アットウィキロゴ

『自由』(仮)

「ちーっす!只今戻りました!」

ウスワイアに入ってすぐにある、アースセイバー受付場にバイクに跨がったレーサー姿の女性―――シノの声が響いた。
「………」

たまたまそこに居合わせた獏也は少し唖然としたが、すぐに溜息を漏らした。
「ん、どうしたんすか?獏也さん」
「シノ…」

また一つ溜息を漏らした獏也はこう続けた。

「せめてバイクに乗って突っ込むのはやめてくれないか…?」

獏也の視線の先には、バイクに乗っていたシノによって、粉々に割られたドアガラスが床に散らばっていた。



「すいません…コレ、3回目っすよね?」
「…5回目だ」

ドアガラスの破片を箒で集めながら、シノは獏也と会話をする。
「ところで、悪夢の研究は進んでいるのか?」

ドアの修理を進める獏也は、シノにそう切り返した。
「んー…微妙っすねぇ」

獏也の言葉に渋い顔つきになるシノ。

「そもそも、『何故、悪夢が出現したのか』が分からないから、調べにくいっつーか…」
「まあ、気付いた時には既に広がり始めたからな」
「つか、エイジ博士だって分からないんですから、アタシが分かる訳ないっすよ」
「アースセイバー一の天才が何を言う」
「天才じゃないっすよ。この頭脳は悪夢によるものですから…」

悪夢―――死に対する適応能力とも呼ぶべき特殊能力。
シノもまたその能力の持ち主だった。
幼少時代、とある研究所で実験体として、過酷な日々を過ごしていたシノはある日、天才的な知能を持つ人間を人工的に作るという研究実験の下、脳を改造させられ、知識を詰め込まれた。
だがシノの脳はパンクし、それにより命を絶たれ、実験は失敗に終わった。
が、その直後―――シノは生き返った。
悪夢の力を得たのである。
悪夢の力を得た彼女は、殺人と破壊の知識を使い、研究員を殺し、研究所を破壊した。
その後、建物の路地裏でうずくまっていた所を、ウスワイアに保護されたのである。

「シノはいつからその研究所にいたんだ?」
「もう物心ついた時にはそこにいました」

早口で話すシノ。
やはりいい思い出ではないのだろう。

「あそこに比べたら、ここなんか全然マシっすよ」
「窮屈だと思わないのか?」

獏也の言葉にシノはきょとんとした表情を浮かべた。

「どうして?」
「どうしてって…ウスワイアに保護されれば、自由に生きる事が出来ないだろう?」

またきょとんとした表情を浮かべるシノ。
そして明るい笑みを浮かべてこう言った。

「あそこは『人として生きる』自由が無かったんですよ?でもここにはその自由がある。それに…」
「…それに?」
「最高の仲間がいますから」

そう言うシノの表情は、晴れ晴れとしていた。



作者 登場人物
十字メシア シノ七篠 獏也

投下順

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年06月12日 21:59