「・・・やっぱりか。どうも嫌な予感がしたんだが」
その日、
蒼崎 啓介は橋の向こうの交差点を見ていた。今日、彼が帰り道に通ろうとしていた道だ。
血の様な赤い目線の先には、横転したダンプカーと、黄色いテープ、そして忙しく動き回る警察官と無数の野次馬がざわめいていた。
昔からこう言う事がよくあった。どこかに行ったり、何かをしようとしたりすると、時々頭の中に奇妙な光景が浮かぶ。
行こうとしている場所、やろうとしていることの、その後の景色が。しかも大体ろくなことが起きない。
昔は錯覚だと思った。だが、その認識は程なく改められた。その「景色」は、確実に現実となったからだ。
そして、それを止めることは難しいこともわかったからだ。だから啓介は、その「景色」に従って生きている。・・・・・・もっとも、これ自体あまり気に入らないが。
なぜなら、それは未来に従う事になるから。
(俺を縛れるのは、俺だけだ)
誰であろうと、何であろうと、自分を束縛し、支配することは許さない。
死んだ方がマシだ。
(あいつ、以外には)
たった一人、除いて。
(真衣・・・・・・)
行方知れずの、妹。・・・今日も、見つからなかった。
(学校が崩壊してから随分経つな・・・今日も休校か・・・)
何日か過ぎた。本来学生の啓介だが、学校には行かず自室で寝転んでいる。ちなみにここはバイト先の工場の寮。今日はバイトも休みだ。
行くべき学校は、ない。数週間前に災害で崩壊し、それから復興のめどが立っていない。
だが、
(嘘、だな)
啓介は知っている。その少し前、電車のような虫の様な、奇妙な機械と友人達が戦っていたことを。
友人たちが、説明のつかない不思議な力を持っていたことを。
そして恐らくは、学校は彼らの戦っていた「誰か」に壊されたということも。
(まあ、どうでもいい)
もっとも、そんなことはどうでもいいことであった。啓介にとって、今重要なことは一つ。
(真衣を、取り戻す)
2年前に突然姿を消したきり、未だに行方の知れない、妹を探しだすこと。
そのために、今自分はいる。そう信じている。
その日はあいにくの雨だった。啓介はこの日、クラスメイトの2人と喫茶店で偶然顔を合わせていた。
一人は亜麻色の髪を肩で揃えた少女。一人はバンダナでオレンジの前髪を留めた少女・・・失礼、少年。
「珍しい組み合わせだな。
コロネ、
ハヤト」
「そりゃこっちの台詞だって。雨の日にお前が外にいるなんてよ」
「んー、でもそれもありかもね。啓介君、『変わってる』し」
「またそれか・・・
ケイイチとかにも言ってるよな、お前」
啓介が言っているのは、コロネの言動についてだ。以前から、ケイイチやハヤトなどに「変わってるね」とよく言っていたのだ。
最近だと、
シゲナガや
マサカズ・・・啓介の数少ない友人たちもいる。
「そうそう、よく言ってる。あれ、どう言う意味なんだ?」
「んー・・・わかんない。ケイイチ君とかは変わってるけど、ハヤト君とか
ナオヤ君・・・あとセナちゃんとかはもっと変わってる」
「はー? 意味がわからないぞ・・・」
「・・・ところで、お前たち、ここで何を? 特につるむような仲でもなかっただろう」
最初の疑問にようやく立ちかえった啓介が訊くと、
「偶然だよ、ぐーぜん。暇つぶしによったらこいつがいたって話」
「こいつ呼ばわりはやめて? コロネって名前があるの」
「わかったわかった。とりあえず、ジュースでも頼むか? 啓介のおごりで」
「待て。必殺バイト人の俺にそれを言うか? 金ないんだよ、あんまり」
「「・・・・・・」」
突然沈黙する2人。そして、
「・・・啓介」
「何だ?」
「それ、つまんねえ」
「・・・・・・・・・・」
本日の出費、1260円也。
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最終更新:2013年06月12日 22:03