「同数累加すればそのまんま自動的に量×量であることがわかる」・・・というのはおそらく正しくないのです。
 「同数累加」という状況を理解したとして、それを「量×量」として解釈できるようになるためには、その間に「○○操作」というワンクッションが必要になります。
 それは何かというと、

  • 「構造化」操作
  • 「抽象化」操作

 の2つ。

 「構造化」というのは要は「タテヨコに整然と長方形の形に並べること」です。
 「抽象化」というのは、たとえリンゴやミカンの計算だったとしても、その並べる操作を「おはじき」のような代用物で表すこと。

 そういった「構造化」「抽象化」のクッションを置いて「量×量」モデルに馴染んでおけば、何の問題もなく「かけ算の順序には意味がない」ことがわかります。また、そのほうがその後の「算数・数学の力の向上」という意味では非常に大きな意味を持ちます。

 だから、

「最初から、長方形おはじき(量×量モデル)で掛け算を教えるべきだ」

 と、私は考えるわけですが、一方でこういう主張をする方もいます。

長方形におはじきを並べて、縦3×横4でも縦4×横3でも
同じになるよね、という説明は小2には難しすぎる

 率直に言いますが、どこが難しいのかさっぱりわかりません。一目見れば明らかな話だと思いますが。
最終更新:2015年11月22日 12:23