「ただいま帰りました。すみません、仕事を片付けていたら遅くなってしまいました。」
「
おかえり。遅かったな。心配したぞ?」
カイムが目覚めて二日。
学校へ仕事にいってはいるが、体調面の経過をみるため暫くは寺に滞在することになった。
勿論シキもその間は寺にいることになっている。
「おかえりなさいませ。お疲れ様です。」
奥から誰かがぱたぱたと足音を鳴らして玄関に来た。
カイムはその人影を見、微笑んだ。
「ああ、撫子さん。まだ起きていらしたのですね。」
「はい。あ、荷物もちますよ。」
「ありがとうございます。」
撫子、と呼ばれたこの女性。
綺麗な紺色の髪と流し模様の着物が特徴的だ。
その瞳の色は、血のような赤。
そう。彼女も春美の能力によって呼びだされた「
百物語組」の一人だ。
「それにしても大分遅いでしょう。僕が眠ってる間もつきっきりだったと聞きましたし、お体、大丈夫ですか?」
「ええ、平気です。ありがとうございます。」
優しく美しい微笑みは、見るものすべてを安心させるようだった。
「相変わらず親切ですね、カイムさんは。」
「そうですか?『先に語られた方』を敬うのは当然ですよ。親切にしない理由もありませんし。」
「でも、百物語組には皆敬語ですよね。」
「それはまぁ、僕自身あまり強くありませんからね。尊敬の意ですよ。」
そこまで言って、カイムははっと顔をあげた。
「ああ…、すみません。そう言えば撫子さん、男性にあまり親切にされるの、好きではありませんでしたよね…。」
「いえ、親切が嫌いなわけじゃありませんから。」
そういう撫子の表情は、どこか悲しげだった。
「…なぁ、カイム。あとどのくらい寺にいるつもりなんだ?」
暫く二人を見ていたシキが声をかけた。
「そうだなぁ。あと3日はいた方がいいかもしれないね。」
「そうか。まぁ、俺は何処でもいいんだけどな。この寺広くてよく迷うんだよ。」
「はは。確かに広いから、僕も覚えるのに時間がかかっちゃったんだよね。」
楽しげに話すカイムとシキを、撫子は黙って見ていた。
「あ、もうお部屋ですね。はい、御荷物です。」
「ありがとうございます。」
カイムは襖をあけながら、荷物を受け取った。
「今日は早めにお休みくださいね。」
「はい。撫子さんも、適度に睡眠と休養は取ってくださいね。」
「わかりました。」
互いに微笑み合うと、カイムはシキと共に部屋に入って行った。
「…なぁ、カイム?撫子さん、だっけか。何で男が親切にすることが嫌いなんだ?」
「いえ、彼女もすこし、「訳あり」でしてね…。」
カイムはそれ以上、何も言わなかった。
最終更新:2011年07月19日 22:06