「――あんたら賭けすぎだって。もうやめとけ」
「なんの!ひとり勝ちは許さん」
「次は負けない!」
「つぎは麻雀にしようぜ」
「ルール知んねーんだけど」
「何だと……じゃあポーカーだッ」
「……」
つまんねー。俺は何をやってんだろうか。
――数時間前、学校にて。そいつの誘いから始まった。
「
トバネ!試験どうだったよ」
「聞くまでもねーだろ、どーせ高得点」
「うぜー」
「あんたが聞いてきたんだろが!」
「まーまーそれより、試験終わったことだしよ、ギャンブルしね?」
「は?ギャンブルってあんた、俺ら未成年だろーが」
「まっじめだねー。別にパチ打ちに行くってわけじゃねえよ。
あいつん家でテキトーにいろいろゲームするだけ。お菓子でもお金でも賭けてな。
お前運イイから独り勝ちできるんじゃね?」
「負けると思う相手を誘うなよ馬鹿か。つか俺がこの体質嫌ってるって知ってるよな」
「そんなエラソーなウサギさんをおれたちはぶちのめしたい!全力でぶちのめしたい!」
「あんたな……。どーせ俺が……」
「まーまーよく聞け。トバネ、お前のことだ、賭事とかやったことないだろ?」
「そりゃ、ねーけど」
「じゃあやってみようぜ!それともやったこともないモノをツマンナイって決め付けるのか?」
「……」
まー、あそこまで言われちゃ来るしかねーよな。
そして当然の如くほぼ全勝しているわけだが。誰だよポーカーは心理戦ッて云ったのは。そんなおもしろいモノじゃあなかったぞ。
「くそーまたかよ!」
「ウノでも勝てないかー」
「次だ次!」
この3人も、種目は色々替えているとはいえよく挫けないもんだ。というか降りるべき勝負も在ることを覚えろ馬鹿か。俺に勝つまでやるつもりなのか?
「はいはい、なんでもかかってきやがれ、返り討ちにしてやんよー」
「棒読みしやがってこいつめ」
「だがそろそろおまえの運もさすがに使い果たすころじゃあないのかね、トバネ君!」
「それじゃあ麻雀で勝負だッ」
「ルール知んねッつってんだろが!」
解放されたのは、すっかり暗くなった後。疲れた1人が眠ってしまい、それを「ギャンブル会場」に置いて、俺を誘ったヤツと共に帰ることになった。
「まさか終電?」
「……通過が一本あってからの終電だな」
「高校生が出歩く時間じゃねーだろ……」
「……」
「――だから言ったじゃねーか。拗ねるなって」
「……」
「なんだよ。賭けすぎたか?どーせこんなに菓子あっても食えねーしなんなら返すぞ」
「……」
「おい?」
「……おまえのそういう所が嫌いだわ」
「あ?」
「勝ったんならもうちょい嬉しそうにしろよマジうぜぇ。そんなにつまらないのか、俺らと遊ぶの?」
「いや、それは……」
「もういーや。どうにもならないことぐらい、いくらでもあるって教えてやるよ、こんどこそ」
「は?……おいこら何すんだ危ねー」
ヤツが俺を押してくる。意味が判らないままホームの端へ追いやられた。おいおいどういう展開だ?黄色い線越えてるぞ。次の電車が通過快速じゃなけりゃーまだマシな冗談なんだがな。笑えねーぞ。
「ほらアナウンス聞こえたろ。電車来るぞ。ふざけんのもやめとけって。誰か来ても知んねーぞ」
「だからそれがうぜぇっての」
まさか本当に押されるとは思っていなかった。だからいとも簡単に、次の瞬間にはレールの上にいた。思ったより高さがあるんだよな、あれマジで痛え。ぶつけた頭を抱えて、やっと起き上がったらライトに照らされて、俺のいるレールを迷わず突っ走ってくる影が逆光の中に見えて、
俺はホームの上に戻っていた。
鉄の匂いがする。ヤツの声がする。躰が重い。どうやら今のは白昼夢とかじゃねーらしい。轢かれた?死ぬのか?この俺が?
ありえねー。どーせなんかこう奇跡的に打ち所が良くて助かるとかそういうアレだろ。
……。
前言撤回。死ぬわ俺。なんか視界に入っちゃいけないパーツ的なのが見えたわ。そうだな、確かにこれはどうにもならない。
「……ッ」
残った腕を伸ばして、俺を殺したヤツの名を呼ぶ。声が出せない。あいつも何か言っている。判らない。手も届かない。痛い。痛い痛い痛い厭だ!
「…………っ、……!」
わかった。俺があんた達を苛立たせていたことも、この痛みがどうしようもないことも。よく解った。悪かった。俺が悪かった。痛い。痛いんだ。助けてくれ!
――ああ、そうだ。
俺ももともと"異常者"だ。似た話は、聞いたことがある。
死んだはずの生きている俺。もとどおりの身体。さっきまでの俺みたいになっているヤツと、俺の……あの力。
そう、似たような話を、聞いたことがある。俺も運良く、"ソレ"を得たってだけのことだろう。
「おいおい……」
ふざけんな。"死ぬ"すらなんとかなっちまうなら、もうそれ以上なにもねーだろ。
俺が殺したヤツの名を呼ぶ。今度は当然、ちゃんと言えた。
悪いな。あんたや電車程度じゃ駄目だった。そう、所詮これは"イージーゲーム"だ。
「やっぱり、つまんねーわ」
俺の意識は、其処で途切れた。
"牧野兎羽の発症"
でも、あの時の、あの一瞬の感情は……
「この俺が、助けを縋った?」
……。
……もう一度。叶うなら。あの感覚をもう一度――
最終更新:2012年02月15日 14:11