「……で、何なんだあんたは?」
突然の来客を家にあげて、まず僕が尋ねたのはそれだった。返るは、
「おーぉっと、申し遅ーれました。僕はー
赤銅 理人とー言います」
変なところで間延びした、苛々する喋り方と、
「壬道 外芽です」
平坦な、事務的な返事。何だ、この対照的過ぎる2人組は。
「……………何の用だ?」
「やー、なんとーなく」
「……成り行きです」
一体何なんだ。その言葉ばかりが頭の中でリフレインして、思考がまとまらない。ていうか、本当に何のつもりなんだこいつらは。
「……アオイ、後頼んだ」
「は、はい。……えぇと、壬道さんでしたわね? どうしてこの方と一緒にいらっしゃいますの?」
アオイが尋ねたのは、恐らく連れて来られたのであろう外芽に対しての質問だった。このテンションの違いからして、理人の方が勢いで引きずって来たとみていいはずだ。外芽の答えは、
「別に……ご一緒しませんか、と言われたから。それだけです」
「……あの、危険な方ではないか、とは?」
「思いましたけど、どうでもいいですよ。どうせ、神は自分を見捨ててますから」
自暴自棄、というのとは少し違う気がする。むしろ、そういうものだと達観してしまっているような感じがした。
「言いえーて妙かもー知れへんなぁ。神ーはワーイらを見捨てたーと言うのは」
「は?」
突然口調の変わった理人に、思わずそんな声が出た。冗談抜きでなんだ、コイツは。
「やー、神さんにとーっても、ワシらのそーん在はあるしーゅの『予定外』かもわかーらんけぇな」
「……よく、わからない」
「気にするという行為は無意味です。どうせ、自分達には関わりのないことです」
外芽は外芽で投げ遣りというか、何と言うか。
「……あの、お茶でもいかがです?」
「やー、おかーまいなく」
「お任せします」
アオイの気遣いも空回り気味だ。まあ、こんな相手には敵としても味方としても出会った事がないから、仕方がない。
ホウオウグループの奴らや
ヴァイスも大概ブッ跳んでいたけど、この二人は別の方向に極端だ。
「……で、では、入れて参ります」
言い置いて、アオイは足早に台所に向かった。残されたのは僕ら3人。
「…………」
「………」
「……………」
言う事がなくなって沈黙が流れる。とりあえず、頬杖をついたまま、思った事を聞いて見た。
「……普段はどこで何してるんだ?」
「んー、まーあ、色々ーと」
「さあ……」
「……じゃあ、何歳なんだ?」
「そーれはシークレッートというーやつでんがーな」
「どうでしょうか……?」
はっきりしない答えしか返って来ない。特に理人の方は、言いまわしのせいで聞いていると苛々する。せめて口調くらい統一しろよ。
「あ、あの、お茶が入りました……」
どこかおどおどしながら、アオイが戻ってきた。二人の前に湯飲みを置き、自分は盆を抱えて一歩下がる。
「おっー、これーはどうもー」
「………」
理人の方はいそいそと飲み始めたけど、外芽はじーっと湯飲みを見つめるばかりだ。警戒している……わけではなさそうだけど。
「………」
「………飲まないのか?」
返事は無言。だああっ、一体何を考えてるんだ、さっぱり掴めない。
内心で頭を抱えていると、飲み終わったらしい理人がだんっ、と湯飲みをテーブルにおいて立ちあがった。
「そーれでは、小生はこーの辺りで。どうも、夜分ーにお邪ー魔いーたしまーした」
言うや否や、玄関に向かってドアを開けると、たかたかと走って夜の闇に消えてしまった。
残された僕達が呆然としていると、しばらくおいて外芽も立ち上がり、
「……では、お邪魔しました」
言うと、すたすたと外に向かう。が、そこでやっと気付いた。
―――裸足?
「あ、あの」
「?」
「靴は、どうなさいましたの?」
「靴は、ない」
返答は一言。背を向けたかと思うと、もうそれきり一切口を開かず、外に出て後ろ手に扉を閉めてしまった。
「一体何だったんだ……」
(いかせのごれを放浪する、2人)
最終更新:2011年11月10日 12:40