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始ノ章_ユズキ編

【NGシーン】

「ねーねー、ユズキー」
「・・・・・・」
ユズキってばー」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

ヒュッ
ズドォォォォン!!!!

「ちょ、トキコ何してんのォォオ!!?」
「だってユズキ、起きないんだもん。」
「ユ、ユズキ君大丈夫・・・って凄いめり込んでる!?」



~ここまでNG~



 授業が終わったにも関わらず、机から離れず黒板を真っ直ぐ見つめる少女がいた。
…いや、正確には“彼”であるが、女のような顔立ちをしているので、パッ、と見だけでは
勘違いされそうだ。そんな微動だにしない彼を見て、周りの生徒は奇異の視線を送っており、また
事情を知る者はいつものことだと横を素通りしていく。どちらにせよ声をかけようする者はいなかったのだった。
すると、人混みの中から赤髪の少女が出てきて、ヒョコヒョコと彼へと近付いてきた。トキコである。

「ねーねー、ユズキー」
「・・・・・・」

 ユズキ、と呼ばれた青年はトキコの声に反応せずただ真っ直ぐ前を見ているだけだ。
負けじとトキコは肩をゆすってもう一度声をかけてみた。

「ユズキってばー」
「・・・・・・」

 しかし、ユズキからうんともすんとも声は発せられなかった。

「・・・・・・」

 直座不動のユズキにしびれを切らしたのか、トキコは彼から一旦離れてしまったのだった。
しかしすぐに彼の元へと戻ってきた、片手には薄い教科書を丸めた棒が握られている。
トキコはそれを振り上げると、勢いよくユズキの頭へと落とした。
もちろん、間違って頭をふっ飛ばさないように力を加減して。

スパーン!

 教室内にいい音がすると、今まで動かなかったユズキが揺れて、叩かれた頭を擦った。
どうやら目を開けたまま寝ていたようだった。
器用だなぁ、と変にトキコが感心していると、ユズキは軽く欠伸をし、目を擦りながら
ようやく声を発したのだった。

「…痛い」
「目開けたまま寝るからでしょー。ねー、ユズキ」
「何?」

 眠そうなユズキに構わずトキコはすぐに質問をし始めた。
その時、彼女の眼が爛々としていたことは誰も気付かなかったであろう。


「ユズキって、何でそんなに絵上手いの?」
「何でっつってもなー」
「ねー、何で何でー?」

 子供のようにせがんでくるトキコにユズキは少し困った表情を浮かべた。
しかし、ややあってから自分なりの答えを彼女に告げたのであった。

「…好きで毎日描いてるから…かな?」
「ふーん」
「そんな事聞いてどうすんの?」
「さあー?どうなんだろうねー」

 トキコはいつものように、はぐらかすフリをした。
喋ったところでこちら側が利益を得ることなど何もないからだ。
それに馬鹿正直に話したところでケイイチたち…ケイイチやアースセイバーに所属する学生達に
そのことが知れ渡れば、今後この場で活動するのは難しくなってしまうだろう。
だから、子供のように勝手気ままに振舞うのだ。何よりそうしたほうが良いのだと、アイに
言われたのだから。
 興味を失くしたユズキはトキコから視線を離すと、ため息混じりに彼女へ告げた。

「…自分、寝るね」
「寝るんなら普通に寝ればー?」
「トキコには関係無いじゃん」
「あるよー。起きてるか分かんないじゃん」
「自分の勝手だし。そんなのどうでもいいし、興味ねーもん」
「むー…」
「おやすみ…」

 そう言ったきり、ユズキはまったく反応しなくなったのだった。
トキコが少し顔を近づけみると、規則正しい寝息が聞こえる。
本当に、目を開いたまま寝ているのだこの人は、と少しだけトキコは驚いた。
しかし、それ以上に彼女は彼の持つ能力が頭の中で引っかかっていた。
別に能力者と断定したわけではない、だがあの躍動感のある、かつリアリティのある絵は
上手いというレベルで済むものだろうか。まるで今にも動き出しそうな…

「…やーめた、頭痛くなるし。」

 はぁ、とため息混じりにそう呟くと鞄を持ち、B子に飛びつこうと走り始めたのであった。
もちろん、子供としてのトキコに変わって。










始ノ章_ユズキ編



作者 登場人物
しらにゅい トキコユズキ

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最終更新:2013年06月14日 21:38